原点回帰を感じさせる高揚感ある楽曲も
Title:Strawberry Hotel
Musician:Underworld
ご存じ、日本でも高い人気を誇るイギリスのテクノユニット、Underworldのニューアルバム。今年はサマーソニックでもヘッドライナーをつとめるなど、相変わらずの人気の彼ら。直近のアルバム「DRIFT SERIES 1」から早くも5年というインターバルを経てのアルバムとなっています。また、前作「DRIFT SERIES 1」も、「DRIFT」というプロジェクトに沿ってリリースされたEPの寄せ集め的なアルバムだったので、純然たるオリジナルアルバムとしては2016年の「Barbara Barbara, We Face a Shining Future」以来、実に約6年半ぶりとなるニューアルバムとなりました。
今回のアルバム、特に前半に関しては、原点回帰という言葉も飛び出すような、実にUnderworldらしい心地よくリズミカルなテクノチューンの並ぶ作品となっていました。特に2曲目の「denver luna」が秀逸で、疾走感あるリズムで、徐々に高揚していくかのようなサウンドは、彼らの代表曲である「Born Slippy」を彷彿とさせるかのよう。続く「Techno Shinkansen」も、タイトルからして日本人にはなじみあるのですが、新幹線に乗っているかのような疾走感あるテクノチューンが心地よい楽曲。ちなみに同作のMVでは、「テクノ新幹線」という日本語が登場するのと共に、新幹線からの風景をサンプリングした映像が流れており、日本人には必見のMVとなっています。
さらにこれらのナンバーに続く「and the colour red」もリズミカルなビートとミニマルなサウンドで心地よくトリップできそうなアシッドハウスな楽曲。そしてそれに続く「Sweet Lands Experience」まで、前半はUnderworldの王道を行くような、聴いていて素直に心地よいリズミカルなテクノチューンが続きます。
ただ、ちょっと雰囲気が変わるのはここからの後半で、全体的にメランコリックな雰囲気を漂わせる曲調が特徴的。哀愁感のある歌が入る「Burst of Laughter」や、Underworldらしい高揚感あるリズムを聴かせてくれるものの、全体的にメランコリックなサウンドを聴かせる「King of Haarlem」。さらには、「denver luna」のアカペラバージョンも登場し、こちらは曲が持っていたメランコリックな側面をより強調したアカペラとなっていました。
さらに終盤の「Gene Pool」「Oh Thorn!」はアップテンポながらもドリーミーな雰囲気でちょっとチルアウト気味。さらにアメリカのフォークシンガーNina Nastasiaをボーカルに迎えた「Iron Bones」も同じく、フォーキーな歌モノの楽曲。さらにラストの「Stick Man Test」はなんとギターのアルペジオでしんみり聴かせる作品で締めくくり。終盤はチルアウトな展開でアルバムは幕を下ろします。
正直、前半の高揚感あふれるナンバーがもっと後半まで続いてほしかったな、という印象も受けなくもなかったのですが、ただ、それはそれとして、後半のメランコリックなナンバーにも耳を惹く作品も多かったですし、なによりも、前半、中盤そして後半と、様々な作風が展開される構成は、最後まで飽きることなくアルバムを聴くことが出来る作品。単純なフロア志向ではなく、ミュージシャンとしての幅広い音楽性も感じられるアルバムになっていたと思います。
とはいえ、本作の特に前半に関しては高揚感あるリズムとサウンドが心地よく、ライブでも一度体験してみたいなぁ。基本的にフェスなどでの出演も多い彼らですが、単独ライブで全国をまわってくれないかなぁ。
評価:★★★★★
UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection
Barbara Barbara, we face a shining future
Teatime Dub Encounters(Underworld&Iggy Pop)
DRIFT Episode1 "DUST"
DRIFT Episode2 "ATOM"
DRIFT Episode3 "HEART"
DRIFT SERIES 1 - SAMPLER EDITION
ほかに聴いたアルバム
SUPERCHARGED/THE OFFSPRING
日本でも人気のアメリカのパンクロックバンド、オフスプリングの約3年半ぶりとなるニューアルバム。マイナーコード主体ながらも陽気でポップなパンクチューンの連続。正直、目新しさはほとんどなく、ある意味、いつも通りのオフスプ。紋切型的な楽曲が並ぶのはいつも通り。ただ一方で、その分、難しいこと抜きに、素直に楽しめるポップなアルバムになっていた点もいつも通りでした。
評価:★★★★
THE OFFSPRING 過去の作品
RISE AND FALL,RAGE AND GRACE
DAYS GO BY
Let The Bad Times Roll
In Session(Deluxe Edition)/ALBERT KING WITH STEVIE RAY VAUGHAN
ブルースギタリストのレジェンド、Albert Kingと、白人ブルースギタリストの代表的なミュージシャン、Stevie Ray Vaughanによる歴史的なセッションをおさめたアルバム。もともとは1983年12月にカナダでのテレビ番組用に収録されたライブ音源。1999年にCDリリースされた後、2010年にはDVD付で再リリース。さらに今回、いままでCD音源では未収録だった「Born Under a Bad Sign」、「Texas Flood」、「I'm Gonna Move to the Outskirts of Town」の3本を追加収録。リマスターを施されて完全版としてリリースされました。2人のレジェンドギタリストの共演ということで、その迫力あるパフォーマンスが楽しめるのですが、2人のギターのヒリヒリするようなやり取り・・・というよりは、大御所ギタリストと、そんな彼を慕う後輩ギタリストのプレイということで、和気あいあいとした、肩の力が抜けたようなプレイが魅力的です。ただ、CD音源未収録だった3曲に関しては、2010年リリースのDVDの方には収録済。また、2010年のバージョンは私も入手しているのですが、DVDで見た映像での2人の共演の方が魅力的だったので、こちらを再発してほしい感も。Amazonでは中古を含めて品切れ状態のようですし・・・。とはいえ、この音源自体は素晴らしい内容なので、↓の評価で。
評価:★★★★★
ALBERT KING WITH STEVIE RAY VAUGHAN 過去の作品
In Session
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