「ライブアルバム」というよりは・・・
Title:Live O Rec
Musician:cero
今や日本のネオソウル/シティーポップを奏でるバンドとして、実力人気共に屈指のバンドとなったcero。昨年リリースしたオリジナルアルバム「e o 」も非常に高い評価を受けましたが、今回はそれに続くアルバムとして、彼ら初となるライブアルバムをリリースしました。主に昨年12月に恵比寿リキッドルームでのライブの音源を中心に収録した作品に。彼らは、ライブでそのアレンジを大きく変化させてくるバンドなだけあって、原曲とはまた異なる味わいのある、ライブ音源ならではのアレンジが楽しい作品となっています。
実際、冒頭を飾る「Nemesis」では、最初、ライブがはじまる高揚感をあらわすようなドリーミーでサイケなアレンジを組み込んでいますし、彼らの代表曲である「マイ・ロスト・シティー」では原曲以上にサイケなアレンジとなっており、ライブならではのトリップ感をより味わえるようなサウンドを聴かせてくれています。
もともとリズミカルでライブ向けともいえる「Elephant Ghost」では、パーカッションのリズムをより前に押し出して、踊りやすいアレンジになっているのはライブならでは、といった感じでしょうか。同じくトライバルなパーカッションでリズミカルな「魚の骨 鳥の羽根」は、比較的原曲と同じようなアレンジになっていますが、ボーカルといい演奏といい、ライブでの盛り上がりを感じさせるのは、ライブ盤ならでは、といった感じでしょうか。
またユニークなのが終盤の「outdoors」で、原曲と比べてアコースティックベースなシンプルなサウンドが特徴的なのですが、雨の音ではないかと思われる音がそのまま収録。本作は2020年の日比谷野音でのライブ音源が用いられているそうなので、その時の音がそのまま使われているのでしょうか。ボーカルの音もちょっとこもった感じなのも、おそらくわざとでしょう。結果、タイトル通りのアウトドアでのフィールドレコーディングでの録音のような、質感のあるアレンジとなっています。
さて、このライブアルバムがユニークなのは、ライブ音源をそのまま収録したアルバムではない、という点でしょう。彼らならではのミキシングも行われているほか、ホームレコーディングによるオーバーダビングなども行われており、ライブ音源をもとに、あらたなアレンジの作品を作り上げたアルバムとも言えるかもしれません。そのため、MCなどはもちろん、観客の歓声なども収録されておらず、ライブならではの臨場感は感じられません。ライブの臨場感を残す、というよりは、あくまでもライブアレンジの作品を記録する、という意味合いが強いライブアルバムと言えるかもしれません。
ただ、とはいってもライブアレンジで原曲の雰囲気がガラリと変わった作品はなく、基本的にライブ向けに、よりリズムの部分を強調したり、サイケさを増してドリーミーな要素を強めたりと、ライブならではのアレンジがほどこされていました。また、今回のライブアルバム、「e o 」リリース後のライブということもあって、同作からの作品が多い一方、彼らの代表曲も多く収録されており、そのため、ベスト盤的な楽しみ方もできる作品となっていました。
ライブの臨場感を収録したというよりも、ライブでのアレンジを記録に残した作品という意味では、ライブアルバムという以上にceroのリミックスアルバムといった感もある作品とも言えるかもしれません。そういう意味でもオリジナルアルバムと並んで、ceroの「新たな作品」としても楽しめるアルバム。彼らのライブでの臨場感は、やはりライブに参加してこそ、といった感じなのでしょうか。むか~し、一度だけイベントライブで彼らのステージを見たことはあるのですが・・・またライブに参加してみなくては・・・。
評価:★★★★★
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