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2024年11月

2024年11月30日 (土)

RADIOHEADの詰め合わせ?

Title:Cutouts
Musician:The Smile

RADIOHEADのトム・ヨークが2020年に立ち上げた新バンドThe Smile。メンバーは同じRADIOHEADのギタリストであるジョニー・グリーンウッド、Sons of Kemetのドラマー、トム・スキナーの3人組。今年の1月に2枚目となるアルバム「Wall Of Eyes」をリリースしたばかりですが、それからわずか9か月という短いスパンで、早くもニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは、OxfordとAbbey Road Studioで、前作「Wall Of Eyes」と同時期にレコーディングされた作品だとか。そういう意味では前作「Wall Of Eyes」とは姉妹盤のようなアルバムと言えるでしょう。その前作「Wall Of Eyes」は個人的にRADIOHEADが「OKコンピューター」の後にリリースしたかもしれないアルバム、と評しました。そういう意味では今回のアルバムも楽曲の方向性としては同じ。もっと言えば、いかにもRADIOHEAD的な作品を詰め合わせたようなアルバムと言ってしまえるかもしれない作品でした。

アルバム冒頭の「Foreign Spies」のスペーシーなエレクトロ路線もいかにもといった感じですし、「Instant Psalm」のようなアコースティックなサウンドをベースとして聴かせるメランコリックな歌は、こちらもいかにもトム・ヨークらしい、と言ってもいいかもしれません。特に「Colours Fly」のような、サイケ気味のギターサウンドでちょっと不気味に、でもメランコリックに聴かせるスタイルなど、いかにも「OKコンピューター」の頃のRADIOHEADというイメージがあります。

ただ、そんな中で印象に残るのがまず「Zero Sum」。こちらはリズミカルなドラムに、ファンキーさを感じる軽快なギターサウンドが特徴的。ちょっとサイケ気味なギターのエフェクトがトム・ヨークらしい感じもするのですが、ロックンロール的な色合いも感じさせる軽快なギターロックが、こちらはちょっとRADIOHEADとは異なる路線の、方向性も感じさせる曲になっています。

印象に残るという意味では、中盤の「Don't Get Me Started」も耳に残ります。最初は無機質なエレピのリフからスタートし、ドリーミーなトムの哀愁たっぷりの歌が重なります。後半にはここにトライバルなパーカッションが加わり、サイケさが増します。こちらはRADIOHEADらしさを感じさせる作品となっています。

後半には「The Slip」「No Words」のようなギターロック路線の作品も並び、こちらは「The Bends」のあたりのRADIOHEADも彷彿とさせる感じでしょうか。最後はアコギでフォーキーに聴かせる「Bodies Laughing」で締めくくり。最後はしっかりと「歌」で締めくくるアルバムとなっていました。

いろいろな挑戦的なサウンドを取り入れつつも、一方ではしっかりとしたメロディーラインの歌を聴かせて、意外とポップにまとめ上げている点も大きな特徴ですし、こちらもRADIOHEADに通じるものの。この点もトム・ヨークらしい、と言えるのかもしれません。前作と同様、一時期のRADIOHEADのような目新しさは少ないのかもしれません。ただ、こちらも前作と同様、トム・ヨークが演りたい音楽を演りたいように演ったアルバムと言えるかもしれません。前作同様の傑作アルバム。特にRADIOHEADが好きならたまらなく感じられる作品でした。

評価:★★★★★

The Smile 過去の作品
A Light For Attraction Attention
Wall Of Eyes


ほかに聴いたアルバム

In Wave/Jamie xx

イギリスのロックバンドThe xxのメンバー、ジェイミー・スミスのソロプロジェクト、Jamie xxの、実に約9年ぶりとなるニューアルバム。テンポよく軽快なエレクトロチューン。基本的にハウスの要素を強く感じさせつつ、楽曲によってはアンビエントの色合いが強い曲や、よりメロウなR&B的な色合いの強い曲、リズミカルなダンスチューンなど、バラエティー富んだ作風が魅力的。ただ、高揚感一歩手前の抑え気味なサウンドで、全体的には聴き終わった後、どうも印象が薄く感じてしまう点がちょっと気になってしまいました・・・。

評価:★★★★

Jamie xx 過去の作品
In Colour

Harlequin/Lady Gaga

Lady Gagaの新作は、映画「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」で自身が演じるキャラクターからインスパイアされた曲を収録したアルバム。インスパイアされて作成された新曲から、「聖者の行進」「ザッツ・エンターテイメント」「遥かなる影」などカバー曲も多く収録されています。楽曲的にはムーディーなジャズ風の曲からビックバンド風の曲など、レトロな楽曲が目立ちながらも、ヘヴィーなバンドサウンドを聴かせるロッキンなナンバーも。バラエティーを富み、ほどよくポップに聴かせる、Lady Gagaらしい作品になっていました。

評価:★★★★

LADY GAGA 過去の作品
The Fame
BORN THIS WAY
ARTPOP
Cheek to Cheek(Tony Bennett & Lady Gaga)
Joanna
A Star Is Born Soundtrack(アリー/ スター誕生 サウンドトラック)(Lady Gaga & Bradley Cooper)
Chromatica
BORN THIS WAY THE TENTH ANNIVERSARY
Dawn Of Chromatica
Love For Sale(Tony Bennett & Lady Gaga)

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2024年11月29日 (金)

歌詞の世界には「ブルース」を感じる

Title:しゅー・しゃいん
Musician:寺尾紗穂

女性シンガーソングライター寺尾紗穂の約2年ぶりとなるニューアルバム。シンガーソングライターとしての活動のみならず、エッセイストや書評家としても精力的な活動が目立つ彼女。今回のアルバムに関しては、そんな文筆業としての活躍が楽曲にも反映されているような、歌詞に強い印象が残る作品が目立ったように感じます。

サウンドやメロディーラインについては基本的にシンプル。1曲目のタイトルチューン「しゅー・しゃいん」ではホーンセッションも入ってジャジーなサウンドを聴かせてくれたり、「ゴールはどこだい」ではノイジーでサイケなテイストのギターが入ってきたりするのですが、シンプルなピアノの音色に基本的にはアコースティックなサウンドをベースとした、シンプルなサウンド構成がメイン。そこに清涼感あふれる彼女の優しい歌声が重なり、魅力的な「歌」をしっかりと聴かせてくれるような作品になっていました。

そして、今回のアルバムに関しては、そんなシンプルな「歌」でしっかりと聴かせてくれる歌詞が大きなインパクトとなっていました。彼女の描く歌詞は、いわば社会の中で必死に生きていく人たちにスポットをあてた内容が印象的。まずタイトルチューンである「しゅー・しゃいん」。戦後間もないころの日本において、靴磨きでその日その日に必死に生きている人が主人公。時代背景的には戦後すぐという時代をターゲットにしつつも、どこか苦しい社会事情の中に必死で生きている現代の人たちの姿も反映されているように感じてしまいます。

アルバムの最後を締めくくる加川良のカバー「こんばんはお月さん」も、まさにそんな人々の生活にスポットをあてた歌詞が印象的。日常の辛さを月に吐露する歌詞が胸に響いてきます。また、印象に強く残る歌詞といえば「骨の姉さん」もまさにそんな1曲。おそらく、既に死んでしまった姉さんに対して、語り掛ける歌詞になっており、胸にしみる歌詞になっています。

また歌詞が印象的なのは「悲しみが悲しみであるうちに」も同じ。

「検索しても検索しても終わらないの
僕のかなしみ」

からスタートし、

「検索しても検索しても
見つからないの
戦争のやめ方」

まで、続く内容で、シニカルにインターネット依存的な世の中を取り上げつつ、社会派な歌詞が強烈な印象を残すような作品になっていました。

そして、これらの歌詞を聴いて感じられるのは、彼女の歌詞からはどこか「ブルース」の要素を感じられる点でした。まあ、ブルースといってもいろいろなタイプがあるので、ちょっとイメージ論的に語っている部分もあるのですが、いわば社会の中で必死に生きている人たちの吐露という点で、ブルースとの共通点を強く感じさせます。楽曲的には、決してブルースの要素は強くないのですが、その歌詞の世界にブルースとの共通項を感じてしまう、そんなアルバムだったように思います。

非常に魅力的かつインパクトのある歌詞の世界が胸に響いてくるそんなアルバム。メロディーやサウンドの側面で派手さはありませんが、聴き終わった後、強い印象を残す作品になっていました。その「歌」をじっくりと味わいたい作品でした。

評価:★★★★★

寺尾紗穂 過去の作品
余白のメロディ


ほかに聴いたアルバム

WONDER BOY'S AKUMU CLUB/野田洋次郎

RADWIMPSのボーカル、野田洋次郎のソロアルバム。いままでソロ活動はillion名義での活動となっていましたが、今回から本名、野田洋次郎での活動になるとか。楽曲的にはエレクトロを取り入れたり、HIP HOPやトラップの曲があったり、ジャジーな曲があったりと、様々なサウンドに挑戦しており、RADWIMPSとして演れないことをソロとして演っているというスタンスはillionと同様。ただ、かなり実験性の強かったillion名義の曲と比べると、基本的にメロディアスでポップな曲がメイン。そういう意味で頭でっかちさを感じたillionと比べると、ポップな要素とのバランスは良くなったように感じます。ただ一方、メロディーのインパクトという面は、やはりちょっと物足りなさは否めず、様々なサウンドに挑戦したため、アルバム全体としてもとっちらかしているような印象も。まあ、あくまでもRADWIMPSの活動がありきで、そこで演りきれない部分をソロで演っているといった感じなのでしょう。

評価:★★★★

illion 過去の作品
UBU
P.L.Y

F(U)NTASY/木村カエラ

メジャーデビュー20周年を記念してリリースされた5曲入りのEP盤。特に彼女自身が作詞した「Twenty」は、この20年間を振り返りつつ、未来を見据える、20周年を記念すべき楽曲となっています。この曲を含めて5曲、どれも陽気で明るいポップな楽曲が並んでおり、木村カエラの良さを、より前に押し出したような作品に。アニバーサリーイヤーを記念するにふさわしいEPに仕上がっていました。

評価:★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?
いちご
ZIG ZAG
KAELA presents on-line LIVE 2020 “NEVERLAND”
MAGNETIC

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2024年11月28日 (木)

今週もK-POP勢+LDH

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsのベスト3、先週は韓国勢2組+LDHといった組み合わせでしたが、今週も同じ組み合わせで・・・

まず今週1位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「ROMANCE:UNTOLD -daydream-」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数12位。7月にリリースしたアルバム「ROMANCE:UNTOLD」に新曲2曲を加えてパッケージも一新した、いわゆる「リパッケージアルバム」。オリオン週間アルバムランキングではリリース日の関係上、先週にベスト50圏外でランクイン。今週、18万4千枚を売り上げて1位に初登場しています。本作のオリジナル盤「ROMANCE:UNTOLD」は初動売上28万9千枚(1位)でしたので、さすがに前作よりは大幅ダウン。

2位はLDH系の男性アイドルグループTHE JET BOY BANGERZ「UNBREAKABLE」が初登場。3曲入りのEP盤。事実上のシングルなのですが、シングルだとHot100で上位に食い込めそうもないため、アルバム扱いにしてリリースしたのでしょう・・・。CD販売数2位。オリコンでは初動売上4万2千枚で2位初登場。同じく3曲入りのEP盤だった前作「What Time Is It?」の初動5万2千枚(3位)よりダウン。

3位は先週1位だった韓国の男性アイドルStray Kids「GIANT」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には男性アイドルグループTHE SUPER FRUIT「どーぱみんみん サクセス論」がランクイン。7位には日本でも高い人気を誇るアメリカのロックバンドBON JOVIのベストアルバム「ALL TIME BEST 1984-2024」が初登場でランクイン。8位にはスマホ向けゲーム「アイドリッシュセブン」よりIDOLiSH7「LEADiNG TONE」が初登場でランクインしています。

また今週は返り咲き組も。4位に韓国の男性アイドルグループTOMORROW X TOGETHER「The Star Chapter: SANCTUARY」が先週の19位からランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。またあいみょん「猫にジェラシー」が先週の52位からランクアップし、9週ぶりにベスト10返り咲き。こちらはアナログ盤がリリースされた影響となっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、今週も弌誠「モエチャッカファイア」が3週連続通算8週目の1位を獲得しています。ただし、動画再生回数では7位から8位にダウン。Hot100でも55位から65位にダウンしています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週、TikTok Weeklyでも先週と変わらずROSE&ブルーノ・マーズ「APT.」が3週目の1位を獲得。今週もHot100とダブルで1位獲得となっています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも先週に引き続き柊マグネタイト「テトリス」が3週連続で1位獲得しています。これで3週連続、Heatseekrs、TikTok、ボカロチャートに同じ顔触れが並ぶ結果となりました。

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年11月27日 (水)

紅白発表の影響?

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のチャートの集計対象期間に、年末の紅白歌合戦の出演者の発表がありましたが、今回はその影響と思われるチャートアクションが多く見受けられました。

まず返り咲き組として、初登場が発表されたCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が11位から8位に、Omoinotake「幾億光年」が15位から9位にランクアップ。「Bling-Bang-Bang-Born」は2週ぶり、「幾億光年」は実に8週ぶりのベスト10返り咲き。「Bling-Bang-Bang-Born」は通算43週目、「幾億光年」は通算33週目のベスト10ヒットを記録しました。

また、同じく初登場組こっちのけんと「はいよろこんで」が10位から7位にランクアップ。ダウンロード数は5位から8位にダウンしましたが、ストリーミング数が8位をキープ。動画再生回数も6位から5位にアップ。紅白初登場ということでニュースになる機会も一気に増え、注目度も再びアップしてきた模様。これで通算17週目のベスト10ヒットとなりました。

他に2度目の紅白出場を決めたMrs.GREEN APPLE「ライラック」も5位から4位にアップ。ストリーミング数は4週連続の3位。動画再生回数も5位から4位にアップ。こちらも32週連続のベスト10ヒットを記録しています。

紅白出演者については、毎年、かなり議論を呼ぶ部分はあるものの、ちゃんとチャート動向を追っていれば、NHKの選択は概ね、ヒットの実態に沿ったものであって、年齢を超えた国民的ヒットが生まれにくい状況の中で、個人的にはかなりがんばっているな、という印象を受けます。いろいろと言われているものの、出演者発表だけで、このようにチャートが上昇するあたり、まだまだ紅白の力の強さは感じられます。

Apt

一方、今週1位を獲得したのはロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」が先週に引き続き1位を獲得。ストリーミング数は3週連続1位。動画再生回数も4位から2位にアップ。ダウンロード数は3位から6位にダウンしたものの、ラジオオンエア数も1位にアップ。このヒットはまだまだ続きそうです。

2位はCreepy Nuts「オトノケ」がワンランクアップ。ダウンロード数は1位から5位にダウンしたものの、ストリーミング数はこちらも3週連続の2位。「Bling-Bang-Bang-Born」に勝るとも劣らないヒットになりそうですが、紅白ではどちらを歌うんでしょうか・・・というよりも、紅白によくありがちな、この2曲をメドレーにする「スペシャルバージョン」とかで歌いそうな予感が。

3位初登場はtimelesz「because」。誰かと思ったら、旧ジャニーズ系男性アイドルグループSexyZoneが今年の4月に改名。改名後、初のシングルとなったようです。CD販売数1位、ラジオオンエア数18位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上25万2千枚で1位初登場。前作「puzzle」の27万8千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、初登場はあと1曲のみ。5位に米津玄師「Azalea」がランクイン。ダウンロード数1位、ストリーミング数14位、ラジオオンエア数5位、動画再生回数13位。Netflixドラマ「さよならのつづき」主題歌。

一方、ベスト10返り咲き曲も。女性アイドルグループMISAMO「NEW LOOK」が13位から10位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年11月26日 (火)

ポップス史に残るアンビエントの名盤の30周年記念盤

Title:Selected Ambient Works Volume II (Expanded Edition)
Musician:Aphex Twin

今回紹介するのは、テクノ、エレクトロニカを代表するイギリスのミュージシャンAphex Twinが1994年にリリースし、ポップス史に残る名盤として誉れ高い「Selected Ambient Works Volume II」の拡張バージョン。かの、エレクトロシーンを代表するワープ・レコードの第1弾アルバムでもある本作が、リリースから30周年という区切りの年ということで、Expanded Editionとしてリリース。オリジナルでもCDで24曲入りというボリューミーな内容だったのですが、そこにCDでは3曲が追加され、CDで3枚組、LPでは4枚組というボリュームでのリリースとなっています。

Aphex Twinといえば、ここ最近では、直近のアルバム(といってももう10年前の作品になるんですが・・・)の「Syro」もそうですし、同じく彼の代表作として名盤の誉れ高い「Richard D. James Album」もそうだったのですが、ドリルンベースと呼ばれるような、独特のビート感のあるエレクトロ作が多く、個性的なビートを奏でるエレクトロニカのミュージシャンというイメージが強くついています。

それだけにもし、最近、彼について知って、改めてこのアルバムを聴いてみると、ちょっとビックリする方もいるかもしれません。本作は「Selected Ambient Works」というタイトルの通り、全編、アンビエントな作風が貫かれている作品。静かに聴かせるエレクトロのサウンドを、ミニマルに聴かせる楽曲がズラリと並んだアルバムとなっており、独特のビートを聴かせるドリルンベースの姿はありません。

ただ、そのようなアンビエントの作品の中にどこか不気味で不穏な雰囲気を漂うサウンドを忍び込ませつつ、かつ、ところどころに、ドリルンベースの作品で聴かせるような独特のビートを組み込ませている点が非常にユニーク。「#5」などはまさに不穏さを奏でるビートが印象的ですし、「#8」もちょっとトライバルな雰囲気を加味されたビートが非常に独特で耳を惹きます。

また一方で不気味な雰囲気のサウンドのみならず、特に後半に至るにつれて、ドリーミーで、どこか優しさを感じさせるサウンドも垣間見れる点も大きなポイントで、特に「#21」あたりは、かなり優しいメロディーラインが流れてくるような作品に。Aphex Twinの音楽の根底には、このような暖かくも優しいメロディーセンスが流れているからこそ、数多くの名曲を世に送り出しているんだろうな・・・そのようなことを、このアルバムでは感じさせてもくれました。

今回のアルバムで、オリジナル作品ではLP盤にのみ収録されたレア音源「#19」もまた、そんなAphex Twinのメロディーセンスを感じさせる、ドリーミーで、荘厳さも感じさせる作品。また、今回、追加収録された「th1[evnslower]」「Rhubarb Orc.19.53 Rev」も、荘厳さを感じさる独特のサウンドに、どこかメロディアスな作風が魅力的。どちらもAphex Twinの魅力を感じさせる作品となっています。

全27曲3時間強。かなりボリューミーな作品ながらも、Aphex Twinの魅力がしっかりと感じられる作品で、ある意味、BGM的になりがちなアンビエントの作品ながらも、癖も強く、しっかりと楽しめるアルバムで、さすが名盤の誉れ高い作品だけある傑作でした。これを機に、あらためてチェックしておきたいポップス史に残る名盤です。

評価:★★★★★

Aphex Twin 過去の作品
Syro
Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP
orphaned deejay selek 2006-2008(AFX)
Cheetah EP
Collapse EP
Blackbox Life Recorder 21f / In A Room7 F760


ほかに聴いたアルバム

My Method Actor/Nilüfer Yanya

前作「PAINLESS」が、各種メディアの年間ベストアルバムの上位にランクインするなど、アルバムをリリースする毎に大きな話題となっているイギリスのシンガーソングライターの3作目。基本的には前作から大きな方向性は変わらず、ファルセット気味のボーカルでメロウに聴かせるUKソウルの歌を主軸に据えつつも、時としてメタリックにすら感じられるヘヴィーなギターサウンドや打ち込みも取り入れており、全体的にロックテイストも強いダイナミックなサウンドに心地よさも感じます。毎回、日本でも話題に・・・と言っているのですが、本国でもいまひとつ、大ブレイクには至っていないようですが・・・間違いなく、要チェックのシンガーソングライターだと思います。

評価:★★★★★

Nilüfer Yanya 過去の作品
Miss Universe
PAINLESS

143/Katy Perry

約4年ぶりとなるKaty Perryのニューアルバム。タイトルの「143」とは「I Love You」をあらわす数値(対応するアルファベットの数をあらわしています)であると同時に、彼女の「エンジェルナンバー」でもあるそうです。全編軽快なエレクトロのダンスチューンが並んでおり、四つ打ちの曲が多いという点では前々作「Prism」に近い作風なのかもしれませんが、さらに今回の作品はダンサナブルな部分が前面に押し出されている作品に。いつもの彼女の作品と同様、いい意味でポップで、万人に聴きやすさを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

Katy Perry 過去の作品
One Of The Boy
Teenage Dream
Prism

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2024年11月25日 (月)

新作は「月」がテーマ

Title:Moon Music
Musician:Coldplay

本国イギリスのみならず、アメリカをはじめ全世界的に圧倒的な人気を確保しているColdplay。その彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。今回も、本国イギリスでは当たり前のようにナショナルチャートで1位を獲得したほか、アメリカビルボードチャートでも1位を獲得。これは2014年にリリースされたアルバム「Ghost Stories」以来の記録で、4作ぶりの1位返り咲きに。いまだに根強い人気を感じさせるアルバムとなりました。

前作「Music of the Spheres」も宇宙をテーマとしたようなアルバムで、スペーシーな作風の曲が目立った1枚でしたが、今回のアルバムのテーマも、タイトル通り「月」と、またしても宇宙をイメージさせられるようなテーマとなっています。ただ、スペーシーなエレクトロサウンドがメインだった前作に比べると、例えば1曲目「MOON MUSIC」はピアノをベースとしたメランコリックな作風が特徴的。続く「feelslikeimfallinginlove」も、美メロにピアノが重なるというColdplayらしいメロディアスでメランコリックなナンバーに仕上がっています。

その後もアコギをメインとした「JUPiTER」やスケール感もって歌い上げる「iAAM」など、Coldplayらしい美メロを聴かせるメランコリックなナンバーが並びます。美メロという点では特に印象的だったのが後半の「ALL MY LOVE」で、ピアノをバックに、ゆっくりと美しいメロディーで歌い上げる、その歌が非常に胸に響くナンバー。ストリングスも入って醸し出しているスケール感も大きな特徴になっています。

一方では「WE PRAY」ではイギリスの女性ラッパー、Little Simzをゲストに迎え、Coldplayの哀愁たっぷりの歌にラップが重なる独特のナンバーに。「GOOD FEELiNGS」のようなエレクトロダンスチューンも入っていたりと、ほどよいバリエーションも特徴的。全体的には美メロをベースにメランコリックに聴かせる曲をメインとしつつ、ほどよい楽曲のバリエーションというバランスの良さが、世界的な人気を誇る彼ららしいセンスも感じさせます。

前作「Music of the Spheres」はメロディーラインが今一つで、正直なところ、かなり厳しい出来のアルバムになっていました。今回のアルバムに関しても、正直言えば、全体的に地味という印象は否めず、以前と比べるとその失速ぶりが伺わせます。ただ一方、前作でかなり厳しかったメロディーラインについては今回のアルバムではかなり本領発揮という水準に戻ってきた印象も。ここらへんは、さすが人気バンドとしての底力も感じさせます。久しぶりにColdplayのメロの魅力を感じることが出来た作品でした。

評価:★★★★

COLDPLAY過去の作品
Viva La Vida or Death And All His Friends(美しき生命)
Prospekt's March
LeftRightLeftRightLeft
MYLO XYLOTO
Ghost Stories
A HEAD FULL OF DREAMS
Kaleidoscope EP
Live In Buenos Aires
Love In Tokyo
Everyday Life
Music of the Spheres


ほかに聴いたアルバム

Born Horses/Mercury Rev

アメリカのサイケデリック・ポップバンドの新作。前作「Bobbie Gentry's The Delta Sweete Revisited」はアメリカのシンガーソングライター、ボビー・ジェントリーのカバーアルバムだったため、オリジナルアルバムとしては「The Light in You」以来、実に約9年ぶりのアルバムとなります。毎回、独特な世界観を提示するサイケなポップチューンを聴かせてくれる彼らなだけに、久々の新譜も期待していたのですが・・・サイケポップという部分もあったものの、ピアノやストリングスをベースとしたアレンジで、ムーディーでメランコリックな楽曲を聴かせるアルバムに。いままでの彼らのイメージとは異なる内容になっており、ともすればムード歌謡の様相すら感じられる作品に。良くも悪くもベタな印象を受けてしまい、Mercury Revの久々の新譜としては、今一つピンとこない作品でした。

評価:★★★

Mercury Rev 過去の作品
The Essential Of Marcury Rev
Snowflake Midnight
Strange Attractor
The Light In You
Bobbie Gentry's The Delta Sweete Revisited

Endlessness/Nala Sinephro

前作「Space 1.8」が大きな話題となったカリブ系ベルギー人のミュージシャン、ナラ・シネフロの最新作。基本的にアンビエントジャズにカテゴライズされる楽曲で、メランコリックでジャジーな楽曲を聴かせてくれるのですが、ストリングスやピアノ、サックス、アコースティックギターのような生楽器とエレクトロサウンドの間を自由に行き来するような音楽性がユニーク。全体的にドリーミーな色合いの作品が多く、独特の音楽性ながらも、いい意味で幅広い層に訴求できそうな聴きやすさも併せ持っていました。高い評価も納得の傑作です。

評価:★★★★★

Nala Sinephro 過去の作品
Space 1.8

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2024年11月24日 (日)

歌手としての「日本の喜劇王」

Title:エノケンの浮かれ音楽 榎本健一コレクション 1936-1950
Musician:榎本健一

当サイトでも何度かアルバムを紹介している戦前のSP復刻専門レーベルぐらもくらぶ。今回取り上げられているのは、戦前から戦後にかけて、国民的人気を獲得し、「日本の喜劇王」とも呼ばれたコメディアン、エノケンこと榎本健一。おそらく、戦前や戦後直後の日本の歴史や芸能事情に詳しくない方でも、エノケンの名前くらいは聞いたことあるのではないでしょうか。ただ、一方、(おそらく)ぐらもくらぶで榎本健一について取り上げるのは今回がはじめてなはず。あまりにも有名すぎるからこそ、逆に取り上げずらかったかのもしれません。ただ、今年はエノケンの生誕120周年にあたる年。その記念すべき年に、戦前や戦後直後にエノケンが吹き込んだSP音源をあつめたコンピレーションアルバムがリリースされました。

まずこのアルバムでエノケンの歌を聴いてまず感じるのは、当時の流行歌を、よく言えば柔軟に、悪く言えば節操なく取り込んでいるという点。例えばタイトルチューンとなっている1曲目の「エノケンの浮かれ音楽」「エノケンの思い出」「彌次喜多ブギ」などは、戦前戦後のジャズ風のアレンジになっていますし、かと思えば「トカナントカ言つちゃって」「強がり三太」などは小唄風。「エノケンの紺屋高尾」「ちやっきり金太の唄」は浪花節と洋楽邦楽良くも悪くも自由に行き来する音楽性が特徴的です。

また、この当時の流行歌も積極的にカバーしており、「エノケンのダイナ」「エノケンの南京豆売り」「エノケンの暗い日曜日」など、ほかで聴いたことある曲も少なくありません。様々な音楽性といいカバーといい、その当時の流行を積極的に取り入れているのが大きな特徴となっています。ただ、これってよく考えれば、ここ最近は少なくなってしまったのですが、ひと昔前まで、お笑い芸人やタレントも人気が出れば、すぐCDデビューとかしていたのですが、その時も、当時の流行音楽を節操なく取り入れるというケースが少なくありません。エノケンについても、それと全く同じ話なのでしょう。

そう考えると、榎本健一は当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、歌手ではなく、あくまでも喜劇役者というのが本籍地である、ということなのでしょう。実際、エノケンの歌手としてのスタイルは、「上手いボーカルを聴かせる」といった感じではなく、あくまでもどこかコミカルで演劇がかったスタイルがメイン。喜劇役者が歌を歌っているというスタイルを崩していません。この点はエノケンのこだわりだったのかもしれません。

また、録音時期が時期ということもあり、戦争ネタの曲も多かったのも特徴的「支那の兵隊さん」「 エノケンの南京ぶし」「エノケンの兵隊じゃんけんぽん」など、楽曲によっては、いまとなっては差別的な内容もありますし、正直、今となっては聴いていて楽しいものではありませんが、戦中の雰囲気を伝えるには最適な選曲と言えるのかもしれません。ただ、例えば戦前に同じく活躍した歌手で喜劇役者の岸井明の曲などでは、戦争について歌いつつ、どこか皮肉めいた内容も加えたりする曲も見受けられたのですが、エノケンの曲にはそういったシニカルな視点はあまりありません。当時既に国民的人気を確保していた彼だけに、やはりこの点は国威発揚に協力するしかなかったのでしょうか。

そんな戦前戦後のエノケンの音楽をまとめて楽しめるアルバムで、当時の文化、風俗を垣間見れる点でも興味深いアルバムとなっています。前述のように節操なく流行を取り込んでいる作品なのですが、一方ではやはりコミカルな作風が、時として今でも純粋にワクワクと楽しめる内容にもなっていました。榎本健一の歌手としての側面をいろいろと興味深く楽しめる、そんな好企画のオムニバスアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The White Lounge in CINEMA -Original Soundtrack-/Mrs.GREEN APPLE

Whitelounge

「ケセラセラ」や「ライラック」のヒットで、おそらく現時点において日本で一番人気のあるバンドの一組と言えるMrs.GREEN APPLE。今年、彼らのライブツアーを音楽劇の手法を加えて映画化した「Mrs.GREEN APPLE//The White Lounge in CINEMA」がヒットしましたが、本作は、配信限定でリリースされた映画のサントラ盤。「ケセラセラ」「Soranji」など彼らの代表曲が並ぶ中、ストリングスやピアノで大胆にリアレンジされ、原曲と比べるとグッとスケール感の増した内容に。映画自体は見ていないのでよくわからないのですが、映画の中の世界観に沿った感じなのでしょうか。ベスト盤的に楽しむにはアレンジされすぎている感じはするのですが、これはこれでMrs.GREEN APPLEとしての魅力を感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE
ENSEMBLE
Attitude
5
Unity
ANTENNA

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2024年11月23日 (土)

日本の盆踊りとブラジルのマルシェを融合

Title:ビギンの盆マルシャ
Musician:BEGIN

最近ではメンバーのソロでの活動が続き、BEGINのオリジナルアルバムとしては2018年の「Potluck Songs」以来、ちょっと久々となる新作。今回のアルバムは、BEGINが以前からライフワークとして取り組んでいるブラジル音楽のマルシャと、日本の盆踊りを融合させた、という非常にユニークな試みの下に生まれたアルバムになっています。

このマルシャという音楽は、2拍子が特徴的な、サンバのルーツとなったブラジル音楽だそうです。ただ、このマルシャという音楽、Googleで検索をかけても、ほとんどBEGINがらみの記事しか出てこず、若干、「本当にそんなジャンルがあるの?」と疑問視してしまった部分もあったのですが、手元にある中村とうよう著「大衆音楽の真実」ではしっかりと言及があり、ジャンル、というよりもブラジルでマーチのことを「マルシャ」と呼んでいるとか。19世紀末から20世紀初頭にかけて、カーニヴァルの時にブラスバンドを先頭に、マルシャで練り歩いたという歴史があるそうです。

そんな本作ですが、まず1曲目は新曲の「渋谷百年総踊り」からスタート。「渋谷百年」というのは、今年、渋谷駅の象徴であるハチ公の生誕100周年を記念してつくられた作品だそうです。その後は「島人ぬ宝」「笑顔のまんま」を、「盆・島人ぬ宝」「盆・笑顔のまんま」として盆踊り風にカバー。軽快なパーカッションのリズムが加わっている点は、ブラジル音楽の要素といった感じでしょうか。ただ、序盤は比較的、シンプルな「盆踊り風」なナンバーが続きます。

本作でユニークだったのがここからの展開で、「東京音頭」「炭坑節」「お祭りマンボ」といった定番の盆踊りナンバーが続くのですが、原曲の軽快なリズムをホーンセッションとパーカッションでリズミカルに奏でており、特にリズムについては軽快なビートが鳴り響き、サンバ的な要素を色濃く感じさせます。ここらへんのリズムが「マルシェ」のリズムということなのでしょうか。耳なじんだような「盆踊り」のナンバーなのですが、ここに加わった独特なブラジル音楽の要素が非常にユニークなカバーとなっています。

特に4曲目から9曲目まではメドレーの形式となっており、曲の間が休むことなく一気に展開していく構成に。軽快なリズムに乗って、聴いていてどんどんと高揚していくような展開となっています。おなじみのナンバーでどんどんと盛り上がり、おそらく一番テンションがあがりそうなのが小林旭の「自動車ショー歌」のカバーではないでしょうか。楽曲に(当時の)自動車の名前を織り込んだコミカルなナンバーなのですが、非常にアップテンポでリズミカルなサウンドで気分もウキウキするようなカバーに仕上がっています。

ラストは「涙そうそう」のカバーでしめくくり。チルアウト的なナンバーとなっており、この4曲目から9曲目までは楽曲としてひとつの流れとなっており、アルバムを聴きながらもライブ感あふれる展開となっています。おそらくライブでもほぼこの流れになりそうな感じで、盛り上がりそうなぁ。日本の盆踊りとブラジルのマルシェが実に相性よく融合したアルバムとなっていました。

聴いていてウキウキワクワクするような、とても楽しいアルバム。ライブでもこの「盆マルシェ」で楽しみたい、とも感じる作品となっていました。ただ・・・このアルバム、リリースが10月だったんですよね。なぜ、夏前にリリースしなかったんでしょうか?夏の野外ライブとかで盛り上がりそうなのに・・・。

評価:★★★★★

BEGIN 過去の作品
3LDK
ビギンの島唄 オモトタケオ3
ビギンの島唄 オモトタケオのがベスト
トロピカルフーズ
Potluck Songs
BEGIN ガジュマルベスト
BEGINライブ大全集2


ほかに聴いたアルバム

My name/家入レオ

約1年8ヶ月ぶりとなる家入レオの新作。本作では、Galileo Galileiの尾崎雄貴やKANA-BOONの谷口鮪、さらにはCharaが作家陣として参加。また、家入レオ本人も単独名義での作曲が4曲あるなど、徐々にシンガーソングライターとしての成長も続けています。全体的にはメランコリックに聴かせる楽曲が多く、ちょっとしんみりとした大人な雰囲気を感じさせる作品。高校生シンガーとしてデビューした彼女も、もう29歳なんですよね・・・「大人」になってきたことを感じさせる家入レオの新作でした。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE
5th Anniversary Best
TIME
DUO
Answer
10th Anniversary Best
Naked
NAKED~TOUR2023~

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2024年11月22日 (金)

独特のパフォーマンスで盛り上がる

新しい学校のリーダーズ a.k.a ATARASHII GAKKO! NIPPON Calling Tour 2024

会場 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)ホールA 日時 2024年11月15日(金) 19:00~

個人的に、今、もっともライブに行きたいミュージシャン、新しい学校のリーダーズ。いままで、キャパが狭い会場が多く、チケットを取るのが困難だったのですが、今回はAichi Sky Expoという広い会場でのライブということで無事、チケットも確保。ちょっと遠い場所なのですが、足を運んできました。

Atarashiigakko

Aichi Sky Expoは、先日も宇多田ヒカルワンマンライブで足を運んだキャパ5,000~8,000人の会場。今回、2日間のワンマンだったのですが、ここを2日間埋めるのは難しくないか?と思ったのですが、当日券も出ており、集客にはちょっと苦労した様子も。とはいえ、ざっと概算で数えた限り、4,000人から5,000人程度は入っており、会場の配置もあって、それなりに埋まった感じも。先日の宇多田ヒカルワンマンに比べると、かなり寂しい感は否めなかったのですが。

ちなみに客層は、意外と中高年が目立つ客層に。以前から新しい学校のリーダーズは、結構、中高年に人気が高い、という話を聞いていました。確かに20代や30代という客層も多かったのですが、一方で、40代や自分より年配の方もかなり目立つ客層になっており、話に聞いた通り、意外と高いファンの年齢層が印象的でした。

ライブは19時を10分程度超えた時点でスタート。大きな歓声の中でメンバーが登場し、最初は「Change」からスタートし、さらに「Fly High」へ。さらに「Maji Yoroshiku」と一気に続いていき、盛り上がります。さらにここで特撮の悪役のようなメイクをしたアクション俳優が登場。アクションヒーローも登場し、ちょっとしたヒーローショーもどきがステージ上で繰り広げられます。

さらにマイケルジャクソンの「スリラー」が流れて、新しい学校のリーダーズのメンバーと、その悪役が一緒にスリラーを踊るというパロディーから、「愛の十字架」へと続きます。ちょっと意外だったのは、その後、比較的早い段階で「オトナブルー」が披露された点。おなじみの首振りダンスも生で見ることが出来て、大満足です。

その後は客席中央に設けられたセンターステージへ移動して「Forever Sisters」を披露。再び前方のメインステージに戻ると、ここまで曲と彼女たちのパフォーマンスが続いていましたが、ようやくMCへ。彼女たち恒例の自己紹介も飛び出して、こちらも生で見れて満足(笑)。その後は衣装チェンジで、こちらもおなじみのメッセージの文字がたくさん入った(ちょっと不気味な)セーラー服で登場。「Toryanse」などを披露し、また会場を盛り上げたり、メンバー全員がそれぞれ得意とするダンスを披露したりと、会場を盛り上げます。

さらに「WOO!GO!」では再びセンターステージに移動し、みんなで「WOO!GO!」の声出しで盛り上がります。その後、前方のステージに戻ると「Giri Giri」、さらにはステージ上に大きな和太鼓が登場。和太鼓奏者による力強い和太鼓の演奏の後、メンバーは全員、法被をはおって登場。「Omakase」を歌うと、その後、大きな纏を掲げ、センターステージまで練り歩きます。

ここからはクライマックス。「Tokyo Calling」、そして本編ラスト「NAINAINAI」ではSUZUKAが客席に降りて会場を盛り上げます。最後は、途中のステージに登場した、アクション俳優や和太鼓奏者なども含めて全員がステージ上に登場し挨拶。本編は幕を下ろします。

もちろんその後は盛大なアンコールへ。アンコール1曲目は「ケセラセラ」。こちらは踊りはなしで、みんなマイクの前で歌を歌うというちょっとアイドルっぽい(?)パフォーマンスに。ただ最後は再びメンバー全員がセンターステージに移動。最後は「迷えば尊し」を歌い、会場全体を盛り上げて、ライブは幕を下ろしました。

ライブはアンコール含めて1時間40分程度。若干、短めのステージでした。ただ、ステージは、特効もあり、ゲストもあり、ステージもかなり大きなセットが設置されており、全体的にかなり派手なステージに。なによりも彼女たち自身、最初から最後までその独特のダンスで踊りつづけるパフォーマンスを披露しており、やはり、あれだけのパフォーマンスが続くと、この程度の時間が精いっぱいなのでしょうか。

ただ、終始盛り上がる曲の連続。凝ったステージに、なんといっても彼女たちのパフォーマンスもあって、非常に楽しめたライブで、文字通りあっという間の1時間40分でした。これはまた、是非とも機会を見つけて、彼女たちのライブに足を運びたいなぁ。ミュージシャン・・・という以上にパフォーマーとしての新しい学校のリーダーズの実力、そして魅力をしっかり認識できた素晴らしいステージでした。

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2024年11月21日 (木)

今週も韓国系アイドルグループが並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、今週も韓国系のアイドルのアルバムが目立ちます。

まず今週1位を獲得したのが韓国のアイドルグループStray Kids「GIANT」が獲得。日本盤の2枚目となるオリジナルアルバムで、CD販売数1位、ダウンロード数で3位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上33万4千枚で1位初登場。直近のEP「ATE」の初動12万9千枚(2位)からアップしています。

2位も韓国のアイドルグループBTSのメンバー、JINによる初のソロアルバム「Happy」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでも初動売上21万9千枚で1位に初登場しています。

3位はようやく日本のグループ、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「ECHOES of DUALITY」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数5位。オリコンでは初動売上3万9千枚で3位初登場。前作「Land of Promise」の初動6万7千枚(1位)からダウンしています。

4位以下の初登場盤は、まず4位にYUTA「Depth」が初登場。韓国の男性アイドルグループNCTに所属する日本人アイドル中本悠太ことYUTAのデビューミニアルバム。5位初登場はLINKIN PARK「From Zero」がランクイン。日本でも高い人気を誇るアメリカのロックバンド。2017年にバンドのボーカルの逝去により活動を休止していた彼らが、新ボーカルを迎えてリリースした7年ぶりの新作。タイトルはまさに新たな一歩といった感じなのでしょう。7位はBad Ass Temple「.Bad Ass Temple」がランクイン。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」に登場する架空のラップグループによる新作。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、先週に引き続き、弌誠「モエチャッカファイア」が1位を獲得。これで2週連続通算7週目の1位となります。ただし、動画再生回数では6位から7位にダウン。Hot100でも47位から55位にダウンしています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週、TikTok Weeklyでも先週と変わらずROSE&ブルーノ・マーズ「APT.」が2週目の1位を獲得。Hot100とダブルで1位獲得となっています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも先週に引き続き柊マグネタイト「テトリス」が2週連続で1位獲得しています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年11月20日 (水)

女性アイドルグループが目立つチャートに

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、女性アイドルグループの初登場が目立つチャートとなりました。

Apt

まずはロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」がついに1位獲得。ストリーミング数は先週と変わらず1位。動画再生回数は5位から4位にアップ。ダウンロード数3位、ラジオオンエア数2位は先週から変わらず。今後、どこまでヒットが続くでしょうか。

2位は先週19位だった女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」がベスト10初登場。先々週までHeatseekersで1位を獲得。TikTokチャートでも先々週まで5週連続1位を記録していましたが、今週、CDリリースにより、CD販売数が5位にランクイン。ストリーミング数13位、動画再生回数9位を記録し、総合順位でもベスト10入りを果たしました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上5万9千枚で3位初登場。本作がCDシングルとしては初のリリースとなります。

3位はCreepy Nuts「オトノケ」が先週から同順位をキープ。ストリーミング数は先週から変わらず2位をキープ。ダウンロード数は2位から1位に、動画再生回数も3位から2位にアップ。また先週はベスト10圏外だったラジオオンエア数も9位に再ランクインしています。ちなみにCreepy Nuts、今週「Bling-Bang-Bang-Born」が11位にダウン。再びベスト10から陥落となり、ベスト10ヒットは通算42週でストップとなりました。

以下、初登場曲ですが、まず4位に旧ジャニーズ系、NEWS「あっちむいてほい」が初登場。日テレ系ドラマ「高杉さん家のおべんとう」主題歌。CD販売数1位、ラジオオンエア数12位、その他はすべて圏外で、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上13万2千枚で1位初登場。前作「ギフテッド」の初動12万9千枚(1位)から若干のアップ。

その他に今週3曲の初登場曲がありましたが、いずれも女性アイドルグループという結果となっています。まず6位はIS:SUE「THE FLASH GIRL」。韓国発のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」から誕生した女性アイドルグループ。オリコンでは本作が収録された「Welcom Strangers~2nd IS:SUE~」が初動売上7万5千枚で2位初登場。前作「1st IS:SUE」の初動11万6千枚(1位)からはダウンしています。

8位は秋元康プロデュースの女性アイドルグループ僕が見たかった青空「好きすぎてUp and down」がランクイン。CD販売数4位、ラジオオンエア数7位。オリコンでは初動売上5万1千枚で5位初登場。前作「スペアのない恋」の初動売上4万5千枚(2位)からアップ。

そして9位にはハロプロ系アイドルグループ、アンジュルム「初恋、花冷え」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数16位。オリコンでは初動売上5万6千枚で4位初登場。前作「美々たる一撃」の初動2万2千枚(4位)からアップ。

一方、ロングヒット曲ではまずMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週と変わらず5位をキープ。ストリーミング数は3週連続の3位。動画再生回数は4位から5位にダウンしていますが、ここに来てダウンロード数が14位から8位に大幅アップ。これでベスト10ヒットは連続31週目となりました。

そしてこっちのけんと「はいよろこんで」は先週と変わらず10位をキープ。先日、紅白への初出場が発表されて注目度が再び高まった感があります。ストリーミング数は10位から8位に、動画再生回数も8位から6位に再びアップ。ダウンロード数は4位から5位にダウンしましたが、再び上昇傾向となっています。これで通算16週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年11月19日 (火)

細野晴臣プロデュースによる幻のアルバム

Title:Linda Carriere
Musician:Linda Carriere

今回紹介する本作は、「邦楽」にカテゴライズするか「洋楽」にカテゴライズするか迷うような1作なのですが・・・今回紹介するアルバムは、リンダ・キャリエールというニューオリンズ生まれでロサンジェルス在住だった女性シンガーによる作品。かの細野晴臣とアルファレコードがプロデューサー契約を結び、その細野晴臣プロデュースによる第1弾アルバムとして制作されたのが本作。ただ、世界戦略を担う海外スタッフの反応が鈍く、そのままお蔵入りになってしまったとか。そのため「幻のレコード」とされていたのですが、その作品がこのたび復刻。CDとLPにてついにリリースとなりました。

で、アメリカ人のシンガーによる作品で、英語詞はアメリカの詩人、ジェイムズ・レイガンが手掛けた作品なのですが、プロデュースは前述の通り、細野晴臣が手掛け、さらに作曲陣には細野晴臣をはじめ、山下達郎、吉田美奈子、矢野顕子、佐藤博と豪華な日本人メンバーがズラリと並んでいます。日本人がつくった日本のアルバムという意味では「邦楽」にカテゴライズされそうですが、ただ、結果としてお蔵入りになったのですが、このメンバーで海外に打って出ようとしたのでしょうか。その志の高さも伺えます。

そして、楽曲の内容は、今聴いても、これがなぜお蔵入りになったのか不思議なほどのクオリティーの高いポップスが並んでいます。メロウな作風のポップな楽曲が並んでいます。リズムよりちょっと複雑なメロディーが主導になっている点もまた、J-POPにもつながりそうな、ちょっと邦楽的なスタンスと感じさせるのですが、ゴリゴリのソウルではなく、メロウに歌を聴かせる路線は、最近世界的に注目をされている「シティポップ」的な雰囲気も感じさせます。

また、作曲家それぞれの個性も垣間見れるのもユニークなポイントで、1曲目「Up On His Luck」は軽快なポップチューンなのですが、いかにも山下達郎らしいシティーポップの楽曲。「Loving Makes It So」も、のびやかに歌い上げるナンバーは吉田美奈子っぽさも強く感じさせるメロウなナンバーに仕上がっています。

もうひとつ、どこかエキゾチックな要素も加味されている点も大きなポイントで、特に矢野顕子作曲による「Laid Back Mad Or Mellow」はマリンバのリズムが軽快に聴かせるポップチューンなのですが、どこかエキゾチックな雰囲気も。また、ちょっとコミカルなボーカルで軽快に歌い上げる楽曲には、やはり矢野顕子っぽさも感じてしまいます。

ミディアムテンポでムーディーに聴かせる「Pround Soul」やファンキーなリズムも特徴的な「Love Celebration」など、比較的、「黒さ」の濃いナンバーも含められており、アルバム全体にインパクトも。ラストを締めくくる「Socrates」もホーンセッションやパーカッションでエキゾチックな雰囲気を醸し出した作品になっており、アルバム全体の聴後感を決定づけるような作品になっています。

清涼感あるリンダ・キャリエールのボーカルも、優しく歌いつつ、どこかエキゾチックさも垣間見れるボーカルとなっており、こちらも楽曲の方向性にもマッチしている歌声を聴かせてくれています。というよりも、おそらく彼女のボーカルを生かした楽曲を、となった場合、本作に収録されている作品にように仕上がった、のかもしれません。

1977年の作品でありながらも、いやむしろ今の耳で聴くからこそ、非常に魅力的に感じるシティポップの傑作アルバム。これがお蔵入りになってしまった、というのはちょっと不思議な感じがします。それだけ時代を先取りしすぎた、といった感じなのでしょうか・・・。ちなみに、リンダ・キャリエールはDYNASTYというR&Bグループでデビューし、1980年にリリースした「I've Just Begun to Love You」がアメリカビルボードのR&Bチャートで6位にランクインするなど、一定程度の成功を収めています。シティポップの名盤として文句なしにおすすめしたい1枚。こんなアルバムが「幻のアルバム」として眠っていたは・・・驚きです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

THIS IS JAPANESE GIRL/大森靖子

メジャーデビュー10周年を記念してリリースされた大森靖子のニューアルバム。彼女が音楽的に大きな影響を受けた、つんく♂が作曲を手掛けた「ミス・フォーチュンラブ」をはじめ、神聖かまってちゃんのの子がボーカル&作曲で参加した「小悪魔的ッ☆相当キレてる」、向井秀徳作曲の「桃色団地」、大沢伸一作曲の「THIS IS JAPANESE GIRL」、さらにカーネーションの直枝政広やクラムボンのミトも編曲で参加。かなり豪華なゲストのアルバムとなっています。正直、「小悪魔的ッ☆相当キレてる」や「桃色団地」はゲスト側の癖がかなり強い作品になっていますが、全体的にはいかにも大森靖子らしいアバンギャルドさとキュートさを同居させたようなポップスがユニーク。メジャーデビュー10周年の集大成ということだそうですが、まさに「これぞ大森靖子」といった感じの作品になっていました。

評価:★★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE
kitixxxgaia
MUTEKI
クソカワPARTY
大森靖子
Kintsugi
PERSONA#1
超天獄

火星/クレイジーケンバンド

毎年のようにコンスタントにニューアルバムをリリースし続けるクレイジーケンバンドの約1年ぶりとなるニューアルバム。今回も相変わらず安定的なクオリティーを保っており、いつも通りのクレイジーケンバンドらしい曲に加えて、ディスコ調の「ハマのビート」や、シンセやロボ声も入った「Trans Solar System Express」など、挑戦的な作風の曲も。最近、ちょっとマンネリ気味だったのですが、いつものCKBを維持しつつ、新たな側面も覗かせたような作品でした。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW
好きなんだよ
樹影
世界

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2024年11月18日 (月)

エレクトロサウンドを取り入れつつ、独特なグルーヴ感は健在

Title:自然とコンピューター
Musician:OGRE YOU ASSHOLE

EP盤の「家の外 e.p.」やライブアルバム「workshop2」「workshop3」を挟みつつ、純然たるオリジナルフルアルバムとしては実に5年ぶりとなるOGRE YOU ASSHOLEのニューアルバム。アルバムをリリースする毎に新たなサウンドを模索し、その音楽性を深化している彼らですが、今回のアルバムもまた、新たな音楽性を掘り進んだ傑作アルバムに仕上がっていました。

直近のEP盤「家の外 e.p.」はエレクトロサウンドの導入というのが大きなポイントでした。今回のアルバムに関しても、基本的にその「家の外 e.p.」の方向性を推し進めるようなサウンドに仕上がっています。1曲目の「偶然に生まれた」は、音を絞ったバンドサウンドに、エレクトロのビートが加わるサウンド。続く「影を追う」も、シンセのサウンドが前に押し出され、エレクトロサウンドに耳が行きます。

3曲目「お前の場所」ではエレクトロサウンドの方向性がさらに強まる、四つ打ちのリズミカルなナンバーとなっていますし、前述のEP盤にも収録されていた「家の外」は今回、alternative ver.として収録されていますが、スペーシーなエレクトロサウンドを前に押し出したようなサウンドに仕上がっています。

途中、「ただの好奇心」のようなバンドサウンドを主軸とした、メロウでダウナーな曲を聴かせてくれたりもするのですが、アルバム全体としてエレクトロサウンドをベースとした今回のアルバム。そして、そんなエレクトロを導入しながらも、サウンドはあくまでもシンプルに最小限に抑え、それにも関わらず、独特のグルーヴ感を出している点、今回のアルバムで何よりも特筆すべきことでしょう。

前述の「偶然に生まれた」も、音数を抑え、シンプルなサウンドを聴かせつつ、そのサウンドには独特なうねりを感じます。「影を追う」も、シンプルなエレクトロサウンドのビートがグルーヴィーに仕上げられていますし、後半の「熱中症」なども、エレクトロサウンドとバンドサウンドが見事に有機的に結びつき、グルーヴ感を醸し出しています。

またラストに並ぶ「自然とコンピューター」「たしかにそこに」もエレクトロサウンドを用いつつ、こちらはドリーミーな雰囲気にまとめあげており、最後は夢見心地な雰囲気で幕を下ろすアルバムの構成も見事。アルバムを聴き終わった後は、とても心地よい後味の残るアルバムに仕上げられています。

今回、初回盤ではこのアルバムのインスト版が収録された2枚組となっていますが、こちらのインスト版もまた非常に秀逸。楽曲から歌の部分をはぎ取ってサウンドだけ聴けば、歌付きで聴いた時よりもサウンドはバリエーションが豊富という点にあらためて気が付かされますし、サウンドの中にどこかユーモラスな要素が見え隠れしており、その点も印象的。インスト版だからこそ、彼らがサウンドの中に用意した、様々な「仕掛け」の部分に気が付くことが出来、本作をさらに奥深く楽しむことが出来たように感じました。

本作も申し分ない傑作アルバムに仕上がっていましたし、OGRE YOU ASSHOLEの実力を存分に感じさせてくれるアルバムになっていました。今回も文句なしに年間ベストクラスの傑作アルバム。さらに深化したその独自の音楽性に今回も舌を巻いた1枚でした。

評価:★★★★★

OGRE YOU ASSHOLE 過去の作品
しらないあいずしらせる子
フォグランプ
浮かれている人
homely
100年後
confidential
ペーパークラフト
WORKSHOP
ハンドルを放つ前に
新しい人
workshop 2
workshop 3
家の外 e.p.


ほかに聴いたアルバム

Strata/雨のパレード

Strata

約4年ぶりとなる雨のパレードのフルアルバム。ファルセット気味のボーカルに、ピアノやサックスを入れて、ムーディーでメロウに聴かせるジャズ的な作風が特徴的。以前から、「意識高い系」と、ちょっと揶揄的に書いてきたことがありましたが、正直、今回もそんなイメージが。楽曲としてのクオリティーは高いと思う反面、いまひとつ雨のパレードとしての個性が薄く、どこかで聴いたサウンドをなぞっているという印象を受けてしまう点が、そんな揶揄的な言い方をしてしまう理由か?バンドとしてのポテンシャルは十分だと思うので、もっともっと新しい方向性にもチャレンジしてほしい感じも。

評価:★★★★

雨のパレード 過去の作品
Change your pops
Reason of Black Color
BORDERLESS
Face to Face

愛彌々2/MONGOL800×WANIMA

MONGOL800とWANIMAによるスプリットEP第2弾。今回もオープニング的な表題曲に、2組のコラボ曲2曲、お互いに相手へ楽曲の提供を行った2曲の計5曲が収録。全体的にレゲエや沖縄民謡の要素が強く、どちらかというとMONGOL800に寄っているのは、やはりモンパチの方が先輩格だから、ということなのでしょうか。ただ前作同様、この2組のバンドのファンなら、素直に楽しめそうなEPになっていました。

評価:★★★★

MONGOL800 過去の作品
愛彌々(MONGOL800×WANIMA)
LAST PARADISE

WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!
Cheddar Flavor
Fresh Cheese Delivery
愛彌々(MONGOL800×WANIMA)
Catch Up

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2024年11月17日 (日)

松本孝弘のルーツに迫る

今回はB'zのギタリスト、松本孝弘が最近リリースしたソロ関連のアルバム2作です。両者、方向性は異なるのですが、共通して感じたのは保守的だな、という点でした。

Title:THE HIT PARADE Ⅱ
Musician:松本孝弘

まずは邦楽のカバーアルバム「THE HIT PARADEⅡ」。もともと2003年に邦楽のカバーアルバム「THE HIT PARADE」をリリースしており、その第2弾となります。

言うまでもなく松本孝弘自身はギタリストであり、本人が歌うことは基本的にないため、楽曲毎にゲストボーカルを迎えるスタイルですが、このゲスト勢がかなり豪華。前作「THE HIT PARADE」は、ビーイング系のミュージシャンが並ぶ形となり、いわば身内だけで固めたスタイルでしたが、今回はLiSAやGLAYのTERU、GRe4N BOYZと外部からの豪華ゲストが参加し、アルバムに彩りを加えています。

ただ、アルバムを聴いて感じたのは、B'zの松本も、こんなムード歌謡をやるようになったか・・・ということでした。自分がB'zを聴き始めた30年くらい前は、いわばこの手の「歌謡曲」というのは「カッコ悪い」というイメージがあり、一方当時のB'zは「アンチ歌謡曲」的な今時の音楽というイメージがありました。その後、「歌謡曲」というものの評価もあがり、私も年を重ねて、このタイプの音楽も比較的好んで聴くようになったのですが、それでもこのアルバムで聴かせてくれるようなバリバリのムード歌謡を松本孝弘が演る、というのは若干隔世の感を覚えます。

とはいえ、本作が第2弾アルバム。なんで今回のアルバムであらためてこういうことを考えたのか、今回あらためて第1弾の「THE HIT PARADE」を聴いたのですが、その理由もわかりました。前作「THE HIT PARADE」は、比較的、バタ臭い「ロック」なテイストも強いアレンジになっており、B'zのイメージに沿ったようなカバーアルバムになっています。一方、「THE HIT PARADEⅡ」は、アレンジは前作以上にムード歌謡寄り。ギターよりも「歌」を主軸とした構成となっており、前作以上にムード歌謡の雰囲気が強まったアルバムになっていました。だからこそ、前作以上にB'zとの差が違和感となってあらわれた作品になっていたように感じました。

歌を中心に据えた、ムード歌謡曲的なアレンジの作品で、よく言えば原曲にしっかりと忠実なアルバムと言えるのですが、一方で悪く言ってしまうと、かなり保守的にも感じたアルバム。良くも悪くも、松本孝弘も年を取ったな・・・と感じてしまったアルバム。悪い作品ではないとは思うのですが、前作にように、もうちょっとロックに寄って歌謡曲と上手く融合させてほしかったな、と感じた作品でした。

評価:★★★

TAK MATSUMOTO(松本孝弘) 過去の作品
TAKE YOUR PICK(Larry Carlton&Tak Matsumoto)
Strings Of My Soul
New Horizon
Electric Island,Acoustic Sea(Tak Matsumoto&Daniel Ho)

Title:TMGⅡ
Musician:TMG

こちらも松本孝弘のソロ活動の作品。彼を中心としたロックバンドTMGの2枚目となるアルバム。バンド名は「Tak Matsumoto Group」から頭文字を取ったものだそうで、ギターはもちろん松本孝弘。さらにボーカルにはMR.BIGのエリック・マーティンを擁した5人組バンド。こちらも2004年にアルバム「TMGⅠ」をリリースしデビューしていましたが、その後活動はストップ。今年、20年ぶりに活動を再開し、実に20年ぶりとなるニューアルバムリリースに至りました。

「保守的」という観点で言えばこちらのアルバムも同じです。楽曲的にはバリバリの80年代のハードロックそのまま。あまりにそのままのスタイルで、聴いていてちょっと笑ってしまったほど。スタートを飾る「CRASH DOWN LOVE」はヘヴィーなギターリフやシャウト気味のボーカルと典型的なハードロックナンバー。続く「ETERNAL FLAMES」はかのBABYMETALが参加。そのため若干のメタル色もあるものの、こちらもテンポよりハードロックの楽曲に。ゲストでLiSAが参加した「THE STORY OF LOVE」もちょっとエキゾチックさも加わった典型的なはーーどロックの楽曲に仕上がっています。ちなみにラストの「GUTAR HERO」はKAT-TUNに提供した「Real Face」のセルフカバー・・・というよりも作詞はあらたに加えていますので、メロディーだけ拝借したリメイクといった感じになっています。

そんな訳で、言ってしまえば全くひねりのないようなハードロックを奏でるバンドではあるのですが、逆に楽曲へストレートに向き合う姿勢が感じられるからこそ、楽曲へ愛情をもって素直に取り組む姿を感じられます。いわば、バンドを組んだばかりのギター青年のような純粋さすら感じさせられる本作。あえて言えば、非常にレベルの高い男子高校生たちが組んだバンド、そんなイメージでしょうか。

歌謡曲テイストの強い「THE HIT PARADE Ⅱ」とストレートなハードロック「TMGⅡ」。どちらも2作目という点で共通する作品ですが、ギタリスト松本孝弘の音楽的ルーツの異なる側面をクローズアップした作品に仕上がっています。正直、どちらも目新しさはありませんし、保守的という印象を受けました。ただ、それでも、特にTMGに関しては音楽、特にハードロックに対する無邪気な愛情を感じされた点は好印象。松本孝弘のギター少年としての顔が垣間見れた1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Good Night Mare/秋山黄色

秋山黄色については、同居女性への暴行容疑で逮捕され、正直なところ、完全にミュージシャン生命が終わったな、と思ったのですが、難なく復活しましたね。本作は、約2年半ぶりのニューアルバム。不起訴処分に終わったし、レーベルや事務所も契約打ち切りとなっていないことからすると、ちょっと酷い恋人同士の喧嘩だったのでしょう。まあ、若干のモヤモヤ感は否めませんが・・・。ただ、前作はチャート最高位16位までランクアップし、ブレイク寸前だったのですが、本作は一気に50位にダウン。ファン離れが進んでしまった点は否めなさそう。

前作まではAORテイストも強かったのですが、本作は分厚いバンドサウンドがメインとなるロック路線がメイン。ギターロックのサウンドをベースに打ち込みも取り入れており、良くも悪くもJ-POPらしい「がちゃがちゃ」感を強く感じる作品。ただ、メロにしろサウンドにしろ歌詞にしろ、ブレイクするにはインパクトや個性は薄く、もう一皮むける必要を感じる点は前作と同様。悪くはないけど、ちょっと中途半端さも感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★★

秋山黄色 過去の作品
From DROPOUT
ONE MORE SHABON

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2024年11月16日 (土)

Galileo Galileiの2つの側面を表現・・・できたのか?

今回は2022年に活動を再開したロックバンドGalileo Galileiのニューアルバムの紹介。今回は2枚同時にアルバムをリリースしています。

Title:MANSTER
Musician:Galileo Galilei

こちらは6枚目のアルバムとなる「MANSTER」。

Title:MANTRAL
Musician:Galileo Galilei

そしてもう1枚が7枚目のアルバムとなる「MANTRAL」となります。

アルバムタイトルはどちらも聞きなれない単語ですが、どちらも彼らの造語だそうで、公式サイトによると「MANSTER」は

「人間の外づら、他者から見た時の性質がテーマ。
生きていく上で対外的に振る舞っていたよそ行きの自分が、いつのまにかそれが本性のように扱われてしまうことをテーマにしている。そのペルソナを『MANSTAR』と呼び、アルバムのタイトルに。新たな表現方法を模索、音響・デジタルなど実験的ともいえる表現にも果敢にチャレンジしたロックアルバム。」
https://store.universal-music.co.jp/product/pocs23049/

だそうで、「Human」と「Monster」の合成。そして「MANTRAL」は

「ニュートラルな時の人間性がテーマ。
本性というより、ごく自然体でなにものにもなろうとしていない自分
ぼーっと何も考えずに過ごしている時の自分自身のコアな部分に焦点を当てた作品。
呼吸を無意識にしているように、ただただ生命活動をしているような究極“生”のイメージ。
タイトル『MANTRAL』は人間(Human)とニュートラル(Neutral)から作り出された造語。自然に湧き出る音楽を紡いだロックアルバム。」
https://store.universal-music.co.jp/product/pocs23050/

だそうです。

実際、「MANSTER」の方が、どちらかというと、より様々な音楽性に挑戦したアルバム。「MANTRAL」は比較的シンプルなギターロックのアルバムといったイメージでしょうか。「MANSTER」は「CHILD LOCK」でいきなりギターノイズを前面に押し出したヘヴィーなロックチューンからスタート。かと思えば「SPIN!」はスペーシーなエレクトロチューン。「カメカメレオン」はちょっとユーモラスでラテン風のリズムを取り入れた軽快なナンバーとなっています。

一方、「MANTRAL」は軽快なポップチューンの「リトライ」からスタート。メランコリックなミディアムチューンのギターロックナンバー「オフィーリア」やシンセも入ってスケール感のあるギターロックチューン「ブルペン」など、メロディアスなギターロックナンバーがメインとなっています。

ただ、最初に「どちらかというと」と書いた通り、両者明確に大きな違いがある訳でもありません。「MANSTER」でも比較的シンプルでメロディアスなギターロックのナンバーもありますし、「MANTRAL」でもシンセの音を取り入れた楽曲もあります。両者の差はさほど大きくありません。

Galileo Galileiといえば、デビュー以来、アルバム毎に作風を大きく変えてきて、リスナーを驚かせてきたバンドでした。そんな中、活動再開後の前作「Bee and The Whales」は比較的、無難にまとまったアルバムになっていました。それに続く本作に関しても、「MANSTER」では挑戦的なスタンスを感じさせつつ、全体的にはやはり、最近のGalileo Galileiらしい、バンドサウンドとエレクトロサウンドをほぼよくバランスさせた、良くも悪くも無難な作風にとどまってしまったように思います。

もちろん、それでもほどよくノイジーなギターサウンドと、ほとよくインパクトのあるエレクトロサウンドが耳障りよく、十分に楽しめるアルバムであったのは間違いありません。ただ、良くも悪くも無難に落ち着いてしまったアルバムであることは否定できません。まあ、この新たなことに挑戦しつつ、どこか無難にまとまってしまうというのは、デビュー以来の彼らの特徴のような気もするのですが・・・。アルバムとしてはよく出来ていると思うだけのポップスセンスもあるし、ロックバンドとしての実力もあると思うだけに、せっかくの2枚同時リリースなのだから、1枚はもっとぶっ飛んでもよかったのでは?

評価:どちらも★★★★

Galileo Galilei 過去の作品
パレード
PORTAL
Baby,It's Cold Outside
ALARMS
SEE MORE GLASS
Sea and The Darkness
車輪の軸
Bee and The Whales

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2024年11月15日 (金)

加藤和彦の歩みを知る

Title:The Works Of TONOBAN~加藤和彦作品集~

オリコンチャート史上初のミリオンヒット曲としても知られる「帰って来たヨッパライ」の作曲者であり、その後もサディスティック・ミカ・バンドとしての活動や自身のソロとしての活動で数多くの名曲を手掛け、後のミュージックシーンへ大きな影響を与えた希代の作曲家、加藤和彦。今年は5月に彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」が公開。それに従い、CDブックの「バハマ・ベルリン・パリ〜加藤和彦ヨーロッパ3部作」が再販されたり、インタビュー集「あの素晴しい日々 加藤和彦、『加藤和彦』を語る」が発売されたりと(こちらは未読)、加藤和彦が大きくクローズアップされています。そんな中、リリースされたのが本作。タイトル通り、加藤和彦が作曲を手掛けた曲が発表順に収録されたオムニバスアルバムとなります。

もちろん、加藤和彦の代表曲といえる作品が数多く収録。ご存じザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」「イムジン河」「悲しくてやりきれない」にはじまり、加藤和彦・北山修名義による「あの素晴らしい愛をもう一度」に、よしだたくろうの「結婚しようよ」や泉谷しげるの「春夏秋冬」、サディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」をはじめとする数々の曲や、加藤和彦名義による様々な楽曲。さらには、映画の中でも登場していた、今の世代のミュージシャンたちによる「あの素晴らしい愛をもう一度」のカバー、「あの素晴らしい愛をもう一度~2024Ver.」も収録。彼の作曲家としての歩みがよくわかる内容となっています。

さて、加藤和彦と言えば「時代の半歩先を行くミュージシャン」、先の映画ではそのような形で紹介されていました。実際、このアルバムを聴くと、加藤和彦というミュージシャンが、時代の先を行くような音楽に果敢に挑戦している様子がよくわかります。そもそもブレイク作となった「帰って来たヨッパライ」自体、実験精神にあふれる楽曲になっていますし、サディスティック・ミカ・バンドの楽曲はニューウェーヴを取り入れ、さらに「タイムマシンにおねがい」など、個人的にはオルタナ系ギターロックの走りではないか、と思うほど、今の耳で聴いても違和感ないサウンドを聴かせてくれています。

加藤和彦のソロ名義の作品に関して言えば、「SMALL CAFE」「浮気なGigi」のようなラテンの要素を取り入れてエキゾチックな雰囲気たっぷりの曲に挑戦しています。ここらへんのラテン、あるいはワールドミュージック的な要素を取り入れている点もまた、時代の先を行く挑戦心かと思います。あらためて、映画で語られていたような、「時代の半歩先を行く」という加藤和彦のスタイルを実感させられる選曲のアルバムとなっていました。

一方で、彼が様々な歌手に提供した楽曲に関して、この作品集では必ずしも網羅的に収録されていません。飯島真理に提供した「愛・おぼえていますか」や竹内まりやに提供した「不思議なピーチパイ」、ベッツィ&クリスに「白い色は恋人の色」などは彼が提供した楽曲の中で、間違いなく大ヒットした曲ですが、このアルバムには収録されていません。おそらく、このアルバム自体、映画のサントラ的な位置づけで企画されたアルバムであったため、映画に登場しない曲は選曲されなかったのでしょう。また、映画の中でこれらの曲が登場せず、本作にも選曲されなかったのは、加藤和彦のミュージシャンとしての変遷を考えた時に、これらの曲はパーツとしてはまらなかった、というのも大きいかもしれません。その点、これらの曲が選曲されなかったのは仕方ないかもしれませんが、このような曲を網羅した作品集もまた聴いてみたいという印象も受けました。

また、時代の半歩先を歩んでいた加藤和彦ですが、ある程度の時期から、その歩みが止まってしまっている点も、このアルバムを聴いて感じてしまいました。80年代のニューウェーヴまでは追っていますし、前述の通り、サディスティック・ミカ・バンドは、ある種、90年代のオルタナ系ロックの先駆け的な存在にも感じられるのですが、その前後のHIP HOPやテクノ、エレクトロ、レゲエなどといったようなジャンルについては残念ながらその音楽性の中に感じることが出来ません。彼は最後、自らの手によりその生涯を終えるのですが、先の映画では、北山修が時代の半歩先を進めなくなった時、死を選んだということを語っています。この作品集からは残念ながらその傾向が読み取れてしまったようにも感じます。

そんな気になる点はありつつも、やはり天才、加藤和彦の才能にしっかりと触れることが出来る作品集であることは間違いないかと思います。特に、映画と同時にこのサントラは聴いてみたいところ。インタビュー集は未読なのですが、やはり読んだら、さらに彼のすごさを知ることが出来るのかなぁ。リアルタイムのファンはもちろん、もっと下の世代の音楽ファンも必聴のアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

HYDE[INSIDE]/HYDE

ご存じラルクのボーカリストHYDEのソロアルバム。前作と同様、ハードコアやラウドロックの色合いが非常に強いアルバムで、いかにもなジャケットを含めて、こういう方向の楽曲を演りたかったんだろうなぁ、ということはよくわかる一方、楽曲的にはどうもどこかで聴いたことあるようなタイプの曲が多く、HYDEとしての個性があまり感じられないような。まあ、ソロなので自分が好きなことを好きなようにやったんだろうなぁ、ということはよくわかるのですが。

評価:★★★

HYDE 過去の作品
HYDE
ANTI

昭和40年男コンピレーションアルバム「俺たちの音楽時間旅行~ヒット&レア編」

昭和40年生まれの男性を対象とした隔月発行のカルチャー誌「昭和40年男」が監修・選曲したコンピレーションアルバムの第2弾。今回は、おそらく昭和40年生まれが青春を迎えた昭和50年代のヒット曲と、知る人ぞ知る的なレア曲を集めた楽曲。前回のコンピ盤でも感じたのですが、昭和50年代生まれの私が聴いてきたような音楽とは、明らかに異なったタイプの楽曲が多く、具体的には明確に歌謡曲色が多い楽曲がメイン。もちろん、その後のJ-POPへの布石的な、洋楽テイストの強い楽曲も少なくないのですが、おそらく「昭和50年代生まれ」が青春期を迎えたころのヒット曲と比べると、方向性の違いがかなり明確になりそう。たった10年の違いでも、邦楽のヒットシーンの変化を強く感じたコンピ盤でした。

評価:★★★★

昭和40年男コンピレーションアルバム「俺たちの音楽時間旅行~昭和のロック&ニューミュージック編」

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2024年11月14日 (木)

上位には韓国系アイドルが並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

上位は韓国系アイドルグループが並んでいます。

まず1位は韓国の男性アイドルグループTOMORROW X TOGETHERの韓国盤ミニアルバム「The Star Chapter: SANCTUARY」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上29万2千枚で1位初登場。前作「minisode 3:TOMORROW」の初動17万4千枚からアップしています。

2位初登場はMISAMO「HAUTE COUTURE」。CD販売数2位、ダウンロード数5位。韓国の女性アイドルグループTWICEの日本人メンバーによるサブグループ。オリコンでも初動売上10万8千枚で2位初登場。前作「Masterpiece」の初動15万4千枚(1位)からはダウン。

3位初登場も、韓国を拠点に活動する日本人7名による女性アイドルグループXG「AWE」。CD販売数3位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上6万枚で3位初登場。前作「NEW DNA」の初動3万枚(1位)からアップしています。

さらにここに4位には韓国の男性アイドルグループ東方神起「ZONE」がランクインしており、1位から4位まで韓国系のアイドルグループが並びました。とはいえ、2位3位は韓国のグループながら構成メンバーは日本人。そういう意味では日本の芸能界(アイドルシーン)は日本人にも見捨てられつつあるのか・・・?そりゃあ、秋元康がいつまでも牛耳っているような日本の(特に女性)アイドルシーンに見切りをつけるのは理解できますが。

以下、初登場は8位にReGLOSS「ReGLOSS」がランクイン。VTuberグループによるアルバム。9位に悠馬「トライ&エラー」が初登場。こちらもYouTuberグループ、コムドットのメンバーによるソロ作。そして10位にはヴィジュアル系バンド-真天地開闢集団-ジグザグ「Gran ∞ Grace」がランクインしています。また、このほかに今週は結束バンド「We Will」がCDリリースに伴い66位から7位にランクアップ。8週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songs1位は、先週に引き続き、弌誠「モエチャッカファイア」が3週ぶりに1位に返り咲きています。これは先週まで1位だったCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」がランクダウンした・・・のではなく、同曲がHot100で19位にアップし、Heatseekersの対象から外れたことによるものと思われます。ちなみに本作は動画再生回数で6位にランクイン。Hot100では47位にランクインしています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週、TikTok Weeklyでは、こちらは先週まで5週連続1位だったCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」を下して、ROSE&ブルーノ・マーズ「APT.」が初の1位獲得となりました。本作はHot100でも2位を獲得しており、今後のロングヒットが予想されます。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートも今週は初登場。柊マグネタイト「テトリス」が1位獲得。柊マグネタイトは「マーシャル・マキシマイザー」などのヒットでも知られる、活動4年目のボカロP。本作は、同曲に使われているボーカロイド、重音テトに楽曲タイトルがかかっているようです。ちなみにサビの部分は、ゲーム「テトリス」のBGMとしても使われたロシア民謡「コロベイニキ」をそのまま使用。遊び心が感じさせる構成となっています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上!チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年11月13日 (水)

新たなロングヒット曲となるか?

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、今後、ロングヒットになりそうな2曲がベスト3に並びました。

まずそのうちの1曲が今週3位から2位にランクアップしたロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」。韓国の女性アイドルグループBLACKPINKのメンバーとアメリカの人気シンガーソングライターのコラボ。今週、ストリーミング数がついに1位を獲得。ダウンロード数も4位から3位、動画再生回数も7位から5位にランクアップしており、今後のロングヒットが予想されます。

そしてもう1曲、Creepy Nuts「オトノケ」。先週の2位からワンランクダウンしたものの今週も3位をキープ。ダウンロード数、ストリーミング数2位、動画再生回数も3位といずれも上位に食い込んでおり、こちらも今後のロングヒットが予想されます。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」は今週10位から8位に再びアップ。ベスト10ヒットを通算42週に伸ばしています。

ただ、そんな中、今週1位を獲得したのはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「AwA AwA」が獲得。CD販売数1位、ラジオオンエア数3位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万8千枚で1位初登場。前作「宇宙ドライブ」の初動3万3千枚(2位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場曲はあと1曲。4位に男性アイドルグループBE:FIRST「Sailing」がランクイン。フジテレビ系アニメ「SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』 魚人島編」エンディングテーマ。配信でのリリースで、ダウンロード数1位、ラジオオンエア数9位。一方、ストリーミング数は13位、動画再生回数は19位に留まっています。

一方、今週はベスト10圏外からの返り咲きも。こっちのけんと「はいよろこんで」が先週の15位から10位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。ストリーミング数が12位から10位、ダウンロード数も5位から4位、先週まで圏外となっていた動画再生回数も8位にランクアップ。通算15週目のベスト10ヒット。特に今週、「はいよろこんで」が流行語大賞にノミネートされ、再度注目を集めた点が大きかったのでしょうか。

ロングヒット曲あと1曲はMrs.GREEN APPLE「ライラック」は先週から同順位の5位をキープ。ストリーミング数は先週から変わらず5位。ただダウンロード数は11位から14位、動画再生回数も3位から4位にダウンと全体的には下落傾向。とはいえ、これで連続30週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年11月12日 (火)

ブームとなった俳優集団のアルバムが再発!

Title:ピラニア軍団
Musician:ピラニア軍団

ピラニア軍団のアルバムがCD/LP版として再リリースされ、話題となっています。ピラニア軍団は1975年に、東映の大部屋所属の俳優を中心に結成された俳優軍団。斬られ役や悪役などをつとめる俳優たちから結成され、一時期はブームにもなったそうです。さらに1977年にはLP版もリリース。プロデュースは三上寛がつとめ、坂本龍一・村上秀一・かしぶち哲郎・後藤次利・斎藤ノブといった一流のミュージシャンたちが参加した作品となっています。そんな一流ミュージシャンたちが一堂に会したアルバムなだけに、今回のCD/LP版での再リリースが話題となりました。

ただ、個人的にこのピラニア集団というグループは、このアルバムではじめて知りました。Wikipediaで参加した俳優も並んでいますが、この中でも川谷拓三や小林稔侍といった俳優は私でも名前をよく知っています。しかし、このピラニア軍団というブームはいままで見たことも聞いたこともありませんでした。もちろん、ブームが起こった頃は私が生まれる前ということも大きいのですが、生まれる前の芸能界のブームも、「懐かしの~」などの番組で取り上げられることも少なくありません。まあ、ブームというのは、時として完全に忘れ去られてしまうことも多いんだな・・・ということも感じてしまいました。

さて、そんなピラニア軍団のアルバムですが、このアルバム自体は率直に言って、かなり厳しい内容になっていました。俳優が本職なので当たり前といえば当たり前なのですが、率直に言って、歌がかなり下手。加えて、かなり内輪ネタ的な歌詞の曲も多く、ブームが遥か昔に去って、参加メンバーもほとんど知らない私が聴いても、かなり厳しい内容になっています。

楽曲的には「死んだがナ」「やめましょう」のようなフュージョンジャズ風の曲もある一方、浪曲風の「その他大勢の仁義を抱いて」や演歌風の「役者稼業」「有難うございます」など、バラエティーに富んではいるものの、参加ミュージシャンに惹かれて聴いてみたとしたら、ちょっと期待外れになりそうな楽曲も少なくなく、歌の下手さや内輪的な歌詞の内容も含めて、総じて、今聴くとかなりキツい内容になっていたように感じました。

しかし、そんなイメージがガラリと変わるのが、今回、CD版で初音源化されたインストゥルメンタルのバージョンでしょう。こちらこそ、豪華な参加ミュージシャンの魅力を存分に感じられる内容となっていました。

フュージョンジャズの要素は歌付きのバージョンでも感じられたのですが、インストにするとより感じられるのがブラックミュージック的な要素。特に歌付きでは演歌のイメージが強かった「役者稼業」は、インストになるとメロウなサウンドやファンキーなリズムが前面に出てきており、グッと印象が変わります。「死んだがナ」もサックスの音色が耳に残るのに加えて、こちらもファンキーなベースラインが印象的。「はぐれピラニア」もファンキーなリズムをベースに、ホーンやストリングスで感じられるスケール感が心地よい楽曲に。歌付きバージョンとは全くイメージの異なる、ジャジーでファンキーなインストの名盤に仕上がっており、豪華なミュージシャンの参加が伊達ではなかったことに気が付かされます。

正直言って、歌付きのオリジナル盤の方は聴いていてかなり厳しい内容で、3つ、ともすれば2つといった内容。ただ一方、インスト版の方は文句なしにカッコいい内容で、4つ、もしくは5つでも良いような出来だったと思います。合わせて、下のような評価に。LP版はインスト版が未収録のようなので、聴くなら断然、インスト版込みのCD版で。

評価:★★★★

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2024年11月11日 (月)

ブレイク直前期の傑作

Title:空の飛び方 30th Anniversary Edition
Musician:スピッツ

40年近い活動歴を誇り、1995年の「ロビンソン」のヒット以降、ずっと人気バンドとして第一線で活動し続けるスピッツ。その彼らが、1995年に「ロビンソン」でブレイクする直前の1994年にリリースしたアルバムが「空の飛び方」。今回、同作のリリース30周年を記念して、「30th Anniversary Edition」としてリリースされました。「空の飛び方」全11曲に加えて、最近のライブ音源3曲を収録。また、Blu-rayとして、当時のミュージックビデオと、1994年当時のライブ映像が加わっています。

まさにブレイク前夜とも言える本作ですが、1996年にミリオンセールスを記録したスピッツを代表するヒット曲とも言える「空も飛べるはず」も収録。もともと「空も飛べるはず」は1994年にリリースされた曲で、その時は最高位28位とそこそこの成績という程度だったのですが、スピッツが「ロビンソン」でブレイクした後の1996年に、本作がドラマ「白線流し」の主題歌に起用されて大ヒットに至りました。

ちなみにオリコンの記録上は、同作の最高位は4位となっており、「ロビンソン」のヒット前にアルバムは売れていたのか、と思ってしまうのですが、こちらは「空も飛べるはず」がヒットした後の1996年2月19日付の記録であり、リリースされた直後、1994年10月3日付チャートでは初登場14位に留まっています。とはいえ、ベスト10寸前までのヒットは記録しており、「ロビンソン」でのブレイク以前に、スピッツがそれなりの人気を既に確保していたバンドであった、ということは伺わせます。

私自身、スピッツについてはじめて知ったのは「君が思い出になる前に」だったので、確かこのアルバムもリリース直後にはじめて聴いたはず。完成度の高いポップなメロは、当時中学生だった私にも非常に魅力的であり、本作もすっかり気に入った記憶があります。当時は残念ながらお金もなく、おそらくレンタルなどで借りて、カセットテープ(!)に録音して聴いていたと思うのですが、それだけに、その当時のカセットは既に手許にありません。そのため今回、久しぶりに本作を聴いてみました。

そんな久々に聴いてみた本作ですが、今回あらためて感じるのは、スピッツというミュージシャンのスタイルが、この時期に完全に完成していた、ということをまずは感じました。スピッツといえば、優しく暖かみのあるメロディーラインとバンドサウンド、そして、パッと聴いた感じではメロディーと同様、暖かみのあるように感じさせつつも、どこか影の部分を感じさせるような独特の歌詞ですが、そのスタイルは既にこのころの作品で完成されています。例えばアルバム1曲目の「たまご」などは、パッと聴いただけではかわいらしさも感じさせるようなポップスなのですが、歌詞をよくよく見ると、明らかにセックスを描写したように感じさせるような表現が見受けられますし、

「洗いたてのブラウスが今 筋書き通りに汚されて行く」
(「スパイダー」より 作詞 草野正宗)

「そして輪廻の果てへ飛び降りよう」
(「青い車」より 作詞 草野正宗)

など、セックスや死を彷彿とさせるような歌詞が、ポップで暖かいメロと歌詞の中に忍び込まれているのが大きな特徴。このスピッツのスタイルがこの段階で既に確立されています。

さらに今回あらためてもっと驚かされるのが、このような彼らのスタイルがこの時期に確立されており、その後、ほぼ変わらないスタイルを30年にわたって続けているにも関わらず、いまだに彼らが、ある種の若手バンドのような瑞々しさを保ち続けているという事実。おそらく、時代を超えたエバーグリーンな魅力を放ち続けるそのメロディーと歌詞の魅力が大きな要因と思われるのですが、あらためてスピッツというバンドのすごみを、このアルバムで感じることが出来ました。

ちなみに同封のBlu-rayで当時の彼らの姿を見ると、当たり前ですが、今と比べてその若さにビックリ(笑)。草野マサムネの声もやはり今と比べると若々しさを感じます。当時のライブ映像といい、こちらも今見ると、ある種の新鮮味を感じさせます。

リアルタイムで聴いていた方もあらためてチェックしてほしい作品ですし、いままで聴いたことがなかった、という方も、あらためて「スピッツの新譜」と同じ感覚で今から聴いてほしい1枚。間違いなく、全くスピッツを知らない人に、このアルバムを「新作」と言って聴かせても、何ら違和感なく受け入れそうな、時代を超えた魅力を感じさせるアルバムです。あらためてスピッツの魅力、そしてすごさを感じさせたアルバムでした。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物
醒めない
CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
見っけ
花鳥風月+
ひみつスタジオ
劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro

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2024年11月10日 (日)

かつて日本にあった文化の貴重な記録

かつて、日本では「瞽女」と呼ばれる盲目の女芸人がいました。三味線を携えて、全国の村々で歌を唄いながら渡り歩いたそうで、特に江戸時代には、ほぼ全国的に活動していたそうです。以前、当サイトでも、その瞽女について取り上げた本を紹介しましたが、その時から、瞽女うたがどのようなものか気になっていました。その本を紹介したのももう10年も前になるのですが・・・その瞽女うたを録音した貴重な音源が収録されたCDが復刻された、ということでこのたび聴いてみました。

Title:瞽女うた-長岡瞽女篇

Gozeuta

瞽女は主に新潟で、長岡瞽女と高田瞽女が最も大きな集団だったそうですが、まずこちらは長岡瞽女の録音を収録した1枚。長岡瞽女の最後の瞽女となった金子セキ、中静ミサオを中心として、昭和33年から昭和51年までの録音が収録されています。

Title:瞽女うたⅡ-高田瞽女篇

こちらは瞽女のもう片方のグループである高田瞽女の、こちらも最後の瞽女となった杉本キクイ、杉本シズ、難波コトミの3名による録音。昭和29年から昭和44年にかけての録音が収録されています。

この瞽女うたという文化、盲目の女性芸人による文化であるという点、雪深い新潟の芸能であるという点、また、このジャケットもいかにもおどろおどろしい絵となっている点からも、いかにも前近代的な、世間から虐げられたような人たちの心の叫び・・・みたいにとらえてしまいがちですが、この奏でられる唄を聴くと、そんな雰囲気はほとんどなく、むしろ「明るい」とすら感じます。これは、書籍「瞽女うた」の感想でも書いたのですが、彼女たちの唄は、決して自分たちの心境を吐露するような歌でも、辛い労働を少しでもやわらげるため歌うような労働歌でも、同一地域の人たちだけが楽しむような民謡でもなく、広い地域の人たちを楽しませるための唄であり、いわば「エンタテイメント」である、という点が大きいのでしょう。

だから、新潟の瞽女にも関わらず「鹿児島小原節」も歌っていますし、「松前口説」「三河万歳」なども歌っています。ここらへんの地域を問わず、おそらくその地域地域で親しまれた歌を自由に歌うスタイルは、いかにも彼女たちが「エンタテイナー」であったことを物語っていますし、また、その歌声にもどこか明るさも感じさせます。軽快な歌声を聴かせるような曲があったかと思えば、同じ節回しで淡々と物語を語るような「葛の葉子別れ」のような曲もあったりと、楽曲にバリエーションがあるものまた、様々なスタイルで聴き手を楽しませようとしているからなのでしょう。

どちらも非常に貴重な音源。じっくりと楽しむというよりも、昔、確かに日本に存在した文化を残した記録音源という意味合いが強いのですが、興味があれば是非とも聴きたいCDだと思います。

評価:どちらも★★★★★

そして、今回、同時に復刻していたため、購入して視聴してみたのがこのDVDでした。

記録映画「瞽女さんの唄が聞こえる」。昭和46年に、まだギリギリ健在であった高田瞽女の最後の3人、杉本キクイ、杉本シズ、難波コトミの3人の瞽女としての活動や生活を追ったドキュメンタリー。前述のCD「瞽女うたⅡ」を収録した3名でもあります。「記録映画」といっても、全35分弱のテレビドキュメンタリー的な内容。3人の普段の生活ぶりから、旅の模様まで収録されており、瞽女という文化がなくなった今となっては、ある意味、CD以上に貴重な映像資料となっています。

瞽女の記録映像の部分は基本的に白黒映像とはいえ、画像の状況はかなり良く、彼女たちを記録するのにギリギリ間に合った、といった感想も抱きます。記録映画の後には瞽女唄も収録されており、瞽女がどういう人だったのか、どのような唄を歌っていたのか、またどのような文化だったのか、ということがよくわかるようにまとめられており、あえて言えば瞽女について知りたい、といのであれば、まずこのDVDを見ればよい、という内容になっています。

このCDとDVD、さらには前述の書籍を一通り読むことによって、おそらくこの瞽女という文化をよく理解できるのではないでしょうか。現在、瞽女唄を歌い継いでいる方はいるようですが、基本的にもう旅に出ることはありませんし、瞽女という文化はなくなってしまいました。その点について、記録映画では「惜しいこと」のように語っている部分もありますが、ただ私はそうとは思いません。もともとこの瞽女という文化は、前近代的で福祉制度も人権制度も十分ではなかった時代に、盲目の人が生きて行くために支え合った自助的な文化。記録映画の中でも語られていますが、当時盲目の女性は瞽女になるか按摩になるかしか選択肢がなかった時代の文化です。人権という考えが確立され、福祉制度も進んだ現在において、盲目の方でも普通に様々な職業に就職でき、社会活動を営めるようになった現在では、瞽女という文化がなくなった、というのは当然と言えるでしょう。ただ、このような形で音源や映像の形で、その文化をギリギリ記録できたというのは、幸いだったように思います。かつて日本にあった文化の貴重な記録に触れることが出来たCDとDVDでした。

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2024年11月 9日 (土)

久々のアルバムは既発表曲がメイン

Title:Iris
Musician:BUMP OF CHICKEN

BUMP OF CHICKENの約5年ぶりとなるニューアルバム。全13曲入りのアルバムに、恒例のシークレットトラック1曲がついた実質上、14曲入りとなる作品ですが、今回ちょっと残念なのは、シークレットトラックを除いた13曲のうち11曲までがシングル曲として既に発表された曲ということ。アルバム曲としては2曲のみとなっており、BUMP OF CHICKENのようなベテランバンドが、このような形でアルバムを発表するのはちょっと残念に感じました。

そして、事実上のプレイリストと化してしまったような影響があるかどうかは微妙なのですが、バンプらしい曲が並んでいるものの、アルバム全体としては、彼らのアルバムとしては今一つだったように感じます。特に微妙に感じたのはアルバムの冒頭を飾る「Sleep Walking Orchestra」で、アニメ「ダンジョン飯」のオープニング曲としてタイアップの段階から見ていたのですが、タイアップとしてはピッタリなのですが、なんとなく無理やりバンプっぽさを出したような楽曲となっており、メロディーの展開にチグハグさを感じてしまいます。

「青の朔日」も、数少ないアルバム収録曲だったのですが、バンプらしいメロディアスでちょっと切なさを感じるギターロックなのですが、ただ、いかにもな転調がちょっと無理矢理感が否めず。聴いていて率直なところ、違和感も覚えてしまいました。

もちろん、BUMP OF CHICKENとしての実力を感じさせるギターロックチューンも少なくありません。例えば「SPY×FAMILY」の主題歌となった「SOUVENIR」も、ファルセットボーカルを効果的に用いたバンプらしいポップな作品に。「Flare」もメランコリックなメロながらも、希望を感じさせる歌詞が彼らしい胸をうつポップスに。ダイナミックでスケール感を覚える「窓の中から」も耳を惹きますし、最後を飾る「アカシア」も、疾走感で爽やかなギターロックは、BUMP OF CHICKEの本領発揮とも言える楽曲で締めくくられています。

このように、ちょっと今一つと感じる曲もありつつ、しっかりとBUMP OF CHICKENの魅力を感じさせる曲も配されており、ファンの期待にはしっかりと応えるアルバムにはなっていたと思います。ただ、それでもちょっと物足りなさを感じてしまうのは、逆にいかにもバンプらしい曲、もっと言えばシングル曲ばかりが並んでいた結果、1曲1曲は魅力的ですが、アルバム全体としてのパワー不足を覚えてしまいます。アルバムというよりも、既発表シングル曲のプレイリストを聴いているような感覚。結果として、アルバムを聴き終わった後に、どこか物足りなさを覚えてしまう、そんな内容になっていました。

決して悪いアルバムではないと思うのですが、BUMP OF CHICKENのアルバムとしてはちょっと今一つだったような・・・。特に、聴き終わった後の印象は弱い作品に仕上がっていた感があります。少なくとも、彼らくらいのベテランバンドだったら、アルバム曲を追加して、アルバム全体をひとつの作品として構築してほしかった印象も。惜しい印象を受けた1枚でした。

評価:★★★★

BUMP OF CHICKEN 過去の作品
orbital period
COSMONAUT
BUMP OF CHICKEN Ⅰ[1999-2004]
BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]

RAY
Butterflies
aurora arc


ほかに聴いたアルバム

あちゃらか/パスピエ

2020年にリリースした「synonym」以来、ちょうど1年マイナス1日という間隔をあけてのフルアルバムリリースが続いていましたが、今回は昨年12月6日にリリースした「印象万象有象無象」から、わずか約9か月というインターバルでリリースされたミニアルバム。8曲入りのアルバムですが、ブレイクビーツ的なリズムを取り入れた「きもち」や80年代風のサウンドを取り入れた「FFFLLLYYY」、ストリングスを入れてドリーミーな「それから」、さらにバンド初のインストナンバー「幕間」まで、基本的にはエレクトロ+バンドサウンドで聴かせるキュートでポップなメロを主軸としつつ、バラエティー豊かな作風になっているのが特徴的。ミニアルバムで、全32分という短さもあり、ダレることなく、一気にパスピエらしいポップな世界を楽しめるアルバムになっていました。次は12月5日にフルアルバムがリリースされるのでしょうか?

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA
OTONARIさん
ネオンと虎
more humor
synonym
印象万象有象無象

ネビュラロマンス 前篇/Perfume

メジャーデビュー20周年、結成25周年を記念してリリースされたPerfumeの新作は、彼女たち初となるコンセプトアルバムで、「メンバー3人が宇宙を舞台に繰り広げる壮大なドラマを凝縮した、架空の映画のサウンドトラック」だそうです。そのため、楽曲には宇宙をテーマとした曲が多く、また、スペーシーなエレクトロチューンが多いのも印象的。とはいえ、基本的にはいつも通りのPerfumeらしいエレクトロポップがメインであり、そういう意味ではコンセプトアルバムとはいえ、いままでのPerfumeと大きな路線変化はありません。今回も魅力的な中田ヤスタカサウンドの楽しめるポップチューンになっていました。ちなみに、これ、後編はいつ出るのかな?

評価:★★★★

Perfume 過去の作品
GAME
Future Pop
Perfume The Best "P Cubed"
PLASMA

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2024年11月 8日 (金)

クリープハイプの魅力を再認識

Title:もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって

クリープハイプが、現在のメンバーとなってから、今年で15周年を迎えた記念にリリースしたトリビュートアルバム。クリープハイプと言うと、ボーカル尾崎世界観のハイトーンボイスがバンドの大きな特徴。かなり独特の声色なだけに、好き嫌いはかなり別れる感もあります。この賛否別れる声色がバンドとしての大きな特徴だからこそ、今回のトリビュートアルバムのタイトルも、そんな「声」に焦点をあてたタイトルとなっているのでしょう。

この尾崎世界観の声がバンドとしての大きな特徴ということは、逆に言えば、この声さえ変えてしまえばクリープハイプの曲ではなくなる、ということ。トリビュートアルバムというと、原曲を尊重しつつ、それぞれのミュージシャンが元のミュージシャンの色をいかに自分たちの色に変えるか、というのが大きな課題となってきます。しかし、クリープハイプのカバーという点で言えば、声さえ変えればクリープハイプとしての色は消せる訳で、そういう意味では取り組みやすいカバーだったようにも感じます。

そのため、基本的に特に難しいことなく、原曲を変にこねくりまわすことなく、シンプルにクリープハイプの楽曲をカバーしたような曲ばかりでした。SEKAI NO OWARIの「栞」も、彼らがいつもの通り演奏するだけに、ちゃんとセカオワの曲になっていましたし、10-FEET「手と手」もそのまま10-FEETの曲におさまっています。尾崎世界観と同様、ボーカルが特徴的なUNISON SQUARE GARDEN「イト」も同様。斎藤宏介が歌えば、そのままユニゾンの曲になっていますし、Indigo la End「ABCDC」も。川谷絵音もハイトーンボイスの持ち主なだけに、楽曲にもピッタリマッチしていました。

ちょっと異色的だったのはウルフルズの「二十九、三十」で、こちらもある意味、ウルフルズらしい素直なカバーながらも、ソウル調のカバーに仕上げています。クリープハイプにソウルというイメージはあまりないのですが、これをしっかりウルフルズらしいソウルに仕上げてくるあたりはさすがといった感じでしょう。

ただ、このようにそれぞれのミュージシャンが簡単に自分たちの色に染めてくるのは、もちろんクリープハイプらしさの大きな要素が尾崎世界観の声にあるから、という側面も大きいのですが、さらに言えばやはり大きな要素なのが、やはりクリープハイプの楽曲自体の良さでしょう。正直言って、個人的に尾崎世界観の声は、どちらかというと「苦手」に近いタイプ。それだけに、クリープハイプの曲をどこか素直に聴けていなかったのでしょう。今回、様々なミュージシャンたちがクリープハイプの曲をカバーすると、あれ、彼らの楽曲って、こんなに良かったんだ・・・ということを再認識しました。インパクトのあるメロディアスなメロディーは楽曲としての強度が強く、ウルフルズのソウル風カバーなど典型なのですが、様々なスタイルでカバーされても、楽曲の良さを失いません。そんなクリープハイプの曲の魅力を、様々なカバーを通じて、逆に再認識することが出来ました。

そんな訳で、尾崎世界観のあの声がちょっと・・・と思っているような方こそ、聴いてほしいアルバムかもしれません。もちろん、参加しているミュージシャンのファンにとってもお勧めしたい1枚。クリープハイプというバンドの良さを再認識した作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

QUARTER CENTURY/コブクロ

結成25周年を迎えたコブクロが、活動四半世紀の集大成的にリリースしたニューアルバム。集大成ということもあって、目新しさは薄く、いつものコブクロといったイメージ。それだけにサウンドにしてもメロディーラインにしても安定感があり、ベテランとしての余裕や実力も感じさせます。布袋寅泰と組んだ「Soul to Soul」のようなロックチューンや「Moon Light Party!!」のようなスカのナンバーがあったりと、それなりにバリエーションを加えてきているのも、ベテランらしい、様々な音楽性を容易に取り込んでくる実力も感じさせます。貫禄すら感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

コブクロ 過去の作品
5296
CALLING
ALL COVERS BEST
ALL SINGLES BEST2
One Song From Two Hearts
TIMELESS WORLD
ALL TIME BEST 1998-2018
Star Made
ALL SEASONS BEST

HAZE/G-FREAK FACTORY

前作「VINTAGE」で、初のベスト10ヒットを記録した、キャリア27年を誇るベテランロックバンドの約4年ぶりのニューアルバム。基本的にヘヴィーなバンドサウンドにレゲエを取り入れたサウンドが重なるミクスチャーロックバンド。レゲエ起因の独特な横ノリのリズムを入れつつ、ズシリと重いバンドサウンドにメランコリックなメロが耳を惹きます。前作でも感じたのですが、目新しさのようなものはないのですが、ベテランバンドらしい安定感のある作品。ライブ映えしそうなアルバムでした。

評価:★★★★

G-FREAK FACTORY 過去の作品
VINTAGE

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2024年11月 7日 (木)

今週もまたアイドルグループが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsはまたアイドル勢が上位に並んでいます。

今週は旧ジャニーズ系アイドルグループSnow Man「RAYS」が初登場で1位獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上108万枚で1位初登場。前作「i DO ME」の初動106万1千枚から若干のアップとなっています。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「SPILL THE FEELS」が先週の4位からランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲きに。また3位は先週1位の竹内まりや「Precious Days」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤は、4位に女性アイドルグループGirls2「寄り道-Take it easy baby-」が初登場。5位にはPerfume「ねヴゅらロマンス 前篇」がベスト10初登場。6位にピアニスト角野隼斗「Human Universe」がランクイン。東大卒という異色の経歴を持つピアニストの世界デビュー作が、クラッシック作品としては異例となるベスト10入りを果たしています。7位には韓国の女性アイドルグループBABYMONSTER「[DRIP]」が初登場。8位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループICExのデビューアルバム「Retro Toy Pop」。9位にはスガシカオ「Acoustic Soul 2014-2024」が初登場でランクイン。そして10位にはAdoがプロデュースした女性アイドルグループファントムシータ「少女の日の思い出」がランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位は、先週に引き続き、女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が1位を獲得しています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTokチャートも、女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が5週連続の1位を獲得。先週に引き続き、Heatseekers Songsとの2冠となっています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

https://www.nicovideo.jp/watch/sm44233925

ボカロチャートも先週と変わらず。なきそ「化けの花」が2週連続の1位獲得しています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年11月 6日 (水)

今週も新曲は多め

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は新曲ラッシュとなったHot100でしたが、今週も4曲が初登場という比較的新譜が多めなチャートとなりました。

まず1位はINI「WMDA(Where My Drums At)」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数2位。韓国のCJ EMMと日本の吉本興業の合弁であるLAPONEエンタテイメント所属の男性アイドルグループ。オリコン週間シングルランキングでも同作が収録されている「THE VIEW」が初動売上63万枚で1位初登場。前作「THE FRAME」の初動67万2千枚(1位)からはダウン。

2位はCreepy Nuts「オトノケ」が先週と変わらず2位をキープ。ダウンロード数、ストリーミング数及びYouTube再生回数で1位を獲得。ラジオオンエア数は14位。最初は「Bling-Bang-Bang-Born」と比べてちょっと地味という印象も受けたのですが、何度か聴くうちに、いつの間にか病みつきになるような中毒性の高い曲調ということに気が付かされました。このままロングヒットとなりそう。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」は今週10位に返り咲き。これで通算41週目のベスト10ヒットとなりました。

3位はROSE&ブルーノ・マーズ「APT.」が先週の5位からランクアップし、ベスト10入り2週目にしてベスト3ヒットに。動画再生回数は先週と変わらず7位、ダウンロード数も2位から3位とダウンする中、ストリーミング数が3位から2位にアップしています。今後、ロングヒットとなっていくのでしょうか。

続いては4位以下の初登場曲です。まず4位にTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「Endless Happy-Ending」がランクイン。LDH所属の男性アイドルグループ。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。前作「24karats GOLD GENESIS」の初動21万9千枚(1位)からダウン。

6位初登場は22/7「YESとNOの間に」。秋元康が手掛ける声優+バーチャルアイドルのグループ。CD販売数2位。オリコンでは初動売上4万9千枚で3位初登場。前作「後でわかること」の初動3万7千枚(2位)よりアップ。

7位は韓国の女性アイドルグループaespa「Whiplash」が13位からランクアップし、ランクイン2週目にしてベスト10初登場。ダウンロード数19位、ストリーミング数4位、動画再生回数11位。同タイトルのミニアルバムの表題曲が配信オンリーでベスト10入り。

今週の初登場は以上ですが、今週は前述の「Bling-Bang-Bang-Born」に加えて、もう1曲、ベスト10返り咲き組が。韓国の女性アイドルグループTWICEの日本人メンバーによるサブグループMISAMO「NEW LOOK」が先週の14位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

また、先週、大きくダウンしたロングヒット曲。今週、多く返り咲いてくるかな・・・と思ったのですが、残念ながらベスト10返り咲きは「Bling-Bang-Bang-Born」1曲に留まりました。ロングヒット曲はあと1曲、Mrs.GREEN APPLE「ライラック」が3位から5位にダウンながらもベスト10をキープ。これで29週連続のベスト10入り。ただ、9週連続でキープしていたベスト3ヒットは今週、途切れてしまいました。また、ストリーミング数も2位から3位にダウン。さすがに徐々にランクダウンとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年11月 5日 (火)

あの頃の中高生が中高年に!

爆風スランプ~IKIGAI~デビュー40周年日中友好LIVE "あなたのIKIGAIナンデスカ?"

会場 エレクトリック・レディ・ランド 日時 2024年11月1日(金) 19:00~

80年代から90年代にかけて「Runner」をはじめ、数多くのヒット曲で一世を風靡したロックバンド、爆風スランプ。今年、デビュー40周年ということで新曲を発表。さらにはなんと26年ぶりというライブツアーも行う、ということもあり、ライブに足を運んでみました。爆風スランプに関しては、リアルタイムでは特にファンという訳でもなく、ライブに足を運ぶのも今回はじめて。会場はエルという、決して大きくはないライブハウスだっただけに、チケットを取るのは困難では?と思ったのですが、あっさりとチケットは確保。会場に足を運びました。

Yoi

↑ 会場には、デビューアルバム「よい」のジャケットに使われた、サザンの関口和之の書いた原画が展示されていました。

チケットは難なく確保できたとはいえ、もちろん会場は超満員。もちろん、会場のファン層は、全盛期にリアルタイムで爆風スランプを聴いていたような50歳代がメイン。私くらいの年齢でも若い方・・・という客層。ライブハウスの壁には、垂れ幕がかかっており「あの頃の中高生が中高年に」という標語(?)が掲げられていましたが、すごく言い得て妙な言い回しに思わずニヤリとしてしまいました。

やがて定時となりライブスタート。大歓声の中でメンバーが出てくると、最初は「えらいこっちゃ」からスタート。「狂い咲きピエロ」「夕焼け物語」と続く中、メンバーそれぞれのソロパートもあり、ロックバンドとしてのその実力をしっかりと聞かせてくれます。その後、MCでまずはメンバー紹介。そして彼らの代表曲「リゾ・ラバ-Resort Lovers-」へ。懐かしいヒット曲の登場に、個人的にも否応なしにテンションがあがります。さらに「WAR」を挟んで、同じく代表曲の「大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い」に。しっかりと歌い上げて聴かせるナンバーに、聴いていて胸が熱くなります。

その後はサンプラザ中野くんが一度ステージからはけ、3人とサポートメンバーの1人だけがステージに残った状態に。ここでパッパラー河合のソロコーナーで、パッパラー河合のボーカルで、「京都マイ・ラブ」ならぬ「KASHIWAマイ・ラブ」に。そこから再びサンプラザ中野くんも戻ってきて「マイ・ラブ」コーナーということで、メンバーの誰の出身地の「マイ・ラブ」を歌うかで、じゃんけん大会に。結果、最初はファンキー末吉ボーカルで「坂出マイ・ラブ」に。さらにはサンプラザ中野くんで「流山マイ・ラブ」と。結果、肝心の「京都マイ・ラブ」はなく(笑)、「マイ・ラブ」コーナーは終了となりました。

続いてはヘヴィーメタルバンドに物申す!ということでファンキー末吉がヘヴィーメタルバンドに暴言(?)を吐いた後、彼らのヘヴィーメタルナンバー「たいやきやいた」を迫力ある演奏で聴かせてくれます。そしてライブは終盤へ。「ひどく暑かった日のラヴソング」から「よい」と「うわさになりたい」のメドレー。そして、懐かしい「涙2」へ。この曲はリアルタイムでも聴いていたヒット曲なだけに、懐かしく胸がジーンとなります。さらにはお待ちかね、彼らの最大のヒット曲「Runner」!この曲には会場全体が大合唱。私自身も思いっきり歌っていました。そのため、サンプラザ中野くんの声もあまり聞きにくい状況だったのですが、この曲に関しては、ファンの大合唱で歌われていても全く苦になりませんでした。それだけ会場全体が一体となって盛り上がった瞬間でした。

本編はこれで一度終了。もちろん、アンコールに突入。アンコールではまた再びパッパラー河合のボーカルで「耳たぶ~目ん玉」という珍曲を聴かせた後は、サンプラザ中野くんが登場。新曲の「IKIGAI」へ。こちらはラップ調のパートを取り入れつつ、非常にユニークな、爆風スランプらしいナンバー。「あなたの生きがいは何ですか?」と観客へ聴いて回ったりと、新曲ながらもしっかりと盛り上がっていました。そしてこちらも大ヒットナンバー「旅人よ~The Longest Journey」へ。テレビ番組「電波少年」の「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」の応援歌として大ヒットしたこの曲ですが、「有吉君での応援歌でしたが、最近、バナナマンに『自分たちにとっても応援歌でした』と言われたので、有吉君とバナナマンへの応援歌になりました」というMC。「あれ?猿岩石のもう一人は?」とちょっと思いつつ、はじめてライブで聴けた懐かしのナンバーに、会場全体も大盛り上がりとなりました。

その後はさらにダブルアンコールへ!三度メンバーが登場し、最初はデビュー前の懐かしいエピソードへ。デビュー前には毎月のようにエルでライブを行っていたそうで、(観客席から「行ってたよ!」という声も・・・かなりコアなファンも来ていたようです)当時は、今の7分の1程度の小さい箱だったそうです、最後の方は超満員となっていたそうです。ただ、その当時、彼らはかなり過激なライブをやっていたそうで、観客席に火のついた花火を投げ入れた時もあって、その時は超満員の観客が、花火をさっと避けてスペースが出来たことから「なんだ、まだ入れるじゃん」と思ったとか。「あの時は大変申し訳ありませんでした」と当時メンバーではなかったバーベQ和佐田以外が頭を下げていました(笑)。

そんな心温まる(??)エピソードから、当時、乗っていたボロボロのツアーバスの話に。かなり乗りまくっていたみたいですが、最後は浜松のインターで完全に壊れてしまったとか。そのことを、当時、チェッカーズの高杢のラジオ番組で話したところ、「それを歌にすればいいじゃん」と言われたそうで、そんなエピソードから誕生したという「THE BLUE BUS BLUES」へとつながりました。そしてラストは「シンデレラちからいっぱい憂さ晴らしの歌 今夜はパーティー」へ。最後はダンサナブルなナンバーで会場全体大盛り上がり。大盛況のうちにライブは幕を下ろしました。

今回、はじめて爆風スランプのライブを見たのですが、まず感じたのは、予想していた以上に彼らのロックバンドとしての演奏力の高さでした。ライブ中のMCでも「THE FIRST TAKE」の動画で、海外からベースとドラムのうまさが絶賛された、という話があったのですが、確かに(もちろんギターのパッパラー河合を含め)かなりの迫力のある演奏を聴かせてくれています。予想していた以上にロックバンドとしての実力の高さを感じられました。

また、以前、サンプラザ中野くんのソロアルバムを何度か聴いたことがあったのですが、その時、全く声が出ておらず、辛いなぁ、と思ったことがあります(ここのサイトでも書いたと思うのですが)。ただ、今回のライブでは、サンプラザ中野くんの声、往年と全く劣らない声をしっかり出しており、逆にちょっとビックリしました。「このメンバーでできるリハーサルが楽しかった」というMCもあったのですが、事前にしっかりと身体を含めて作り込んで、練習もしてきたのでしょうね。彼ももう還暦を超えているだけに声が出るかどうか、かなり心配していたのですが、全盛期とほとんど変わらないようなボーカルで、安心してライブを楽しむことが出来ました。

今回、はじめてライブに足を運んだ爆風スランプ。リアルタイムではファンではなかったものの、それでも懐かしい曲の連続に、感涙モノのステージでしたし、往年と変わらない、しっかりとキレのあるステージに、26年ぶりとは信じられないほどの現役感も覚えるステージ。メンバー全員の息もピッタリ合っており、やはりスパンが空いていても、いざ一緒になればあの頃の力を出せるんだろうな、と感じる素晴らしいパフォーマンスでした。ちなみにライブはダブルアンコールまで演っても、2時間弱という長さ。もうちょっと演ってほしかったな、とも思いつつ、オールスタンディングのライブなだけに、ファンの年齢層を考えると、これ以上の長時間は厳しいのでしょうね(笑)(バンドメンバー本人にとってもそうかもしれませんが)。とにかく素晴らしいステージで非常に楽しめるパフォーマンスでした。これを機に、また本格的に活動再開するかどうかは不明なのですが(今後については全くの未定とも語っていました)、また機会があれば、ぜひともまた行きたいと思わせてくれるような素晴らしいパフォーマンスでした。

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2024年11月 4日 (月)

TikTok初の「今時の」ミュージシャン

Title:君にモテたいっ!!
Musician:Mega Shinnosuke

Megashinnosuke

最近、人気上昇中のシンガーソングライターMega Shinnosukeの8曲入りのEP盤。とはい、デビューは2018年なので、そろそろ活動歴的には中堅の域に入ってきそうなのですが・・・。今年6月にリリースされ、本作にも収録されている「愛とU」がTikTokを中心にヒット。特に、テンポを速くしたSped Up Ver.がTikTok Weeklyの1位を獲得し、一躍注目を集めました。

まあ、TikTok初のヒットというと、いかにも「今どきのヒット」といった印象で、正直、この「愛とU」についても、TikTokチャートでヒットを記録した時にチェックはしたのですが、軽快なポップチューンということで悪い印象は抱かなかったものの、かといって、これだけで一気に注目をしたかというとそうでもなく。同作が収録されたこのEP盤も、話題のミュージシャンだから聴いてみようか・・・程度の気持ちでチェックしてみました。

ただ、「いかにも今風の流行りのミュージシャン」というイメージで聴いてみた本作ですが、これが予想以上に素晴らしい内容でちょっとビックリ。そのヒットした「愛とU」からスタートするのですが、続く「18才の夏休み」は一転、アコギが入ってフォーキーな作品に。歌詞にも昔の夏の日を思い出すような郷愁感たっぷりの歌詞が印象的で、今時のポップスどころか、むしろ昔懐かしい雰囲気の作風になっています。

この、意外な懐かしさを感じさせるフォーキーな作品はその後も顔を覗かせ、「ぼくの部屋においでヨ」も軽快で明るくも、フォーキーな雰囲気の曲になっていますし、5曲目「海をみにいこう」もアコギで聴かせるフォーキーで魅力的なナンバー。こちらも注目のシンガーソングライター、崎山蒼志が参加した曲で、波の音がバックに流れる、暖かさを感じさせる楽曲に。ラストを締めくくる「ふたりの映画」も、恋人の別れの風景を描いたメランコリックでノスタルジックさを感じるナンバーは、どこかサニーデイ・サービスっぽさすら感じるフォークロックの楽曲に仕上がっています。今時のミュージシャンかと思ったら、意外と懐かしさを感じさせるフォーキーな作風が大きな魅力となっていました。

かと思えば続く「あの子とダンス」では女性ラップグループのchelmicoとフューチャー。軽快なリズミカルなナンバーに、ラップも登場。トラックを含めてHIP HOP的な要素が強いナンバー。「ao」もダウナーなエレクトロサウンドを取り入れたトラックはHIP HOPからの影響を強く感じさせる曲になっており、ここらへんのオールドスタイルのなつかしさを感じる楽曲と、今風のナンバーが同居している作風が非常にユニークに感じます。

そんな視点からあらためてヒットした「愛とU」を聴くと、ファルセット気味のボーカルで聴かせてくれる歌の部分はフォーキーさを感じさせつつ、サウンド的にはシティポップの雰囲気も。また、途中にラップの部分も登場し、自由自在に様々な音を取り入れたトラックにはHIP HOPの影響も感じさせます。いろいろな意味での自由さを感じさせるサウンドが、Mega Shinnosukeの大きな魅力と言えるでしょう。

そんな訳で、正直、「今のヒットシーンを追いかける」程度でチェックしてみたアルバムでしたが、予想していたよりも優れたアルバムになっていて、ちょっとビックリしました。ちなみにMega Shinnosukeという名前、芸名かと思ったら、なんと本名ということ(!)これから、その名前はさらに知れ渡るかもしれません。今後が楽しみなミュージシャンです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PERFECT!MENU/サディスティック・ミカ・バンド

加藤和彦を中心に結成され、日本のみならず海外でも活躍したロックバンド、サディスティック・ミカ・バンド。本作は、同バンドのボックスセットで、8枚のCD+Blu-rayからなる全9枚組。デビュー作「SADISTIC MIKA BAND」から、4枚目の「天晴」までのオリジナルアルバムとライブアルバム「Live in London」「晴天SADISTIC MIKA BAND LIVE IN TOKYO 1989」がリマスターされて収録。さらに1974年の京都円山公園野外音楽堂のライブをおさめたアルバムと、レア音源集、さらにBlu-rayはレアビデオ集という豪華な内容になっており、サディスティック・ミカ・バンドの全貌がわかる豪華なボックスセットとなっています。

内容についてはいまさら言うまでもありません。サディスティック・ミカ・バンドというと「タイムマシンにおねがい」のような軽快なギターロックやあるいはニューウェーヴィ風というイメージも強かったのですが、デビュー当初はよりヘヴィーなブルースロックのような色合いも感じましたし、フォークの流れも感じさせます。ただ、どれもバラエティー富んでポップに聴かせる楽曲ばかりで、バンドとしての実力をしっかりと感じることが出来ます。

ただ、サディスティック・ミカ・バンドは2006年にボーカル木村カエラを迎えて再々結成し、アルバムもリリースしているのですが、その時の音源が完全に無視されているのはちょっと残念。プラスアルバム1枚分のみだっただけに、木村カエラボーカル時のアルバム「NARKISSOS」も加えてほしかった感も。その点だけはちょっと残念でした。

評価:★★★★★

ニッポン・スウィングタイム 戦前のジャズ音楽 vol.2

当サイトでもアルバムを紹介したことがある戦前SP盤復刻専門レーベル、ぐらもくらぶの主宰、保利透プロデュース、監修による戦前のジャズ音楽をまとめたオムニバスアルバムの第2弾。楽曲としては二村定一の「アラビアの唄」をはじめ、比較的有名曲も多く、Vol.1に続く、戦前ジャズの入門盤に近いような感じも。その中でもユニークなのは、「佐渡おけさ」「八木節」など日本古来の民謡をジャズにアレンジした楽曲が収録。以前、ぐらもくらぶの「ダンスリヨウ みんなで踊ろう昭和戦前民謡ジャズ」でも、この手の日本民謡を西洋音楽に融合させようとする試みについて聴いたことがありました。最近でも、この手の日本の古来の音楽を今風なサウンドと結び付けようとする試みは少なくありませんが、このような試みは戦前から行われていたことが本作ではよくわかります。Vol.1と同様、戦前の音楽シーンのある意味、意外とも言える奥深さを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ニッポン・スウィングタイム 戦前のジャズ音楽 vol.1

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2024年11月 3日 (日)

メジャーデビュー25周年のシングルコレクション

Title:ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~
Musician:ポルノグラフィティ

タイトル通り、ポルノグラフィティのシングル集。メジャーデビュー25周年を記念してリリースされた作品で、彼らの全シングルがリリース順に収録されています。ポルノグラフィティについては、もちろんメジャーデビュー作の「アポロ」からリアルタイムで知っているのですが(もっと言えば、メジャーデビュー前に一度偶然、イベントライブで彼らのステージを見たことがあります)、ちゃんとアルバム単位で音源を聴いてみるのが今回がはじめて。CDにして全4枚組というフルボリュームの内容でしたが、あらためてポルノグラフィティがどんなミュージシャンなのか知れる、絶好の機会となりました。

ただ、「どんなミュージシャンなのか知れる」と書いたのですが、聴いてみた結論としてはポルノグラフィティがどんなミュージシャンなのか、いまひとつピントが絞り切れない感が否めませんでした。ポルノグラフィティがどんなタイプの、どんなジャンルの音を奏でるミュージシャンなのか、いまひとつわかりにくい。ひとつの方向性としては大ヒット曲の「サウダージ」「アゲハ蝶」のようなラテンの影響を受けた楽曲というのはひとつの特徴としてあげられるように思います。ただ、じゃあ本格的にラテン音楽に取り組んでいるかと言われるとそうではなく、ラテンの影響を感じる曲も限られており、シングル曲にしても様々なタイプの曲が並んでいます。

例えば「NaNaNaサマーガール」とかは80年代風のシンセが入ったサマーチューン、「DON'T CALL ME CRAZY」はハードロック風のギターが入っていますし、比較的最近の曲では「Zombies are standing out」はハードコア風なサウンドが入っていたりと、様々なタイプの曲が並びます。バリエーションが豊富と言えばポジティブな表現ですが、いまひとつルーツレスで節操がない感じなのが特徴的。この、とにかくインパクトのあるポップであればよいという、良くも悪くもJ-POPなミュージシャン、というのが彼らの特徴のように感じました。

ただ、逆に言えば、インパクトのあるメロディーをかけるそのポップスセンスや、様々なジャンルの音を取り込める器用さというのは彼らの大きな強みに感じます。特にメジャーデビュー直後のDisc1の頃の曲は、前述の「アポロ」「サウダージ」「アゲハ蝶」をはじめ、「ミュージック・アワー」「Mugen」「メリッサ」など一度は聴いたことあるヒット曲ばかり。いままで彼らの曲をちゃんと聴いてこなかった私ですが、それでもDisc1は懐かしい曲の連続で耳が惹きつけられ、飽きることなく楽しむことが出来ました。

ただ、サウンドやメロディー、さらに歌詞の側面でも、今回彼らの活動の歩みを聴いてみると完成度が増したのはむしろ2010年代に入ってからのように感じました。Disc3後半からの曲は、ベスト10入りしている以上、一度は聴いたことはあるはずなのですが、その時はさらっと聴いただけなのであまり印象に残っていません。ただ今回あらためて聴くと、歌謡曲的なメロディーラインのインパクトは増して、曲の完成度がグッと上がっているように感じます。特に「俺たちのセレブレーション」では、「アポロ」の名前が登場し、デビュー作を彷彿とさせますし、アレンジにも、「アポロ」を彷彿とさせる部分があり、遊び心を感じます。ここらへんはベテランバンドとしての余裕も感じました。

歌詞の面でも最近の曲になるのですが、「アビが鳴く」は広島県とのコラボということもあって、広島らしい平和へのメッセージを織り込んだ社会派な内容に。ポルノグラフィティといえば、デビュー当初の「アポロ」や「ミュージック・アワー」などでは、ちょっと軽薄さを感じさせる歌詞が、当時として一部で嘲笑されたのですが(実際、今聴いてもちょっと厳しい部分も感じます)、その後の歌詞と比べると、隔世の感を覚えます。

いまだにルーツレスで、ポルノグラフィティとはどんなミュージシャンなのか、と語れないあたりが良くも悪くも「J-POPバンド」といった印象を受けるのですが、そんな部分も含めて彼らの魅力と言えるのかもしれません。このベスト盤で彼らに関する印象が大きく変わったといった感じはないのですが、楽曲の完成度やインパクトなどから考えると、やはり25年にわたってトップシーンに君臨し続けるというのは伊達ではないな、ということを強く感じました。これからも彼らの人気は衰えることはなさそうです。

評価:★★★★

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2024年11月 2日 (土)

よりフォーキーに

Title:猫にジェラシー
Musician:あいみょん

約2年ぶりとなるあいみょんのニューアルバム(前作も2年ぶりのリリースでしたね・・・)。いままでの作品でも感じたのですが、あいみょんって、コアとなるファン層はどの世代なんでしょうか?フォーキーな作風は、アラフォーやアラフィフを超えて、むしろアラ還世代にすらヒットしてしまうかも??とすら感じてしまいます。

特にそんなフォーク世代にヒットしそうなのが「駅前喫茶ポプラ」で、喫茶店での恋人同士のなにげない日常をモチーフとした歌詞が印象的で、完全に四畳半フォークの世界。また、タイトルチューンとなった「猫にジェラシー」も、恋人とじゃれあう猫に嫉妬するという、他愛もない内容ながらもほっこりと暖かさを感じさせる恋人の日常風景を描いた作品。

歌詞の面でちょっとユニークなのが「朝が嫌い」で、ストレートに表現はされていないものの、おそらく妻子持ちの相手とつきあっている女性を主人公とした歌詞。まあ、ここらへんの不倫をにおわせる歌詞も最近では珍しく、むしろこの点もアラフィフ、アラ還世代にヒットするかも?逆に「偽者」はワンナイトラブをしてしまった女性の心境をつづった歌詞。ほっこりと暖かい恋人同士の曲があったかと思えば、このようにえげつない恋の歌もあったりする点もまた、あいみょんの魅力でしょうか。

メロディーラインやサウンドも、90年代オルタナ系ギターロックの影響を垣間見せつつ、基本的にシンプルで、フォーキーな曲調という点はいままでと一緒。「リズム64」ではシンセや打ち込みのサウンドを入れてきたり、「炎曜日」ではヘヴィーなバンドサウンドを取り入れてきて、彼女のロックな側面を聴かせたりと、それなりのバリエーションを持たせつつ、ただ、全体にはやはりシンプルでフォーキーな楽曲がメインの構成となっています。

基本的には前作同様にあいみょんらしい作品が並んだ本作。ただ、前作以上にフォーキーな作風が強くなり、楽曲の派手さはまた薄くなったように感じます。ただ、だからといってアルバムとしてマイナスという印象は受けません。シンプルで、変なギミックのない作風だからこそ、パッと聴いて地味とすら感じてしまいますが、聴き終わるとちゃんと心に残っていく、そんな楽曲が並んでいたように感じます。冒頭に書いた通り、40代から、ともすれば60代あたりにまで幅広い世代にヒットしそうな曲調が魅力的。今回もしっかりとあいみょんらしさを感じさせてくれたアルバムでした。

評価:★★★★★

あいみょん 過去の作品
瞬間的シックスセンス
おいしいパスタがあると聞いて
瞳へ落ちるよレコード


ほかに聴いたアルバム

Voyager/THE SPELLBOUND

BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がTHE NOVEMBERSの小林祐介と結成した新バンド。ライブではブンサテの曲も演っているそうですし、サポートドラムがブンサテから引き続き、福田洋子が務めていたりするため、中野雅之のイメージとしてはブンサテの後継的なバンドという位置づけなのでしょうか。基本的にブンサテと同様、ダイナミックなデジタルロックというイメージなのですが、楽曲的にはかなりポップに寄ったイメージ。ブンサテの後継的な位置づけならば、もっと様々なサウンドに挑戦してほしい感もするし、ポップ路線に行くのならば、もっとブンサテとは異なった路線を模索してほしい感じも。個人的には好みの音ではあるものの、ちょっと中途半端という感が否めませんでした。

評価:★★★

唱LP/Ado

Shoado

Adoの大ヒットナンバー「唱」の様々なバージョンを収録した配信限定のアルバム。全曲「唱」なのですが、TeddyLoidやJax Jonesによるリミックスやライブ音源、テンポをあげたSped Upバージョンや逆にテンポを落としたSlow Downバージョンも収録。おそらくライブ音源以外はボーカルトラックは同一で、その点はちょっと物足りなさも感じつつ、様々に加工された「唱」にはなかなかユニークさも感じます。ただ、基本的にエレクトロにアレンジするか、テンポを変えるか、アカペラにするか、逆にインストにするか、といった程度のアレンジで、思いっきりロック風にするとか、ジャズ風にするとか、ガラッと雰囲気を変えるようなバージョンがなかったのも残念な感も。ユニークなアルバムではあるとは思うのですが。

評価:★★★★

Ado 過去の作品
狂言
ウタの歌 ONE PIECE FILM RED
Adoの歌ってみたアルバム
残夢

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2024年11月 1日 (金)

シューゲイザーを代表するバンドの全盛期を網羅したボックスセット

Title:UNREADABLE COMMUNICATION - ANXIOUS RECORDINGS 1991-1993
Musician:CURVE

今回紹介するのは、主に1990年代に活躍した、イギリスのバンド、CURVEの4枚組ボックスセット。シューゲイザー系バンドの代表格のひとつと目されており、特に1992年のデビューアルバム「Doppelganger」はシューゲイザーを代表する名盤としてよく取り上げられる1枚。私もその存在は以前から知っていたのですが、彼女たちに対して特に注目したきっかけが、今年聴いてみたシューゲイザー系のボックスセット「Still in a Dream」もちろん、同作の中に彼女たちの作品も収録されていたのですが、個人的に思いっきりツボにはまり、そしてちょうどよいタイミングで知ったのが、このボックスセットのリリース。今回、はじめてアルバム単位でCURVEの作品を聴いてみました。

このボックスセットは全4枚組の内容となっているのですが、Disc1は1991年にリリースされた3枚のEPの曲がそのまま収録。Disc2はデビューアルバム「Doppelganger」、Disc3には2枚目のアルバム「Cuckoo」がそのまま収録。Disc4にはライブ音源やリミックス音源、シングルミックスなどが収録されています。バンドは1994年に一度解散するものの、1996年に再結成。その後、2005年まで活動を続け、アルバムやEPをリリースしていますが、サブタイトル通り、最初の活動期である1991年から1993年までの作品を収録しており、再結成後の作品は今回は未収録となっています。

個人的にCURVEがツボにはまった要素は主に5つとなります。1つ目はシューゲイザー直系のギターノイズ。2つ目はこちらはインダストリアルからの影響を感じる打ち込みも入ったヘヴィーなバンドサウンド。さらに3つ目は、こちらはマッドチェスターからの影響を感じるようなグルーヴィーなサウンド。そしてそんなヘヴィーでグルーヴィーな音を奏でつつ、女性ボーカルのトニ・ハリディによる清涼感ある歌声を聴かせてくれるのが4つ目の特徴で、そして最後は、シューゲイザーバンドに共通する、これらのサウンドと相反するようなキュートでポップなサウンドが流れている点、この5点が大きな魅力に感じました。

そんなバンドの持ち味はデビューEPの1曲目「Ten Little Girls」から既に発揮されています。イントロからして非常に分厚いバンドサウンドのグルーヴィーなサウンドからスタート。ちょっと気だるさを感じさせるトリ・ハリディの歌はポップにまとめあげられています。どちらかというとマッドチェスターの流れを感じさせる楽曲となっているのですが、CURVEの魅力を存分に感じさせる曲に仕上がっています。

そしてDisc2のアルバム「Doppelganger」は名盤の誉れ高い作品なだけに、CURVEとしてのひとつの完成形にも感じます。1曲目「Already Yours」は、デビュー曲「Ten Little Girls」と同様、けだるいボーカルを聴かせるグルーヴ感を前に出した作品になっていますが、よりポップスさが増した印象。続く「Horror Head」もギターノイズにキュートなハイトーンボイスで歌われるポップな歌が加わるドリームポップの作品に。その後もCURVEの魅力のつまった曲が並んでおり、本作が名盤と称される理由もわかるように感じます。

Disc3の「Cuckoo」も「Doppelganger」に負けず劣らずの名盤で、1曲目の「Missing Link」はインダストリアル風のヘヴィーで疾走感あるギターサウンドにちょっと怪しげながらも勢いのあるメロディーラインが非常にポップで耳を惹きます。楽曲としては前作に比べると若干インダストリアル色が強くなった印象が。また一方で、「Unreadable Communication」ではエレクトロのサウンドも取り入れていたりします。この点、Disc4収録の「Falling Free」ではAphex Twinによるリミックスを取り入れていたりしています。私はまだ聴いていないのですが、活動再開後の作品はエレクトロを取り入れた作品もあるそうで、エレクトロサウンドへの興味はこの時点から生じていたことを感じさせます。

この時期のCURVEの楽曲を聴くと、バンドとしての魅力を強く感じさせる一方、やるべきことはやりつくした感もあり、当初、1994年で解散してしまったというのはさもありなんかな、とも思ったりもします。ただ、それだけにこの時期のアルバムについては非常に濃い内容となっており、今回の4枚組のボックスセット、非常に聴きごたえのある作品でした。シューゲイザー好きなら文句なしにチェックすべき作品。今度は、活動再開後の作品も聴いてみたいなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Starchris/Body Meat

アメリカはフィラデルフィアを拠点に活動するエレクトロミュージシャン、Christopher Taylorのソロプロジェクト、Body Meatのソロデビュー作。ドリーミーだったり、メタリックだったり、メロウに聴かせたり、音数を絞ったり、曲毎にスタイルを変えるエレクトロサウンドが挑戦的であり、かつユニーク。ただ、そんなエレクトロサウンドの中で流れてくる「歌」がメランコリックで意外とポップ。比較的、実験的な色合いが強いサウンドの中で、この歌が大きなポップの要素となって、聴きやすさを感じさせるアルバムとなっています。Body Meatという名前、今のうちに注目しておいた方がよさそうです。

評価:★★★★★

Manning Fireworks/MJ Lenderman

Manningfireworks

シューゲイザー系インディーロックバンド、Wednesdayのギタリストによるソロ3作目。前作「Boat Songs」はシューゲイザー直系のサウンドにカントリーロックの要素を加えた音楽性が非常におもしろく、2022年の私的年間ベストアルバムで3位に入れるなど、個人的にかなりはまった作品でしたが、新作はシューゲイザー色は鳴りを潜め、一気にカントリー寄りにシフトした作品に。哀愁たっぷりのメロでかなり渋い雰囲気のカントリーロックとなり、いままでのイメージとはかなり変わってしまった感が。個人的に壺だった前作の方向性からはかなり外れてしまった感があり、ちょっと残念に感じました。

評価:★★★★

MJ Lenderman 過去の作品
Boat Songs
And The Wind(Live and Loose!)

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