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2025年1月 6日 (月)

メンバー4人の個性が発揮されたEP

Title:EP2 TSTST
Musician:TESTSET

Ep2tstst

昨年、デビューフルアルバム「1STST」をリリースしたTESTSETが早くも次のアルバムをリリースしました。とはいっても今回のアルバムは、2022年にリリースしたEP「EP1 TSTST」に続く2枚目のEP盤。配信限定シングルとしてリリースした「Sing City(Edit)」を含む、全4曲入りのミニアルバムとなっています。

一応、説明が必要かと思いますが、TESTSETは砂原良徳、LEO今井、GREAT 3の白根賢一、相対性理論の永井聖一の4人からなる、いわゆるスーパーグループ。もともとは高橋幸宏を中心に結成されたバンドMETAFIVEが母体となり、2021年のフジロックで、小山田圭吾の例の件が生じたため、METAFIVEのメンバーの砂原良徳とLEO今井が、白根賢一、永井聖一の2人をサポートに迎え、METAFIVEの特別編成として出演したのがきっかけ。よっぽど相性があったのでしょう、そのままその4人でTESTSETとして活動をスタートさせ、今に至っています。

今回のミニアルバム、わずか4曲入りというミニマムな内容ですが、エレクトロポップという点を共通項にしつつも、4曲ともタイプの異なるバリエーションが楽しめる作品となっていました。

先行シングルとなった「Sing City(Edit)」はちょっとノスタルジーを感じられる街の風景を描写した歌詞に、メロディーラインもメランコリックで郷愁感を覚える暖かい「歌」がメインとなる内容。メロにもインパクトもあり、シングル曲らしい、いい意味で「売れる」ことも狙ったような看板的なナンバー。作詞はLEO今井、クレジットは4人の共作となっていますが、おそらくLEO今井が主導した感があります。

続く「Interface」は、跳ねるような軽快なエレクトロのリズムに、ギターサウンドが重なるようなテンポよいナンバー。こちらは砂原良徳とLEO今井の共作となっていますが、まさにこの2人の音楽性、テクノとロックを融合させたような楽曲に仕上がっています。3曲目「Crybaby Drop」はこちらもリズミカルなエレクトロチューン。ダウナーなメロディーラインに軽快なエレクトロビートが特徴的で、ハウスの要素が強い楽曲となっています。こちらのクレジットは作詞作曲とも、白根、今井、砂原の並びになっており、この並びからすると、白根賢一が主導した曲ということでしょうか?このような音楽性を嗜好していたというのはちょっと意外な感じもしました。

ラストを締めくくる「Yume No Ato」は永井聖一作詞作曲による楽曲で、ボーカルもおそらく永井聖一本人でしょうか。爽快なギターサウンドをバックとしたポップチューンとなっており、ノスタルジックな歌も印象的。永井聖一単独作ということで、他の曲とは少々異なった感じもするのですが、それでもTESTSETのパーツの一部としてしっかりと組み込まれている印象を受けた作品となっていました。

この4曲、おそらくメンバーそれぞれが主導権を握った楽曲が並んだ結果の選曲といった感じがしますし、それだけにメンバーそれぞれの個性が発揮された4曲といった印象を受けます。ただ、そういうアルバムとなると、メンバーが既にバラバラの解散直前のアルバム(ビートルズのホワイトアルバムのような)となることがよくあるのですが、本作に関しては完全にバラバラといった感じではなく、誰かが主導権をとりつつも、他の人の要素も入っているという、いい意味でスーパーグループらしい、ほどよく4人が個性を主張しつつも、ほどよく4人の個性が溶け合った、そんなアルバムになっていました。

TESTSETがバンドとして上手くいっていることも感じさせるアルバム。この手のスーパーグループは、比較的早く内部分裂してしまうケースが多いのですが、彼らの場合は大丈夫そう。今後の活動も、まずは次のフルアルバムのリリースも楽しみです。

評価:★★★★★

TESTSET 過去の作品
EP1 TSTST
1STST

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