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2025年1月17日 (金)

ポップなメロに、深い音楽性を取り入れて

Title:GOLD HOUR
Musician:大橋トリオ

シンガーソングライター、大橋トリオの約3年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。オリジナルアルバムとしてはちょっと久しぶりとなる新作ですが、ただ、今年はTHE CHARM PARKとのコラボアルバム「Trio&Charm」をリリースしていますし、途中、ベストアルバムやコラボベストのリリースもありましたし、むしろ、精力的に切れ目なく活動している印象すら受ける大橋トリオ。むしろオリジナルアルバムで4年近いインターバルが空いていた方が意外に感じました。

毎回、いい意味でジャズやソウル、AORの要素を組み込んだ大人のポップソングを、アコースティックベースのサウンドで聴かせてくれる彼。いい意味で安定感があり、クオリティーの高いポップを安心して聴ける、という印象を受ける反面、それゆえに正直なところ逆に「地味さ」も感じてしまう点も否定できません。それゆえに、チャート的にはいつも10位~30位程度を行ったり来たりと、それなりにヒットしているけどブレイクまではいかない・・・という煮え切れなさもこの地味さゆえ、なのかもしれません。

本作に関しても、いつもと同様、ジャズやソウル、AORの要素を組み込んだ大人のポップスを安定したクオリティーで聴かせてくれます。そういう意味では良くも悪くもいつもの大橋トリオといった印象を受けるのですが、ただ、そんな中でも今回のアルバムはここ数作の中では頭ひとつ出ている、心にしっかり残る楽曲が並ぶアルバムになっていたように感じました。

まず冒頭を飾る「空とぶタクシー」が心地よい感じ。アコギの爽快なサウンドとリズミカルとすら感じられるテンポのよいリズムが印象的なのですが、爽やかでありつつ切なさも感じられるメロディーラインがキュンと来ます。続く「エトセトラ」も、メランコリックなメロディーラインが印象的。途中のメロディーの転調も個人的にはかなりグッと来る部分があります。

「季節によせて」も強い印象に残るバラードナンバー。エレピで切なく聴かせるナンバーで、「スティーヴィー・ワンダーに歌わせたい」というテーマでつくられた楽曲だそうですが、まさにスティーヴィーの楽曲に通じる、ポップだけどメロウなR&Bナンバーに仕上がっています。

後半も、ジャジーなアレンジにファンキーさも感じるドラムのリズムも気持ちよい「風船メモリー」や、暖かいメロディーラインが印象に残る「カラタチの夢」など、後半も魅力的なナンバーが並びます。「カラタチの夢」はテレビ東京系ドラマ「きのう何食べた? season2」のオープニングテーマで、このドラマは見ていないのですが、ドラマタイトルからして、ドラマにもマッチしたほんわかとした雰囲気も感じさせます。

終盤の「薤露青」はエキゾチックでちょっとサイケさもあるアレンジが耳を惹く楽曲。宮沢賢治の詩にメロをつけた曲だそうですが、ちょっと不思議な雰囲気の曲調がアルバムの中でちょうどよいインパクトになっています。そしてラストの「巡(めぐる)」はアコギやピアノなどアコースティックなサウンドを軸にゆっくりと聴かせる楽曲。実に大橋トリオらしい作品でアルバムは締めくくられます。

最初にも書いた通り、今回のアルバムでも決して目新しい大橋トリオを提示した訳ではなく、いつもの彼らしい大人のポップソングを聴かせてくれます。ポップなメロディーラインで楽曲全体としては広いリスナー層にアピールできそうなポピュラリティーを持っていながら、サウンドなど要所要所にジャズやソウルの要素を取りいれた、その音楽性の広さ・深さを感じさせる仕事ぶりも彼らしいところ。さらに今回のアルバムに関しては、サウンドのバリエーションもさることながら、インパクトのあるメランコリックで切ないメロが強い印象を残す作品になっており、ここ数作の中では一番の出来だったように感じます。あらためて大橋トリオというミュージシャンの魅力を再認識できた傑作でした。

評価:★★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too
NEW WORLD
ohashiTrio best Too
ohashiTrio collaboration best -off White-
カラタチの夢
Trio&Charm(大橋トリオ&THE CHARM PARK)


ほかに聴いたアルバム

ORION/SPECIAL OTHERS ACOUSTIC

昨年は2月から9月にかけて、毎月25日を「ニコニコの日」と称して、にぎやかな新曲をリリースするなど積極的な活動が目立ったSPECAIL OTHERS。本作はそんな彼らのアコースティック編成による別名義のアルバムになるのですが、「ACOUSTIC」名義での活動をスタートさせ、10周年の記念のアルバムとなります。25日にリリースした新曲は、既にスペアザ名義の直近作「Journey」に収録されていますが、こちらもほっこりと心が温まるような楽曲が収録。この寒い冬の季節にもピッタリの、いい意味で安心して聴ける楽曲が並んでいました。

評価:★★★★

SPECIAL OTHERS 過去の作品
QUEST
PB
THE GUIDE
SPECIAL OTHERS
Have a Nice Day
Live at 日本武道館 130629~SPE SUMMIT 2013~
LIGHT(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WINDOW
SPECIAL OTHERS II
Telepathy(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WAVE
Anniversary
Journey

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