ブギ連流のブルースも
Title:懲役二秒
Musician:ブギ連
日本を代表するブルースバンド、憂歌団のギタリスト、内田勘太郎と、ご存じブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズで活躍した、日本を代表するロックボーカリスト、甲本ヒロトが組んだブルースユニット、ブギ連。2019年にアルバムをリリースし、大きな話題となりましたが、それから5年。待望となる2ndアルバムがリリースされました。
内田勘太郎のアコースティックギターと、甲本ヒロトの奏でるハープ、そしてボーカルのみという小名木も非常にシンプルなスタイルなのですが、やはり前作同様、非常にブルースへの愛情にあふれた作品になっています。タイトル曲になっている「懲役二秒」は、まさに自堕落な主人公をテーマとしたユニークながらも、ブルーススピリッツあふれた作品に仕上がっています。
特にストレートなブルースへの愛情を感じられるのが「49号線のブルース(スリーピーとハミー)」でしょう。「スリーピーとハミー」というサブタイトルでブルースリスナーならピンと来ると思うのですが、カントリー・ブルースの巨匠、スリーピー・ジョン・エスティスと、彼の相棒、ハミー・ハミルトンをテーマとした内容。1976年には来日して、憂歌団とも共演しているのですが、
「ブラウンズビルから東京
そして 旅してまわった
憂歌団と一緒に」
(「49号線のブルース(スリーピーとハミー)」より 作詞 内田勘太郎)
と、ストレートにその時のことも歌にしています。
また、今回のアルバムでも耳を惹いたのが甲本ヒロトの独特の歌詞の世界。かなりシュールな歌詞が印象的で、畑で鯛が取れると歌った、不思議な歌詞が印象的な「畑の鯛」や、サメの歯について歌ったブルースナンバー「痛えで」など、独特な言葉選びが特徴的で、ここらへんは甲本ヒロトのセンスと実力を感じさせると同時に、基本的には王道なブルース路線のブギ連に、一種の「ブギ連らしさ」を与える要素となっています。
「ブギ連らしさ」という点で言えば、王道のブルース路線かと思えば、意外とブルースとは異なる要素も取り入れてきたりするのも面白いところで、例えば印象的なのが「トッポい世界」。基本的にブルースの形式にはまっている曲ではあるのですが、哀愁たっぷりのメロディーラインをムーディーに聴かせる歌謡曲路線。ブルースといっても(ともすれば本場のブルース愛好家が忌避するような)「日本の歌謡曲としてのブルース」の世界を彷彿とさせる曲になっています。
「海の向こう側」も楽曲としては正統派なブルースなのですが、海を舞台とした郷愁感漂う歌詞は日本的。よくよく考えると、シカゴやメンフィスなど内陸部で生まれることの多いブルースで、海というテーマはあまり取り上げらることが少ないように感じます。この海をテーマとしたブルースも、ブギ連らしさと言えるかもしれません。
ブルースへの愛情をたっぷり注ぎながら、一方ではブギ連らしさも加えた今回のアルバム。ブギ連流のブルースはまさにブルースリスナー必聴の傑作アルバムだったと思います。ブギ連としての活動は今後もコンスタントに続けてほしいなぁ。
評価:★★★★★
ブギ連 過去の作品
ブギ連
ほかに聴いたアルバム
essence-25th Anniversary All Time Best-/KOKIA
デビュー25周年を記念してリリースされた2枚組のオールタイムベスト。ただ、2018年には20周年のオールタイムベストをリリースしており、さすがにその間隔は短すぎるのではないかと思うのですが・・・。独特のクリアボイスが幻想的な世界観を作り上げています。若干、一本調子な部分もある感じはするのですが、それでも彼女のボーカルは非常に魅力的で強く惹かれるものが。30曲2時間半というボリューミーな内容ですが、一気に楽しめる作品。とはいえ、さすがに20周年で4枚組のアルバムをリリースしているだけに、KOKIAを知りたいというのなら、そちらのアルバムの方をまずはチェックした方が・・・。評価はその点を含んでのものです。
評価:★★★★
KOKIA 過去の作品
The VOICE
KOKIA∞AKIKO~balance~
Coquillage~The Best Collection II~
REAL WORLD
Musique a la Carte
moment
pieces
心ばかり
Where to go my love?
I Found You
EVOLVE to LOVE-20 years Anniversary BEST-
Tokyo Mermaid
ALIVE-The live history-
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