期待のガールズロックバンドの2作目
Title:No Obligation
Musician:The Linda Lindas
2022年にリリースしたデビューアルバム「Growing Up」が話題となり、同年にはサマソニにも出場。注目を集めたアメリカの4人組バンド、The Linda Lindas。メンバーは女性4人組で、最年長のギターボーカルのベラ・サルザールでもまだ20歳。最年少のドラムス、ミラ・デラガーザに至っては14歳という若さも話題となりましたが、日本人的に一番注目を集めたのはやはりこの「The Linda Lindas」という名前。この名前は2005年の日本映画「リンダ リンダ リンダ」に由来する名前。ちなみにこの映画のタイトルはもちろん、ブルーハーツの名曲「リンダリンダ」に由来しています。メンバーは全員、アジア系、ラテン系、またはアジア系とラテン系のハーフということで、日系かと思いきや、中国系ということで出自的には日本と関わりはないものの、ただ、やはり日本人的にもなじみを感じてしまいます。
一方、平均年齢が10代という女の子4人組バンド・・・ながらも、楽曲的にはかなりパワフルなパンクロックを聴かせてくれる点も大きな魅力。本作は1曲目「No Obligation」からいきなりタイトルチューンからスタートするのですが、しゃがれ声のボーカルで疾走感あるギターサウンドを聴かせてくれるハードコアパンクな楽曲からスタート。いきなりガツンとヘヴィーなナンバーからスタートとなります。
ただ、アルバム全体としてはヘヴィーな作風よりもむしろポップな楽曲が目立つ内容。続く「All In My Head」は、むしろアヴィリル・ラヴィーンあたりを彷彿とさせそうなギターポップな楽曲となっていますし、「Once Upon A Time」なども軽快でリズミカルなポップチューン。後半の「Don't Think」なども、むしろキュートさすら感じられるポップなメロが特徴的なギターロックのナンバーとなっています。
もちろん「Too Many Things」のような、メロディーこそポップながらもヘヴィーなギターサウンドを前に押し出したような作品や、同じくパンキッシュな「Resolution/Revolution」のような楽曲、さらには「Excuse me」でも、「No Obligation」同様、ちょっとデス声気味のがなり声でヘヴィーに聴かせる楽曲に。ポップな要素とヘヴィーな要素がほどよくバランスされた構成に仕上がっていました。
そしてもうひとつ印象的なのは、前述の通り、平均年齢10代というバンドであるにも関わらず、90年代あたりのインディーロックやパンクロックの影響が強く、ある種のなつかしさを覚える点でしょう。インタビュー記事などを読むと、影響を受けたバンドとしてヤー・ヤー・ヤーズやダム・ダム・ガールズなど2000年代以降のバンドを挙げており、単純にオールド志向といった感じでもないのですが、90年代のインディバンドから2000年代のバンドを通じて、その精神や音楽性が脈々と受け継がれている、といった感じなのでしょうか。
前作でも目新しさという面では物足りなさを感じました。今回のアルバムに関してはパンクロック以上にポップな歌を聴かせるような路線によりシフトした感はありますが、やはり目新しさという点ではちょっと不足気味。売上面ではまだブレイクには至っていないものの、そこらへんの物足りなさが影響しているのかもしれません。ただ、その点を差し引いても、まだまだ伸びしろのある彼女たち。今後に期待したいところ。次回作以降も要注目です。
評価:★★★★
The Linda Lindas 過去の作品
Growing Up
ほかに聴いたアルバム
City Lights/The WAEVE
ご存じblurのグラハム・コクソンとThe Pipettesのメローズ・エリナー・ドゥーガルによる2人組ユニット、The WAEVEの2枚目となるアルバム。アコースティックなサウンドを取り入れたカントリーテイストの作品もあるものの、基本的にはギターサウンド主導のメロディアスな作品がメイン。特に後半は分厚いサウンドでドリーミーに聴かせる曲も目立ちます。バラエティーに富んでいた前作に比べると、楽曲のバリエーションは限定的になったものの、その分、バンドとしての方向性は明確になった感じも。
評価:★★★★
The WAEVE 過去の作品
The Waeve
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