感情が高まっていく
Title:Songs Of A Lost World
Musician:The Cure
実に約16年ぶりとなるイギリスのロックバンド、The Cureのニューアルバム。The Cureはボーカル、ロバート・スミスを中心に1978年に結成され、1979年にデビュー。現在、結成45年目を迎えたベテランバンド。メンバーは入れ替わりながらも、断続的に活動を続けていました。ゴシックロックをベースとしつつ、ポップなメロを加味したサウンドが特徴的で、数々のミュージシャンに影響を与えているそうです。そんな彼らの久々となったニューアルバムは、現在、各種メディア等で大絶賛を受け、年間ベストアルバムの上位にランクインし、大きな話題となっています。
今回のアルバム、楽曲の構成については似たようなタイプの曲が多く、力強いバンドサウンドにストリングスも入ってメランコリックに美しく聴かせるインストからスタート。感情たっぷりのサウンドをこれでもかというほど聴かせて、中盤あたりからようやく歌がスタート。こちらもそんな美しく聴かせるインストに重なるような、ロバート・スミスが哀愁たっぷりに歌い上げる美しいミディアムテンポの歌を聴かせてくれます。
アルバムに先立って発表された「Alone」はまさにそんな楽曲となっており、オープニングにふさわしく、なおかつアルバムを代表するかのようなナンバー。続く「And Nothing Is Forever」も同じく、ストリングスにピアノも重なるような透明感のある美しいインストが長く続き、中盤あたりからようやくメランコリックな歌がスタートします。
ここ最近の曲は、特にストリーミングでいかに聴かせるかというナンバーが多く、特に日本での話になるのですが、イントロが短くなってきている、ということがひとつの話題となっています。一方、そういう流れからすると、このThe Cureの楽曲はまさに真逆。ゆっくりと哀愁たっぷりのイントロを、これでもかというほど聴かせてくれます。ただ、この長いイントロによって、聴くものの感情が徐々に高ぶっていき、中盤からようやく歌が流れ始めたころには、その高ぶった感情を、ロバート・スミスの歌でより盛り上げていく、そんな感情の高ぶりによって聴く者を魅了するアルバムになっていました。
後半は、「Drone:Nodrone」や「All I Ever Am」など、前半のストリングスとは代わって、ノイジーなギターサウンドを前に出している楽曲も。ただ、これらの曲も長い哀愁たっぷりのイントロで感情たっぷりに聴かせるというスタイルには大きな変化はありません。そしてそんなアルバムの締めくくりのような楽曲がラストのタイトル通り「Endsong」。最初はストリングスにピアノやバンドサウンドも入って、メランコリックなサウンドでスケール感をもって徐々に盛り上げていきます。10分にも及ぶ楽曲で、歌がスタートするのはようやく6分を過ぎたあたり。メランコリックでノイジーなサウンドに埋まるように感情込めてうたわれるロバート・スミスの歌がこれまた魅力的。最後を締めくくるにふさわしいスケール感あふれる楽曲に仕上がっていました。
確かに、各種メディアで絶賛されているのも納得。ゴシックな部分とポップな部分がほどよく融合し、これでもかというほど感情のたかぶりを感じさせるThe Cureの傑作アルバムでした。デビューから45年を迎えつつ、これだけのアルバムをまだリリースしてくるあたりも驚きを感じる1枚。ゴシックなサウンドは良くも悪くも癖はありますが、ポップなメロはいい意味で聴きやすいので、広い層が楽しめそうな、特にロック好きにはお勧めできる1枚です。
評価:★★★★★
The Cure 過去の作品
4:13 Dream
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