「Screamadelica」期を彷彿とさせるような
Title:Come Ahead
Musician:Primal Scream
途中、シングルコレクションやライブアルバムのリリースなどのリリースもあったため、そんなに間が空いたんだ、とちょっと意外な感じもするのですが、実に約8年ぶりとなるPrimal Screamのニューアルバム。ジャケット写真はスコットランドの労働組合の重鎮であるボビー・ギレスピーの父親だとか。そういわれれば、面影がどこか似ているような・・・。
そんな久々となる今回のアルバム、作品の全体的な印象としては、どこか彼らの名盤である「Screamadelica」を彷彿とさせるような内容となっていました。アルバムの冒頭を飾る「Ready To Go Home」は、最初、ゴスペルからスタート。それが徐々にテンポをあげていき、本編がはじまると、リズミカルでファンキーなリズムのダンスチューン。ブラックミュージックの影響も強い、軽く酩酊感のあるグルーヴィーなサウンドは、まさに「Scramadelica」を彷彿とさせます。
続く「Love Insurrection」もミディアテムテンポで歌い上げるメロウなボーカルのナンバーながらも、バックに流れるグルーヴィーなサウンドが心地よいミディアムソウル風の楽曲。「Innocent Money」も4つ打ちのリズムで軽快な、ディスコ風のダンスナンバー。こちらも楽曲に流れるストリングスの音色が醸し出す、ちょっと懐かしい70年代的な雰囲気が実に魅力的な楽曲になっています。
軽快なパーカッションがトライバルに聴かせる「Circus of Life」も、まさに「Screamadelica」期を彷彿とさせるリズミカルでグルーヴィーなナンバー。アフロビートっぽい雰囲気も魅力的な楽曲。終盤の「The Centre Cannot Hold」も軽快でリズミカルなダンスチューン。こちらもちょっとトライバルでグルーヴィーなバンドサウンドが大きな魅力となっています。
そんなグルーヴィーでリズミカルな楽曲が並ぶ本作なのですが、ユニークなのがその制作過程で、本作はボビーが、はじめてアコギを使い1人で作曲した作品だそうです。アコギで作成しつつ、これだけグルーヴィーな作品が出来上がるのはちょっと意外な感じがします。一方、本作のタイトル「Come Ahead」はボビーの出身地、グラスゴーの言葉で、喧嘩の時に「出てこい」と挑発する時に使う言葉だそうで、この反骨精神はいまだ変わらず、といった印象を受けます。
また、リズミカルな作品の中に、「Deep Dark Waters」のような、哀愁たっぷりのメロディーをこれでもかというほど聴くことが出来る曲があったり、ラストの「Settlers Blues」も、こちらもメランコリックな歌をサイケフォークなサウンドにのせて聴かせる楽曲。メランコリックな歌も大きな魅力に感じました。
8年前の前作「Chaosmosis」は、彼らの集大成的な作風という印象を受けましたが、8年というインターバルをあけてリリースされた本作は、ある意味、彼らの原点回帰とも言える作品かもしれません。聴いていて素直に心地よかったし、これはライブで聴けば気持ちよさそうだなぁ。Primal Screamというバンドの魅力あふれる傑作でした。
評価:★★★★★
primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
Chaosmosis
Give Out But Don't Give Up:The Original Memphis Recordings
MAXIMUM ROCK ‘N’ ROLL: THE SINGLES
Demodelica
Live at Levitation
ほかに聴いたアルバム
Groovy Steppin Sh*t/Lisha G
アメリカはサウス・カロライナの女性ラッパー、Lisha Gが、フィラデルフィアのプロデューサーTrini Vivとタッグを組んでリリースしたアルバム。ミディアムテンポのトラップのリズムで聴かせるラップが特徴的。トラップというと、ダウナーでメランコリックというイメージも強いのですが、彼女の場合、ドリーミーな雰囲気はともかくとして、比較的明るい雰囲気のサウンドが特徴的で、個性的で聴きやすさを感じさせます。日本語の情報がほとんどなく、おそらく本作がまだ2作目という彼女ですが、今後の活躍に期待です。
評価:★★★★
| 固定リンク
コメント