挑戦的でありつつ、懐かしさと暖かさも
Title:EELS
Musician:Being Dead
アメリカはテキサス州オースティンで活動する3人組インディーバンド、Being Deadの2枚目となるアルバム。デビュー作「When Horses Would Run」も一部で注目を集めたようですが、この2枚目となるアルバムは各種メディアでも高い評価を集め、注目のバンドとなっているようです。
楽曲は、オルタナ系のギターロックを主軸としつつ、同時にフォークソングの影響を受けているような楽曲で、オルタナ系ギターロックのドリーミーで、時としてダイナミックさを感じるサウンドに魅了されつつ、同時にフォークソングのなつかしさを同居している点が大きな特徴。また、ポップでキュートなメロディーラインは、オルタナ系ギターロックバンドとフォークソングの共通項とも言えるのでしょう。
実際、1曲目「Godzilla Rises」はまさにそんなギターロックのアレンジながらもメロディーラインはどこか懐かしさを感じさせるフォークロック風。続く「Van Goes」はむしろ80年代あたりのインディーギターロックを彷彿とさせる懐かしさを感じさせるポップなギターロックになっていますし、かと思えば「Nightvision」は、こちらはむしろ70年代的とすら感じさせる、懐かしいフォークロック風の楽曲に。
さらに「Love Machine」などは女性ボーカルで軽快なポップスとなっており、こちらはむしろネオアコ的な要素を感じさせる楽曲に。かと思えば「Gazing at Footwear」は不穏な雰囲気のノイジーなギターを前に押し出した作品となっており、リバーブをかけたボーカルも加わり、こちらはむしろサイケな作風となっています。
基本的にキュートでどこか懐かしさと暖かさを感じさせるポップなメロを軸に、バラエティー富んだ作風を聴かせる彼らですが、もうひとつ大きな魅力は、その歌を爽やかさを感じさせる男女のツインボーカルで歌われているという点。今回、詳細なバンドプロフィールは今一つわからなかったのですが、ジャケ写を見る限り、おそらく女性2人+男性1人というバンド編成のようですが、男女ボーカルを上手く組み合わせたボーカルスタイルが大きな魅力になっています。
例えば「Problems」では男女のボーカルのハモリが楽曲に暖かさを与えていますし、「Ballerina」は男女のやり取りがどこかコミカルさを感じさせる軽快でリズミカルなギターロックのナンバーとなっています。一方で「Big Bovine」では清涼感ある女性ボーカルで哀愁感漂う楽曲に仕上げていますし、全体的に非常に男女ボーカルの声質を上手く使い分けた楽曲が並んでいるように感じました。
フォークソングとオルタナ系の融合という意味では、同じようにカントリーとシューゲイザーの両方から影響を受けたWednesdayも思い起こされるのですが、アメリカではこの手のバンドが流行りつつあるのでしょうか。ただ、挑戦的な作風がありつつも、懐かしさと暖かさを同居されたメロディーやサウンドが非常に魅力的。今後、さらに注目を集めそうなインディーロックバンドの傑作です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Huey Lewis & The News
1985年に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌として起用された「The Power Of Love」が大ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしたアメリカのロックバンド、Huey Lewis&The News。日本でも人気を博した彼らの、本作は日本でのシングルを集めたおなじみのシリーズ。もちろん、前述の「The Power Of Love」も収録されています。彼らは現在でも活動を継続しているようですが、やはり基本的に人気を博していたのは80年代。そういうこともあって、楽曲は全体的にいかにも80年代なロックというイメージが。とにかくアップテンポで明るく、時としてシンセも加わったスタイル。徹底的に陽気さが前面に押し出されている作風は、社会全体が明るかったんだろうなぁ、ということを感じさせます。ポップな楽曲が素直に楽しいアルバムでした。
評価:★★★★
Electric Lady Studios:A Jimi Hendrix Vision/Jimi Hendrix
最近、権利関係が整理され、次々と新たな音源がリリースされているJimi Hendrix。今回は、彼の逝去直前の1970年6月から8月にかけて、エレクトリック・レディ・スタジオで収録された39曲が収録。うち38曲が未発表音源となっています。さらに、レコーディングスタジオ誕生を追ったドキュメンタリー「エレクトリック・レディ・スタジオ:ヴィジョン」がBlu-rayでついてくるという豪華なボックスセットになっています。ただ、未発表音源と言え、基本的には既発表曲のテイク違い。想像力あふれるジミのギタープレイはやはりカッコよく、魅力的とはいえ、デモ的な作品も多く、CDだけで3枚組というフルボリュームのアルバムは、やはりどちらかというとマニア向けといった感は否めません。熱心なファンなら、そのテイク違いを聴き比べて、曲の変化を楽しめそうですが・・・。
評価:★★★★
Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui
Los Angeles Forum - April 26, 1969(The Jimi Hendrix Experience)
Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl: August 18, 1967
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