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2024年11月 4日 (月)

TikTok初の「今時の」ミュージシャン

Title:君にモテたいっ!!
Musician:Mega Shinnosuke

Megashinnosuke

最近、人気上昇中のシンガーソングライターMega Shinnosukeの8曲入りのEP盤。とはい、デビューは2018年なので、そろそろ活動歴的には中堅の域に入ってきそうなのですが・・・。今年6月にリリースされ、本作にも収録されている「愛とU」がTikTokを中心にヒット。特に、テンポを速くしたSped Up Ver.がTikTok Weeklyの1位を獲得し、一躍注目を集めました。

まあ、TikTok初のヒットというと、いかにも「今どきのヒット」といった印象で、正直、この「愛とU」についても、TikTokチャートでヒットを記録した時にチェックはしたのですが、軽快なポップチューンということで悪い印象は抱かなかったものの、かといって、これだけで一気に注目をしたかというとそうでもなく。同作が収録されたこのEP盤も、話題のミュージシャンだから聴いてみようか・・・程度の気持ちでチェックしてみました。

ただ、「いかにも今風の流行りのミュージシャン」というイメージで聴いてみた本作ですが、これが予想以上に素晴らしい内容でちょっとビックリ。そのヒットした「愛とU」からスタートするのですが、続く「18才の夏休み」は一転、アコギが入ってフォーキーな作品に。歌詞にも昔の夏の日を思い出すような郷愁感たっぷりの歌詞が印象的で、今時のポップスどころか、むしろ昔懐かしい雰囲気の作風になっています。

この、意外な懐かしさを感じさせるフォーキーな作品はその後も顔を覗かせ、「ぼくの部屋においでヨ」も軽快で明るくも、フォーキーな雰囲気の曲になっていますし、5曲目「海をみにいこう」もアコギで聴かせるフォーキーで魅力的なナンバー。こちらも注目のシンガーソングライター、崎山蒼志が参加した曲で、波の音がバックに流れる、暖かさを感じさせる楽曲に。ラストを締めくくる「ふたりの映画」も、恋人の別れの風景を描いたメランコリックでノスタルジックさを感じるナンバーは、どこかサニーデイ・サービスっぽさすら感じるフォークロックの楽曲に仕上がっています。今時のミュージシャンかと思ったら、意外と懐かしさを感じさせるフォーキーな作風が大きな魅力となっていました。

かと思えば続く「あの子とダンス」では女性ラップグループのchelmicoとフューチャー。軽快なリズミカルなナンバーに、ラップも登場。トラックを含めてHIP HOP的な要素が強いナンバー。「ao」もダウナーなエレクトロサウンドを取り入れたトラックはHIP HOPからの影響を強く感じさせる曲になっており、ここらへんのオールドスタイルのなつかしさを感じる楽曲と、今風のナンバーが同居している作風が非常にユニークに感じます。

そんな視点からあらためてヒットした「愛とU」を聴くと、ファルセット気味のボーカルで聴かせてくれる歌の部分はフォーキーさを感じさせつつ、サウンド的にはシティポップの雰囲気も。また、途中にラップの部分も登場し、自由自在に様々な音を取り入れたトラックにはHIP HOPの影響も感じさせます。いろいろな意味での自由さを感じさせるサウンドが、Mega Shinnosukeの大きな魅力と言えるでしょう。

そんな訳で、正直、「今のヒットシーンを追いかける」程度でチェックしてみたアルバムでしたが、予想していたよりも優れたアルバムになっていて、ちょっとビックリしました。ちなみにMega Shinnosukeという名前、芸名かと思ったら、なんと本名ということ(!)これから、その名前はさらに知れ渡るかもしれません。今後が楽しみなミュージシャンです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PERFECT!MENU/サディスティック・ミカ・バンド

加藤和彦を中心に結成され、日本のみならず海外でも活躍したロックバンド、サディスティック・ミカ・バンド。本作は、同バンドのボックスセットで、8枚のCD+Blu-rayからなる全9枚組。デビュー作「SADISTIC MIKA BAND」から、4枚目の「天晴」までのオリジナルアルバムとライブアルバム「Live in London」「晴天SADISTIC MIKA BAND LIVE IN TOKYO 1989」がリマスターされて収録。さらに1974年の京都円山公園野外音楽堂のライブをおさめたアルバムと、レア音源集、さらにBlu-rayはレアビデオ集という豪華な内容になっており、サディスティック・ミカ・バンドの全貌がわかる豪華なボックスセットとなっています。

内容についてはいまさら言うまでもありません。サディスティック・ミカ・バンドというと「タイムマシンにおねがい」のような軽快なギターロックやあるいはニューウェーヴィ風というイメージも強かったのですが、デビュー当初はよりヘヴィーなブルースロックのような色合いも感じましたし、フォークの流れも感じさせます。ただ、どれもバラエティー富んでポップに聴かせる楽曲ばかりで、バンドとしての実力をしっかりと感じることが出来ます。

ただ、サディスティック・ミカ・バンドは2006年にボーカル木村カエラを迎えて再々結成し、アルバムもリリースしているのですが、その時の音源が完全に無視されているのはちょっと残念。プラスアルバム1枚分のみだっただけに、木村カエラボーカル時のアルバム「NARKISSOS」も加えてほしかった感も。その点だけはちょっと残念でした。

評価:★★★★★

ニッポン・スウィングタイム 戦前のジャズ音楽 vol.2

当サイトでもアルバムを紹介したことがある戦前SP盤復刻専門レーベル、ぐらもくらぶの主宰、保利透プロデュース、監修による戦前のジャズ音楽をまとめたオムニバスアルバムの第2弾。楽曲としては二村定一の「アラビアの唄」をはじめ、比較的有名曲も多く、Vol.1に続く、戦前ジャズの入門盤に近いような感じも。その中でもユニークなのは、「佐渡おけさ」「八木節」など日本古来の民謡をジャズにアレンジした楽曲が収録。以前、ぐらもくらぶの「ダンスリヨウ みんなで踊ろう昭和戦前民謡ジャズ」でも、この手の日本民謡を西洋音楽に融合させようとする試みについて聴いたことがありました。最近でも、この手の日本の古来の音楽を今風なサウンドと結び付けようとする試みは少なくありませんが、このような試みは戦前から行われていたことが本作ではよくわかります。Vol.1と同様、戦前の音楽シーンのある意味、意外とも言える奥深さを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ニッポン・スウィングタイム 戦前のジャズ音楽 vol.1

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