新メンバー加入でゼロからの出発
Title:From Zero
Musician:Linkin Park
日本でも高い人気を誇っているアメリカのロックバンド、Linkin Park。2017年にリリースしたアルバム「One More Light」でも全米チャートで1位を記録するなど、圧倒的な人気を誇ってきました。しかし、そんなバンドが悲劇に襲われたのがその2017年。マイク・シノダと並び、バンドのボーカルを担ってきたチェスター・ベニントンが自殺というショッキングな出来事に襲われ、バンドはそのまま活動休止状況となってしまいました。
しかし、その後の過去のアルバムの〇〇周年記念盤などのリリースにより、バンドの看板を守り続け、今年はシングルコレクションを発表。さらに新ボーカルとして女性ボーカリストのエミリー・アームストロング、さらに新ドラマーとしてコリン・ブリテンを迎えて活動を始動。実に前作から約7年ぶりとなる待望のオリジナルアルバムのリリースとなりました。
そんな待望のニューアルバムの大きな特徴は、ゴリゴリにヘヴィーなサウンドを前に押し出した、Linkin Parkらしいヘヴィーロックな作品になっている点でしょう。イントロからスタートし、序盤は比較的、彼ららしいメランコリックなメロを聴かせるようなナンバーが続きますが、「Heavy Is the Crown」ではまずヘヴィーなバンドサウンドを前に押し、エミリーのシャフト気味のボーカルが楽曲となっています。
バンドとしての原点回帰的なヘヴィーロック路線は後半に行くほど顕著で、「Casualty」も最初、エミリーのデス声からスタートしつつ、ヘヴィーなギターリフを前に押し出したメタリックな作品に。「Two Faced」もヘヴィーなギターリフ主導の典型的なラップメタルな作品に。「IGYEIH」も比較的ポップなメロを聴かせてくれつつ、エミリーのシャウトと、それに合わせるようなヘヴィーなバンドサウンドが印象的なダイナミックなナンバー。前作となる2017年「One More Light」ではポップな作風にシフトしており、バンドとして賛否両論(というより否定的な論調の多い)作品となっていましたが、今回は完全にラップメタル回帰の、Linkin Parkらしい作品に仕上がっており、初期からのファンにとっても大きな満足のいく作品だったのではないでしょうか。
そしてなんといっても大きいのは、今回、女性ボーカルのエミリー・アームストロングが加わった点でしょう。「女性だから」ということは関係ない、とばかりのシャウトやデス声、そして力強いボーカルも大きな魅力なのですが、とはいってもやはり女性らしいハイトーンの柔らかい、マイク・シノダとは明らかに異質である声質がバンドにとって大きなインパクトになっています。今回のアルバム、純粋に楽曲部分だけを切り取れば、原点回帰的とはいえ目新しいものは全くありません。ただそれでもこのアルバムに惹きつけられるのは、やはりエミリーのボーカルが大きなインパクトになっているからでしょう。
また、「Over Each Other」ではエミリーがゆっくりと歌い上げるボーカルがソウルフルで、大きな魅力となっている作品。この曲は、まさにエミリーがボーカルだったこそ成り立ったような楽曲になっていたと思います。もともとバンドとしては前作でも「Heavy」で女性ボーカリストをゲストとして迎えており、女性ボーカルとのからみというのをバンドとしての新たな可能性として模索していたのでしょう。そして今回のアルバムでは、その方向性がピッタリとマッチしていました。
正直、サウンド的に新機軸を打ち立てた訳ではないため、これが2作3作と続けば、マンネリ化しそうな印象も否めません。ただ、それを差し引いても、新体制の出発にふさわしい傑作アルバムに仕上がったアルバムと思います。「From Zero」というアルバムタイトル通り、まさにバンドとしてゼロからの始動となった彼ら。ただ、今後の活躍に期待したいところです。
評価:★★★★★
LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS
The Hunting Party
One More Light
Papercuts:Singles Collection(2000-2023)
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