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2024年12月

2024年12月31日 (火)

2024年ベストアルバム(暫定版)

今年も早いもので年明けまで1時間を切りました。年内最後の更新は、例年通り、2024年ベストアルバム暫定版です。いつも通り、未聴のアルバムも多いので、正式版は2月最初の更新で。

邦楽編

まず上半期のベスト5です。

1位 Slash-&-Burn/Daoko
2位 呪文/折坂悠太
3位 ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン/マハラージャン
4位 らんど/ZAZEN BOYS
5位 ラヴの元型/AJICO

これに続く下半期のベスト盤候補は・・・

魔法学校/長谷川白紙
LOST CORNER/米津玄師
残心残暑/aiko
自然のコンピューター/OGRE YOU ASSHOLE
My Favorite Things/柴田聡子

・・・正直言って、かなりの不作気味です。パッと、今年の10枚が思いつかないくらいで、どうしちゃったんだろう、といった感じがします。正直なところ、折坂悠太もZAZEN BOYSもOGRE YOU ASSHOLEも十分年間ベストクラスの傑作とはいえ、自己最高傑作か、と言われると「前作の方がよかったかな・・・」と思ってしまいますし・・・。全体的に不作気味の今年の邦楽シーンでした。

洋楽編

こちらの上半期ベスト5は・・・

1位 Hovvdy/Hovvdy
2位 BLEACHERS/Bleachers
3位 Cowboy Carter/Beyonce
4位 What Now/Brittany Howard
5位 Liam Gallagher & John Squire/Liam Gallagher & John Squire

これに続く下半期のベスト盤候補は・・・

Sentir Que No Sabes/Mabe Fratti
Why Lawd?/NxWorriesNo Name/Jack White
Sky Hundred/Parannoullife till bones/Oso Oso
Cutouts/The Smile
EELS/Beeing Dead
CHROMAKOPIA/Tyler, The Creator

こちらも正直、かなり不作気味のラインナップで、邦楽と同様、ベスト10と言われてパッと思い当たらなそうな内容・・・。今年は全体的にどうしちゃったんだろう、というほど、音楽シーン全体に不作気味を感じてしまいました。

ちなみに主要メディアの年間ベストを集計してランキング形式でまとめたのがこちらのサイト

https://www.albumoftheyear.org/list/summary/2024/

上位のアルバムはほぼ聴いているのですが、正直、若干、「これってそんなによかったっけ?」というアルバムもチラホラ・・・。

来年こそは多くの傑作アルバムに出会えますように!それでは、みなさまよいお年を!!

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2024年12月30日 (月)

2024年ライブまとめ

今年も残すところ今日を含めてあと2日。恒例の2024年のライブまとめです。

1/26(金) キセル ワンマンツアー2024「春隣」(名古屋JAMMIN')
2/5(月) ヤバイTシャツ屋さん “BEST of the Tank-top” 47都道府県TOUR 2023-2024(Zepp Nagoya)
2/13(火) QUEEN+ADAM LAMBERT THE RHAPSODY TOUR(東京ドーム)
3/29(金) BABY Q 名古屋場所(名古屋市公会堂)
4/2(火) フラワーカンパニーズ 中日ホール オープニングイベント【竜の叫びを耳にした】(中日ホール)
4/26(金) TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days 〜YONMARU〜(大阪城ホール)
5/31(金) MOROHA VS 芸人ツアー 無敵のダブルスツアー2024(名古屋ReNY Limited)
6/12(水) 岡村和義 LIVE TOUR 2024 "OKAZ TIME"(Zepp Nagoya)
7/19(金) HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024(Aichi Sky Expo)
8/2(金) NAGOYA SOUND PRESS SHOW 2024(名古屋ReNY limited)
8/29(木) ZAZEN BOYS×七尾旅人(BAND SET) NAGOYA CLUB QUATTRO 35th Anniversary "rendezvous"(名古屋CLUB QUATTRO)
9/19(木) PARLIAMENT FUNKADELIC Feat.GEORGE CLINTON LIVE IN JAPAN 2024(ダイアモンドホール)
10/17(木) レキシツアー2024 秋~稲穂をまだ振ってる途中でしょうが~(Zepp Nagoya)
11/1(金) 爆風スランプ~IKIGAI~デビュー40周年日中友好LIVE "あなたのIKIGAIナンデスカ?"(エレクトリック・レディ・ランド)
11/15(金) 新しい学校のリーダーズ a.k.a ATARASHII GAKKO! NIPPON Calling Tour 2024(Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)ホールA)
12/4(木) リーガルリリー cell,core 2024(名古屋CLUB QUATTRO)

全16本。ついにコロナ禍の産物であったオンラインライブは今年はありませんでした。そして今年のベスト3は・・・

3位 爆風スランプ@爆風スランプ~IKIGAI~デビュー40周年日中友好LIVE "あなたのIKIGAIナンデスカ?"

実に26年ぶりの復活ライブツアー。ヒット曲満載のステージで、正直、思い出補正もかなり入っている部分はあるのですが、一方、ロックバンドとしての実力も感じさせつつ、ライブの盛り上げ方についても、やはり一流のエンタテイナーの格の違いも感じさせてくれました。懐かしさを感じさせつつ、十分、現役のロックバンドとしての実力も感じさせてくれたステージでした。

2位 宇多田ヒカル@HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024

念願の初の宇多田ヒカルライブ。ベスト盤リリース後のステージということもあって、過去の曲から代表曲を発表順に披露してくれましたが、その選曲ももちろん、なんといってもその歌唱力の素晴らしさに聴き惚れたステージ。歌唱力はもちろん、そこに年齢を経た表現力も加わり、圧巻のパフォーマンスを見せてくれました。

1位 ZAZEN BOYS@ZAZEN BOYS×七尾旅人(BAND SET) NAGOYA CLUB QUATTRO 35th Anniversary "rendezvous"

ZAZEN BOYSとしてはちょっと久しぶり。特にMIYA加入後は初となるステージだったのですが、バンドとしてのさらなる進化を感じさせるステージになっていました。特にMIYAのベースプレイも素晴らしく、向井秀徳のワンマンバンドというイメージだったZAZEN BOYSでしたが、バンドメンバーそれぞれの進化により、バンドとして、メンバー全員が対等の立場になってきた、向井秀徳のワンマンバンドから大きく進歩を遂げた、そう感じさせるライブでした。

今年は他にもキセル、TM NETWORK、レキシ、新しい学校のリーダーズなど、素晴らしいライブパフォーマンスに多く出会えた1年でした。また、来年も多くの素晴らしいステージに出会えますように!

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2024年12月29日 (日)

「アニソン」の歴史も感じる、充実の12枚組ボックスセット

Title:藤子・F・不二雄生誕90周年記念 藤子・F・不二雄 MUSIC HISTORY

今年は藤子・F・不二雄こと藤本弘先生の生誕90周年にあたる年。それを記念し、様々な企画が行われていましたが、本作は企画の中のひとつで、藤子・F・不二雄作品のアニメやドラマ主題歌・挿入歌などが収録されているCDボックス。以前も同様の企画が行われたことがありましたが、本作では、収録内容はかなり徹底されており、ドラえもんやパーマン、キテレツ大百科などおなじみのアニメはもちろんのこと、2002年に放映されたドラマの「エスパー魔美」の主題歌や、今年放映されたNetflixアニメ「T・Pぼん」、個人的にはかなり懐かしいテレビ番組「藤子不二雄ワイド」の主題歌まで収録。全12枚組という、フルボリュームな内容に、ギッシリと藤子Fアニメ(ドラマ)の主題歌が収録されており、先生の作品が何度もアニメ化(ドラマ化)されて、多くの人に親しまれてきたんだなぁ、ということをあらためて感じます。

ただ、それだけ徹底された収録内容ながらも、いくつか未収録になっている曲もあり、まずは1973年に日本テレビで放映された「ドラえもん」の曲は未収録。藤本先生も内容については否定的だったようですから、こちらは完全に「なかったこと」になっているんだろうなぁ、ということも感じます。また、キテレツ大百科のエンディングだったTOKIOの「うわさのキッス」も未収録。これは(旧)ジャニーズが許可を出さなかったのか、とも思うのですが、一方、Kis-My-Ft2「光のシグナル」や忍者の「おーい!車屋さん」が収録されているので、そういう訳ではないのでしょう。やはり山口達也の件が関連しているのか・・・?また、ちょっと謎なところでは、2017年に放映されたドラマ「スーパーサラリーマン左江内氏」の主題歌、三代目J Soul Brothersの「HAPPY」も未収録。こちらはドラマもアンタッチャブルな存在じゃないはずなので・・・ただ、LDHが許諾しなかったのでしょうか。

さて、この膨大な主題歌集、リアルタイムに聴いていなかっただけに、あまり詳しく知らない曲もあれば、逆に小学生のころ、毎週心待ちにしてみていた番組の主題歌もあったりするので、非常に懐かしい思いをしながら聴いた曲もあったりと、かなりボリュームのある内容でしたが、子供のころに帰ったように楽しめた内容でした。そしてこの主題歌集を聴いて感じたのは、特に90年代以前、アニメソングがいまのように「売れ筋のミュージシャン」が歌う訳ではなく、あくまでもキッズソングとして扱われていた時代の曲に、特徴的なものをふたつ感じました。

まずはあまり「売れる」ことを意識していないキッズソングだから、ということもあって、逆にユニークでちょっと挑戦的にすら感じさせる曲が少なくないこと。特に「キテレツ大百科」関連の曲に特徴的で、いまやJ-POPのスタンダードナンバーともなっている「はじめてのチュウ」などが典型的。他にも「すいみん不足」など、かなりユニークな曲が目立ち、あまり売れることを意識しなくてもよかったからこその曲というのが、今となっては面白さを感じます。

あと、多いのが、いわゆるこれから売っていこうというアイドルの曲も目立つという点。こちらも当時のアニメソングは今の様なタイアップ効果があまり期待されなかった反面、アニメのヒットによっては、「誰もが知っている曲」に大化けする可能性もあったことから、売り出していこうというアイドルのタイアップにピッタリだったのかもしれません。それこそキテレツ大百科では、後にX JAPANのToshiの奥さんとなり、洗脳騒動の黒幕となってしまった元アイドルの守谷香が曲を歌っているほか、21えもんの忍者や、ひょっとしたら谷村有美あたりもこの並びと言えるかもしれません。

また、このアニメソングの取り扱いという意味で興味深く感じたのが、ドラえもん映画の主題歌のラインアップ。これがまさに、80年代から今に至るまで、アニメソングがどのような捉えられ方をしたか、というのがよくわかるような曲となっており、初期の作品は、ドラえもん(大山のぶ代)本人が歌っていたり、正直、あまり曲が売れることを意識していないような曲が並びます。これが90年代あたりは完全に迷走しており、いわゆる「芸能人」が主題歌を歌うことになっているのですが、「なんでこんな人が選ばれたのか?」というのが不思議なようなラインアップ。アニメソングの主題歌がJ-POPとして売れ始めた時期ではあるものの、まだ今よりも軽視されていた(特にドラえもんのような子供向けのアニメについて)傾向がうかがえるようなラインナップとなっています。

これが2000年代以降、特に声優陣が変更になってからは様変わり。今を時めくようなミュージシャンたちが主題歌を歌うようになり、最近でも星野源やミスチル、ヒゲダンにVaundyなどといった大物が参加。本作では未収録ながらも、来年の映画の主題歌はあいみょんですから、すっかりドラえもん映画の主題歌も様変わりしました。特にこれらの作品が収録されているDisc12については、アニメ主題歌集というよりは、最新のJ-POPのオムニバスとして楽しめるような内容になっていました。

ただ・・・正直、ドラえもん映画主題歌、やはり好きなのは、自分がリアルタイムで見ていたということもあるのですが、最初期のナンバーなんですけどね。「少年期」「ポケットの中に」「友達だから」とか、本当に名曲揃いなんですよね。

そんな懐かしさを感じつつ、アニメソングの立ち位置の変化も感じさせつつ、それを含めて、藤子Fアニメの歴史も感じさせるオムニバスアルバムでした。個人的には、藤子アニメというと、当然、藤本先生の作品のみならず、藤子Aこと安孫子素雄先生の作品も、同じ「藤子不二雄作品」として楽しんでいただけに、本当は、安孫子先生の作品、忍者ハットリくんや怪物くんなどの主題歌も合わせたボックスセットを希望したいのですが・・・それは、今では無理は話なのでしょうが・・・。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

BOYS and/SOPHIA

2022年、9年ぶりに活動を再開したSOPHIA。昨年、10年ぶりの新曲がリリースされましたが、デビュー30周年を迎えた今年は、「もう一度デビューする」をテーマに、彼らのデビュー作「BOYS」のオマージュ作をリリース。「BOYS」収録曲中心のセルフカバーに新曲2曲を加えた構成になっています。基本的に、シンセにバンドサウンドを加えたサウンドを軸に、メランコリックでポップなメロが特徴的。30年前の曲ながらも、しっかりしたメロディーラインを書いているだけに、30年後のセルフカバーにもしっかり耐えられる楽曲となっています。その聴かせるメロはさすが。今後の本格的な活動再開と久々のフルアルバムにも期待したいところです。

評価:★★★★

SOPHIA 過去の作品
2007
BAND AGE
15
ALL SINGLES 「A」
ALL-B SIDE 「B」

未来大人宣言
20th ANNIVERSARY BESTI YOUNG <1995-2000>
20th ANNIVERSARY BESTII YOUNG ADULT <2001-2007>
20th ANNIVERSARY BESTIII ADULT <2008-2013>

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2024年12月28日 (土)

沖縄独自の結婚式文化を楽しめるコンピレーション

Title:沖縄ニービチソング決定盤

今回紹介するのは、沖縄民謡のコンピレーションアルバム。ここで「ニービチ」とは沖縄の言葉で結婚のことで、タイトル通り、沖縄の結婚式で歌われる曲を集めたコンピレーションアルバムとなります。公式サイトで詳しい説明があるのですが、沖縄の結婚式というのはかなり特徴的だそうで、参加人数は100名を超えるのが普通。余興も絶え間なく行われるそうで、まさに親類縁者一同を集めてのお祭り騒ぎ、といった感じなのでしょう。

基本的には楽曲は似たようなタイプの曲が多く、演奏は三絃がまず入り、そこに笛や太鼓が加わるパターン。男性ボーカルか女性ボーカルの曲にわかれるのですが、こちらもはもりはなく、ユニゾンのみ。音を重ねて美しく聴かせるという演奏スタイルがメインとなっていました。

また、沖縄民謡というと、軽快で明るく踊れる曲というイメージもあり、特に結婚式の曲というと、そういうタイプの曲をイメージできそうですが、ただ、本作を聴き始めると、最初の方はむしろゆっくりと歌い上げるようなタイプの曲が並びます。アルバムの冒頭を飾るのは「かぎやで風節」は、披露宴の開会のサインで、この曲がないと披露宴ははじまらない、と言われるような曲だそうですが、男性のユニゾンの歌でゆっくりと歌い上げるタイプの曲となっています。

ただ、ゆっくりと歌い上げるようなタイプの曲がメインとはいえ、結婚式で歌われる歌ということで、当たり前ですが全体的に明るさが漂う祝祭色を感じさせる曲ばかり。歌詞は琉球弁に、こぶしをたっぷり利かせた歌い方をするのでほとんど聴き取れないのですが、中盤の八重山民謡「目出度節」ではタイトル通り「めでたい~」とストレートに歌われる歌詞もあったりして。結婚式らしさを感じます。

一方後半は、太鼓のリズムが軽やかに、語弊を恐れずに言ってしまうと、実に沖縄民謡らしいと感じさせるようなリズミカルな楽曲が並びます。特に「根引ち音頭」は軽快でリズミカルな太鼓の音色に、男女というスタイル、「めでたい」と歌われる歌詞もあって、比較的わかりやすい祝祭色豊かな楽曲。最後を締めくくる「唐船どーい」は披露宴の締めくくりで必ず歌われるそうですが、フィナーレを飾るにふさわしい軽快なナンバーになっており、沖縄の披露宴の楽しさも伝わってきます。

そんな訳で、独特な文化をもった沖縄の結婚式・披露宴の模様を肌で感じられるようなアルバムで、沖縄音楽に興味があるのならばうってつけの1枚だと思います。ただ、ひとつ疑問に思ったのは、上記の公式サイトでは「現在でも歌われている」と書かれているのですが、本当でしょうか?例えば、本土でも結婚式といえば「高砂の謡」が有名で「欠かせない」と紹介されているケースも少なくありませんが、正直、現在、結婚式で歌われることはほとんどないような・・・。その点だけはちょっと気になってしまいました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Ordinary Road/ストレイテナー

途中、ミニアルバムやベスト盤を挟みつつ、オリジナルフルアルバムとしては約3年10カ月ぶり、久々となるストレイテナーの新作。ただ、楽曲の方向性としては、オリジナルフルアルバムとしての前作「Applause」と同じ方向性。ギターロックという路線はもちろん変わらないものの、作風としてはかなりポップ寄りに。メロはそれなりにインパクトもあり、素直なギターロックは聴いていて楽しい一方、やはりゴリゴリの洋楽テイストの強いロック路線の曲もそろそろ聴きたいかも。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack
BEST of U -side DAY-
BEST of U -side NIGHT-
Black Map
Applause
Crank Up
フォーピース

25th anniv. re-edit best + SOULS 2024/bird

今年、デビュー25周年を迎えたbirdによるベスト盤。「re-edit」というタイトルからもわかるように、全曲、ショートバージョンに再編集した作品。また「SOULS 2024」として彼女のデビュー作であり、ヒット曲である「SOULS」のリメイク作も収録しています。ただ、ショートバージョンといっても全曲3、4分程度の長さとなっており、よくありがちなDJ Mixにような一部だけピックアップする形ではありません。基本的にリズミカルでメロウなソウルやジャズの要素を入れつつ、オーガニックな雰囲気を感じさせるポップが魅力。ただ一方、ショート版とはいえ、全21曲1時間17分に及ぶフルボリューム。正直、似たタイプの曲が多く、最初の方は魅力的な曲に惹かれていたのですが、後半、徐々に飽きてきた感はいなめません。ショートバージョンでフルボリュームのベスト盤にするよりも、もうちょっと曲数を絞った方がよかったような・・・。

評価:★★★★

bird 過去の作品
BIRDSONG EP
MY LOVE
NEW BASIC
9
lush
波形
bird 20th Anniversary Best

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2024年12月27日 (金)

最後のライブ映像

今回は最近見た、音楽関連の映像作品の紹介です。

昨年11月、癌のため61歳という若さでこの世を去ったシンガーソングライターのKAN。このサイトでも何度か取り上げていた通り、個人的にも大好きなミュージシャンだっただけに、かなりショックを受けた出来事でした。それから1年、ここに来て彼を偲ぶ様々なアイテムがリリースされています。今回紹介する映像作品もそのひとつ。「KAN BAND LIVE TOUR 2022 25歳」。結果として彼の最期のライブツアーとなってしまった同タイトルのツアーから、2023年1月10日にZepp DiverCity Tokyoで行われたライブの模様をほぼ完全収録しています。

ちなみにこのライブツアーの名古屋公演、私も参加しました。その時のライブレポートはこちら基本的に作りこまれたステージだけに、この映像作品の内容についても、ほぼ、この時のライブレポートとほとんど変わりません。まさか、この時はこれがKANを見た最後のステージとなるとは、思いもよりませんでした・・・。アルバム「23歳」からのツアーなのですが、一方では彼の過去のアルバムから1つのアルバムから1曲ずつ選曲していた構成になっており、全体的には「23歳」からの曲も少な目で、ベスト盤のような構成の内容となっていました。「今夜はかえさないよ」の元曲「もしもし木村です」も無事(?)音源がこのような形で収録。ある意味、ラストとしてこういう構成のステージになったのは、結果としてよかったのかもしれません。

ただ、映像作品として、アンコール後のおなじみの「全曲つなぎ」の中で、途中からAdoの「うっせえわ」の替え歌が組み込まれているのですが、この「うっせえわ」の部分が完全に「P音」となっており、消されていました。ある意味、全曲つなぎの一番の肝とも言える部分なだけに、これはかなり残念・・・。許諾が下りなかったということでしょうか。ある意味、このライブの中で一番笑える部分であるだけに、非常に残念に感じました。

そして、この映像作品で一番重要な部分は、なんといっても副音声でしょう。この作品の副音声にはKANにゆかりのある人たちの、KANに対するメッセージが詰め込まれています。参加しているのはかなり豪華で、TRICERATOPSからスタートし、ASKAやスキマスイッチ、スタレビや秦基博、さらにはaikoも参加。ミスチル桜井が参加していないのはちょっと残念なのですが、非常に豪華なメンバーが参加している点、KANが様々なミュージシャンに影響を与えていたことを感じさせます。また、他にもバンドメンバーなど、過去に一緒に仕事をしたようなメンバーから、よほどのファンではないと知らないようなメンバーまで登場。KANへの想いを聴かせてくれます。

どの人もKANへの愛情をこもったコメントを残しているのですが、多くの人が語っているのがKANの人柄。非常に人見知りで、最初はあまり話をしなかった、という点はみんな共通。ただ、一方で非常に気を使ってくれる優しい性格だったという点や、音楽や人を楽しませることにたいするこだわりが半端なかったという点も共通しており、KANがどういう人だったのかが伝わってきます。彼にまつわるユニークなエピソードもいろいろと登場しており、この点も非常に興味深く聴くことが出来ました。

そんな中で印象的だったのが、ラスト近くのaikoのコメント。aikoが昔からの大のKANのファンというのは有名な話なのですが、このコメントを聴くと、彼女は本当に本当に、KANのことが好きだったんだな・・・ということを強く感じます。また、ラストのラストは、彼の幼馴染からのメッセージを、(名前からするとおそらく)KANの奥さんが代読しているのんですが、こちらもまた泣けるメッセージとなっています。

ちなみにこの副音声、本編のライブ映像とはほとんどリンクしていません。まあ、これは仕方ないことですが・・・。また、メッセージには海外の方も参加しており、現地の言葉でメッセージを残しています。英語ですらないため、そのため、メッセージの内容は全くわかりません。これについては、邦訳も載せてほしかったなぁ。また、結構知る人ぞ知る的な方も多いため、正直、どのような方なのかも、紹介してほしかったかも。その点は残念でした。

ただ、たくさんの方がこのような形でメッセージを残しており、いかにKANが多くの方に慕われていたのか、ということをあらためて強く感じます。そしてあらためてあまりにも早く彼が逝ってしまったことを残念に感じました。ライブ本編はもちろん、副音声を通じても、KANというミュージシャンの魅力を、これでもかというほど感じることが出来る作品でした。

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2024年12月26日 (木)

Hot Albumsに新指標が追加

ビルボード・ジャパン、12/26より“Hot Albums”チャートの算出方法を変更

https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/143983/2

結構、大きなニュースだと思うのですが、いままでCDの実売数とダウンロード数のみの集計だったHot Albumsにストリーミング数が加わるそうです。いまや音楽の聴き方としてはおそらくもっとも大きな割合を占めるようになった「ストリーミング」という方法ですが、これをチャートに反映させていないHot Albumsについては、以前からかなり疑問に感じる部分がありました。結果、完全に「アイドルグッズ」と化したようなアイドル系のアルバムが上位に並んでおり、ヒットの実態に合っていないようには以前から感じていました。

「ストリーミング」の追加が今後、Hot Albumsにどの程度影響があるかは不明ですが、以前ほどCD売上がヒットに反映されなくなると、特にアイドルビジネスについては、CD販売以外の方法でのマネタイズを重視するようになる可能性もあり、今後のビジネスモデルに影響も与える可能性もあります。今後の動向に注目したいところでしょう。

・・・ということを書いておいて公表された今週のHot Albumsを見て、正直ビックリしました。ベスト10ほぼすべて入れ替わり。いままでとチャートの雰囲気がガラリと変わっています。

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず1位は&TEAM「雪明かり(Yukiakari)」が獲得。韓国の芸能事務所HYBEの日本支社HYBE LABELS JAPAN所属の日本人を中心に、韓国人、台湾人も所属する男性アイドルグループの2枚目となるアルバム。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上33万4千枚で1位初登場。前作「First Howling:NOW」の初動9万9千枚(2位)からアップしています。

・・・と、1位はいつものようにアイドル系だったのですが、2位はストリーミング数で1位、ダウンロード数13位のMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が先週の27位から大きくアップし、今年の1月24日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算14週目のベスト10ヒット&通算4週目のベスト3ヒットとなりました。Mrs.GREEN APPLEは2019年にリリースした前作「Attitude」も76位から5位にランクアップ。2019年10月9日付チャート以来のベスト10返り咲きとなっています。

3位はAPT.が大ヒット中のロゼ「ロージー」が先週の16位から3位にランクアップし、こちらは2週ぶりにベスト10返り咲き。ダウンロード数9位、ストリーミング数2位となっています。

次に4位以下の初登場盤ですが、今週、初登場盤は1枚のみ。8位に韓国の男性愛泥グループStray Kids「合(HOP)」が8位にランクイン。ダウンロード数6位、ストリーミング数7位にランクインしています。また、9位に2011年にリリースされたback number「スーパースター」が、先週の100位圏外からランクアップしベスト10入りしていますが、同作のリリース時はビルボード開始前のため、今回がベスト10初登場となります。back numberはさらに2015年にリリースした「シャンデリア」もベスト100圏外から10位にランクイン。こちらは2016年2月17日付チャート以来のベスト10返り咲き。通算9週目のベスト10ヒットとなります。「シャンデリア」は「クリスマス・ソング」が含まれているためのランクインでしょうが、直近作「ユーモア」がランクインせず(といっても17位にランクイン)、旧作が上位に来るあたりはちょっと複雑なものを感じます。

その他は今週、全てベスト10圏外からの返り咲き。まず4位にTOBE所属の男性アイドルグループNumber_i「No.I」が先週の100位からランクアップ。ストリーミング数3位。こちらは2週ぶりのベスト10返り咲き。さらにVaundyは、2020年にリリースした前作「Strobo」がベスト100圏外から6位に、直近作「replica」が78位から7位にランクアップ。「Strobo」は2020年6月3日付チャート以来、「replica」は今年1月24日付チャート以来のベスト10返り咲き。

そんな訳でガラリと変わった今週のHot Albums。おそらく先週ならベスト3にはランクインしたと思われるCD販売数2位のSF9「D.W.B.H」は89位にランクインするのがやっと。ある意味、タイミングが悪く不運な感もありますが。オリコンでもダウンロード数やストリーミング数を加味した合算チャートを公表していますが、ここまでの差はないので、正直驚くと同時に、若干、これはこれでHot100でも若干感じるところではあるのですが、ストリーミング再生数の比率が高すぎないか?という印象も受けます。ただ、これでアイドル系は、CDでよほど突出した売上を上げない限り、チャート上位に入ってこれなくなるため、いままでHot Albums上位狙いだったアイドルビジネスは戦略の変更を余儀なくされそう。かなり大きなインパクトがありそうな今週のHot Albums。ただ一方、同じアルバムが、何十週もランクをキープしてチャートが停滞する可能性もあり、その点、もうちょっとバランスを取ってほしい感もあるのですが。とりあえず、今後の動向にも注目です。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、柊マグネタイト「テトリス」が2週連続で1位獲得。動画再生回数は4位にアップ。Hot100では71位から55位にランクアップ。今後のさらなるヒットも期待できそうです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートは柊マグネタイト「テトリス」が7週連続で1位を獲得。今週もHeatseekersとの2冠となりました。また2位にはDECO*27「モニタリング」は3位から再度ランクアップしています。「テトリス」の快進撃が続くのか、DECO*27の1位獲得があるか、それとも・・・来週以降の動向も注目です。

本年のヒットチャート更新はこれが最後となります。次週の更新は、来年1月8日に2週同時更新ということなので、おそらく1月8日から4日連続のチャート評の更新となりそう。また、来年も心に残るヒット曲がたくさん出てきますように!

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2024年12月25日 (水)

1位返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、見事1位返り咲きを果たしました。

Apt

今週ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」が3週ぶりに見事1位返り咲き。これで9週連続のベスト10ヒット&8週連続のベスト3ヒット&通算4週目の1位獲得となっています。ストリーミング数は7週連続の1位、ダウンロード数も2位から1位にアップし、初の1位獲得。ただし、動画再生回数だけは1位から2位にダウンしています。

そして2位にはMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の4位から2位にランクアップ。実に8週ぶりのベスト3返り咲きを果たしています。ストリーミング数2位、動画再生回数3位は先週から変わらず。また今週ダウンロード数が12位から6位に大幅アップ。これで36週連続のベスト10ヒット&通算22週目のベスト3ヒットとなりました。また「ビターバカンス」も先週の5位から同順位をキープ。今週も2週同時ランクインとなっています。

3位はAqours「永久hours」が初登場でランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外。メディアミックス作品「ラブライブ!」に登場する架空のアイドルグループから派生した声優アイドルグループ。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万1千枚で1位初登場。前作「BANZAI! digital trippers」の初動2万5千枚(3位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週、初登場はあと1曲のみ。9位にTOBE所属の男性アイドルグループIMP.「BAM-BOO」がランクイン。CD販売数2位、その他はランク圏外。ちなみに公式通販サイト限定リリースのため、オリコンでは集計対象外となっています。

そして先週、ベスト10入りしてきたback number「クリスマスソング」は今週7位から6位にアップ。これで通算15週目のベスト10ヒットに。以下マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」が30位から19位、桑田佳祐「白い恋人達」が48位から32位、山下達郎「クリスマス・イブ」が47位から39位にそれぞれランクアップしています。ここらへんのクリスマスソングは来週、さらなるランクアップが予想されます。

さらにベスト10返り咲きが1曲。こっちのけんと「はいよろこんで」が先週の11位から10位にランクアップ。通算19週目のベスト10ヒットとなりました。ストリーミング数は14位から15位にダウンしていますが、ダウンロード数は11位から5位、動画再生回数も14位から9位にアップしています。

ほかのロングヒット曲は、まずCreepy Nuts「オトノケ」は今週6位から4位にアップ。ストリーミング数は先週から変わらず3位。一方、こちらもダウンロード数が5位から2位に、動画再生回数も7位から5位にアップ。これで11週連続のベスト10ヒット。また「Bling-Bang-Bang-Born」も9位から7位にアップ。こちらもストリーミング数が7位から8位にダウンしたものの、ダウンロード数がランク圏外から11位に、動画再生回数も9位から8位にアップ。通算46週目のベスト10ヒットとなっています。

そしてAKASAKI「Bunny Girl」は先週から変わらず8位をキープ。ストリーミング数は5位から6位にダウン。一方、ダウンロード数は16位から13位、動画再生回数も8位から7位にアップ。これで10週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2024年12月24日 (火)

中年Tylerの想いを綴った新作

Title:CHROMAKOPIA
Musician:Tyler, The Creator

Chromakopia

早いものでソロでは7枚目となるTyler,The Creatorのニューアルバム。今回のアルバムはいままでにない内省的なアルバムとして大きな話題を呼んでいます。まずなんといっても話題なのは、作中のナレーター役として、彼の母親、ボニータ・スミスを起用。アルバムの中でも母親らしい彼女の諭しの言葉が散りばめられているそうです。

Tyler,The Creatorといえば、20才の時にソロアルバム「Goblin」をリリース。その露悪的なイメージが良くも悪くも話題を呼びました。そんな彼ももう33歳。列記とした大人の男性となっています。特に今回のアルバムでは、中年の域を迎えての彼としての迷いが表現されているようで、母親の期待に応えられなかった自分と、一方で自分らしい人生を歩みたいという希望の間に悩む姿が描かれているそうです。

特に後半の「Take Your Mask Off」では「And I hope you find yourself/And I hope you take your mask off」(そしてお前が自分自身を見つけられることを望む/そしてお前がそのマスクをはずせることを望む)と、まさに中年を迎えて自分らしさとは何か、迷うような姿をストレートに描写した、内省的な歌詞も特徴となっています。

・・・ということを書いているのですが、もちろん、全英語詞。それもスラングなどを含んでわかりにくい歌詞の内容をそのまま理解できる訳もなく、アルバムの歌詞の内容については、雑誌やWebメディアの紹介記事のほぼ受け売りな訳ですが(苦笑)、ただ一方で、そんな歌詞の内容を理解できなくとも、今回のアルバムは純粋にリズミカルなラップとそのトラックを十分に楽しめる傑作に仕上がっていました。

特に全編、バラエティー富んだトラックが魅力的で、ゴスペル風なコーラスが入りつつ、一転、強いビートでダイナミズムに展開する「St.Chroma」からスタートし、メランコリックでちょっと不気味なトラックが魅力の「Rah Tah Tah」に、ギターサウンドが入ってダイナミックに聴かせる「Noid」と、様々なタイプの作品が続きます。

「Darling,I」では、シンセのメロウなトラックで、メランコリックな歌も。アコギと美しいハーモニーでメランコリックに聴かせるも、リズムにトライバルな要素が加わっているのがおもしろい「I Killed You」や、ボーカルパートがコミカルな「Sticky」などなど、最後までバラエティーに富んだトラックが並んでおり、耳が離せません。

そろそろ発表されている、2024年の各種メディアでの年間ベストアルバムでも軒並み上位にランクインしており、今年を代表する傑作と称されている本作。確かに非常に出来のよいアルバムで、その理由も納得が行きます。内省的な歌詞も話題ですし、その歌詞がストレートにわからない私たちにとっても、そのラップやトラックで十分すぎるほど楽しめる傑作アルバム。あらためて彼の実力を認識できた作品でした。

評価:★★★★★

TYLER,THE CREATOR 過去の作品
Goblin
Wolf
CHERRY BOMB
Flower Boy
IGOR
CALL ME IF YOU GET LOST


ほかに聴いたアルバム

SABLE,/Bon Iver

Sable

Bon Iverの実に約5年ぶりとなる新作は4曲入りのEP。さらに1曲目はわずか12秒のオープニング的な作品なので、3曲のみの事実上のシングルとも言っていい内容。ただ、その3曲については基本的にギターと歌のみのシンプルな作品になっているのですが、彼らしい狂おしいほど美しい音色と歌を聴かせてくれる珠玉のポップミュージックが並ぶ内容になっており、5年というインターバルの後でリリースされる作品としては非常に充実感の強い作品になっています。来るフルアルバムは、また年間ベストクラスの傑作になりそうです。

評価:★★★★★

Bon Iver 過去の作品
Bon Iver
iTunes Session
22,A Million
i,i

Patterns in Repeat/Laura Marling

当サイトで取り上げるのは今回が初めてですが、イギリスの最高音楽賞ブリッド・アワードの受賞経験があり、グラミー賞にもノミネートされたことのあるイギリスのシンガーソングライター。アコギをベースにストリングスやフルート、曲によってはエレピなどを取り入れつつも、基本的にシンプルなサウンドで暖かくフォーキーに聴かせる曲がメイン。メランコリックなメロディーラインに彼女の美しいボーカルで暖かく聴かせてくれる歌が特徴的。目新しさはないものの、暖かいポップが胸に響く作品で、高い評価も納得の、彼女の才能を感じさせる作品でした。

評価:★★★★★

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2024年12月23日 (月)

「ライブアルバム」というよりは・・・

Title:Live O Rec
Musician:cero

Liveorec

今や日本のネオソウル/シティーポップを奏でるバンドとして、実力人気共に屈指のバンドとなったcero。昨年リリースしたオリジナルアルバム「e o 」も非常に高い評価を受けましたが、今回はそれに続くアルバムとして、彼ら初となるライブアルバムをリリースしました。主に昨年12月に恵比寿リキッドルームでのライブの音源を中心に収録した作品に。彼らは、ライブでそのアレンジを大きく変化させてくるバンドなだけあって、原曲とはまた異なる味わいのある、ライブ音源ならではのアレンジが楽しい作品となっています。

実際、冒頭を飾る「Nemesis」では、最初、ライブがはじまる高揚感をあらわすようなドリーミーでサイケなアレンジを組み込んでいますし、彼らの代表曲である「マイ・ロスト・シティー」では原曲以上にサイケなアレンジとなっており、ライブならではのトリップ感をより味わえるようなサウンドを聴かせてくれています。

もともとリズミカルでライブ向けともいえる「Elephant Ghost」では、パーカッションのリズムをより前に押し出して、踊りやすいアレンジになっているのはライブならでは、といった感じでしょうか。同じくトライバルなパーカッションでリズミカルな「魚の骨 鳥の羽根」は、比較的原曲と同じようなアレンジになっていますが、ボーカルといい演奏といい、ライブでの盛り上がりを感じさせるのは、ライブ盤ならでは、といった感じでしょうか。

またユニークなのが終盤の「outdoors」で、原曲と比べてアコースティックベースなシンプルなサウンドが特徴的なのですが、雨の音ではないかと思われる音がそのまま収録。本作は2020年の日比谷野音でのライブ音源が用いられているそうなので、その時の音がそのまま使われているのでしょうか。ボーカルの音もちょっとこもった感じなのも、おそらくわざとでしょう。結果、タイトル通りのアウトドアでのフィールドレコーディングでの録音のような、質感のあるアレンジとなっています。

さて、このライブアルバムがユニークなのは、ライブ音源をそのまま収録したアルバムではない、という点でしょう。彼らならではのミキシングも行われているほか、ホームレコーディングによるオーバーダビングなども行われており、ライブ音源をもとに、あらたなアレンジの作品を作り上げたアルバムとも言えるかもしれません。そのため、MCなどはもちろん、観客の歓声なども収録されておらず、ライブならではの臨場感は感じられません。ライブの臨場感を残す、というよりは、あくまでもライブアレンジの作品を記録する、という意味合いが強いライブアルバムと言えるかもしれません。

ただ、とはいってもライブアレンジで原曲の雰囲気がガラリと変わった作品はなく、基本的にライブ向けに、よりリズムの部分を強調したり、サイケさを増してドリーミーな要素を強めたりと、ライブならではのアレンジがほどこされていました。また、今回のライブアルバム、「e o 」リリース後のライブということもあって、同作からの作品が多い一方、彼らの代表曲も多く収録されており、そのため、ベスト盤的な楽しみ方もできる作品となっていました。

ライブの臨場感を収録したというよりも、ライブでのアレンジを記録に残した作品という意味では、ライブアルバムという以上にceroのリミックスアルバムといった感もある作品とも言えるかもしれません。そういう意味でもオリジナルアルバムと並んで、ceroの「新たな作品」としても楽しめるアルバム。彼らのライブでの臨場感は、やはりライブに参加してこそ、といった感じなのでしょうか。むか~し、一度だけイベントライブで彼らのステージを見たことはあるのですが・・・またライブに参加してみなくては・・・。

評価:★★★★★

cero 過去の作品
My Lost City
Obscure Ride
POLY LIFE MULTI SOUL
e o

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2024年12月22日 (日)

原点回帰を感じさせる高揚感ある楽曲も

Title:Strawberry Hotel
Musician:Underworld

ご存じ、日本でも高い人気を誇るイギリスのテクノユニット、Underworldのニューアルバム。今年はサマーソニックでもヘッドライナーをつとめるなど、相変わらずの人気の彼ら。直近のアルバム「DRIFT SERIES 1」から早くも5年というインターバルを経てのアルバムとなっています。また、前作「DRIFT SERIES 1」も、「DRIFT」というプロジェクトに沿ってリリースされたEPの寄せ集め的なアルバムだったので、純然たるオリジナルアルバムとしては2016年の「Barbara Barbara, We Face a Shining Future」以来、実に約6年半ぶりとなるニューアルバムとなりました。

今回のアルバム、特に前半に関しては、原点回帰という言葉も飛び出すような、実にUnderworldらしい心地よくリズミカルなテクノチューンの並ぶ作品となっていました。特に2曲目の「denver luna」が秀逸で、疾走感あるリズムで、徐々に高揚していくかのようなサウンドは、彼らの代表曲である「Born Slippy」を彷彿とさせるかのよう。続く「Techno Shinkansen」も、タイトルからして日本人にはなじみあるのですが、新幹線に乗っているかのような疾走感あるテクノチューンが心地よい楽曲。ちなみに同作のMVでは、「テクノ新幹線」という日本語が登場するのと共に、新幹線からの風景をサンプリングした映像が流れており、日本人には必見のMVとなっています。

さらにこれらのナンバーに続く「and the colour red」もリズミカルなビートとミニマルなサウンドで心地よくトリップできそうなアシッドハウスな楽曲。そしてそれに続く「Sweet Lands Experience」まで、前半はUnderworldの王道を行くような、聴いていて素直に心地よいリズミカルなテクノチューンが続きます。

ただ、ちょっと雰囲気が変わるのはここからの後半で、全体的にメランコリックな雰囲気を漂わせる曲調が特徴的。哀愁感のある歌が入る「Burst of Laughter」や、Underworldらしい高揚感あるリズムを聴かせてくれるものの、全体的にメランコリックなサウンドを聴かせる「King of Haarlem」。さらには、「denver luna」のアカペラバージョンも登場し、こちらは曲が持っていたメランコリックな側面をより強調したアカペラとなっていました。

さらに終盤の「Gene Pool」「Oh Thorn!」はアップテンポながらもドリーミーな雰囲気でちょっとチルアウト気味。さらにアメリカのフォークシンガーNina Nastasiaをボーカルに迎えた「Iron Bones」も同じく、フォーキーな歌モノの楽曲。さらにラストの「Stick Man Test」はなんとギターのアルペジオでしんみり聴かせる作品で締めくくり。終盤はチルアウトな展開でアルバムは幕を下ろします。

正直、前半の高揚感あふれるナンバーがもっと後半まで続いてほしかったな、という印象も受けなくもなかったのですが、ただ、それはそれとして、後半のメランコリックなナンバーにも耳を惹く作品も多かったですし、なによりも、前半、中盤そして後半と、様々な作風が展開される構成は、最後まで飽きることなくアルバムを聴くことが出来る作品。単純なフロア志向ではなく、ミュージシャンとしての幅広い音楽性も感じられるアルバムになっていたと思います。

とはいえ、本作の特に前半に関しては高揚感あるリズムとサウンドが心地よく、ライブでも一度体験してみたいなぁ。基本的にフェスなどでの出演も多い彼らですが、単独ライブで全国をまわってくれないかなぁ。

評価:★★★★★

UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection
Barbara Barbara, we face a shining future
Teatime Dub Encounters(Underworld&Iggy Pop)
DRIFT Episode1 "DUST"
DRIFT Episode2 "ATOM"
DRIFT Episode3 "HEART"
DRIFT SERIES 1 - SAMPLER EDITION


ほかに聴いたアルバム

SUPERCHARGED/THE OFFSPRING

日本でも人気のアメリカのパンクロックバンド、オフスプリングの約3年半ぶりとなるニューアルバム。マイナーコード主体ながらも陽気でポップなパンクチューンの連続。正直、目新しさはほとんどなく、ある意味、いつも通りのオフスプ。紋切型的な楽曲が並ぶのはいつも通り。ただ一方で、その分、難しいこと抜きに、素直に楽しめるポップなアルバムになっていた点もいつも通りでした。

評価:★★★★

THE OFFSPRING 過去の作品
RISE AND FALL,RAGE AND GRACE
DAYS GO BY
Let The Bad Times Roll

In Session(Deluxe Edition)/ALBERT KING WITH STEVIE RAY VAUGHAN

ブルースギタリストのレジェンド、Albert Kingと、白人ブルースギタリストの代表的なミュージシャン、Stevie Ray Vaughanによる歴史的なセッションをおさめたアルバム。もともとは1983年12月にカナダでのテレビ番組用に収録されたライブ音源。1999年にCDリリースされた後、2010年にはDVD付で再リリース。さらに今回、いままでCD音源では未収録だった「Born Under a Bad Sign」、「Texas Flood」、「I'm Gonna Move to the Outskirts of Town」の3本を追加収録。リマスターを施されて完全版としてリリースされました。2人のレジェンドギタリストの共演ということで、その迫力あるパフォーマンスが楽しめるのですが、2人のギターのヒリヒリするようなやり取り・・・というよりは、大御所ギタリストと、そんな彼を慕う後輩ギタリストのプレイということで、和気あいあいとした、肩の力が抜けたようなプレイが魅力的です。ただ、CD音源未収録だった3曲に関しては、2010年リリースのDVDの方には収録済。また、2010年のバージョンは私も入手しているのですが、DVDで見た映像での2人の共演の方が魅力的だったので、こちらを再発してほしい感も。Amazonでは中古を含めて品切れ状態のようですし・・・。とはいえ、この音源自体は素晴らしい内容なので、↓の評価で。

評価:★★★★★

ALBERT KING WITH STEVIE RAY VAUGHAN 過去の作品
In Session

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2024年12月21日 (土)

60年代ソウルの入門書として最適な1冊

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回読んだのは、ミュージック・マガジン誌の増刊号、「アルバム・セレクション」シリーズの最新刊「60年代ソウル」です。以前から、このシリーズの書籍で、以前、「80年代ソウル」という書籍を紹介しましたが、今回はその60年代版。また、他にも「70年代ソウル」という書籍もリリースされており、これで60年代から80年代まで揃ったということになっています。

他のシリーズと同様なのですが、最初は「ARTIST PICKUP」としてミュージシャン毎に略歴と代表するアルバム数枚の紹介。その後はジャンルにわけて、アルバムの紹介という構成。「ARTIST PICKUP」ではサム・クックやレイ・チャールズからスタートし、「ザ・シュプリームズ」や「ザ・テンプテーションズ」など約20組のミュージシャンが紹介されています。ちなみに「ジェイムズ・ブラウン」と「アレサ・フランクリン」は60年代、70年代の2年代にわたり「ARTIST PICKUP」として取り上げられており、ここらへんは帝王・女王のすごさを感じます。

一方、後半では「INSTRUMENTALISTS」「PIONEERS」「MALE SINGERS」「FEMALE SINGERS」「VOCAL GROUPS/DUOS」と、主にミュージシャンの「形態」によって区別されています。「70年代ソウル」「80年代ソウル」いずれも、ここの分け方は基本的に音楽のジャンルによる区分だっただけに、後の年代とはちょっと異なる構成になっているのですが、この点はまだ60年代においてソウルミュージックとされるジャンルについては、後の世代ほど、ジャンル毎に色分けできるほどの音楽的なバラエティーがまだなかった、ということなのでしょうか。ただ、サザンソウルとノーザンソウルで大きく色分けできそうなので、著者の嗜好による部分も大きいようにも感じるのですが。

さて、今回の著書の特徴として一番大きかった点は、他の「70年代ソウル」「80年代ソウル」が複数のライターによる著作であるのに対して、本作は音楽評論家、鈴木啓志ひとりの著作であるという点でした。この鈴木啓志は現在76歳という大ベテラン。この60年代ソウルをリアルタイムで聴いていた世代であり、そういう意味では貴重な存在。実際、リアルタイムで音楽に触れていたからこその感想やその当時の状況の描写が要所要所に記載されており、今となっては貴重な証言とも感じられます。一方で、そのため単なる個人の感想では?と感じる部分のなきにしもあらず。「ARTIST PICKUP」でも、例えば「ザ・デルズ」が取り上げられているのですが、他のディスクガイドなどではそこまで重要視されている感もなく、ここらへんは良くも悪くも鈴木啓志個人の見解的な部分も感じます。

また、「60年代ソウル」ということですが、「ARTIST PICKUP」の中に、ブルースミュージシャンであるボビー・ブランドが登場していたり、B.B KINGのアルバムも紹介されていたりと、この手のガイドブックではソウルミュージックと一線を画して紹介されそうなブルース系のシンガーも登場。一方、ドゥーワップなどは明確にソウルと区別されて「別物」として記載されており、ここらへんもある種、彼の嗜好も感じさせます。

ただ、とはいっても全体的にはおそらく意識的に個人の嗜好は抑え気味となっており、全体的には非常にスタンダードなディスクガイドとなっています。紹介されているアルバムに関しても、個人の嗜好を抑えて、あえて代表的なアルバムを選んでいる部分もあり(かつ、それを明確に記載しているのですが)、その点を含めて60年代ソウルの入門書としても最適な1冊であり、また、60年代ソウルを総花的に知るにも最適な1冊だと思います。ここで紹介されているアルバムで、既に聴いたことのあるアルバムも少なくないのですが、大きく取り上げられているアルバムの中でも未聴のアルバムも多くあり、一度聴いてみなくては、とも感じました。ちなみに最後の最後に紹介されているアルバムはSLY&THE FAMILY STONEの「Stand!」となっており、スライは「70年代ソウル」の「ARTIST PICKUP」の一組目として登場しています。そういう点で上手く次の世代にリンクされており、そういう意味でもよく出来た構成にも感じました。

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2024年12月20日 (金)

ロック志向、ルーツ志向の強い35年目のアルバム

Title:SQUEEZE and RELEASE
Musician:真心ブラザーズ

今年、デビュー35周年を迎えた真心ブラザーズ。そういえば、先日紹介したスカパラも35周年でしたね。調べてみると、この年は、フリッパーズ・ギターにドリカム、X JAPAN、THE BOOM、LINDBERGなどなど、かなり豪華なミュージシャンたちがこの年にデビューしており、一種の当たり年だった??時期的に、世の中はバンドブーム真っただ中。それだけに多くのバンドがデビュー出来たのでしょう。そんな中、デビュー以来、一時的な活動休止はあったものの、ほぼコンスタントに活動を続けている真心ブラザーズ。正直、シングル曲ではベスト10ヒット未経験の彼らが、これだけ長く活動を続けているというのは、あらためて振り替えると驚きの感すらあります。

そんなデビュー35周年を迎えてリリースされた今回のオリジナルアルバム。区切りの年でのリリースであることを意識してか、全体としてロックやルーツ志向も強い、骨太でロックなアルバムに仕上がっていました。

まずアルバムの冒頭1曲目、2曲目は実にYO-KINGらしい、真心ブラザーズらしい楽曲が並んでいます。1曲目「あたまの中は大自由」はYO-KINGが叫びまくるヘヴィーなロックチューン。タイトル通りそのままがテーマの、実に自由奔放な歌詞が彼らしさを感じます。続く「オレは音楽」は、こちらもYO-KINGらしい音楽への愛情をそのままつづったブルースロック風のナンバー。ルーツ志向を垣間見せつつ、自己主張も強い歌詞が彼らしさを感じる楽曲となっています。

その後も「DIVIDE」や、「大崎の次は五反田だよ」のようなブルースロック志向やカントリーロック風の「カンナ」、ハードなギターリフ主導のハードロック風ナンバー「ジングルベル」に、ブルースハープとワウワウギターでソウルテイストの強い「おれんち」、そして最後はこれまたヘヴィーなギターでゆっくりダイナミックに聴かせる「急がない人」と、全体的にブルースロックあるいはハードロックの色合いの強い、ルーツ志向、あるいは骨太なロック志向の強い作品が目立ちます。

一方でちょっとユニークなのが「Mic Check」で、桜井ナンバーである本作は、ハードロックにHIP HOPの要素を取り入れた楽曲。ここらへん、ロック志向、ルーツ志向の強いYO-KINGとは異なる、比較的、幅の広い音楽に興味を持つ桜井秀俊らしい作風となっていますし、そんな2人が同じバンドとして活動している点が真心ブラザーズのおもしろさなのでしょう。

また、もうひとつ特徴的なのは、歌詞で、全体的に身近な出来事をテーマとしつつ、どこかユーモアを交えた視点で綴っているのもまた、真心の大きな魅力と言えるでしょう。「大崎の次は五反田だよ」も、そんな恋人の日常風景を描いた歌詞が、親近感を覚えますし、ユーモラスといえば「ジングルベル」で、ここ最近の10月やともすれば11月になっても、日のよっては暑さを感じる最近の日本を、秋や冬のイベントをからめてユーモラスに描写しているのも彼ららしさを感じます。どの曲も、そんな日常的な風景描写が目立ち、ちょっとほっこり、そしてどこかユーモラスを感じさせるのが、彼ららしさといった感じでしょう。

今回のアルバムはいい意味で非常に真心ブラザーズらしさにあふれた作品で、そういう意味でも35周年という区切りの年にふさわしい1枚だったと言えるかもしれません。また、35年目というベテランバンドでありながらも、ともすれば勢いすら感じさせる作品なのも見事。何よりも純粋に音楽、特にロックへの愛情も強く感じる作品になっていました。大きなヒットこそなくても、真心ブラザーズの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE
FLOW ON THE CLOUD
INNER VOICE
トランタン
Cheer
TODAY

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2024年12月19日 (木)

今週も旧ジャニ系が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も、先週に引き続き、旧ジャニ系が1位を獲得しています。

今週はKing&Prince「Re:ERA」が8週ぶりにベスト10に返り咲き、1位を獲得。10月23日付チャートで先行配信により2位を獲得していましたが、今回、CDがリリース。CD販売数で1位を獲得し、総合順位も1位となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上23万3千枚で1位初登場。前作「ピース」の初動34万2千枚(1位)からダウンしています。

2位は韓国のアイドルグループENHYPEN「ROMANCE:UNTOLD-daydream-」が先週の9位からランクアップし、4週ぶりにベスト3返り咲き。現在、日本ツアー中の彼らですが、ランクアップはその影響がある模様。

3位初登場は中王区 言の葉党「.言の葉党」。声優によるラッププロジェクト、ヒプノシスマイクに登場する架空のラップグループによるアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数10位。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。同プロジェクトの前作Bad Ass Temple「.Bad Ass Temple」の初動1万2千枚(8位)からダウン。中王区 言の葉党名義の前作「Verbal Justice」の初動1万4千枚(3位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。5位初登場は祖堅正慶「Pulse: FINAL FANTASY XIV Remix Album Vol. 2 (Session 1)」。「ファイナルファンタジーXIV」の楽曲をEDM調でリミックスしたアルバムの第2弾。7位にはWayV「FREQUENCY」が初登場。韓国の男性アイドルグループNCTからのサブグループ。10位にはゆきむら。「-Never ending Nightmare- †」が初登場でランクイン。歌い手・ゲーム実況者グループ「騎士A」の元メンバーによるソロ作。

またAdo「残夢」が今週79位から9位にランクアップし、7月31日付チャート以来のベスト10返り咲き。これは12月11日にアナログ盤がリリースされた影響。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、なんとボカロチャートで首位を走っている柊マグネタイト「テトリス」がこちらでも1位獲得。動画再生回数で6位にランクイン。Hot100でも71位にランクインしており、さらなるランクアップも期待できます。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートは柊マグネタイト「テトリス」が6週連続で1位を獲得。Heatseekersとの2冠となります。一方、DECO*27「モニタリング」は先週は3位にダウン。一方、2位には。ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ「み む かゥ わ ナ イ ス ト ラ イ」がランクアップしてきており、来週以降の動向も気になるところです。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年12月18日 (水)

クリスマスシーズン到来

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

そろそろクリスマスの時期が近付いている今週のチャート。今週はクリスマスソングが一気にランクアップしてきています。

その代表格がback number「クリスマスソング」。先週の15位から7位にアップ。昨年の12月27日付チャート以来のベスト10返り咲きを果たしています。通算14週目のベスト10ヒット。ここ最近、毎年のようにベスト10入りし、あらたなクリスマスソングのスタンダードナンバーとなっています。ただ、例年、対象週がクリスマスに重なる週にベスト10ヒットを記録するのですが、今週はクリスマスの2週も前にベスト10入り。さらにその人気が加速しています。

さらに30位にはマライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」、47位山下達郎「クリスマス・イブ」、48位桑田佳祐「白い恋人達」とクリスマスソングがこぞってランクイン。来週以降のランクアップも期待できます。

ただ、そんな中で1位を獲得したのは秋元康系アイドルグループ乃木坂46「歩道橋」。CD販売数1位、ダウンロード数11位、ラジオオンエア数6位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上48万4千枚で1位初登場。前作「チートデイ」の初動51万枚(1位)からダウンしています。

2位はロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」から先週から同順位をキープ。ただ、ストリーミング数は6週連続、動画再生回数は3週連続の1位をキープ。今週、8週目のベスト10ヒットとなり、まだまだロングヒットは続きそうです。

3位は韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「CRAZY」が初登場。CD販売数2位。オリコンでは初動売上13万2千枚で2位初登場。前作「UNFORGIVEN」の初動14万8千枚(2位)よりダウンしています。

続いて4位以下ですが、初登場は1曲のみ。10位に女性アイドルグループ高嶺のなでしこ「I'M YOUR IDOL」がランクイン。CD販売数3位。オリコンでは初動売上5万5千枚で3位初登場。前作「美しく生きろ」の初動3万7千枚(4位)からアップしています。

一方、ロングヒット曲ですが、まずMrs.GREEN APPLE「ライラック」は先週と変わらず4位をキープ。ここに来て、ストリーミング数が2位にアップ。動画再生回数は2位から3位にダウンしてしまいましたが、まだベスト3を狙えそうな位置にいます。これでベスト10ヒットは連続35週になりました。一方、先週1位を獲得した「ビターバカンス」は今週4位にダウン。今週も2曲同時ランクインとなりましたが、こちらはロングヒットとなるのは厳しいか?

Creepy Nuts「オトノケ」が先週と変わらず6位をキープ。こちらもストリーミング数が4位から3位に再びアップ。これで10週連続ベスト10ヒットとなります。一方、今週、「Bling-Bang-Bang-Born」が11位から9位にランクアップし、ベスト10返り咲きかつ2曲同時ランクインに。こちらはベスト10ヒットを通算45週に伸ばしています。

また、先週、8週目のベスト10ヒットとなったAKASAKI「Bunny Girl」は今週8位に再びランクアップ。ストリーミング数は先週から変わらず5位をキープ。ダウンロード数も18位から16位にアップしています。これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Heatseekers&ボカロチャート!

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2024年12月17日 (火)

オリジナルとは全く異なる魅力を感じる傑作

Title:My Favorite Things
Musician:柴田聡子

今年2月、アルバム「Your Favorite Things」をリリースしたシンガーソングライター、柴田聡子。ただ、その前作「Your Favorite Things」は作風がグッとネオソウル方面にシフトし、いままでの柴田聡子とはちょっと雰囲気の異なる傑作に仕上がっていました。そして、前作リリースから約8ヶ月のスパンを経て、早くもニューアルバムのリリースとなりました。ただし、今回のアルバムは前作「Your Favorite Things」の弾き語りバージョン。「Your Favorite Things」で共同プロデューサーとして名前を連ねていた岡田拓郎から、「弾き語り盤を作ったらどうか」というアイディアをもらったことが本作制作のきっかけ。そんなこともあって、本作も「Your Favorite Things」同様、岡田拓郎が共同プロデューサーとして名を連ねています。

そして、本作はそのオリジナル「Your Favorite Things」としっかり双璧をなすような傑作に仕上がっていました。ギターやピアノ、ストリングスや曲によっては打ち込みまで取り入れてメロウに仕上げていたオリジナルに対して、本作はシンプルなアコースティックのアレンジに特化したからこそ、曲のコアな部分の魅力がしっかりと発揮された作品に仕上がっていました。例えば「Synergy」は、オリジナルではバンドサウンドでメロウにまとめられた作風に仕上がっていましたが、本作ではアコギ一本のみのアレンジ。しかしだからこそ、メロディーラインの本来持つ魅力や、また柴田聡子のボーカルのメロウさに耳を惹く楽曲のリアレンジしています。

そういう意味でも魅力的だったのが中盤の「うつむき」「白い椅子」でしょうか。どちらもオリジナルではシンセのアレンジなども入って、非常にメロウなネオソウル風のナンバーとなっていますが、本作ではどちらもアコギ1本で聴かせるアレンジ。前述の「Synergy」と同様、ボーカルやメロディーがもともと持っていた魅力を発揮しているのはもちろんなのですが、加えて、シンプルにつま弾いているアコギの演奏も、シンプルながらも、そのフレーズが微妙に歌やメロにからみついて印象に残ります。

本作に関して、公式サイトで柴田聡子自身が「実力不足やひとりでのアレンジへの考えの不足を実感」して、「この一枚がなかったら、私はこの先どこまでもぼんやり弾き語りをつづけていただろう」と語っていますが、シンプルなアコギのアレンジながらも漫然と弾き語っているわけではないこのアルバムのアレンジの妙は、要所要所に感じることが出来ます。

終盤では「素直」が秀逸。オリジナルでも比較的シンプルなアレンジで聴かせるタイプの曲となっているのですが、本作では、アコギで静かに弾き語りつつ、ボーカルをより前に押し出した構成によって、ちょっとファンタジックで切なさを感じさせる歌詞の世界が、より胸に響いてくるようなアレンジに仕上がっています。

「Your Favorite Things」の弾き語り盤でありながらも、単なるアコースティックアレンジのアルバム、ではなく、全く別のアレンジがほどこされて、オリジナルとは別の魅力を強く感じさせる傑作アルバムになっていました。柴田聡子の魅力や実力、さらには本作を提案し、プロデュースを手掛けた岡田拓郎の実力を存分に感じさせる内容になっています。企画盤ということでオリジナルと比べてスルーされがちですが、オリジナル同様、まずはチェックしておきたい傑作です。

評価:★★★★★

柴田聡子 過去の作品
柴田聡子
愛の休日
がんばれ!メロディー
ぼちぼち銀河
Your Favorite Things


ほかに聴いたアルバム

YOU NEED FREEDOM TO BE YOU/9mm Parabellum Bullet

今年結成20周年を迎える9mmの、約2年ぶり10枚目となるアルバム。9mmといえば、ダイナミックなバンドサウンドに、哀愁感たっぷりのメロディーラインが特徴的。今回のアルバムでも、これでもかというほど哀愁感を漂わせるメロディーが特徴的なのですが、一方、サウンドについては、ギターロックではあるのですが、ダイナミックさは薄れて、かなり薄味のポップス風味に。メロディーラインも基本的にマイナーコードでメランコリックで聴かせるスタイルなだけに、どうにもマンネリ気味なのは否めず。全体的に薄味でどうにも物足りなさを感じてしまいました。

評価:★★★

9mm Parabellum Bullet 過去の作品
Termination
VAMPIRE
Revolutionary
Movement
Dawning
Greatest Hits
Waltz on Life Line
BABEL
DEEP BLUE
TIGHT ROPE

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2024年12月16日 (月)

インスト曲はカッコいいが・・・。

Title:35
Musician:東京スカパラダイスオーケストラ

タイトル通り、スカパラデビュー35周年を記念したオリジナルアルバム。今回も豪華ゲストがボーカルとして参加したアルバムとなっており、imaseにSHISHAMOの宮崎朝子、10-FEETのTAKUMA、菅田将暉、元関ジャニ∞ことSUPER EIGHTなどといったメンバーがズラリ。また、ちょっと変わったところでは、習志野高校吹奏楽部や、Eテレの「天才てれびくん」出演者のてれび戦士がゲスト参加した楽曲なども収録されています。

さて、今回のアルバム、全15曲中7曲とほぼ半分がインストという、ここ最近のアルバムの中では比較的インスト曲の多いアルバムに仕上がっています。そして、このインスト曲が非常にカッコいい!まず冒頭を飾る「Wings Of Phoenix」は疾走感あるインストナンバーなのですが、にぎやかな分厚いホーンセッションで押し寄せてくるようなサウンドに、アグレッシブなピアノやギターのソロが耳に残ります。それに続く「The Last Ninja」もインストのナンバーなのですが、こちらもホーンセッションにバンドサウンドを入れた分厚いサウンドが刻むスカのリズムが非常にカッコよく、くすんだ雰囲気のメロディーラインとサウンドも非常に魅力的。

その後もラテン風なリズムがカッコいい「Ska Fandango!」や哀愁感たっぷりのサウンドで、タイトル通りのスリリングな楽器の共演が印象に残る「トーキョー・デッド・ヒート」など、非常に魅力的なインストの楽曲が並びます。ちょっと怪しげでくすんだ雰囲気の楽曲は、昔のスカパラを彷彿とさせる感じ。ここ最近のスカパラのポップ寄り路線に関しては、否定的な方も少なくないかと思うのですが、今回のインスト曲に関しては、まさにスカパラの本領発揮といった感じではないでしょうか。スカパラの真骨頂はここにあり!と感じさせるようなインスト曲でした。

ただ、そんなインストナンバーに対して、正直今回、歌アリの曲に関しては今一つだったように感じます。一番厳しかったのはSUPER EIGHTがゲストボーカルとして参加した「あの夏のあいまいME」で、SUPER EIGHTって誰?と思ったのですが、関ジャニ∞が改名した名前なんですね。ボーカルがあまりにも軽すぎて、かなり厳しい感が否めません・・・。もっとも、この曲に限らず、imaseをボーカルに迎えた「一日花」にしても、SHISHAMOの宮崎朝子をゲストとして迎えた「教えてウスボロス」にしてもボーカルが軽い・・・。今回、特にインスト曲はヘヴィーな作風になっていただけに、ボーカル曲の軽さが目立ったように感じますし、インスト曲をヘヴィーにしたからこそ、逆にあえてボーカル曲は軽くしたのかもしれません。

しかし、結果として、やはりスカパラは今回のインスト曲のように、ちょっとくすんだ雰囲気を漂わせるヘヴィーなナンバーの方が似合っている、そう感じてしまいました。ポップなスカパラに関しても確かに悪くはないのかもしれませんが、この手のホーンセッションの入った軽快なポップスって、よくありがちであり、スカパラとしての独自性という点で若干弱いようにも感じます。

スカパラがボーカル付のポップ路線にシフトしてから久しく、その方向性に関しては賛否あるようですが、今回のインスト曲を聴く限りだと、ちゃんとかつてのスカパラらしさを、今でも演ろうと思えば演れるという、彼らの実力を再認識できる作品でした。ただ、一方で、ボーカル曲の軽さを聴くにつれて、今の彼らの嗜好はやはりこの路線なのか、とも思うと、ちょっと複雑な気持ちにもなったりします。やはり今回のヘヴィーなインスト路線のスカパラがカッコいいなぁ。たまには、こういう路線でまるごとアルバム1枚聴かせてほしい感じもするのですが。

評価:★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS
2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~
SKA=ALMIGHTY
S.O.S. [Share One Sorrow]
JUNK or GEM


ほかに聴いたアルバム

ゴールデン☆ベスト Yes We're Singles 1984~1989/REIMY

レコード会社共通の廉価版ベスト盤シリーズ「ゴールデン☆ベスト」。本作は、麗美名義でも活躍していたシンガーソングライターREIMYの、タイトル通り1984年から1989年にリリースされたシングルをまとめた楽曲。当初は松任谷正隆・由実夫妻おかかえのアイドルという形でキャリアをスタートさせたようで、初期の「青春のリグレット」などユーミンのバージョンが有名なのですが、オリジナルは彼女なのですね。初期は松任谷由実作詞作曲の曲が並んでおり、いかにもユーミンらしい楽曲が並びます。一方、その後はアイドルポップ風の曲が並んだり、歌謡曲風にシフトしたり、さらに最後の方はいかにも80年代風のシンセポップの曲が並んだりと、1984年から89年というたった5年なのに、曲調が様々に変化しています。かなりこの辺、彼女をどういうスタイルで売っていこうか、かなり迷走していた感も否めません・・・。ちなみに彼女がアイドルからシンガーソングライターへ脱皮するのはこれ以降のようです。これ以降の作品についてはきちんと聴いていないので、SSWとして独り立ちして、徐々に彼女のスタイルを確立していったといった感じなのでしょうか。1曲1曲はよく出来ているのですが、これだけ楽曲として迷走しちゃっていのは、良くも悪くも「アイドル」だったんだな、ということを感じるベスト盤でした。

評価:★★★★

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2024年12月15日 (日)

「あの頃」を彷彿とさせる作品

Title:17
Musician:cali≠gari

タイトル通り、17枚目のオリジナルアルバムとなるcali≠gariの約1年ぶりのニューアルバム。ここ最近、比較的シンプルなギターロック路線のアルバムが続いている彼ら。今回のアルバムに関しても、比較的シンプルで変態性の薄めのギターロックのアルバムに仕上がっていました。冒頭を飾る「サタデーナイトスペシャル」こそ、ヘヴィーでアバンギャルドな作風の曲となっていますが、続く「龍動輪舞曲」はメロディアスでポップなギターロックナンバー。「化ヶ楽ッ多」は、曲名こそアバンギャルドな感じですが、こちらもメランコリックなメロながらも軽快でポップな楽曲に。「暗い空、雨音」も郷愁感のあるメロディーラインが大きなインパクトのある作品に仕上がっています。

今回は、打ち込みをあまり用いなかったということで、その影響もあって、全体的にギターロックの作風で統一された感もあります。また、同時にいどこか漂うのが80年代や90年代のJ-POPを彷彿とさせるような懐かしさ。特に典型的なのが、ある種のタイトルチューンとも言える「ナイナイ!セブンティーン!」で、完全にBOOWYやGLAYあたりを彷彿とさせるような80年代から90年代のビートロックの王道を行くような作品。もちろん、あえて狙って演っているのでしょうが、ある世代にとってはなつかしさすら感じさせる作風となっています。また、前述の「龍動輪舞曲」も90年代J-POP風の楽曲。アルバム全体としてもどこか懐かしさが漂っています。

さらに終盤、「東京アーバン夜光虫」はムーディーでジャジーな雰囲気が魅力的。最後の「沈む夕陽は誰かを照らす」なムーディーな歌謡曲という色合いすら感じさせるバラードナンバーで、こちらもどこか漂う懐かしさも魅力的でした。

「バカ!バカ!バカ!バカ!」のようなパンキッシュな作品も挟みつつ、ただ全体的には比較的シンプルで、王道の90年代J-POP路線を彷彿とさせるようなギターロックが並ぶ作品に。前々作「15」も比較的シンプルなギターロック路線だった結果、ちょっと小さくまとまってしまった感がありましたが、それに比べると今回は、あえてこの王道路線を狙いました感があり、アルバム全体としても聴きごたえのあった1枚に仕上がっていたと思います。しっかりとcali≠gariの実力を感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Title:17.5
Musician:cali≠gari

そして、その後、約3か月のスパンでリリースされたのが本作。「アルバム『17』制作過程で生まれるも、諸事情により割愛せざるを得なかった曲」という説明がされていますが、基本的には「17」収録曲の別バージョン+新曲2曲、さらには尾崎豊の「十七歳の地図(SEVENTEEN'S MAP)」のカバーが収録された全14曲という構成となっています。要するに、アルバム「17」のアナザーテイク集といった感じの作品です。

特にやはり注目なのは、この「十七歳の地図(SEVENTEEN'S MAP)」のカバーで、基本的には歌い方を含めて原曲に忠実なカバー。ユニークなのは、同じく思いっきりJ-POP風の「ナイナイ!セブンティーン!」と並ぶ形で収録されており、ここだけ一気にあの頃のJ-POP感が強まる構成に。ここの展開はなかなか面白いので、オリジナルの「17」でも「十七歳の地図」を収録しておけばよかったのに・・・とも思ってしまったのですが。

またアルバム「17」収録曲のアナザーテイクに関しては、正直、あまり大きな変化はありません。オリジナルに比べてイメージをガラリと変えたような曲はありませんし、楽曲の原型をイメージさせるようなデモ音源的な曲もありません。あえて言えば、「17」収録の最終版の方が、サウンド的にはちょっとヘヴィーになっていたかも?「17」の制作過程で生まれた曲ということで、ひょっとしたら当初は、もうちょっとポップな作風を目指していたのかもしれません。

そういうこともあって、オリジナルの「17」と比べると、若干ファンズアイテム的な側面も強い作品。ただ、前述の通り「十七歳の地図(SEVENTEEN'S MAP)」は、その前の「ナイナイ!セブンティーン!」との並びで要チェックな作品でもありますので、そういう意味ではお勧めしたい1枚と言えるかもしれません。cali≠gariらしい遊び心を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12
13
この雨に撃たれて
ブルーフィルム-Revival-
15
16


ほかに聴いたアルバム

出現!鼠浄土/キュウソネコカミ

メジャーデビュー10周年を迎えるキュウソネコカミのニューアルバム。今回も、勢いのあるパンキッシュなギターロックにシンセの音色を加えた、キュウソネコカミらしい疾走感あふれるロックを聴かせてくれるのはいつもと同様。メロはポップでインパクトも十分でしっかりと耳に残ります。また、「わや」「正義マン」のような、シニカルでユーモラスな社会派な歌詞も特徴的。いつも通りといえばいつも通りなのですが、聴いていて率直に楽しさも感じられるロックアルバムでした。

評価:★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
にゅ~うぇいぶ
ギリ平成
ハリネズミズム
モルモットラボ
私飽きぬ私

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2024年12月14日 (土)

予想以上に骨太な演奏

リーガルリリー cell,core 2024

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2024年12月4日(水) 19:00~

Cellcore

今年、「キラキラの灰」で一気にはまってしまったガールズバンド、リーガルリリーのライブのステージに足を運んできました。会場はおなじみの名古屋CLUB QUATTRO。もちろん今回、彼女たちのライブに参加するのは初なのですが、会場は概ね7割程度の入りといった感じでしょうか。客層は30代あたりの男性がメインといった感じで、自分と同年代くらいもチラホラ。結成10年目の中堅バンドの彼女たちですが、思ったよりも客層は高めといった印象も受けました。

今回は「cell,core」と名付けられた、彼女たち主体の対バン形式でのライブで、名古屋でのゲストはa子という女性シンガーソングライター。今年、デビューアルバムをリリースしたばかりの新人ミュージシャンのようです。名前だけは聞いたことがあるような・・・程度の認識。もちろん、ライブを見るのもはじめてならば、曲を聴くのも今回がはじめて。彼女自身も、名古屋でのライブはこれが2回目だったそうです。

バンドメンバーを引き連れてのステージ。ウィスパー気味のボーカルを聴かせてくれるシンガーで、歌い方の印象としてはちょっとCharaっぽいなぁ、ということも感じました。楽曲的には正統派なオルタナ系のギターロックを聴かせてくれたかと思えば、シンセも入って、ちょっとソウルっぽさも感じるメロウなシティポップ風のナンバーも聴かせてくれたりと、比較的バリエーションが豊富なイメージ。そのため、若干、a子らしさが薄くなってしまっている感はあるものの、その分は個性的なボーカルで補っているようなイメージ。今後、徐々にその名前を聞く機会は増えるかもしれません。

彼女のステージが約1時間弱。セットチェンジの時間を経て、20時8分頃に待望のリーガルリリーのステージがスタートとなりました。メンバー2人にサポートドラマー1人という3人でのステージでライブはスタート。1曲目はまず「ライナー」、そして「17」と続きます。

最初にも書いた通りリーガルリリーのライブを見るのは今回はじめてだったのですが、まず印象としては思った以上に骨太で力強いロックなサウンドを聴かせてくれているという点。アルバムで聴いた時点で、グランジやシューゲイザーの影響を受けたようなノイジーなギターサウンドが耳に残ったのですが、ライブを聴くと、音源で感じた以上にヘヴィーで力強い演奏が印象に残ります。特に3曲目「東京」がはじまる前には、メンバーでのジャム演奏からスタート。ロックバンドとしての実力を感じさせてくれるステージを見せてくれました。

ステージ自体もMCはなく、前半は曲がどんどんと展開していく構成に。「林檎の花束」や「ぶらんこ」などを聴かせてくれ、ライブが佳境を迎えた頃にようやく最初のMCはボーカルのたかはしほのか。ただ、若干天然ボケ気味のMCで、あまりMCは上手くない様子・・・(笑)。

後半も淡々とライブは続いていきます。「60w」「1997」「アルケミラ」とバンドサウンドを前に押し出しつつ、キュートでポップなメロディーが魅力的な曲が続き、今度はベースの海のMCに。主にa子の魅力の紹介。彼女の方が比較的しっかりしたMCでしたが、各々が別々に淡々とMCをする感じで、やはりMC慣れしていない感が・・・。

後半は最新アルバムから「ハイキ」や「天キリン」と続き、そしてお待ちかねの「キラキラの灰」へ!切なくポップなメロディーとシューゲイザー系のノイジーなギターの組み合わせが個人的にかなり壺で、やはりライブで聴けて、かなりテンションがあがります。そして最後は最新アルバムから「ますように」で締めくくりとなりました。

その後はアンコールへ。再びメンバーが登場すると、簡単なMCの後に「魔女」、そして「リッケンバッカー」で締めくくり。彼女たちは約1時間半のステージで、21時半過ぎにライブは幕を下ろしました。

今回はじめてリーガルリリーのステージを見たのですが、思ったよりも良かったです!ライブはMCも少な目で、比較的淡々と進むのですが、楽曲自体の魅力もさることながら、音源で聴く以上にヘヴィーでパワフルなバンドサウンドが魅力的。淡々としたステージだったのですが、その演奏にしっかり惹きこまれるステージとなっていました。今回は対バン形式で1時間半程度のステージだったのですが、次回はワンマンライブで見てみたいなぁ。個人的に「キラキラの灰」が気に入って、ちょっと勢いでチケットを確保した感もあった今回のライブでしたが、予想以上に素晴らしいステージで、満足して会場を後にしました。

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2024年12月13日 (金)

期待のガールズロックバンドの2作目

Title:No Obligation
Musician:The Linda Lindas

2022年にリリースしたデビューアルバム「Growing Up」が話題となり、同年にはサマソニにも出場。注目を集めたアメリカの4人組バンド、The Linda Lindas。メンバーは女性4人組で、最年長のギターボーカルのベラ・サルザールでもまだ20歳。最年少のドラムス、ミラ・デラガーザに至っては14歳という若さも話題となりましたが、日本人的に一番注目を集めたのはやはりこの「The Linda Lindas」という名前。この名前は2005年の日本映画「リンダ リンダ リンダ」に由来する名前。ちなみにこの映画のタイトルはもちろん、ブルーハーツの名曲「リンダリンダ」に由来しています。メンバーは全員、アジア系、ラテン系、またはアジア系とラテン系のハーフということで、日系かと思いきや、中国系ということで出自的には日本と関わりはないものの、ただ、やはり日本人的にもなじみを感じてしまいます。

一方、平均年齢が10代という女の子4人組バンド・・・ながらも、楽曲的にはかなりパワフルなパンクロックを聴かせてくれる点も大きな魅力。本作は1曲目「No Obligation」からいきなりタイトルチューンからスタートするのですが、しゃがれ声のボーカルで疾走感あるギターサウンドを聴かせてくれるハードコアパンクな楽曲からスタート。いきなりガツンとヘヴィーなナンバーからスタートとなります。

ただ、アルバム全体としてはヘヴィーな作風よりもむしろポップな楽曲が目立つ内容。続く「All In My Head」は、むしろアヴィリル・ラヴィーンあたりを彷彿とさせそうなギターポップな楽曲となっていますし、「Once Upon A Time」なども軽快でリズミカルなポップチューン。後半の「Don't Think」なども、むしろキュートさすら感じられるポップなメロが特徴的なギターロックのナンバーとなっています。

もちろん「Too Many Things」のような、メロディーこそポップながらもヘヴィーなギターサウンドを前に押し出したような作品や、同じくパンキッシュな「Resolution/Revolution」のような楽曲、さらには「Excuse me」でも、「No Obligation」同様、ちょっとデス声気味のがなり声でヘヴィーに聴かせる楽曲に。ポップな要素とヘヴィーな要素がほどよくバランスされた構成に仕上がっていました。

そしてもうひとつ印象的なのは、前述の通り、平均年齢10代というバンドであるにも関わらず、90年代あたりのインディーロックやパンクロックの影響が強く、ある種のなつかしさを覚える点でしょう。インタビュー記事などを読むと、影響を受けたバンドとしてヤー・ヤー・ヤーズやダム・ダム・ガールズなど2000年代以降のバンドを挙げており、単純にオールド志向といった感じでもないのですが、90年代のインディバンドから2000年代のバンドを通じて、その精神や音楽性が脈々と受け継がれている、といった感じなのでしょうか。

前作でも目新しさという面では物足りなさを感じました。今回のアルバムに関してはパンクロック以上にポップな歌を聴かせるような路線によりシフトした感はありますが、やはり目新しさという点ではちょっと不足気味。売上面ではまだブレイクには至っていないものの、そこらへんの物足りなさが影響しているのかもしれません。ただ、その点を差し引いても、まだまだ伸びしろのある彼女たち。今後に期待したいところ。次回作以降も要注目です。

評価:★★★★

The Linda Lindas 過去の作品
Growing Up


ほかに聴いたアルバム

City Lights/The WAEVE

ご存じblurのグラハム・コクソンとThe Pipettesのメローズ・エリナー・ドゥーガルによる2人組ユニット、The WAEVEの2枚目となるアルバム。アコースティックなサウンドを取り入れたカントリーテイストの作品もあるものの、基本的にはギターサウンド主導のメロディアスな作品がメイン。特に後半は分厚いサウンドでドリーミーに聴かせる曲も目立ちます。バラエティーに富んでいた前作に比べると、楽曲のバリエーションは限定的になったものの、その分、バンドとしての方向性は明確になった感じも。

評価:★★★★

The WAEVE 過去の作品
The Waeve

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2024年12月12日 (木)

今週もアイドル系が上位を占める

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も、上位はアイドル系が占めるチャートとなりました。

まず1位は旧ジャニーズ系の男性アイドルグループTravis Japan「VIIsual」が獲得。CD販売数及びダウンロード数1位。彼ら2枚目となるオリジナルアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上14万1千枚で1位初登場。前作「Road to A」の初動15万3千枚(1位)からダウンしています。

2位は韓国の男性アイドルグループStray Kids「GIANT」が先週の12位から2位にランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。12月5日から8日にかけて大阪ドーム公演を行ったそうで、その影響でしょう。

3位はスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ超ときめき♡宣伝部「ときめきルールブック」が獲得。CD販売数3位、ダウンロード数13位。オリコンでは初動売上5万3千枚で3位初登場。前作「ときめく恋と青春」の初動2万9千枚(1位)からアップしています。

以下もアイドル系が目立つチャートに。4位はスターダストプロモーションの男性アイドルグループ原因は自分にある。「テトラへドロン」が初登場。5位は韓国の男性アイドルグループNCTのサブグループ、NCT DREAM「DREAMSCAPE」が初登場でランクイン。8位は現在、ブルーノ・マーズとのコラボ曲「APT.」が大ヒット中の、韓国の女性アイドルグループBLACKPINKのメンバー、ロゼのアルバム「ロージー」が初登場でランクイン。もちろん「APT.」も収録されています。また、ベスト10返り咲きとして男性アイドルグループNumber_i「No.I」が先週の73位から7位に一気にランクアップし、9週ぶりにベスト10返り咲き。今週、Hot100に「HIRAKEGOMA」がランクインしてきたので、その影響でしょう。

そんな中、非アイドル系で気を吐いたのが6位初登場BUCK-TICK「スブロサ SUBROSA」。昨年10月、ボーカルの櫻井敦司の急逝という非常に残念な出来事がバンドを襲った彼らですが、バンドとしての活動は継続。本作では今井寿が主にボーカルをとっているようです。ちなみにオリコンの初動売上2万枚(6位)は前作「異空-IZORA-」の初動1万7千枚(2位)からアップしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

先週まで4週連続、弌誠「モエチャッカファイア」が4週連続1位を獲得してきましたが、今週は一気に9位にダウン。代わりに1位を獲得したのは、韓国の女性アイドルグループaespaのメンバーKARINAのソロ「UP」でした。aespaは先週、「Whiplash」が9位にランクインしており、そのメンバーのソロ曲がHeatseekersの1位というのは、若干、Heatseekersの趣旨から外れるような気もするんどえすが・・・「Hot100の20位以内にランクインしたことのないアーティスト」というルール上、このような順位になるのでしょう。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートは先週と変わらず柊マグネタイト「テトリス」が5週連続で1位獲得しています。ちなみにDECO*27「モニタリング」は先週も2位をキープ。来週以降の動向も気になります。

今週のHot Albums&Heatseekers&ボカロチャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年12月11日 (水)

Mrs.GREEN APPLE強し!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ロゼ&ブルーノ・マーズの1位が続くと思いきや、今週はMrs.GREEN APPLEが1位獲得です。

Bitter

今週1位はMrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」が先週の6位からランクアップ。ランクイン2週目にして1位獲得となりました。ダウンロード数3位、ストリーミング数及びラジオオンエア数2位、動画再生回数5位で総合1位を獲得。一方、ロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」は今週2位にダウン。1位は3週連続でストップです。ただ、ストリーミング数及び動画再生回数では1位を獲得。ダウンロード数4位、ラジオオンエア数6位は「ビターバカンス」の後塵を拝する結果となりましたが、かなり根強い人気を感じさせられるため、来週以降の1位返り咲きもありそうです。

ちなみにMrs.GREEN APPLEは「ライラック」が今週も4位にランクイン。今週も2曲同時ランクインに。ストリーミング数は6週連続の3位、動画再生回数も先週から変わらず2位をキープ。これでベスト10ヒットは連続34週となっています。

3位には、Number_i「HIRAKEGOMA」が初登場。TOBE所属の元King&Princeのメンバーによる男性アイドルグループによる配信限定シングル。ダウンロード数及びラジオオンエア数1位、動画再生回数4位で総合順位は3位獲得となりました。

続いて4位以下初登場曲ですが、まず5位にはBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE「SAY IT」がランクイン。CD販売数4位、ラジオオンエア数3位。LDH所属の男性アイドルグループ。オリコン週間シングルランキングでは初動売上3万2千枚で4位初登場。前作「HIGHER X」の初動2万3千枚(9位)からアップしています。

7位には韓国の男性アイドルグループTWS「Last Festival」が初登場。CD販売数1位。オリコンでは同作が収録された「Last Bell」が初動売上7万3千枚で1位初登場。本作が初のCDシングルとなります。

8位にはDXTEEN「Level Up」がランクイン。吉本興業と韓国のCJ ENMの合弁によるLAPONEエンタテイメント所属の男性アイドルグループ。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。前作「Snowin'」の初動3万5千枚(1位)よりアップ。

一方、ロングヒット曲ですが、まずはCreepy Nuts。今週、「オトノケ」は3位から4位にダウン。9週連続のベスト10ヒット。ただし、ベスト3ヒットは7週連続でストップです。ダウンロード数は3週連続の5位ながらも、ストリーミング数は2位から4位、動画再生回数も5位から6位にダウンしています。また今週「Bling-Bang-Bang-Born」も8位から11位にダウン。ベスト10ヒットは通算44週で再びストップとなりました。

また今週、AKASAKI「Bunny Girl」が10位にランクイン。これでベスト10ヒットは連続8週となり、ロングヒットとなっています。彼は現在18歳のシンガーソングライター。16歳の時にTikTokで発表した「弾きこもり」で注目を集め、本作がさらなる注目を集め、ヒットを記録しています。ただ、先週の5位から10位に大幅にダウンしており、今後、ヒットがどこまで続くのかも気になるところです。

なお、先週7位だったこっちのけんと「はいよろこんで」は今週12位にダウン。残念ながらベスト10ヒットは通算18週で再びストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&Hot Seekers&ボカロチャート!

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2024年12月10日 (火)

インパクトは十分!

Title:ベスト・オブ・マハラージャン
Musician:マハラージャン

いろいろなポップミュージックを聴いていると、正直、このミュージシャンは何で売れないんだ!?と思うケースは多々あります。特に個人的に結構はまったポップミュージシャンが、思ったほど売れず、徐々にフェイドアウトしてしまうほど残念なケースはありません。森広隆とか、SUEMITSU&THE SUEMITHとか、個人的にはまって、「これは!」と思いつつ、結局売れなかったミュージシャンは何人もいます。

今回紹介するのはこのサイトでも何回か紹介しているポップミュージシャンのマハラージャン。特に2021年のデビュー作「セーラ☆ムン太郎」は話題を呼び注目を集めました。個人的にも2021年にリリースされたアルバム「僕のスピな☆ムン太郎」ではじめて彼の曲を聴いて、「これは!」と思ってはまったのですが・・・ただ、残念ながらこの時点に至ってもブレイクには至っていません。

このマハラージャンというミュージシャン、名前からして大きなインパクトがあるミュージシャン。マネジメント事務所の名前が「油田LLC」という会社なので、その名前にちなんでいるそうです(でもマハラジャはインドの王様で油田は関係ない・・・)。ファンクをベースとしたリズミカルなポップソングが魅力的で、話題となった「セーラ☆ムン太郎」もちょっとブラックミュージックの要素も入った軽快なポップチューンとなっているのですが、同じくファンキーな「いいことがしたい」「適材適所」など、そのリズムが魅力的。また、ディスコ風の「蝉ダンスフロア」やエレクトロチューンの「ラジオネーム オフトゥン大好き」など、ダンスチューンという点を共通項としてバラエティー富んだポップな作品を聴かせてくれますし、「その気にさせないで」のようなアイドルポップのような爽やかなポップチューンも。全体的にいい意味で耳障りのよいポップな楽曲を聴かせてくれており、ヒットポテンシャルは十分ある楽曲が並びます。

さらに大きな魅力であり彼の特徴と言えるのがその歌詞。ちょっとシニカルで、コミックソング的でありつつも真面目なテーマ性も垣間見れる歌詞が魅力的で、ノベルティー的な要素と純粋に真面目なポップソング的な要素がほどよくバランスしている絶妙なポップチューンに仕上げています。

例えば「セーラ☆ムン太郎」はタイトルからしてあきらかにセーラームーンのパロディー風の歌詞なのですが、歌詞の内容については、目立たないところでがんばるような人たちへのエールともとれるような内容に。「蝉ダンスフロア」は長く土の中で時間を過ごし、地上に出てくる蝉をテーマとしつつ、コミカルながらもどこか悲哀さを感じさせる歌詞が特徴的。コミカルな歌詞ながらも、単純に「笑い」を目指したようなコミックソングとは一線を画する歌詞が印象に残ります。

そんなヒットポテンシャルのあるメロも書け、個性もあるミュージシャンながらも、残念ながら現在に至るまで大ブレイクには至っていません。非常に残念でありつつ、これほどのミュージシャンがブレイクできないのが不思議にすら感じてしまうのですが、ただ一方、その理由がなんとなくわからないでもない曲があって、それがエレクトロナンバー「ラジオネーム オフトゥン大好き」。こちら、水曜日のカンパネラでおなじみのケンモチヒデフミが参加した曲なのですが、正直、メロにしろサウンドにしろインパクトの強度がワンランク違います。メロや歌詞もさることながらも、そのサウンドも一度聴けば一発で覚えるような、マハラージャンの他の楽曲に比べてもさらに強いインパクトがあり、ポップミュージシャンがブレイクするためには、このレベルのインパクトがないとダメということかなぁ、ということを感じたりもしてしまいました。

ちなみにこのベスト盤を区切りにマハラージャン、ミュージシャン名義をMHRJとあらため(呼び方は変わらずマハラージャンだそうです)、トレードマークだったターバン姿もやめたそうです。若干迷走気味のような気もしないでもないのですが・・・。とはいえ、彼の曲が魅力的であることは間違いなく、もしまだチェックしていない方がいたら、このベスト盤、是非ともチェックしてほしい1枚。このまま埋もれてしまうにはあまりにも惜しいミュージシャンです。

評価:★★★★★

マハラージャン 過去の作品
僕のスピ☆なムン太郎
正気じゃいられない
ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン


ほかに聴いたアルバム

King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME/King Gnu

Kinggnulive

今年1月に開催された東京ドームでのKing Gnuのライブ音源を収録した配信限定のライブアルバム。「W●RK」では椎名林檎本人もゲスト参加。東京ドームでのライブなだけに、全体的にかなりスケール感を覚える作品。全30曲1時間42分に及ぶ楽曲は、King Gnuの代表曲も並びます。全体的にメランコリックに聴かせる楽曲が多く、いい意味でわかりやすいメロディーラインにKing Gnuのポップ志向も感じられます。ただ、正直、東京ドームレベルの大箱にはちょっと合ってない感じも否めないような・・・。

評価:★★★★

King Gnu 過去の作品
Sympa
CEREMONY
THE GREATEST UNKNOWN

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2024年12月 9日 (月)

90年代に一世を風靡したバンドのレア音源集

キュートなボーカルとポップなメロで、90年代に日本でも一世を風靡したスウェーデンのバンド、The Cardigans。かなり久しぶりに聞いた名前ですが・・・今回、そんな彼女たちのアルバム未収録音源などを収録したレア音源集が2枚同時にリリースされました。

Title:The Rest Of The Best - Vol.1
Musician:The Cardigans

Title:The Rest Of The Best - Vol.2
Musician:The Cardigans

個人的にも、大学時代にoasisやblurと並んで、大好きではまっていたバンドの一つだっただけに、久々に彼女たちのアルバムを聴いてみて、懐かしいという気持ちがいっぱいです。収録されている音源は、シングルのカップリングやサントラへの提供曲、限定リリースされたリミックス版や、日本、フランス、イギリスでリリースされたアルバムのボーナストラックに収録された曲が収録されているそうです。

また、今回、完全に初のアルバム収録曲・・・ばかりではなく、日本及びオーストラリアの限定リリースで1997年にレア音源集「The Other Side Of The Moon」をリリースしており、多くの曲が同作と重複していますし、2008年にリリースした「ベスト・オブ・カーディガンズ」のデラックスエディションに収録されていたレア音源とも重複しています。ただ、両作とも、既に製造中止しているため、本作をリリースする意味はあるのですが。ただ、同作は個人的にリアルタイムで聴いていた音源。うっすらと聴き覚えのあるような曲もあるのは、その時聴いていたからでしょうか・・・。

今回、レア音源集ということなのですが、本作の収録曲を聴き、あらためてThe Cardigansというバンドが実に魅力的だったなぁ、ということを強く感じました。本作収録曲でも、アルバム未収録曲とは思えないようあ充実したポップ作も少なくありません。例えばVol.1の冒頭に収録されている「Pooh Song」もそんな1曲でしょう。1994年にリリースしたシングル「Sick&Tired」のカップリング曲なのですが、非常に温かみがあるサウンドとキュートでポップなメロディーラインが実にカーディガンズらしく魅力的。Vol.2に収録されている「(If You Were)Less Like Me」もメロにインパクトがあり魅力的。(おそらく)後期の作品らしく、ボーカルのニーナには大人の魅力を感じさせますし、バンドもロックテイストが強くなり、力強いサウンドが魅力的。こちらは後期カーディガンズの魅力を感じさせる曲となっています。

一方、ただ単純に、暖かいサウンドとキュートなメロのポップバンドというだけではなく、例えばVol.1収録の「Blah Blah Blah」は微妙にひねくれたメロとサウンドに妙なインパクトがありますし、「War(First Try)」のような、ヘヴィーなバンドサウンドを入れて、ロックな側面を強調した曲も。Disc2では「Hold Me」のようなブルージーなギターを聴かせる作品も聴かせてくれたりします。

収録曲は、Vol.1は比較的初期の作品、Vol.2は後期の作品が収録されているようで、そのため、Vol.1ではおそらく日本でのカーディガンズの一般的なイメージに沿ったような、キュートなポップソングが多く、一方、Vol.2では後期カーディガンズで聴かせてくれたような、哀愁感ただよう大人の雰囲気の楽曲が多く収録されています。レア音源集でありつつ、カーディガンズの歩みも感じられる構成になっていました。

ちなみに大ヒットした「Carnival」「Lovefool」は「Puck Version」として収録。こちらは以前、アナログ盤でリリースされたリミックス盤に収録されていたバージョンのようで、アコギ1本で物憂げな雰囲気で聴かせるナンバー。「Carniva」に至っては、ボーカルがニーナではありません(おそらくギターのピーターか?)。ただ、原曲の持つポップスさはそのままで、これはこれで魅力的な楽曲となっています。

レア音源集ということでデモ音源も多く入っていますが、ただ、どれも楽曲としては完成しており、デモ音源でありがちな、明らかに未完成な作品というのはありません。そういう点も含めて、レア音源集とはいえ、基本的にカーディガンズの魅力をしっかりと伝えてくれるような「アナザーベスト」のようなアルバムに仕上がっていました。これが最初の1枚、というのはさすがに厳しいかもしれませんが、少なくともコアなファン向けではなく、カーディガンズというバンドを知っている方だったら、間違いなくお勧めできるアルバム。今は、彼女たちは活動休止状況のようですが、かのoasisも活動を再開させた今、彼女たちも再び、本格的に活動を再開してくれないかなぁ。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Beautiful Happening/Fairground Attraction

1988年にリリースしたデビューシングル「Perfect」が大ヒットを記録。それに続くアルバム「First Kiss」も大ヒットを記録し、一躍注目を集めるものの、1990年に突然解散したFairground Attraction。「First Kiss」はいまだに名盤という評価を受け、伝説のバンドとすらなっていた彼らでしたが、なんと昨年、奇跡の再結成を発表。そしてついにリリースされた2枚目となるアルバムが本作です。

作品は全編、アコースティックギターがメインのフォーキーで暖かい作風。楽曲によっては、ブルースやカントリーの要素も入れつつ、全体的には優しくも懐かしさを感じさせるフォークロックな作風となっています。そのため、全体的に地味という印象も否めず・・・。とはいえ、メロディアスなメロディーラインは魅力的ではあり、35年以上の年月を経て、いまだにその実力を感じさせてくれる1枚でした。

評価:★★★★

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2024年12月 8日 (日)

もう結成20周年

Title:SUB MACHINE, BEST MACHINE
Musician:UNISON SQUARE GARDEN

バンド結成20周年を記念してリリースされたUNISON SQUARE GARDENのベストアルバム。CD3枚組の本作は、Disc1としてレアトラック集が収録。Disc2、3では過去の代表曲がシングル曲を中心に、リリース順に収録。特に初期の作品については再レコーディングも行われています。さらに初回盤では2015年に行われた日本武道館ライブの模様を収録したBlu-rayを収録。BOX仕様の受注生産限定盤では、ライブやMVを収録したBlu-ray5枚組というボリューミーな内容に仕上がっています。

UNISON SQUARE GARDENといえば、まだまだ若手バンドという括りで見ていたのですが、もうバンド結成から20年もたっているんですね・・・。もっとも、メジャーデビュー2008年なので、そこからは16年なのですが。とはいってもメジャーデビュー16年。昨今ではバンド寿命も長くなったので、デビュー16年というのは、まだ「中堅」くらいのカテゴリーなのですが、時の流れの速さを感じます。

さて、今回のベスト盤、いきなり最初はレア音源集からスタートというちょっと異例(?)な構成になっているのですが、このレア音源集がちょっとユニークで、シングル曲中心のベスト盤と比べると、バンドサウンドを前に押し出した、ロックバンドとしての側面を強く感じさせる曲が目立ちます。

結成後、はじめてスタジオ入りして演奏したという「星追い達の祈り」にしても、分厚いバンドサウンドが目立つ作品となっていますし、「ミカエルは雲の上」にしても、オルタナ系ギターロックのメインストリームを行くようなバンドサウンドを聴かせてくれています。現時点で最新のアルバム「Ninth Peel」では、比較的バンドサウンドを前に押し出して、ロックバンドらしさを感じさせる作風になっていましたが、彼らのとしては、初期から一貫してロックバンド志向であるということを感じました。

じゃあ、それらの作品が彼らに合っているのか、というとちょっと微妙な部分があり、確かに彼らの「売り」であるポップなメロディーや個性的な斎藤宏介のボーカルを生かす形という意味では、ヘヴィーなバンドサウンドを前に押し出したスタイルはあまり合っていない部分も。もっとも、Pixesはじめ、オルタナ系ギターロックバンドの特徴としてヘヴィーなバンドサウンドと相反するようなポップなメロという特徴もあるのですが、正直、彼らのバンドサウンドは、このアルバムの収録曲を聴く限りでは平凡で特に個性もない内容であるため、彼らの「売り」が十分生かされていない感があります。

そういう意味では初期のシングル曲から、バンドサウンドを抑えめにして歌やメロを前に押し出したスタイルを取った彼らに関しては彼らの慧眼を感じさせます。実際、やはりシングル曲の方が彼ららしさがしっかり出ていて、かつボーカルのスタイルにもピッタリ。特にDisc2から3にかけて楽曲の勢いはどんどん増していき、ブレイクポイントとなった「リニアブルーを聴きながら」「シュガーソングとビターステップ」あたりは彼らの勢いを最も感じさせます。

その後の曲、特にDisc3からの曲に関しては、同じような軽快でポップな作品がメインということもあって、正直、少々マンネリ気味というのは否めないのですが、それでも比較的最近の作品「kaleido proud fiesta」もインパクト十分な作品で、彼らの魅力を十分に感じることが出来ます。挑戦心という意味ではちょっと薄いのですが、ここ最近の作品に関しては、中堅バンドらしく安定してきた、と言えるのかもしれません。

そんなUNISON SQUARE GARDENの20年を総括した・・・とも言えそうなベストアルバム。3枚組はそれなりのボリュームですが、ポップな作品が多く、いい意味で聴きやすい内容でした。ここ最近、若干大きなヒットに乏しいような感もあるのですが、これだけインパクトのあるポップソングを書けるのならば、また近いうちに大きなヒットソングも生まれそうです。

評価:★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy
MODE MOOD MODE
Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜
Patrick Vegee
Ninth Peel

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2024年12月 7日 (土)

懐かしくも新しい2000年代にフォーカス

Title:Y2K!
Musician:Ice Spice

最近、アメリカで注目度が急速に高まっている女性ラッパーIce Spice。昨年リリースした「Like...?」は当サイトでも紹介しましたが、昨年はイギリスのシンガーソングライターPinkPanthernessとコラボした「Boy's a Liar Pt.2」がビルボードで3位、Nicki Minajとコラボした「Pincess Diana」が4位、さらには同じくNickiとコラボした「Barbie World」が7位と3曲がベスト10入り。一気に注目を集めました。

前作「Like...?」はEP盤でしたので、純然たるオリジナルアルバムとしては初となる本作。「Y2K」というタイトルは、ある一定以上の世代の方についてはちょっと懐かしさを感じさせる言葉ですが、彼女の誕生日である2000年1月1日にちなんでつけられた名前だとか。しかし、誕生日が2000年の1月1日というのはすごいですね・・・。

楽曲は、前作同様、全編、強いエレクトロビートがとにかく耳を惹く、リズミカルでダンサナブルなトラックがインパクト大。ちょっと不気味な雰囲気の「Phat Butt」からスタート。続く「Oh Shhh...」ではTravis Scottがゲストで参加。ただ、どちらかというとTravis Scott的な要素以上にIce Spiceらしさが前に出たような作品に。逆に同じくラッパーのGunnaが参加した「...Bitch I'm Packin'」ではトラップ色が強くなっており、こちらはゲスト側の影響でしょうか。

他にもメロディアスなフレーズが流れ、ポップに聴かせる「Did It First」や、ビートにトライバルな要素が加わった「Gimmie A Light」「GYAT」、どこかメランコリックさを感じるラップに、ポップさを感じる「Think U The Shit」など、バラエティーを加えつつ、ただ、全体的にはヘヴィーなエレクトロのビートをリズミカルに聴かせるスタイルのラップがメイン。正直、そういう意味では似たようなタイプの曲が多いのですが、一方でアルバム全体としても11曲25分という短さで、そのため、似たタイプの曲が多くても、最後まで飽きることなく一気に聴いてしまえるアルバムとなっていました。

また、今回のアルバムの大きな特徴なのが2000年代前後のヒット曲をサンプリングしている点。例えば「Phat Butt」ではDem Franchize Boyzの2004年のヒット曲「Oh I Think Dey Like Me」をサンプリング。「Gimmie A Light」では、Sean Paulの2002年のナンバー「Gimme the Light」からサンプリングしているなど、2000年前後のカルチャーを積極的に取り込んでいるとか。最近、2000年前後のファッションが再度注目を集めているそうですが、彼女もまた、流れに沿ったアルバムとなっています。日本でもかつて70年代が注目を集めたり、80年代が注目を集めたりしましたが、既に20年以上前になった2000年代。懐かしくも一定以下の世代には逆にある種の新しさを感じさせる点、注目を集めている要素でしょうか。(2000年代に青春期を過ごした世代が、会社の上席者となり、いろいろな意思決定が出来るような世代になった点も大きいかもしれませんが)

そんな懐かしくも新しい作品。ただ、HIP HOP等の詳しくない方にとっては、どこまで懐かしさを感じるのかは微妙なのですが…。ただ、リズミカルなエレクトロビートを軸とした楽曲は、HIP HOPをあまり聴かない層にとっても耳なじみやすく、25分という短さもあって、飽きることなく最後まで楽しめるアルバムになっていました。シングルのヒットにもかかわらず、本作はビルボードのHot Albumsではベスト10入りは逃しており、まだまだ彼女自身の人気の面ではこれからの部分もあるのですが、今後、さらなる人気の上昇も期待されます。今、もっとも注目すべきHIP HOPミュージシャンの一人であることは間違いないでしょう。今後の活躍にも注目です。

評価:★★★★★

Ice Spice 過去の作品
Like...?


ほかに聴いたアルバム

Absolute Elsewhere/Blood Incantation

アメリカのデスメタルバンドによる4枚目のアルバム。彼らのアルバムを聴くのは前々作「Hidden History Of The Human Race」以来となるのですが、ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドとデス声という組み合わせは、いかにもデスメタル然とはしているものの、今回のアルバムではエレクトロサウンドを取り入れたり、トライバルなリズムを取り入れたり、様式美に陥らない様々な試みがユニーク。バンドとしての挑戦心も感じられる作品でした。

評価:★★★★

Blood Incantation 過去の作品
Hidden History Of The Human Race

Maple to Paper/Becca Stevens

ジャズやフォークのジャンルで活躍するアメリカのシンガーソングライターによる新作。本編はすべて弾き語りによる作品で、アコースティックギターのみの演奏をバックにメランコリックに歌い上げる優しいボーカルが魅力的な作品に。清涼感あるボーカルで、時には優しく、時には切なくメランコリックに聴かせる歌声も魅力的な作品でした。

評価:★★★★

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2024年12月 6日 (金)

ブルースへの愛情を感じさせるコラム

今日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

ブルースバンド、ローラー・コースターのギタリストであり、ブルース評論家の第一人者として活躍していた小出斉。今年1月に66歳という若さで惜しまれつつこの世を去りました。そんな彼が、1993年から2017年まで、実に24年にわたってギター・マガジン誌に掲載していたコラム「ブルース雨アラレ」。その全285回に及ぶ連載を完全網羅したのが本作「小出斉のブルース雨アラレ~選りすぐりの名盤、迷盤、700枚超のディスク紹介を添えて~」です。

285回に及ぶ連載をすべて収録しているというだけあって、かなりのボリューム感。ページ数は592ページにも及び、書籍だと、まるで辞書のような分厚さとなっています。それだけ、この24年にわたる歴史の重み(?)を感じさせる1冊となっています。

ただ、本書、サブタイトルで「700枚超のディスク紹介を添えて」と書かれていますが、期待するようなブルースのディスクガイドではありません。ここで紹介されているアルバムのほとんどは、ブルースの代表的な名盤、ではなく、連載当時にリリースされた新譜やリイシュー盤、企画盤ばかり。それが定番のアルバムとなり、今でもチェックすべきアルバムも少なくはありませんが、ブルース入門的にアルバムを聴こうとするのならば、彼が残した名著「ブルースCDガイドブック」などの方が今でも有効です。

本書でメインとなるのは、小出斉のエッセイ的なコラム。連載スタート当初は、CDのアルバム紹介がメインとなっていたのですが、中盤以降、アルバム紹介は徐々に減り、ほとんど彼の日々の生活やブルースへの想い、また自身のバンドのライブ活動などに関するエッセイがメインとなってきます。そのため本作は、ブルースの本、というよりも、あくまでも小出斉の本、というのが主眼となっていました。

また彼は、評論家であるため読ませる文章を書くのは間違いありませんが、正直、エッセイストとして特筆すべき視点のエッセイを書く・・・といったタイプではありません。そのため、小出斉にある程度思い入れのある方ではないと、なかなかこのボリューミーなコラムを読むのは難かしいかもしれませんし、そもそも本書の意義として、偉大なブルース評論家、小出斉の業績を残す、という記録的側面が強いのかもしれません。

ただ、そんな中で強く感じるのは、何よりも小出斉のブルースに対する愛情の深さでした。序盤から最後まで、昔のブルースミュージシャンのリイシューから、現役のブルースミュージシャンの新譜までしっかりとチェックし、愛情を感じさせるレビューを記載していますし、自らのライブ活動に関してのコラムに関しても、ミュージシャンとして本当にブルースを演奏をするのが楽しいんだろうな、ということはコラムを通じても伝わってきます。そういう意味でも彼のコラムを通じて、ブルースという音楽のすばらしさを感じさせるコラムになっていました。

また、本書を読んでもう一つ感じたのは、この24年を通じてのブルースをめぐる環境の大きな変化でした。このコラムがはじまった1993年の時点においては、まだ存命なブルースのレジェンドたちも少なくなく、リイシューも含めて多くのブルース関連のCDが発売され、さらに国内においても本場のブルースミュージシャンが来日・演奏するブルースのライブイベントがいくつか開催されていました。

それがこのコラムが終盤を迎える2010年代においては、ほとんどのブルースのレジェンドがこの世を去り、国内のブルースイベントは終焉を迎え、ブルースの新たなCDもあまり発売されなくなりました。ディスクガイドとしてはじまったコラムが、小出斉自身のエッセイとなってくるのはブルースの新たなCDのリリース数の激減も大きな要因だったのでしょう。単純にCDというメディアがストリーミングに変化していった、という理由もあるのでしょうが、それ以上にブルースの音源がほぼCDで出し尽くしてしまった、というのも大きな理由なのでしょう。この24年という年月はブルースというジャンルにおいては、あまりに長い年月だったということを実感させられました。

そんな訳で、ブルース関連書籍というよりも、小出斉個人のエッセイという要素が強い本作。そういう意味では純粋なブルースの入門書的にはあまりお勧めできません。ただ、小出斉のブルースへの愛情を通じて、ブルースという音楽のすばらしさを感じされるコラムであることは間違いなく、そういう意味でもブルース好きにとっては読んで損のない1冊です。

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2024年12月 5日 (木)

77歳でのベスト3入り

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsで注目なのは2位に初登場した小田和正「自己ベスト-3」でしょう。CD販売数2位、ダウンロード数3位。オリコン週間アルバムランキングでも2位にランクインしているのですが、77歳3か月でのベスト3入りは吉田拓郎が「ah-面白かった」で達成した76歳3か月を上回り、史上最高齢での記録だそうです。全体的にミュージシャン寿命が長くなってきている中、今後も記録は更新されそうですが、ただ、ベスト盤とはいえ新曲も含む本作。80歳間近になりつつ、まだ現役で人気を保ち続けているというのは驚かされます。末永く、お元気で!ちなみにオリコンの初動売上5万1千枚は直近のオリジナルアルバム「early summer 2022」の初動4万5千枚(3位)からアップしています。

一方、1位に初登場したのは旧ジャニーズ系男性アイドルグループHey!Say!JUMP「H+」。CD販売数1位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上16万枚で1位初登場。前作「PULL UP!」の初動19万9千枚(1位)からダウンしています。

3位には韓国の男性アイドルグループATEEZ「GOLDEN HOUR:Part2」が初登場。オリコンでは先週のベスト50圏外から2週目にして、4万1千枚を売り上げて3位初登場。前作「GOLDEN HOUR:Part1」の初動4万2千枚(1位)から微減。

続いて4位以下の初登場盤は、4位にモーニング娘。'24「Professionals-17th」が初登場。17枚目となるオリジナルアルバム。5位にはボカロPとしても活躍しているEve「Under Blue」が初登場でランクイン。6位には龍宮城「裏島」がランクイン。ロックバンド女王蜂のアヴちゃんプロデュースによる男性アイドルグループのデビュー作。7位初登場は香取慎吾「Circus Funk」。配信限定アルバムで、ダウンロード数は本作が1位。最後10位にはVTuberグループにじさんじ「HE4RT BE4T!」がランクイン。四季をテーマとした4曲入り(+インスト4曲)のミニアルバム。


続いて各種チャートですが、なんと先週を最後にTik Tok Weeklyが突然の終了。ほとんど何のアナウンスもない状況での終了となっており、理由は不明なのですが・・・TikTokからの情報提供に基づくチャートだけに、両者の情報提供契約が何かの理由で終了したのでしょうか。

今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、今週も弌誠「モエチャッカファイア」が4週連続通算9週目の1位を獲得しています。ただし、動画再生回数では8位から11位にダウン。Hot100でも65位から75位にダウンしています。そろそろトップは入れ替わりか?


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも先週に引き続き柊マグネタイト「テトリス」が4週連続で1位獲得しています。ただ、こちらもDECO*27「モニタリング」が先週の3位から2位にじわりと順位を上げてきており、そろそろトップの入れ替わりがあるのでしょうか?

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年12月 4日 (水)

ロゼ&ブルーノ・マーズのヒットが続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

かなり中毒性の強いサビで、ロングヒットが続きそうです。

Apt

今週1位はロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」。これで3週連続の1位。ストリーミング数が4週連続、ラジオオンエア数も2週連続1位を獲得しているほか、動画再生回数も今週1位を獲得。1位独走態勢に入ってきた感があります。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「消費期限」がランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上41万8千枚を売り上げて1位初登場。

3位はCreepy Nuts「オトノケ」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は4週連続の2位、ダウンロード数は2週連続の5位、動画再生回数は3位から5位にダウン。ただ、今週でついに8週連続のベスト10ヒット。ベスト3ヒットも7週連続。1位獲得週は1週のみに留まっており、「Bling-Bang-Bang-Born」ほどではないものの、2作連続のロングヒットを記録。タイアップ効果もあるものの、ミュージシャンとしての勢いを感じさせます。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」も今週、先週と変わらず8位をキープ。ベスト10ヒットを通算44週に伸ばしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲はあと1曲のみ。Mrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」が6位に初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数8位、動画再生回数10位。映画「聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~」主題歌彼ららしい祝祭色あふれる明るいポップスに仕上がっています。ちなみにMrs.GREEN APPLEは「ライラック」も先週から変わらず4位をキープ。ストリーミング数は5週連続の3位。動画再生回数は4位から2位にアップしています。これで33週連続ベスト10ヒットに。

また、ベスト10返り咲き曲も1曲。韓国の女性アイドルグループaespa「Whiplash」が先週の11位から9位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数は4週連続の5位をキープしています。

ロングヒット曲はこっちのけんと「はいよろこんで」が先週から変わらず7位をキープ。ダウンロード数は先週から変わらず8位、ストリーミング数はワンランクダウンの9位、動画再生回数は5位から7位にダウン。これで通算18週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週ベスト10に返り咲いたOmoinotake「幾億光年」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは通算33週でストップ。ただ、今後、紅白出演に合わせて再び返り咲きそう。

今週のHot100は以上。Hot Albums&各種チャートはまた明日に!

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2024年12月 3日 (火)

挑戦的でありつつ、懐かしさと暖かさも

Title:EELS
Musician:Being Dead

Eels

アメリカはテキサス州オースティンで活動する3人組インディーバンド、Being Deadの2枚目となるアルバム。デビュー作「When Horses Would Run」も一部で注目を集めたようですが、この2枚目となるアルバムは各種メディアでも高い評価を集め、注目のバンドとなっているようです。

楽曲は、オルタナ系のギターロックを主軸としつつ、同時にフォークソングの影響を受けているような楽曲で、オルタナ系ギターロックのドリーミーで、時としてダイナミックさを感じるサウンドに魅了されつつ、同時にフォークソングのなつかしさを同居している点が大きな特徴。また、ポップでキュートなメロディーラインは、オルタナ系ギターロックバンドとフォークソングの共通項とも言えるのでしょう。

実際、1曲目「Godzilla Rises」はまさにそんなギターロックのアレンジながらもメロディーラインはどこか懐かしさを感じさせるフォークロック風。続く「Van Goes」はむしろ80年代あたりのインディーギターロックを彷彿とさせる懐かしさを感じさせるポップなギターロックになっていますし、かと思えば「Nightvision」は、こちらはむしろ70年代的とすら感じさせる、懐かしいフォークロック風の楽曲に。

さらに「Love Machine」などは女性ボーカルで軽快なポップスとなっており、こちらはむしろネオアコ的な要素を感じさせる楽曲に。かと思えば「Gazing at Footwear」は不穏な雰囲気のノイジーなギターを前に押し出した作品となっており、リバーブをかけたボーカルも加わり、こちらはむしろサイケな作風となっています。

基本的にキュートでどこか懐かしさと暖かさを感じさせるポップなメロを軸に、バラエティー富んだ作風を聴かせる彼らですが、もうひとつ大きな魅力は、その歌を爽やかさを感じさせる男女のツインボーカルで歌われているという点。今回、詳細なバンドプロフィールは今一つわからなかったのですが、ジャケ写を見る限り、おそらく女性2人+男性1人というバンド編成のようですが、男女ボーカルを上手く組み合わせたボーカルスタイルが大きな魅力になっています。

例えば「Problems」では男女のボーカルのハモリが楽曲に暖かさを与えていますし、「Ballerina」は男女のやり取りがどこかコミカルさを感じさせる軽快でリズミカルなギターロックのナンバーとなっています。一方で「Big Bovine」では清涼感ある女性ボーカルで哀愁感漂う楽曲に仕上げていますし、全体的に非常に男女ボーカルの声質を上手く使い分けた楽曲が並んでいるように感じました。

フォークソングとオルタナ系の融合という意味では、同じようにカントリーとシューゲイザーの両方から影響を受けたWednesdayも思い起こされるのですが、アメリカではこの手のバンドが流行りつつあるのでしょうか。ただ、挑戦的な作風がありつつも、懐かしさと暖かさを同居されたメロディーやサウンドが非常に魅力的。今後、さらに注目を集めそうなインディーロックバンドの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Huey Lewis & The News

1985年に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌として起用された「The Power Of Love」が大ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしたアメリカのロックバンド、Huey Lewis&The News。日本でも人気を博した彼らの、本作は日本でのシングルを集めたおなじみのシリーズ。もちろん、前述の「The Power Of Love」も収録されています。彼らは現在でも活動を継続しているようですが、やはり基本的に人気を博していたのは80年代。そういうこともあって、楽曲は全体的にいかにも80年代なロックというイメージが。とにかくアップテンポで明るく、時としてシンセも加わったスタイル。徹底的に陽気さが前面に押し出されている作風は、社会全体が明るかったんだろうなぁ、ということを感じさせます。ポップな楽曲が素直に楽しいアルバムでした。

評価:★★★★

Electric Lady Studios:A Jimi Hendrix Vision/Jimi Hendrix

最近、権利関係が整理され、次々と新たな音源がリリースされているJimi Hendrix。今回は、彼の逝去直前の1970年6月から8月にかけて、エレクトリック・レディ・スタジオで収録された39曲が収録。うち38曲が未発表音源となっています。さらに、レコーディングスタジオ誕生を追ったドキュメンタリー「エレクトリック・レディ・スタジオ:ヴィジョン」がBlu-rayでついてくるという豪華なボックスセットになっています。ただ、未発表音源と言え、基本的には既発表曲のテイク違い。想像力あふれるジミのギタープレイはやはりカッコよく、魅力的とはいえ、デモ的な作品も多く、CDだけで3枚組というフルボリュームのアルバムは、やはりどちらかというとマニア向けといった感は否めません。熱心なファンなら、そのテイク違いを聴き比べて、曲の変化を楽しめそうですが・・・。

評価:★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY
Live in Maui
Los Angeles Forum - April 26, 1969(The Jimi Hendrix Experience)
Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl: August 18, 1967

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2024年12月 2日 (月)

KANへのオマージュソングで感涙

Title:A museMentally
Musician:スキマスイッチ

2023年にデビュー20周年を迎えたスキマスイッチ。今年はトリビュートアルバムのリリースがあったり、地元名古屋で「スキマフェス」なるイベントを行ったりと、新たな一歩を歩み出した彼ら。ただ、新作としては2021年に2枚同時にリリースされた「Hot Milk」「Bitter Coffee」以来となる、約2年7ヶ月ぶりのニューアルバムとなりました。

今回のアルバムで、なんといってもまずは特筆しなくてはいけないのは、9曲目に収録されている「魔法のかかった日」でしょう。本作は、2023年に逝去した、KANに対するオマージュソング。出だしのフレーズは、完全にKANの名曲「Songwriter」を彷彿とさせますし、そこに流れるピアノのアルペジオは、KANの楽曲によく取り入れられる、ビリージョエル直系のピアノのフレーズを彷彿とさせますし、歌詞の中には「青春の風」「ときどき雲と話をしよう」「涙の夕焼け」「遥かなるまわり道の向こうで」「世界でいちばん好きな人」「永遠」とKANの代表曲のタイトルが織り込まれています。

最初、この曲に関しては、前情報が全くなしに聴いて、最初のイントロからして「KANちゃんっぽいなぁ~」と思いながら聴いたのですが、歌詞に次々とKANの曲のタイトルが登場し、「これは、KANに対するオマージュなのでは?」と気が付きました。そうして歌詞を聴くと、あきらかにKANに対する敬愛の念を感じさせるような内容となっており、正直、KANのファンとして、聴いていて涙が流れてきました。まさにスキマスイッチのKANに対する愛情を強く感じさせる楽曲になっています。

もともと、スキマスイッチとKANの関係といえば、2017年にリリースされた、スキマスイッチの曲をリアレンジした「re:Action」というアルバムの中で、スキマスイッチの曲を分析し、解体し、新たなスキマスイッチっぽい新曲「回奏パズル」という曲をKANが作り上げたことがあったのですが、この曲は、まさに「回奏パズル」に対するスキマスイッチからの回答といっていい楽曲とも言えるでしょう。スキマスイッチの実力も感じさせる楽曲にもなっていました。

この曲を含んで今回のアルバム、スキマスイッチのポップミュージシャンとしての力量のよくわかる、バラエティー富んだポップアルバムに仕上がっていました。初期のスキマスイッチらしさを感じる、彼らの王道路線といえる「逆転トリガー」や、恋人との日常でのよくあるような喧嘩の風景を描いたコミカルな「ごめんねベイビー」、ピアノの音色が軽快な、明るいポップチューン「コトバリズム」や、さらにストリングスとピアノでクラシカルに聴かせるバラードナンバー「君と願いを」と、いい意味で安定感を覚えるポップチューンが並びます。

そんな中でもブルージーなバラードナンバー「遠くでサイレンが泣く」や、同じくブルージーなミディアムチューン「Lonelyの事情」あたりは、彼らの曲の中でも比較的洋楽テイストも強く、かつ「大人」な雰囲気も感じさせます。ここらへんにも、20周年を迎えてベテランの領域に入ってきた彼らの、ミュージシャンとしての力量を感じさせました。

個人的に、この「魔法がかかった日」が収録されているだけで非常に惹かれる作品なのですが、それを差し引いても、ここ数作の中でも特によく出来た秀作だったように感じます。バラエティー富んだ作品には、安定感を覚えると同時にベテランとしてのある種の余裕も感じました。彼らの実力を強く感じさせてくれる作品でした。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~
スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
スキマスイッチ TOUR 2020-2021 Smoothie
Hot Milk
Bitter Coffee
スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait"
POPMAN'S WORLD -Second-
SUKIMASWITCH 20th Anniversary "POPMAN'S WORLD 2023 Premium"


ほかに聴いたアルバム

OVER HEAD POP/浅井健一

一時期ほどのオーバーワーク気味ではなくなったものの、今年はUAと組んだバンドAJICOとして久々にEPをリリースするなど、相変わらず精力的な活動が目立つ浅井健一。AJICOのEPに続いてリリースされたのがソロ名義となるアルバム。1曲目の「Fantasy」は彼らしい、くすんだ感じのギターサウンドと、アイロニックな歌詞が非常にかっこよく、前半に関しては、これぞベンジーといった感じの、退廃的な雰囲気漂うカッコいいロックチューンが並んで、さすがの実力を感じさせるのですが、比較的似たようなタイプの曲が多いだけに後半はちょっと飽きが来るのが最近のベンジーの作品の共通項といった感じで・・・。そういう意味ではAJICOみたいな別の才能を加えると、ベンジーの実力ももっと生きるのかもしれませんが。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
Sugar(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
BLOOD SHIFT
Caramel Guerrilla
Mellow Party -LIVE in TOKYO-(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)

Back To The Pops/GLAY

2023年にデビュー30周年を迎えたGLAY。オリジナルアルバムとしては約3年ぶりのため、30年目を迎えた彼らにとって30年後初となるアルバムですが、本作のテーマ「30年目のGLAYのデビューアルバム」だそうです。そのため、全体的にいかにもGLAYらしい楽曲が並んだ本作。「会心ノ一撃」あたりはいかにも90年代っぽい作品ですし、「その恋は綺麗な形をしていない」もいかにもGLAYらしい作品。「whodunit」では韓国の男性アイドルグループENHYPENを迎え、デジタルロックやラップの要素を加えた作品なのですが、基本的なメロはGLAYらしい作品ですし、GLAYのイメージをガラリと変えることなく、そこに適度に「目新しさ」を加えてくるあたりも彼ららしいといった印象。GLAYとして求められることにきちんと答えているという点、目新しさはない一方、ここらへんのバランス感覚をしっかりとれるあたりはさすがだな、とも感じさせます。良くも悪くも、いかにもGLAYらしいアルバムでした。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~
REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜
FREEDOM ONLY
HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-

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2024年12月 1日 (日)

賛否のあるロックバンド

Title:BOYS&GIRLS
Musician:ヤングスキニー

最近、特に若い世代を中心に話題になっている(らしい)人気上昇中のロックバンド、ヤングスキニー。本作に収録されている「ベランダ feat.戦慄かなの」がTikTokチャートで1位を獲得するなど、高い人気を確保しています。ただ一方で、かなり批判も多く受けているバンドで、ネット上で検索すると、かなり辛辣な評価も容易に見つけることが出来ます。ルックス面でアイドル的に人気を確保しているだけ、とか、ファンの女の子に手を出したとか、音楽的に直接関係ない評価もありますし、「恋愛の歌詞しか書かない」「歌詞が薄っぺらい」など、音楽性に具体的に言及した批判も少なくありません。どちらかというとネット上ではネガティブな評価が多くみられるようにも思います。

とはいえ、最近、人気上昇中のバンドであることは間違いなく、私も2枚目となるアルバムをチェックしました。ただ、このネガティブな評価で、いかにもひ弱なバンド、というイメージをもって聴くと、ちょっと意外に感じるかもしれません。イントロに続く事実上の1曲目「有線ラジオで僕の歌が流れていたらしい」は、力強くパンキッシュでノイジーなバンドサウンドが流れてきますし、「死ぬまでに俺がやりたいこと」もかなりパンキッシュなナンバー。「禁断症状」もかなり力強くパンキッシュな作品になっています。

特に中盤、TikTokでヒットを記録した「ベランダfeat.戦慄かなの」のようなメロウな女性ボーカルを入れたラブソングや、「愛すべき日々よ」のようなポップなギターロックなど、ひ弱な側面も感じる部分もあるのですが、ただアルバムとしては、この「ひ弱さ」もバリエーションのひとつとして受け止められるような構成で、全体としてはむしろバンドとしての骨太な部分も感じさせる、しっかりと「ロック」しているサウンドに仕上がっていたと思います。

ただ、じゃあ私がこのバンドを高く評価し、ネガティブな評価に関しては事実誤認と思っているか・・・というとそうでもありません。アイドル的とか、ファンに手を出した、とかの評価はわからないのですが、歌詞に関してのネガティブな評価は確かに納得できるという印象も受けてしまいました。

歌詞に関してかなりネガティブに感じてしまったのは、彼らの、というよりもボーカルのかやゆーの書く歌詞が、かなりいきっている一方、紋切り的で、視点に面白みがない、という点を強く感じたからです。例えば「死ぬまでに俺がやりたいこと」では、タイトル通り、死ぬまでにやりたいことを歌詞に羅列しているのですが、その「やりたいこと」が陳腐で面白味がなく、最後は「あの子を幸せにしたい」という、お決まりのオチ。

「禁断症状」にしても

「最近はなんだかうざってぇ社会になった
コンプラがどうとかうるせぇ社会になった」
(「禁断症状」より 作詞 かやゆー)

なんて、ネット上であまりにも頻発してそうな陳腐な表現に正直ちょっとうんざり。ロックについて歌った「精神ロック」や、女性に対して暴言気味の歌詞を書いている「不純愛ラブストーリー」など、歌詞のテーマについては悪くはないものの、いかにもいきったような歌詞なのに、視点が非常に平凡で、「どう、こんなこと歌えちゃう俺、すごいだろ?」みたいな部分がどうにも鼻につく、確かに歌詞については薄っぺらさを指摘されても否めない内容になっていたと思います。

ただ、とはいえこういう薄さもある種の「若さ」と言えなくもなく、若手バンドとして(生)暖かく見守っていっても悪くはないバンドではないか、とも一方では感じます。ボーカルのかやゆーは現在22歳。うーん、20代前半までかな、こんな歌詞が書いて許されるのは。そこらへん、今後、どううまく脱皮していくのかが注目されるところですが、ちゃんと「大人」のバンドになれるように期待しつつ。

評価:★★★★

ヤングスキニー 過去の作品
不器用な私だから


ほかに聴いたアルバム

REPSYCLE~hide 60th Anniversary Special Box~/hide

今でも高い人気を誇るX JAPANのギタリストであり、1998年に33歳という若さでこの世を去ったhideの、生誕60周年を記念してリリースされたボックスセット。彼が生前にリリースした3枚のソロアルバムの最新リマスターと、昨年開催されたhide with Spread Beaverのワンマンツアーの東京公演の模様を収めたBlu-rayが収録された内容となっています。彼の生前のソロアルバムを聴くのは、実は今回はじめてとなるのですが、あらためて感じるのはメタルからインダストリアル、さらにはオルタナ系ギターロックまで、幅広い彼の興味がわかると同時に、生前、いろいろな音楽を演りたかったんだな、ということを作品からは感じられます。その結果、若干、ごちゃごちゃしてしまっている部分も否めないのですが、そんなごちゃごちゃ感も含めて、今からするとhideの大きな魅力だったように感じます。あらためて、hideの才能を感じさせられるボックスセットでした。

評価:★★★★★

hide 過去の作品
子 ギャル

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