沖縄のミュージックシーンを知るには最適な1冊
今日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。
「オキナワミュージックカンブリア:ラジオが語る沖縄音楽50年」。沖縄のラジオ局、エフエム沖縄が、本土復帰50周年を記念して放送された、同タイトルの番組を土台に構成された、沖縄のミュージックシーンについて綴った書籍。1970年代から2020年代までの50年にわたる沖縄のミュージックシーンの変遷がまとめられた1冊となっています。
ご存じの通り、沖縄の音楽というのは、本土における音楽とは異なる音楽の歴史・文化を持っています。もともと沖縄・琉球地域は本土とは異なる歴史や文化を持った地域であり、それが音楽にも直接的に反映されており、特に私たち本土の人間からすると、ともすればエキゾチックに感じられる沖縄音楽に対して、異文化的な興味を抱くことが少なくありませんし、かくいう私も、そういう視点から沖縄の音楽シーンについては以前から興味がありました。
本作は、そんな沖縄のミュージックシーンの歴史について簡潔にまとめています。基本的にはラジオ番組をベースとしているため、文章もわかりやすく、かつ、ポップスシーンについて非常に幅広くおさえられているのも特徴的。本土でのいろいろな音楽雑誌や音楽関連の書籍でも、嘉納昌吉やりんけんバンド、知名定男などといったミュージシャンたちは取り上げられることが多いのですが、ジョニー宜野湾とか、パーシャクラブとか、ティンクティンクとか、私も本作ではじめて知ったような、いわば本土の音楽誌ではあまり取り上げられない一方、沖縄ではよく知られており、かつポップスシーンの中で重要と思われるミュージシャンたちも取り上げられています。
いわば本土の音楽雑誌や音楽関連の書籍で取り上げられている沖縄音楽は、外部の人間から見た沖縄のシーンの話であるのに対して、本書は沖縄の人たちが見た沖縄のミュージックシーンの話。それだけに、非常にリアリティーがあり、かつはじめて知るような話ばかり。また、沖縄のミュージックシーンは確かに本土のミュージックシーンとは全く異なる文化が形成されていることを今回、あらためて知り、ますます沖縄のミュージックシーンに対して興味を抱くことが出来ました。
また、本書で特徴的なのは、そんな沖縄のミュージックシーンを代表するミュージシャンたちのインタビュー記事が載せられていること。嘉納昌吉や照屋林賢といった大御所やBEGIN、HY、さらにはCoccoやKiroroなど豪華ミュージシャンたちがインタビューに応じているのは、さすがFM局ならでは、といった感じでしょうし、また、地元で愛されるFM局だからこそ、多くのミュージシャンたちがインタビューに応じているのでしょう。この点も本書の大きな魅力であり、特徴でした。
そんな中で印象的だったのはBEGINの島袋優のインタビューの中で、沖縄の音楽が東京のレコード店でワールドミュージックのコーナーで取り上げられていたことに関して、「沖縄の音楽はワールドミュージックじゃない!日本の歌なんだ!」と言い続けているという話。確かに、沖縄というのは間違いなく日本の一部であって、沖縄の音楽も間違いなく「日本の音楽」の一部なんだよな、ということに、今回ハッと気が付かされました。
沖縄のミュージックシーンについて俯瞰でき、かつあらためて沖縄のミュージックシーンについて多く知ることが出来た1冊。ここに登場してきたミュージシャンたちについては、あらためて聴いてみたい、と強く感じました。ただちょっと残念なのは、その際に最初に聴くべきようなアルバムの紹介がなかったこと・・・。この点はやはりストリーミングの時代となり、名盤ガイドというのはいまさら流行らないのでしょうか・・・。また、基本的にエフエム沖縄が制作し、発行元も沖縄の出版社ということもあり、本土ではほとんど書店に並んでいないにも残念。むしろ沖縄のミュージックシーンを知ってもらうために、もっと本土でも書店に並べてほしい1冊だと思うのですが・・・。ともかく、沖縄のミュージックシーンに興味がある方は、是非、取り寄せてでも読んでほしい1冊。非常に勉強になりました。
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