懐かしい90年代を感じつつ
Title:ゴールデン☆ベスト CORVETTES
Musician:CORVETTES
ここでも何度か取り上げている、複数のレコード会社共通の廉価版ベストアルバムシリーズ「ゴールデン☆ベスト」。あまりいままでチェックしてこなかったミュージシャンを含め、代表曲を手っ取り早く聴けるため、いろいろと重宝するシリーズなのですが、今回紹介するのは80年代から90年代にかけて主に活動していた男性5人組バンドCORVETTESです。
個人的に彼らを懐かしいなぁ、と思って今回聴いてみたのは、1993年にドラマ主題歌として起用された「瞳を僕にちかづけて」を知っていたから。この1993年という年は、フジテレビ系ドラマ「振り返れば奴がいる」の主題歌となったCHAGE&ASKAの「YAH YAH YAH」が大ヒットを記録したように、ドラマ主題歌が軒並み大ヒットを記録しました。本作は日テレ系ドラマ「日曜はダメよ」の主題歌に起用され、彼らとしては最大のヒット曲となっています。ただし、オリコンシングルチャートでは最高位14位に留まっており、大ヒットには程遠く、おそらくリアルタイムでヒットシーンを追いかけていた方でも、「懐かしい!」と感じる方と「知らない・・・」と思う方が分かれそうに感じます。
そしてこのベスト盤の最初に本作は収録されています。今回、久しぶりに同曲を聴いたのですが、そこで強く感じたのは、とにかく売れることを意識した曲だった、という点でした。この1993年という年、ドラマ主題歌と共に音楽シーンの大きな流行になったのが、いわゆるビーイング系。明確に売れることを狙った、ある意味、工業生産物のような手法を取った乱発気味の音楽制作は、賛否両論がわかれましたが、同曲に関しては、明らかに、当時流行だったビーイングの手法を取り入れています。まずサビ先という楽曲構成。さらにはサビの一番最初に曲のタイトルを持ってくる手法。そして、サビのインパクトだけを異様に重視し、サビ以外のメロがやっつけ気味となっているような楽曲。いずれもいかにもビーイング系の手法を模倣したような、当時の流行にのっかかって、「売れる」ことを意識した曲になっていました。
今回のベスト盤で、はじめて「瞳を僕に近づけて」以外のCORVETTESの曲を聴いたのですが、彼らの代表曲といえる同曲とは異なる作風の楽曲がメインとなっていました。「あのカーブを過ぎたら」のように、いかにも90年代的なアレンジの曲もあったものの、「瞳を僕にちかづけて」の前のシングルとなる「YOKO・・・さよならの向こうに」や「Dracula」などはAOR風のちょっとムーディーな大人のポップといった印象も受ける作品に。一方、「NEVER」や「ジサンサー」などはいずれもハードロックな作品になっており、彼らの嗜好としてはここにあったのかな、とも感じます。
もっとも、ハードロックとAORという明らかに異なった作風の曲が並んでいるあたり、バンドとしての方向性もいまひとつ定まっていなかったようにも感じました。この点が、バンドとしていまひとつ、大ブレイクに至らなかった大きな要因のようにも感じました。また、バンドとしては、シングル曲は「瞳を僕にちかづけて」が最後。その後、ベスト盤1枚、オリジナルアルバム1枚をリリースし、1994年には活動休止となってしまいます。ただ、その後、1998年に再結成し、その後は活動を続けているだけに、おそらくメンバーの仲が悪くなった訳でも音楽をやめてくなった訳でもなく、純粋にヒット作を求められ、同作があまり大ヒットには至らなかった結果、一時的にバンド内にギクシャクが生まれたのではないでしょうか。
90年代の音楽シーンをちょっと懐かしく感じつつ、その中で迷走気味だったバンドの活動を感じられるベストアルバム。他にも「Danger City」のようにテレビ主題歌になった曲もありますので、懐かしさを感じる方はチェックしてみて損のない1枚だと思います。
評価:★★★
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