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2025年1月14日 (火)

方向性が異なりつつ、微妙にリンク

今回、紹介するのはニューヨーク生まれチリ育ちのエレクトロミュージシャン、Nicolas Jaarが2枚同時にリリースしたアルバムです。

Title:Piedras 1
Musician:Nicolas Jaar

Piedras1

Title:Piedras 2
Musician:Nicolas Jaar

Piedras2

2枚同時リリースとなった本作ですが、両作で楽曲の方向性は異なります。まず「Piedras 1」の方はラテンの要素も強い哀愁たっぷりのメロディーラインが軸となっている点。「Aqui」がまさにそんな哀愁たっぷりの「歌」を聴かせてくれる楽曲となっていますし、続く「Agua pa fantasmas」は哀愁感あるメロにラテンやトライバルな要素の加わったエレクトロビートが加わります。特に、アルバム中盤では、ラテンやトライバルなビートをより前に押し出したリズミカルなナンバーが強くなります。

特にラテンの要素という点では、彼がチリ育ちということで、やはり中南米系の影響が大きいのでしょう。アルバムでも後半「Mi viejita」などは、まさにラテンの要素を前に出したメランコリックなナンバーとなっています。アルバム全体としてはダウナーな雰囲気の曲が多いのですが、そこにラテン特有の哀愁感のあるメロやサウンド、さらにはトライバルなビートも加わり、独特の味わいのあるサウンドを聴かせてくれます。

一方、「Piedras 2」は全体的にアンビエントの要素の強いアルバムに。特にアルバム前半は「Rio radio correspondecia anfibia」にはじまり、「3eee」「F Collect」など、静かで美しいサウンドを聴かせてくれるアンビエントの曲が続いていきます。「Piedras 1」で感じられたラテン的な要素は薄め。ただ、ダウナーな楽曲という意味では「Piedras 1」に通じるものがありますし、なによりもアンビエントの美しいサウンドが耳を惹く作品となっています。

ただ、この作品、後半になると雰囲気が異なり、「Heterodia」では強いエレクトロビートの、ドリルンベース的な楽曲に。さらにラストの「SSS1」「SSS2」「SSS3」はメタリックなエレクトロビートが疾走感のある楽曲になっており、アンビエントの雰囲気からグッと変化してアルバムが幕を下ろすのもまた、ユニークです。

そんな訳で、2枚同時リリースのアルバム。方向性が異なりつつ、共通項も感じられるのもユニーク。特に「Piedras 1」の1曲目「Cangilon」はアンビエントの作品となっており、「Piedras 2」との結びつきも感じられます。2枚のアルバムが、微妙に異なりつつも、実は微妙にリンクしている、そんな構成もまたおもしろく感じ、どちらのアルバムも楽しめる、そんな作品だったと思います。

今回、はじめて彼の作品を聴いたのですが、もともとデビューアルバム「Space Is Only Noise」から高い評価を受けていたようです。ただ、その理由も納得の、彼の実力をしっかりと感じられた2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

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