大胆にリアレンジしつつ、原曲の良さはしっかりと残した理想的な攻めのカバーアルバム
Title:HOSONO HOUSE COVERS
はっぴいえんどやYMOのメンバーとしても活躍し、間違いなく日本を代表するミュージシャンの一人、細野晴臣。その彼が1973年にリリースし、こちらも日本の邦楽史に残る名盤として誉れ高いのが、彼のソロデビューアルバム「HOSONO HOUSE」です。そのリリースから50年が経過し、今なお高い評価を受ける同作ですが、今年の2月から同作のカバープロジェクトがスタート。2月より様々なミュージシャンたちが「HOSONO HOUSE」の楽曲をカバーしましたが、その作品をまとめた形でアルバムがリリースされました。
今回、なかなかおもしろいのが、国内版で「HOSONO HOUSE COVERS」としてリリースされたのですが、一方、海外でも同時にリリース。こちらは「Hosono House Revisited」とタイトルも代え、さらに海外から2組のミュージシャンが参加。全12曲でのリリースとなりました。なお、リリースはフィジカルとしてはLP盤のみでのリリース。ストリーミングなどでの配信も行われているのですが、こちらではちゃんと「Revisited」収録の2曲も加えた、全12曲というスタイルで配信されています。
ちなみに参加ミュージシャンとしては、矢野顕子やTOWA TEI、corneliusといった、ある意味、細野晴臣界隈(?)ではおなじみのメンバーから、never young beachの安部勇磨や原田郁子と角銅真実のユニット、くくくなどといったミュージシャンが参加。さらに海外から韓国のバンド、SE SO NEONやさらにはここにも登場するか!とワーカホリックぶりが目立つSam Gendel。さらに「Revisited」ではフランスのサイケポップデゥオPearl & The Oysters、アメリカのシンガーソングライターJerry Paperが参加しています。
そしてそんな豪華ミュージシャンたちによるカバーは、原曲の良さを重視しつつ、しっかりと個々のミュージシャンの色を自由に残している、ある意味、実力のあるミュージシャンだからこそ出来るカバーに仕上げています。
やはりまず耳を惹くのはrei harakamiの「終わりの季節」でしょう。rei harakamiは2011年に逝去していますので、本作は2005年にリリースされたアルバム「lust」収録の曲。rei harakamiらしい独特なサウンドに、聴けば一発で「ハラカミの曲だ!」とわかるような内容。フォーキーな原曲をかなり大胆にアレンジしているものの、暖かさのある作風に原曲の良さもしっかりと残されています。
矢野顕子の「ろっかまいべいびい」も、ピアノの弾き語りで聴かせる作品で、ちょっと歌い方を崩したボーカルスタイルといい、完全に矢野顕子の曲に仕上がっていますし、Corneliusの「薔薇と野獣」も、ドリーミーなエレクトロポップに仕上がっており、こちらもいかにもCorneliusっぽいナンバー。原曲も、どこかドリーミーさを感じさせる味わいもありましたので、そこをCornelius流に引き出したといった感じでしょうか。
他にもラフな女性ボーカルにちょっとエロティシズムも感じられてユニークなJohn Caroll Kirbyの「福は内 鬼は外」やサイケフォーク風でエキゾチックなサウンドもユニークなくくくの「CHOO CHOO ガタゴト」、静かなアコギの弾き語りでメランコリックに聴かせるSam Gendelの「恋は桃色」など、どれも魅力的。いずれのナンバーも、自分たちの色を出すために大胆にリアレンジを施している一方、楽曲のコアな魅力はそのまま残しているという、ミュージシャンとしての実力があるからこそ出来る理想的な「攻め」のカバーを聴かせてくれています。
外国のミュージシャンも多く参加し、かつ海外でのリリースもあるという点からも、細野晴臣というミュージシャンが、日本のみならず海外でも高い評価を受けていることも実感できます。まさに細野晴臣のアルバムだからこそ出来る、理想的なカバーアルバム。また、カバーアルバムというだけではなく、数多くの実力派が参加したオムニバスという観点でもおすすめできる作品で、オリジナルを聴いたことある人もない人も、チェックして欲しい傑作です。
評価:★★★★★
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