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2024年11月 3日 (日)

メジャーデビュー25周年のシングルコレクション

Title:ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~
Musician:ポルノグラフィティ

タイトル通り、ポルノグラフィティのシングル集。メジャーデビュー25周年を記念してリリースされた作品で、彼らの全シングルがリリース順に収録されています。ポルノグラフィティについては、もちろんメジャーデビュー作の「アポロ」からリアルタイムで知っているのですが(もっと言えば、メジャーデビュー前に一度偶然、イベントライブで彼らのステージを見たことがあります)、ちゃんとアルバム単位で音源を聴いてみるのが今回がはじめて。CDにして全4枚組というフルボリュームの内容でしたが、あらためてポルノグラフィティがどんなミュージシャンなのか知れる、絶好の機会となりました。

ただ、「どんなミュージシャンなのか知れる」と書いたのですが、聴いてみた結論としてはポルノグラフィティがどんなミュージシャンなのか、いまひとつピントが絞り切れない感が否めませんでした。ポルノグラフィティがどんなタイプの、どんなジャンルの音を奏でるミュージシャンなのか、いまひとつわかりにくい。ひとつの方向性としては大ヒット曲の「サウダージ」「アゲハ蝶」のようなラテンの影響を受けた楽曲というのはひとつの特徴としてあげられるように思います。ただ、じゃあ本格的にラテン音楽に取り組んでいるかと言われるとそうではなく、ラテンの影響を感じる曲も限られており、シングル曲にしても様々なタイプの曲が並んでいます。

例えば「NaNaNaサマーガール」とかは80年代風のシンセが入ったサマーチューン、「DON'T CALL ME CRAZY」はハードロック風のギターが入っていますし、比較的最近の曲では「Zombies are standing out」はハードコア風なサウンドが入っていたりと、様々なタイプの曲が並びます。バリエーションが豊富と言えばポジティブな表現ですが、いまひとつルーツレスで節操がない感じなのが特徴的。この、とにかくインパクトのあるポップであればよいという、良くも悪くもJ-POPなミュージシャン、というのが彼らの特徴のように感じました。

ただ、逆に言えば、インパクトのあるメロディーをかけるそのポップスセンスや、様々なジャンルの音を取り込める器用さというのは彼らの大きな強みに感じます。特にメジャーデビュー直後のDisc1の頃の曲は、前述の「アポロ」「サウダージ」「アゲハ蝶」をはじめ、「ミュージック・アワー」「Mugen」「メリッサ」など一度は聴いたことあるヒット曲ばかり。いままで彼らの曲をちゃんと聴いてこなかった私ですが、それでもDisc1は懐かしい曲の連続で耳が惹きつけられ、飽きることなく楽しむことが出来ました。

ただ、サウンドやメロディー、さらに歌詞の側面でも、今回彼らの活動の歩みを聴いてみると完成度が増したのはむしろ2010年代に入ってからのように感じました。Disc3後半からの曲は、ベスト10入りしている以上、一度は聴いたことはあるはずなのですが、その時はさらっと聴いただけなのであまり印象に残っていません。ただ今回あらためて聴くと、歌謡曲的なメロディーラインのインパクトは増して、曲の完成度がグッと上がっているように感じます。特に「俺たちのセレブレーション」では、「アポロ」の名前が登場し、デビュー作を彷彿とさせますし、アレンジにも、「アポロ」を彷彿とさせる部分があり、遊び心を感じます。ここらへんはベテランバンドとしての余裕も感じました。

歌詞の面でも最近の曲になるのですが、「アビが鳴く」は広島県とのコラボということもあって、広島らしい平和へのメッセージを織り込んだ社会派な内容に。ポルノグラフィティといえば、デビュー当初の「アポロ」や「ミュージック・アワー」などでは、ちょっと軽薄さを感じさせる歌詞が、当時として一部で嘲笑されたのですが(実際、今聴いてもちょっと厳しい部分も感じます)、その後の歌詞と比べると、隔世の感を覚えます。

いまだにルーツレスで、ポルノグラフィティとはどんなミュージシャンなのか、と語れないあたりが良くも悪くも「J-POPバンド」といった印象を受けるのですが、そんな部分も含めて彼らの魅力と言えるのかもしれません。このベスト盤で彼らに関する印象が大きく変わったといった感じはないのですが、楽曲の完成度やインパクトなどから考えると、やはり25年にわたってトップシーンに君臨し続けるというのは伊達ではないな、ということを強く感じました。これからも彼らの人気は衰えることはなさそうです。

評価:★★★★

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