アルバムとして非常に惜しい作品
Title:Night Palace
Musician:Mount Eerie
アメリカのシンガーソングライター、Phil Elverumの音楽プロジェクト、Mount Eerie。Mount Eerieとしては2003年から活動を続け、本作でアルバムは11作目となる中堅ミュージシャンですが、アルバムを聴くのは今回がはじめてとなります。
まずアルバムとしては非常にバリエーション豊富な構成となっている作品でした。冒頭を飾るタイトルチューン「Night Palace」はノイズを前面に押し出したサイケな楽曲からスタート。続く「Huge Fire」はミディアムテンポに聴かせるギターロックのナンバーなのですが、続く「Breaths」は、歌こそフォーキーな雰囲気ながらも、サウンドはインダストリアル的な作品。さらに「Swallowed Alive」はわずあ52秒という短い曲ながらも、シャウトが鳴り響く、ハードコア的な楽曲となったかと思えば、「My Canopy」も一転、アコースティックな雰囲気で聴かせるネオアコ風の作品となっています。
その後は、基本的にハードコア的な曲やメタリックな曲はなくなり、メロディアスなギターロックの作品が主軸となります。「Empty Paper Towel Roll」のような、オルタナ系ギターロックの王道を行くような、ポップなギターロックチューンがあったり、「Blurred World」のようなアコギを入れてフォーキーにしんみり聴かせる作品があったり、「Myths Come True」のようなサイケ気味なアレンジにポエトリーリーディングを入れたような曲もあったり、ローファイなギターロックを軸としてバラエティーある作品を聴かせてくれます。
特に印象的なのが「I Spoke With A Fish」のような、コーラスラインを入れて美メロとも言えるメロディーラインの歌を聴かせてくれる曲や、「I Saw Another Bird」のようなメランコリックなメロが切ないナンバー。全体的に派手さはなく、曲によってはバンドサウンドの後ろで細々と歌われるだけというケースもあるものの、美しいメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる点、彼の大きな魅力でしょう。
しかし、1つ1つの楽曲だけ取ると、非常に素晴らしい作品だったのですが、一方でそれだけのプラス評価を覆すぐらいの厳しい部分がありました。それはアルバムとして長すぎるという点。今回のアルバム、全26曲1時間20分にも及ぶ内容。これはさすがに長すぎます・・・。
確かにバリエーションに富んだ内容ではあるものの、全体的にローファイで地味な作風の曲が多く、その点、後半はダレてくる点は否めません。さらに前半はメタリックな作品があったりと、明確に違う雰囲気の楽曲が紛れ込んできて大きなインパクトになっているのですが、後半は徐々にメロディアスなギターロック路線に収縮していきます。結果、後半は比較的似たタイプの曲が並んでしまい、聴いていて、飽きてきてしまいました。
さらに、さすがにダレて来たな・・・と感じる頃に、いきなり12分にも及ぶポエトリーリーディングの「Demolition」という曲をぶちこんできます。ここに来て、この展開はさすがにちょっと辛い・・・。
このアルバム、もし曲数を絞って1時間弱の長さとなれば、文句なしの傑作どころか、年間ベストクラスの作品にすらなっていたように思います。また、後半に、もっとぶっ飛んだ曲調の楽曲をアクセントとして入れてこれば、また印象は異なっていたと思います。ただ、さすがに楽曲が詰め込みすぎだし、構成ももうちょっと工夫した方がよかったのでは?楽曲としては優れていても、ただ優れた楽曲を集めただけで傑作のアルバムが出来上がる訳ではないということを、実感できた作品でした。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/HOWARD JONES
日本でリリースされたシングルをまとめた国内独自企画のベスト盤シリーズ。今回は、主に80年代に、シンセポップのミュージシャンとして日本でも高い人気を誇ったイギリスのミュージシャン、ハワード・ジョーンズのシングル集。正直、名前くらいしか聞いたことないミュージシャンなのですが・・・。前半は実に80年代っぽい明るいシンセポップが並んでいます。ただ後半になるに従い、ギターを前に押し出した作品が多くなり、徐々に方向性が変わったことが伺わせます。ただ、結果、あまり特色のないような楽曲になってしまっている点、90年代以降の失速の原因なのでしょう。ただ、特に前半、80年代らしさを楽しめるポップアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
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