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2025年2月18日 (火)

90年代らしさを感じる80年代最後のアルバム

Title:Hear(2024 Remaster)
Musician:谷村有美

現在、過去作のリマスター版を順次リリースしている谷村有美。本作はその第3弾。1989年にリリースされた彼女の3rdアルバムとなります。本作で彼女は初となるチャートベスト10ヒットを記録。一躍ブレイクしたことになります。1989年というと、平成元年。この年、プリプリが「Diamonds」で大ヒットを飛ばした年。一方で、工藤静香や光Genjiなども年間チャート上位に食い込んでおり、90年代のアイドル冬の時代の前、まだアイドルも人気を保っていました。ただ、ロックバンドをはじめ、非アイドル勢に勢いがつきはじめ、一方、アイドル冬の時代が到来しようとしている中、「実力派シンガー」的な売り出し方をしつつもアイドル的な人気も確保できる谷村有美のブレイクというのは、ある意味、時代を象徴しているようにも感じます。

楽曲的にも、いまから聴くといかにも90年代的なポップチューンが目立つのも特徴的でしょう。デビュー時は比較的AOR志向が強かった彼女が、前作「Face」では一気にポップス寄りにシフトしましたが、今回のアルバムでは、その傾向がより顕著となっています。いまから聴くと、これぞ90年代のJ-POPといった楽曲が、まずは耳に残ります。

最も特徴的に感じたのは、先行シングルにもなっている「BOY FRIEND」。いきなりサビスタートや楽曲タイトルをサビにわかりやすく入れてくるあたり、90年代的な雰囲気。明るく爽やかだけどもメランコリックなメロディーラインも耳に残りますし、シンセを前面に押し出したアレンジも、90年代の空気を感じます。ちなみにアレンジャーは、後に「踊る大捜査線」で有名になる松本晃彦が担当。

アルバム1曲目を飾る「明日の恋に投げKISS」も明るく爽快なポップチューンで耳に残る作品に。こちらもアレンジはおなじく松本晃彦が担当。こちらもシンセサイザーを前面に押し出したアレンジが、ちょっと時代を感じさせます。かわいらしい歌詞も含めて、90年代J-POPというよりも、80年代の匂いも残した、ちょっとアイドルポップに寄ったような作品になっています。

そんな感じで、前作に続き、ポップ志向がより強まった作品になっているのですが、ただ一方では「傘を持ってでかけよう」のように、デビュー当初を彷彿とさせるAORの色合いが強いナンバーも。また、ピアノ弾き語りをバックに、その清涼感あるボーカルをしっかり聴かせる「もう恋は。」ではボーカリストとしての彼女の実力も感じさせます。アルバム本編ラストを飾る「ポストカード」も、切ない歌詞が印象に残るナンバー。この曲、作詞はかの小西康陽が手掛けており、「ポストカード」というアイテムの使い方もうまい、ちょっとおしゃれな雰囲気が、実に小西康陽らしい名曲に仕上がっています。

そして恒例のシークレットナンバーは、「BOY FRIEND」の再録バージョン。ピアノ弾き語りにパーカッションを組み入れて、ちょっとジャジーなアレンジが特徴的。なにげにもう還暦前の彼女ですが、いまだに往年の魅力を感じさせるクリスタルボイスを聴かせてくれます。というか、かなり高音域まで聴かせるこの曲を、ピッチを変えずに歌っているのはさすがです。

彼女にとって、ブレイクした作品であり、谷村有美らしさを強く感じられるアルバムと言ってもいい本作。ファン以外の方にとっても、最初に聴くアルバムとしてもおすすめできる1枚だと思います。ギリギリ80年代の作品ですが、90年代J-POPの空気感を存分に感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

谷村有美 過去の作品
タニムラベスト
Believe In(2024 Remaster)
Face(2024 Remaster)

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