シューゲイザーを代表するバンドの全盛期を網羅したボックスセット
Title:UNREADABLE COMMUNICATION - ANXIOUS RECORDINGS 1991-1993
Musician:CURVE
今回紹介するのは、主に1990年代に活躍した、イギリスのバンド、CURVEの4枚組ボックスセット。シューゲイザー系バンドの代表格のひとつと目されており、特に1992年のデビューアルバム「Doppelganger」はシューゲイザーを代表する名盤としてよく取り上げられる1枚。私もその存在は以前から知っていたのですが、彼女たちに対して特に注目したきっかけが、今年聴いてみたシューゲイザー系のボックスセット「Still in a Dream」。もちろん、同作の中に彼女たちの作品も収録されていたのですが、個人的に思いっきりツボにはまり、そしてちょうどよいタイミングで知ったのが、このボックスセットのリリース。今回、はじめてアルバム単位でCURVEの作品を聴いてみました。
このボックスセットは全4枚組の内容となっているのですが、Disc1は1991年にリリースされた3枚のEPの曲がそのまま収録。Disc2はデビューアルバム「Doppelganger」、Disc3には2枚目のアルバム「Cuckoo」がそのまま収録。Disc4にはライブ音源やリミックス音源、シングルミックスなどが収録されています。バンドは1994年に一度解散するものの、1996年に再結成。その後、2005年まで活動を続け、アルバムやEPをリリースしていますが、サブタイトル通り、最初の活動期である1991年から1993年までの作品を収録しており、再結成後の作品は今回は未収録となっています。
個人的にCURVEがツボにはまった要素は主に5つとなります。1つ目はシューゲイザー直系のギターノイズ。2つ目はこちらはインダストリアルからの影響を感じる打ち込みも入ったヘヴィーなバンドサウンド。さらに3つ目は、こちらはマッドチェスターからの影響を感じるようなグルーヴィーなサウンド。そしてそんなヘヴィーでグルーヴィーな音を奏でつつ、女性ボーカルのトニ・ハリディによる清涼感ある歌声を聴かせてくれるのが4つ目の特徴で、そして最後は、シューゲイザーバンドに共通する、これらのサウンドと相反するようなキュートでポップなサウンドが流れている点、この5点が大きな魅力に感じました。
そんなバンドの持ち味はデビューEPの1曲目「Ten Little Girls」から既に発揮されています。イントロからして非常に分厚いバンドサウンドのグルーヴィーなサウンドからスタート。ちょっと気だるさを感じさせるトリ・ハリディの歌はポップにまとめあげられています。どちらかというとマッドチェスターの流れを感じさせる楽曲となっているのですが、CURVEの魅力を存分に感じさせる曲に仕上がっています。
そしてDisc2のアルバム「Doppelganger」は名盤の誉れ高い作品なだけに、CURVEとしてのひとつの完成形にも感じます。1曲目「Already Yours」は、デビュー曲「Ten Little Girls」と同様、けだるいボーカルを聴かせるグルーヴ感を前に出した作品になっていますが、よりポップスさが増した印象。続く「Horror Head」もギターノイズにキュートなハイトーンボイスで歌われるポップな歌が加わるドリームポップの作品に。その後もCURVEの魅力のつまった曲が並んでおり、本作が名盤と称される理由もわかるように感じます。
Disc3の「Cuckoo」も「Doppelganger」に負けず劣らずの名盤で、1曲目の「Missing Link」はインダストリアル風のヘヴィーで疾走感あるギターサウンドにちょっと怪しげながらも勢いのあるメロディーラインが非常にポップで耳を惹きます。楽曲としては前作に比べると若干インダストリアル色が強くなった印象が。また一方で、「Unreadable Communication」ではエレクトロのサウンドも取り入れていたりします。この点、Disc4収録の「Falling Free」ではAphex Twinによるリミックスを取り入れていたりしています。私はまだ聴いていないのですが、活動再開後の作品はエレクトロを取り入れた作品もあるそうで、エレクトロサウンドへの興味はこの時点から生じていたことを感じさせます。
この時期のCURVEの楽曲を聴くと、バンドとしての魅力を強く感じさせる一方、やるべきことはやりつくした感もあり、当初、1994年で解散してしまったというのはさもありなんかな、とも思ったりもします。ただ、それだけにこの時期のアルバムについては非常に濃い内容となっており、今回の4枚組のボックスセット、非常に聴きごたえのある作品でした。シューゲイザー好きなら文句なしにチェックすべき作品。今度は、活動再開後の作品も聴いてみたいなぁ。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Starchris/Body Meat
アメリカはフィラデルフィアを拠点に活動するエレクトロミュージシャン、Christopher Taylorのソロプロジェクト、Body Meatのソロデビュー作。ドリーミーだったり、メタリックだったり、メロウに聴かせたり、音数を絞ったり、曲毎にスタイルを変えるエレクトロサウンドが挑戦的であり、かつユニーク。ただ、そんなエレクトロサウンドの中で流れてくる「歌」がメランコリックで意外とポップ。比較的、実験的な色合いが強いサウンドの中で、この歌が大きなポップの要素となって、聴きやすさを感じさせるアルバムとなっています。Body Meatという名前、今のうちに注目しておいた方がよさそうです。
評価:★★★★★
Manning Fireworks/MJ Lenderman
シューゲイザー系インディーロックバンド、Wednesdayのギタリストによるソロ3作目。前作「Boat Songs」はシューゲイザー直系のサウンドにカントリーロックの要素を加えた音楽性が非常におもしろく、2022年の私的年間ベストアルバムで3位に入れるなど、個人的にかなりはまった作品でしたが、新作はシューゲイザー色は鳴りを潜め、一気にカントリー寄りにシフトした作品に。哀愁たっぷりのメロでかなり渋い雰囲気のカントリーロックとなり、いままでのイメージとはかなり変わってしまった感が。個人的に壺だった前作の方向性からはかなり外れてしまった感があり、ちょっと残念に感じました。
評価:★★★★
MJ Lenderman 過去の作品
Boat Songs
And The Wind(Live and Loose!)
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