賛否のあるロックバンド
Title:BOYS&GIRLS
Musician:ヤングスキニー
最近、特に若い世代を中心に話題になっている(らしい)人気上昇中のロックバンド、ヤングスキニー。本作に収録されている「ベランダ feat.戦慄かなの」がTikTokチャートで1位を獲得するなど、高い人気を確保しています。ただ一方で、かなり批判も多く受けているバンドで、ネット上で検索すると、かなり辛辣な評価も容易に見つけることが出来ます。ルックス面でアイドル的に人気を確保しているだけ、とか、ファンの女の子に手を出したとか、音楽的に直接関係ない評価もありますし、「恋愛の歌詞しか書かない」「歌詞が薄っぺらい」など、音楽性に具体的に言及した批判も少なくありません。どちらかというとネット上ではネガティブな評価が多くみられるようにも思います。
とはいえ、最近、人気上昇中のバンドであることは間違いなく、私も2枚目となるアルバムをチェックしました。ただ、このネガティブな評価で、いかにもひ弱なバンド、というイメージをもって聴くと、ちょっと意外に感じるかもしれません。イントロに続く事実上の1曲目「有線ラジオで僕の歌が流れていたらしい」は、力強くパンキッシュでノイジーなバンドサウンドが流れてきますし、「死ぬまでに俺がやりたいこと」もかなりパンキッシュなナンバー。「禁断症状」もかなり力強くパンキッシュな作品になっています。
特に中盤、TikTokでヒットを記録した「ベランダfeat.戦慄かなの」のようなメロウな女性ボーカルを入れたラブソングや、「愛すべき日々よ」のようなポップなギターロックなど、ひ弱な側面も感じる部分もあるのですが、ただアルバムとしては、この「ひ弱さ」もバリエーションのひとつとして受け止められるような構成で、全体としてはむしろバンドとしての骨太な部分も感じさせる、しっかりと「ロック」しているサウンドに仕上がっていたと思います。
ただ、じゃあ私がこのバンドを高く評価し、ネガティブな評価に関しては事実誤認と思っているか・・・というとそうでもありません。アイドル的とか、ファンに手を出した、とかの評価はわからないのですが、歌詞に関してのネガティブな評価は確かに納得できるという印象も受けてしまいました。
歌詞に関してかなりネガティブに感じてしまったのは、彼らの、というよりもボーカルのかやゆーの書く歌詞が、かなりいきっている一方、紋切り的で、視点に面白みがない、という点を強く感じたからです。例えば「死ぬまでに俺がやりたいこと」では、タイトル通り、死ぬまでにやりたいことを歌詞に羅列しているのですが、その「やりたいこと」が陳腐で面白味がなく、最後は「あの子を幸せにしたい」という、お決まりのオチ。
「禁断症状」にしても
「最近はなんだかうざってぇ社会になった
コンプラがどうとかうるせぇ社会になった」
(「禁断症状」より 作詞 かやゆー)
なんて、ネット上であまりにも頻発してそうな陳腐な表現に正直ちょっとうんざり。ロックについて歌った「精神ロック」や、女性に対して暴言気味の歌詞を書いている「不純愛ラブストーリー」など、歌詞のテーマについては悪くはないものの、いかにもいきったような歌詞なのに、視点が非常に平凡で、「どう、こんなこと歌えちゃう俺、すごいだろ?」みたいな部分がどうにも鼻につく、確かに歌詞については薄っぺらさを指摘されても否めない内容になっていたと思います。
ただ、とはいえこういう薄さもある種の「若さ」と言えなくもなく、若手バンドとして(生)暖かく見守っていっても悪くはないバンドではないか、とも一方では感じます。ボーカルのかやゆーは現在22歳。うーん、20代前半までかな、こんな歌詞が書いて許されるのは。そこらへん、今後、どううまく脱皮していくのかが注目されるところですが、ちゃんと「大人」のバンドになれるように期待しつつ。
評価:★★★★
ヤングスキニー 過去の作品
不器用な私だから
ほかに聴いたアルバム
REPSYCLE~hide 60th Anniversary Special Box~/hide
今でも高い人気を誇るX JAPANのギタリストであり、1998年に33歳という若さでこの世を去ったhideの、生誕60周年を記念してリリースされたボックスセット。彼が生前にリリースした3枚のソロアルバムの最新リマスターと、昨年開催されたhide with Spread Beaverのワンマンツアーの東京公演の模様を収めたBlu-rayが収録された内容となっています。彼の生前のソロアルバムを聴くのは、実は今回はじめてとなるのですが、あらためて感じるのはメタルからインダストリアル、さらにはオルタナ系ギターロックまで、幅広い彼の興味がわかると同時に、生前、いろいろな音楽を演りたかったんだな、ということを作品からは感じられます。その結果、若干、ごちゃごちゃしてしまっている部分も否めないのですが、そんなごちゃごちゃ感も含めて、今からするとhideの大きな魅力だったように感じます。あらためて、hideの才能を感じさせられるボックスセットでした。
評価:★★★★★
hide 過去の作品
子 ギャル
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2024年」カテゴリの記事
- 「アニソン」の歴史も感じる、充実の12枚組ボックスセット(2024.12.29)
- 沖縄独自の結婚式文化を楽しめるコンピレーション(2024.12.28)
- 「ライブアルバム」というよりは・・・(2024.12.23)
- ロック志向、ルーツ志向の強い35年目のアルバム(2024.12.20)
- オリジナルとは全く異なる魅力を感じる傑作(2024.12.17)
コメント