« 「ライブアルバム」というよりは・・・ | トップページ | 1位返り咲き »

2024年12月24日 (火)

中年Tylerの想いを綴った新作

Title:CHROMAKOPIA
Musician:Tyler, The Creator

Chromakopia

早いものでソロでは7枚目となるTyler,The Creatorのニューアルバム。今回のアルバムはいままでにない内省的なアルバムとして大きな話題を呼んでいます。まずなんといっても話題なのは、作中のナレーター役として、彼の母親、ボニータ・スミスを起用。アルバムの中でも母親らしい彼女の諭しの言葉が散りばめられているそうです。

Tyler,The Creatorといえば、20才の時にソロアルバム「Goblin」をリリース。その露悪的なイメージが良くも悪くも話題を呼びました。そんな彼ももう33歳。列記とした大人の男性となっています。特に今回のアルバムでは、中年の域を迎えての彼としての迷いが表現されているようで、母親の期待に応えられなかった自分と、一方で自分らしい人生を歩みたいという希望の間に悩む姿が描かれているそうです。

特に後半の「Take Your Mask Off」では「And I hope you find yourself/And I hope you take your mask off」(そしてお前が自分自身を見つけられることを望む/そしてお前がそのマスクをはずせることを望む)と、まさに中年を迎えて自分らしさとは何か、迷うような姿をストレートに描写した、内省的な歌詞も特徴となっています。

・・・ということを書いているのですが、もちろん、全英語詞。それもスラングなどを含んでわかりにくい歌詞の内容をそのまま理解できる訳もなく、アルバムの歌詞の内容については、雑誌やWebメディアの紹介記事のほぼ受け売りな訳ですが(苦笑)、ただ一方で、そんな歌詞の内容を理解できなくとも、今回のアルバムは純粋にリズミカルなラップとそのトラックを十分に楽しめる傑作に仕上がっていました。

特に全編、バラエティー富んだトラックが魅力的で、ゴスペル風なコーラスが入りつつ、一転、強いビートでダイナミズムに展開する「St.Chroma」からスタートし、メランコリックでちょっと不気味なトラックが魅力の「Rah Tah Tah」に、ギターサウンドが入ってダイナミックに聴かせる「Noid」と、様々なタイプの作品が続きます。

「Darling,I」では、シンセのメロウなトラックで、メランコリックな歌も。アコギと美しいハーモニーでメランコリックに聴かせるも、リズムにトライバルな要素が加わっているのがおもしろい「I Killed You」や、ボーカルパートがコミカルな「Sticky」などなど、最後までバラエティーに富んだトラックが並んでおり、耳が離せません。

そろそろ発表されている、2024年の各種メディアでの年間ベストアルバムでも軒並み上位にランクインしており、今年を代表する傑作と称されている本作。確かに非常に出来のよいアルバムで、その理由も納得が行きます。内省的な歌詞も話題ですし、その歌詞がストレートにわからない私たちにとっても、そのラップやトラックで十分すぎるほど楽しめる傑作アルバム。あらためて彼の実力を認識できた作品でした。

評価:★★★★★

TYLER,THE CREATOR 過去の作品
Goblin
Wolf
CHERRY BOMB
Flower Boy
IGOR
CALL ME IF YOU GET LOST


ほかに聴いたアルバム

SABLE,/Bon Iver

Sable

Bon Iverの実に約5年ぶりとなる新作は4曲入りのEP。さらに1曲目はわずか12秒のオープニング的な作品なので、3曲のみの事実上のシングルとも言っていい内容。ただ、その3曲については基本的にギターと歌のみのシンプルな作品になっているのですが、彼らしい狂おしいほど美しい音色と歌を聴かせてくれる珠玉のポップミュージックが並ぶ内容になっており、5年というインターバルの後でリリースされる作品としては非常に充実感の強い作品になっています。来るフルアルバムは、また年間ベストクラスの傑作になりそうです。

評価:★★★★★

Bon Iver 過去の作品
Bon Iver
iTunes Session
22,A Million
i,i

Patterns in Repeat/Laura Marling

当サイトで取り上げるのは今回が初めてですが、イギリスの最高音楽賞ブリッド・アワードの受賞経験があり、グラミー賞にもノミネートされたことのあるイギリスのシンガーソングライター。アコギをベースにストリングスやフルート、曲によってはエレピなどを取り入れつつも、基本的にシンプルなサウンドで暖かくフォーキーに聴かせる曲がメイン。メランコリックなメロディーラインに彼女の美しいボーカルで暖かく聴かせてくれる歌が特徴的。目新しさはないものの、暖かいポップが胸に響く作品で、高い評価も納得の、彼女の才能を感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

|

« 「ライブアルバム」というよりは・・・ | トップページ | 1位返り咲き »

アルバムレビュー(洋楽)2024年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「ライブアルバム」というよりは・・・ | トップページ | 1位返り咲き »