バンドサウンドでよりエモーショナルに
Title:Sky Hundred
Musician:Parannoul
韓国のシューゲイザー系ミュージシャン、Parannoulのニューアルバム。既に活動開始から7年、これが4作目となる中堅ミュージシャンの彼ですが、アルバムを聴くのはこれが2枚目。前作「After The Magic」が大きな話題となり、日本でも一躍、注目を集めました。
そんな彼が前作からわずか1年というインターバルを経てリリースしたのが今回のニューアルバム。前作は、シューゲイザーの王道を行くような、ギターノイズとポップなメロで彩られた楽曲が非常に美しかったのですが、今回も聴いていて、その美しいサウンドやメロにうっとり聴き入るようなそんなサウンドを展開しています。ただ、今回のアルバムの特徴として、よりギターやバンドサウンドを前面に押し出して、ダイナミックさを増したサウンドを展開しているという点。シューゲイザーの王道を行く前作に比べ、今回は彼のサウンドを形作るもうひとつの要素、エモコアの要素がより強調されているように感じます。
とはいえ、ノイジーなギターサウンドとメロディーで狂おしいほどポップで美しく展開される楽曲という点は今回も変わりありません。まさに1曲目の「A Lot Can Happen」は高揚感ある美しいピアノのフレーズに、ヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドという組み合わせが実にメランコリックでドリーミーな作品。Parannoulの魅力を体現化したといっていい楽曲になっています。続く「Gold River」も、イントロのバンドサウンドの破壊的なビートに、高揚感が増すナンバーですが、楽曲がスタートすると、メランコリックでメロディアスなその歌に心惹かれるポップな側面が表に出てきます。
その後も「Painless」でもノイジーなバンドサウンドをバックに流れる切なくポップなメロが印象的ですし、「Lights Off Repentance」は疾走感あるバンドサウンドで、どちらかというとパンクやハードロック色も感じられるロックチューン。さらに中盤のハイライトとも言えるのが14分にも及ぶ長尺曲「Evoke Me」で、これでもかというほどダイナミックなバンドサウンドに清涼感のあるピアノが絡み、さらにメランコリックでキュートなメロの歌が実に美しい楽曲。最後はノイズを前面に押し出して、よりアバンギャルドさやサイケさが増してくる構成もまた、耳に強く残ります。
終盤の「Backwards」も、ピアノのアルペジオが美しく、メランコリックな歌が印象に残る切ないナンバー。そしてラストの「Fantasy」もダイナミックなバンドサウンドを前に押し出した、アルバムを総括するかのような楽曲で締めくくり。ほどよい余韻を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。
前作に比べてメロコア的な要素を強くし、よりダイナミックさを増した今回のアルバム。一方では狂おしいほど美しいメランコリックなメロやサウンドは本作も健在。前作から引き続きParannoulの魅力を伝える一方で、加えて、彼の新たな側面も感じさせるアルバムでした。前作も昨年度の私的年間ベストアルバムの8位に選びましたが、今回も間違いなくベスト盤候補と言える傑作アルバム。シューゲイザーやエモコア好きなら間違いなくチェックしてほしい作品です。
評価:★★★★★
Parannoul 過去の作品
After the Magic
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