魔法学校/長谷川白紙 LOST CORNER/米津玄師 残心残暑/aiko 自然のコンピューター/OGRE YOU ASSHOLE My Favorite Things/柴田聡子
・・・正直言って、かなりの不作気味です。パッと、今年の10枚が思いつかないくらいで、どうしちゃったんだろう、といった感じがします。正直なところ、折坂悠太もZAZEN BOYSもOGRE YOU ASSHOLEも十分年間ベストクラスの傑作とはいえ、自己最高傑作か、と言われると「前作の方がよかったかな・・・」と思ってしまいますし・・・。全体的に不作気味の今年の邦楽シーンでした。
洋楽編
こちらの上半期ベスト5は・・・
1位 Hovvdy/Hovvdy 2位 BLEACHERS/Bleachers 3位 Cowboy Carter/Beyonce 4位 What Now/Brittany Howard 5位 Liam Gallagher & John Squire/Liam Gallagher & John Squire
これに続く下半期のベスト盤候補は・・・
Sentir Que No Sabes/Mabe Fratti Why Lawd?/NxWorriesNo Name/Jack White Sky Hundred/Parannoullife till bones/Oso Oso Cutouts/The Smile EELS/Beeing Dead CHROMAKOPIA/Tyler, The Creator
昨年11月、癌のため61歳という若さでこの世を去ったシンガーソングライターのKAN。このサイトでも何度か取り上げていた通り、個人的にも大好きなミュージシャンだっただけに、かなりショックを受けた出来事でした。それから1年、ここに来て彼を偲ぶ様々なアイテムがリリースされています。今回紹介する映像作品もそのひとつ。「KAN BAND LIVE TOUR 2022 25歳」。結果として彼の最期のライブツアーとなってしまった同タイトルのツアーから、2023年1月10日にZepp DiverCity Tokyoで行われたライブの模様をほぼ完全収録しています。
3位はAqours「永久hours」が初登場でランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外。メディアミックス作品「ラブライブ!」に登場する架空のアイドルグループから派生した声優アイドルグループ。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万1千枚で1位初登場。前作「BANZAI! digital trippers」の初動2万5千枚(3位)からアップしています。
特に後半の「Take Your Mask Off」では「And I hope you find yourself/And I hope you take your mask off」(そしてお前が自分自身を見つけられることを望む/そしてお前がそのマスクをはずせることを望む)と、まさに中年を迎えて自分らしさとは何か、迷うような姿をストレートに描写した、内省的な歌詞も特徴となっています。
今や日本のネオソウル/シティーポップを奏でるバンドとして、実力人気共に屈指のバンドとなったcero。昨年リリースしたオリジナルアルバム「e o 」も非常に高い評価を受けましたが、今回はそれに続くアルバムとして、彼ら初となるライブアルバムをリリースしました。主に昨年12月に恵比寿リキッドルームでのライブの音源を中心に収録した作品に。彼らは、ライブでそのアレンジを大きく変化させてくるバンドなだけあって、原曲とはまた異なる味わいのある、ライブ音源ならではのアレンジが楽しい作品となっています。
ただ、とはいってもライブアレンジで原曲の雰囲気がガラリと変わった作品はなく、基本的にライブ向けに、よりリズムの部分を強調したり、サイケさを増してドリーミーな要素を強めたりと、ライブならではのアレンジがほどこされていました。また、今回のライブアルバム、「e o 」リリース後のライブということもあって、同作からの作品が多い一方、彼らの代表曲も多く収録されており、そのため、ベスト盤的な楽しみ方もできる作品となっていました。
ご存じ、日本でも高い人気を誇るイギリスのテクノユニット、Underworldのニューアルバム。今年はサマーソニックでもヘッドライナーをつとめるなど、相変わらずの人気の彼ら。直近のアルバム「DRIFT SERIES 1」から早くも5年というインターバルを経てのアルバムとなっています。また、前作「DRIFT SERIES 1」も、「DRIFT」というプロジェクトに沿ってリリースされたEPの寄せ集め的なアルバムだったので、純然たるオリジナルアルバムとしては2016年の「Barbara Barbara, We Face a Shining Future」以来、実に約6年半ぶりとなるニューアルバムとなりました。
さらにこれらのナンバーに続く「and the colour red」もリズミカルなビートとミニマルなサウンドで心地よくトリップできそうなアシッドハウスな楽曲。そしてそれに続く「Sweet Lands Experience」まで、前半はUnderworldの王道を行くような、聴いていて素直に心地よいリズミカルなテクノチューンが続きます。
ただ、ちょっと雰囲気が変わるのはここからの後半で、全体的にメランコリックな雰囲気を漂わせる曲調が特徴的。哀愁感のある歌が入る「Burst of Laughter」や、Underworldらしい高揚感あるリズムを聴かせてくれるものの、全体的にメランコリックなサウンドを聴かせる「King of Haarlem」。さらには、「denver luna」のアカペラバージョンも登場し、こちらは曲が持っていたメランコリックな側面をより強調したアカペラとなっていました。
さらに終盤の「Gene Pool」「Oh Thorn!」はアップテンポながらもドリーミーな雰囲気でちょっとチルアウト気味。さらにアメリカのフォークシンガーNina Nastasiaをボーカルに迎えた「Iron Bones」も同じく、フォーキーな歌モノの楽曲。さらにラストの「Stick Man Test」はなんとギターのアルペジオでしんみり聴かせる作品で締めくくり。終盤はチルアウトな展開でアルバムは幕を下ろします。
In Session(Deluxe Edition)/ALBERT KING WITH STEVIE RAY VAUGHAN
ブルースギタリストのレジェンド、Albert Kingと、白人ブルースギタリストの代表的なミュージシャン、Stevie Ray Vaughanによる歴史的なセッションをおさめたアルバム。もともとは1983年12月にカナダでのテレビ番組用に収録されたライブ音源。1999年にCDリリースされた後、2010年にはDVD付で再リリース。さらに今回、いままでCD音源では未収録だった「Born Under a Bad Sign」、「Texas Flood」、「I'm Gonna Move to the Outskirts of Town」の3本を追加収録。リマスターを施されて完全版としてリリースされました。2人のレジェンドギタリストの共演ということで、その迫力あるパフォーマンスが楽しめるのですが、2人のギターのヒリヒリするようなやり取り・・・というよりは、大御所ギタリストと、そんな彼を慕う後輩ギタリストのプレイということで、和気あいあいとした、肩の力が抜けたようなプレイが魅力的です。ただ、CD音源未収録だった3曲に関しては、2010年リリースのDVDの方には収録済。また、2010年のバージョンは私も入手しているのですが、DVDで見た映像での2人の共演の方が魅力的だったので、こちらを再発してほしい感も。Amazonでは中古を含めて品切れ状態のようですし・・・。とはいえ、この音源自体は素晴らしい内容なので、↓の評価で。
評価:★★★★★
ALBERT KING WITH STEVIE RAY VAUGHAN 過去の作品 In Session
ただ、とはいっても全体的にはおそらく意識的に個人の嗜好は抑え気味となっており、全体的には非常にスタンダードなディスクガイドとなっています。紹介されているアルバムに関しても、個人の嗜好を抑えて、あえて代表的なアルバムを選んでいる部分もあり(かつ、それを明確に記載しているのですが)、その点を含めて60年代ソウルの入門書としても最適な1冊であり、また、60年代ソウルを総花的に知るにも最適な1冊だと思います。ここで紹介されているアルバムで、既に聴いたことのあるアルバムも少なくないのですが、大きく取り上げられているアルバムの中でも未聴のアルバムも多くあり、一度聴いてみなくては、とも感じました。ちなみに最後の最後に紹介されているアルバムはSLY&THE FAMILY STONEの「Stand!」となっており、スライは「70年代ソウル」の「ARTIST PICKUP」の一組目として登場しています。そういう点で上手く次の世代にリンクされており、そういう意味でもよく出来た構成にも感じました。
3位初登場は中王区 言の葉党「.言の葉党」。声優によるラッププロジェクト、ヒプノシスマイクに登場する架空のラップグループによるアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数10位。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。同プロジェクトの前作Bad Ass Temple「.Bad Ass Temple」の初動1万2千枚(8位)からダウン。中王区 言の葉党名義の前作「Verbal Justice」の初動1万4千枚(3位)からもダウンしています。
続いて4位以下の初登場盤です。5位初登場は祖堅正慶「Pulse: FINAL FANTASY XIV Remix Album Vol. 2 (Session 1)」。「ファイナルファンタジーXIV」の楽曲をEDM調でリミックスしたアルバムの第2弾。7位にはWayV「FREQUENCY」が初登場。韓国の男性アイドルグループNCTからのサブグループ。10位にはゆきむら。「-Never ending Nightmare- †」が初登場でランクイン。歌い手・ゲーム実況者グループ「騎士A」の元メンバーによるソロ作。
さて、今回のアルバム、全15曲中7曲とほぼ半分がインストという、ここ最近のアルバムの中では比較的インスト曲の多いアルバムに仕上がっています。そして、このインスト曲が非常にカッコいい!まず冒頭を飾る「Wings Of Phoenix」は疾走感あるインストナンバーなのですが、にぎやかな分厚いホーンセッションで押し寄せてくるようなサウンドに、アグレッシブなピアノやギターのソロが耳に残ります。それに続く「The Last Ninja」もインストのナンバーなのですが、こちらもホーンセッションにバンドサウンドを入れた分厚いサウンドが刻むスカのリズムが非常にカッコよく、くすんだ雰囲気のメロディーラインとサウンドも非常に魅力的。
2022年にリリースしたデビューアルバム「Growing Up」が話題となり、同年にはサマソニにも出場。注目を集めたアメリカの4人組バンド、The Linda Lindas。メンバーは女性4人組で、最年長のギターボーカルのベラ・サルザールでもまだ20歳。最年少のドラムス、ミラ・デラガーザに至っては14歳という若さも話題となりましたが、日本人的に一番注目を集めたのはやはりこの「The Linda Lindas」という名前。この名前は2005年の日本映画「リンダ リンダ リンダ」に由来する名前。ちなみにこの映画のタイトルはもちろん、ブルーハーツの名曲「リンダリンダ」に由来しています。メンバーは全員、アジア系、ラテン系、またはアジア系とラテン系のハーフということで、日系かと思いきや、中国系ということで出自的には日本と関わりはないものの、ただ、やはり日本人的にもなじみを感じてしまいます。
ただ、アルバム全体としてはヘヴィーな作風よりもむしろポップな楽曲が目立つ内容。続く「All In My Head」は、むしろアヴィリル・ラヴィーンあたりを彷彿とさせそうなギターポップな楽曲となっていますし、「Once Upon A Time」なども軽快でリズミカルなポップチューン。後半の「Don't Think」なども、むしろキュートさすら感じられるポップなメロが特徴的なギターロックのナンバーとなっています。
もちろん「Too Many Things」のような、メロディーこそポップながらもヘヴィーなギターサウンドを前に押し出したような作品や、同じくパンキッシュな「Resolution/Revolution」のような楽曲、さらには「Excuse me」でも、「No Obligation」同様、ちょっとデス声気味のがなり声でヘヴィーに聴かせる楽曲に。ポップな要素とヘヴィーな要素がほどよくバランスされた構成に仕上がっていました。
まず1位は旧ジャニーズ系の男性アイドルグループTravis Japan「VIIsual」が獲得。CD販売数及びダウンロード数1位。彼ら2枚目となるオリジナルアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上14万1千枚で1位初登場。前作「Road to A」の初動15万3千枚(1位)からダウンしています。
また、今回、完全に初のアルバム収録曲・・・ばかりではなく、日本及びオーストラリアの限定リリースで1997年にレア音源集「The Other Side Of The Moon」をリリースしており、多くの曲が同作と重複していますし、2008年にリリースした「ベスト・オブ・カーディガンズ」のデラックスエディションに収録されていたレア音源とも重複しています。ただ、両作とも、既に製造中止しているため、本作をリリースする意味はあるのですが。ただ、同作は個人的にリアルタイムで聴いていた音源。うっすらと聴き覚えのあるような曲もあるのは、その時聴いていたからでしょうか・・・。
今回、レア音源集ということなのですが、本作の収録曲を聴き、あらためてThe Cardigansというバンドが実に魅力的だったなぁ、ということを強く感じました。本作収録曲でも、アルバム未収録曲とは思えないようあ充実したポップ作も少なくありません。例えばVol.1の冒頭に収録されている「Pooh Song」もそんな1曲でしょう。1994年にリリースしたシングル「Sick&Tired」のカップリング曲なのですが、非常に温かみがあるサウンドとキュートでポップなメロディーラインが実にカーディガンズらしく魅力的。Vol.2に収録されている「(If You Were)Less Like Me」もメロにインパクトがあり魅力的。(おそらく)後期の作品らしく、ボーカルのニーナには大人の魅力を感じさせますし、バンドもロックテイストが強くなり、力強いサウンドが魅力的。こちらは後期カーディガンズの魅力を感じさせる曲となっています。
他にもメロディアスなフレーズが流れ、ポップに聴かせる「Did It First」や、ビートにトライバルな要素が加わった「Gimmie A Light」や「GYAT」、どこかメランコリックさを感じるラップに、ポップさを感じる「Think U The Shit」など、バラエティーを加えつつ、ただ、全体的にはヘヴィーなエレクトロのビートをリズミカルに聴かせるスタイルのラップがメイン。正直、そういう意味では似たようなタイプの曲が多いのですが、一方でアルバム全体としても11曲25分という短さで、そのため、似たタイプの曲が多くても、最後まで飽きることなく一気に聴いてしまえるアルバムとなっていました。
また、今回のアルバムの大きな特徴なのが2000年代前後のヒット曲をサンプリングしている点。例えば「Phat Butt」ではDem Franchize Boyzの2004年のヒット曲「Oh I Think Dey Like Me」をサンプリング。「Gimmie A Light」では、Sean Paulの2002年のナンバー「Gimme the Light」からサンプリングしているなど、2000年前後のカルチャーを積極的に取り込んでいるとか。最近、2000年前後のファッションが再度注目を集めているそうですが、彼女もまた、流れに沿ったアルバムとなっています。日本でもかつて70年代が注目を集めたり、80年代が注目を集めたりしましたが、既に20年以上前になった2000年代。懐かしくも一定以下の世代には逆にある種の新しさを感じさせる点、注目を集めている要素でしょうか。(2000年代に青春期を過ごした世代が、会社の上席者となり、いろいろな意思決定が出来るような世代になった点も大きいかもしれませんが)
アメリカのデスメタルバンドによる4枚目のアルバム。彼らのアルバムを聴くのは前々作「Hidden History Of The Human Race」以来となるのですが、ダイナミックでヘヴィーなバンドサウンドとデス声という組み合わせは、いかにもデスメタル然とはしているものの、今回のアルバムではエレクトロサウンドを取り入れたり、トライバルなリズムを取り入れたり、様式美に陥らない様々な試みがユニーク。バンドとしての挑戦心も感じられる作品でした。
続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場曲はあと1曲のみ。Mrs.GREEN APPLE「ビターバカンス」が6位に初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数8位、動画再生回数10位。映画「聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~」主題歌彼ららしい祝祭色あふれる明るいポップスに仕上がっています。ちなみにMrs.GREEN APPLEは「ライラック」も先週から変わらず4位をキープ。ストリーミング数は5週連続の3位。動画再生回数は4位から2位にアップしています。これで33週連続ベスト10ヒットに。
さらに「Love Machine」などは女性ボーカルで軽快なポップスとなっており、こちらはむしろネオアコ的な要素を感じさせる楽曲に。かと思えば「Gazing at Footwear」は不穏な雰囲気のノイジーなギターを前に押し出した作品となっており、リバーブをかけたボーカルも加わり、こちらはむしろサイケな作風となっています。
JAPANESE SINGLES COLLECTION-GREATEST HITS-/Huey Lewis & The News
1985年に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌として起用された「The Power Of Love」が大ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしたアメリカのロックバンド、Huey Lewis&The News。日本でも人気を博した彼らの、本作は日本でのシングルを集めたおなじみのシリーズ。もちろん、前述の「The Power Of Love」も収録されています。彼らは現在でも活動を継続しているようですが、やはり基本的に人気を博していたのは80年代。そういうこともあって、楽曲は全体的にいかにも80年代なロックというイメージが。とにかくアップテンポで明るく、時としてシンセも加わったスタイル。徹底的に陽気さが前面に押し出されている作風は、社会全体が明るかったんだろうなぁ、ということを感じさせます。ポップな楽曲が素直に楽しいアルバムでした。
評価:★★★★
Electric Lady Studios:A Jimi Hendrix Vision/Jimi Hendrix
今でも高い人気を誇るX JAPANのギタリストであり、1998年に33歳という若さでこの世を去ったhideの、生誕60周年を記念してリリースされたボックスセット。彼が生前にリリースした3枚のソロアルバムの最新リマスターと、昨年開催されたhide with Spread Beaverのワンマンツアーの東京公演の模様を収めたBlu-rayが収録された内容となっています。彼の生前のソロアルバムを聴くのは、実は今回はじめてとなるのですが、あらためて感じるのはメタルからインダストリアル、さらにはオルタナ系ギターロックまで、幅広い彼の興味がわかると同時に、生前、いろいろな音楽を演りたかったんだな、ということを作品からは感じられます。その結果、若干、ごちゃごちゃしてしまっている部分も否めないのですが、そんなごちゃごちゃ感も含めて、今からするとhideの大きな魅力だったように感じます。あらためて、hideの才能を感じさせられるボックスセットでした。
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