相手の色もしっかり出したコラボアルバム
Title:HATA EXPO-The Collaboration Album-
Musician:秦基博
シンガーソングライター秦基博の新作は、サブタイトル通りのコラボレーションアルバム。今回のコラボレーションアルバムのために収録した作品6曲に、既発表曲の4曲の全10曲入りとなるアルバム。秦基博が影響を受けたり、縁があったりする様々なミュージシャンとのコラボとなっています。
やはりまずは耳を惹くのはアルバムの冒頭を飾るスピッツの草野マサムネとのコラボ曲「ringo」。昔から敬愛していたミュージシャンだったそうで、草野マサムネが他のミュージシャンと楽曲を共作するのは本作が初だそうです。力強いギターサウンドを目立つロックなアレンジながらも、秦基博らしさも草野マサムネらしさも感じさせる爽やかでポップなメロディーラインが魅力的な楽曲となっています。
この曲もそうなのですが、今回のコラボ曲、いずれもコラボ先のミュージシャンの特徴を生かしたようなコラボが多かったように感じます。続くsumikaの「ハローサーリアル」もホーンセッションやピアノが入った、sumikaらしい祝祭色のある楽曲。リサ・ローブとのコラボとなった「Into the Blue」も、楽曲としてはリサ・ローブに寄せた、英語詞で爽快なアコースティックテイストの洋楽テイストの強いポップス。ハナレグミとのコラボの「No Where Now Here」も、ハナレグミらしい日常を描いた暖かいポップソングに仕上がっています。
ちょっと異色だったのが又吉直樹の「ひとり言」で、こちらは又吉直樹の朗読と秦基博の歌という組み合わせのユニークなコラボに。ただ、又吉って最近、本職のお笑いとして活動しているんでしょうか・・・?
そして今回のコラボアルバムを聴いて思ったのは、秦基博というミュージシャンは、ある意味、非常にコラボしやすいミュージシャンではないか、という点でした。シンガーソングライターとしての実力、シンガーとして暖かみのある声質などもコラボ相手としては最適ですし、また、ひとつ大きな要素だと思うのは、ミュージシャンとしてあまり癖が強くない、という点。秦基博というミュージシャンは楽曲もシンプルなポップですし、声にしても、万人受けするような声であってあまり癖がありません。
この点はシンガーソングライターとして強みでもあるし、ある意味、弱点とも言えるかもしれませんが、ことコラボという点においては、特に相手にとっては非常にやりやすい。ほどよくコラボ相手のカラーをつけつつ、シンガーソングライターとしての実力から、秦基博としての要素もしっかりと入れられる、そんな理想的なコラボに仕上がる感じがあります。それだからこそ、こういったコラボアルバムが出来上がるのですし、また数多くのミュージシャンとのコラボを行っているのでしょう。
そして、今回のコラボアルバムの最後を締めるのは、先日もKANのベストアルバムで紹介したばかりのKANとのコラボ曲「カサナルキセキ」。この曲のすごさについては先日、ここに記載したばかりなので繰り返しませんが、このコラボアルバムの最後を締めくくるにふさわしい、まさにこれぞコラボレーションといった作品となっています。
ちなみに今回、既発表曲はこの「カサナルキセキ」を含めて4曲のみだったのですが、その他にも秦基博はいろいろなミュージシャンとのコラボを行っています。どうせなら、これらのコラボ曲を集めて、コラボベストを企画してほしいような・・・。参加ミュージシャンのファンや秦基博のファンはもちろんのこと、広いリスナー層におすすめできそうなアルバムでした。
評価:★★★★★
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