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2024年10月

2024年10月31日 (木)

ベテラン勢が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsはベテラン勢の活躍が目立ちました。

まず1位は、言わずと知れたシンガーソングライター竹内まりやのニューアルバム「Precious Days」が獲得。CD販売数1位。途中、ベスト盤のリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては「TRAD」以来、10年ぶりのアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上12万9千枚で1位初登場。直近のベストアルバム「Turntable」の初動9万6千枚(2位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「TRAD」の初動11万8千枚(1位)からもアップしており、その強さを見せつけています。

また、それ以外にも今週はベテラン勢の活躍が目立ちました。5位には東京スカパラダイスオーケストラ「35」がランクイン。こちらはタイトル通り、デビュー35周年を記念したオリジナルアルバム。さらに9位にはSOPHIA「BOYS and」がランクイン。こちらは1995年にリリースしたデビューミニアルバム「BOYS」のオマージュとなるミニアルバムで、こちらもデビュー30周年を記念したリリースとなります。スカパラももう35年、SOPHIAでも30年か・・・と月日の流れる速さに驚かされます・・・。

2位初登場は韓国の女性アイドルグループILLIT「I'LL LIKE YOU」。CD販売数2位、ダウンロード数3位。彼女たち2枚目となるミニアルバム。オリコンでは初動売上2万6千枚で2位初登場。前作「SUPER REAL ME」の初動1万1千枚(3位)からアップしています。

3位はずっと真夜中でいいのに。のミニアルバム「虚仮の一念海馬に託す」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数2位。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。直近のフルアルバム「沈香学」の初動3万1千枚(4位)からダウンしています。

以下、4位以下のその他の初登場盤です。6位には男性アイドルグループ世が世なら!!!「純・世が世産」が初登場。本作がデビューEP。7位初登場は花田ゆういちろう・ながたまや「NHKおかあさんといっしょ 最新ベスト ヒューララ ブンブン!」。子育て中の家庭の必須アイテム。そして10位にはアニメ「ギヴン」の曲を集めた「ギヴン THE BEST」がランクイン。その他には、韓国の男性アイドルグループTREASURE「Reboot」が6月26日付チャート以来のベスト10返り咲きを果たしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位は、TikTokチャートで1位にランクインしている女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が先週の2位からワンランクアップし1位獲得しています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTokチャートも、女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が先週と変わらず1位獲得。これで4週連続の1位となりました。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

https://www.nicovideo.jp/watch/sm44233925

最近は大御所勢の1位獲得が続いていましたが、今週は久々に若いボカロPのランクイン。なきそ「化けの花」が1位獲得。ボカロデビューが2018年と既にキャリア6年ながらも、デビュー時が高校1年だったので、現在でもまだ23歳。特に2022年に発表した「ド屑」が1,000万再生を記録するなど話題となりました。本作は、ホラーテイストのサウンドが魅力的ですし、ここらへんがいい意味でボカロ系らしい自由さを感じます。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年10月30日 (水)

新譜ラッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は10曲中7曲までベスト10初登場という、Hot100では珍しい新譜ラッシュとなっています。

まず1位は秋元康系女性アイドルグループ櫻坂46「I want tomorrow to com」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数12位、ストリーミング数5位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上48万7千枚で1位初登場。前作「自業自得」の初動65万6千枚(2位)からダウンしています。

2位はCreepy Nuts「オトノケ」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ダウンロード数は4位、動画再生回数は3位といずれも先週の2位からダウンしていますが、ストリーミング数でついに1位を獲得しています。ただし、今週、長らくベスト10ヒットを続けていた「Bling-Bang-Bang-Born」が12位にダウン。ベスト10ヒットはついに連続40週でストップとなりました。

そして3位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週と変わらず3位をキープ。3週連続の3位で、28週連続のベスト10ヒット&通算21週目のベスト3ヒットに。ただし、18週連続1位をキープしてきたストリーミング数は今週2位にダウン。また、先週まで10週連続ベスト10ヒットを続けていた「familie」も16位にダウン。ベスト20圏内も、その他に「ケセラセラ」が17位にランクインしているだけで、その他はベスト20圏外に。多数の新曲がランクインした影響で、Mrs.GREEN APPLEの「ライラック」以外の曲は大きく順位を落とす結果となっています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「エビバディグッジョブ!」がランクイン。CD販売数2位、その他は圏外。オリコンでは初動売上5万枚で2位初登場。前作「ブルーシャワー」の初動5万5千枚(3位)からダウンしています。

5位にはROSE&ブルーノ・マーズ「APT.」がランクイン。ダウンロード数13位、ストリーミング数3位、ラジオオンエア数2位、動画再生回数7位。韓国の女性アイドルグループ、BLACKPINKのメンバーROSEと、アメリカで大人気のシンガーソングライターで、日本でも最近、ディスカウントショップの「ドン・キホーテ」のCM出演で話題となったブルーノ・マーズが共演したシングル曲がベスト10にランクインです。

6位は吉本興業所属の男性アイドルグループOWV「Frontier」がランクイン。CD販売数3位、ラジオオンエア数8位。オリコンでは初動売上2万5千枚で5位初登場。前作「LOVE BANDITZ」の初動2万2千枚(4位)からアップしています。

7位にはLDH所属の男性アイドルグループFANTASTIC from EXILE TRIBE「Got Boost?」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数7位。オリコンでは初動売上3万1千枚で4位初登場。前作「Tell me」の初動3万2千枚(2位)から微減。

8位初登場はロックバンドKing Gnu「ねっこ」。ダウンロード数3位、ラジオオンエア数4位。TBS系ドラマ「海に眠るダイヤモンド」主題歌。まだストリーミング数はランク圏外ですが、今後、さらにランクアップ&ロングヒットとなるのでしょうか。

最後、10位には旧ジャニーズ系男性アイドルグループTravis Japan「Crazy Crazy」がランクイン。配信限定シングルで、ダウンロード数1位にランクイン。総合順位もベスト10ヒットとなりました。

そんな訳で、今週は珍しく新譜ラッシュ。その結果、前述の通り、長らくヒットを続けていた「Bling-Bang-Bang-Born」や「familie」がベスト10からランクダウンしてしまいましたし、さらにこっちのけんと「はいよろこんで」も19位にダウン。残念ながらベスト10ヒットは14週連続でストップとなってしまいました。

今週のHot100は以上。ただ、上位にランクインしているのがいずれもアイドルグッズ的にCDを販売しているアイドル系が多いため、来週以降のランクイン継続は難しそう。ベスト10圏外に落ちたロングヒットの来週以降の巻き返しも予想されます。それとも新たなヒット曲が出てくるか?明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年10月29日 (火)

神がかった時期のoasisのライブ映画

今回は先日見た、音楽関連の映画の紹介です。

Oasis

「オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10」。先日、再結成を発表し、世界中で大きなニュースとなったoasis。その彼らの人気の絶頂期、1996年の8月10日、11日に行われた、イギリスのネブワース・パークで行われた、今や伝説ともなった野外ライブの模様を収めたライブ映画。ただ、この「ネブワース」を取り上げた映画は以前も上映されており、それが2021年に公開された「オアシス:ネブワース1996」となります。この「オアシス:ネブワース1996」は、ライブ映画といっても、この「ネブワース」を巡るバンドや、さらにファンの物語をドキュメンタリーとして描いた映画。一方、今回見た映画「オアシス:ライブ・アット・ネブワース 1996.8.10」は、2日間にわたって行われたネブワースでのライブのうち、1996年8月10日のライブの模様をノーカットで収録した映画。そのため「オアシス:ネブワース1996」とは異なる映画となっていますし、なによりも「映画」というよりもライブ映像をそのまま映画館で放映された作品、といった感が強いかもしれません。

この1996年8月10日のライブを見ると、とにかくそのセットリストの豪華さには目を見張ります。まさにキラーチューンの連続。1996年といえば、oasis史上最大のヒット作となったアルバム「 (What's the Story) Morning Glory?」がリリースされた後、「Be Here Now」をリリースする前。このライブのセットリストは、1stアルバム、2ndアルバムからの選曲となっていますが、結果として今となっても「ほぼベスト」なセレクトになっています。ライブ映えがするようなアップテンポなもちろんなのですが、途中、普通ライブでは、ちょっと落ち着いてしっかりと聴かせるような部分となる、ミディアムチューンが並ぶような部分でも「Whatever」や「Don't Look Back In Anger」などキラーチューンが続き、観客の盛り上がりが落ち着くことはありません。

この日のライブのセットリストについて、よくよく考えると、おそらく再結成した今、再びベストなセットリストでライブを行ったとしても、おそらくかなりの部分、この日のセットリストと重なると思うんですよね。それだけoasisは、この1996年の時点までの曲で、彼らの代表曲がほぼ網羅されちゃっている訳で、いまだに絶大な支持を得ている彼らですが、ちょっと暴言的な発言かもしれませんが、この1996年の時点までに積み重ねた貯金を、いまだに使い続けている・・・なんて見方も出来るかも?と思ってしまったりもしました。それだけ、1996年頃までの彼らが書いた曲が、神がかっていた、とも言えるのかもしれませんが。

ただ、実はこの日のネブワースのライブ映像について、この日はじめて見た訳ではありません。先に紹介した映画「オアシス:ネブワース1996」がDVD化された際に、8月10日、11日の2日間のネブワースライブのフル映像が特典としてついており、その時に一度、映像として見ています。このDVDについてきた映像とこの日の映像が同じなのか違うのかはちょっとわからないのですが、ただ、いずれにしても8月10日のネブワースでのライブ、この日はじめて見た・・・という訳ではありません。

それでも、やはりこれだけのライブを、映画館という大きな画面を通じて、さらに映画館の音響をつかって体験できた、というのは、DVDでの映像を家で見た、というのとは全く異なる体験となりました。映画を見ながら、思わず身体も音楽に合わせて揺らしてしまいましたし、思わず一緒に歌いそうになりました。映画では声出しも自由な「声出し上映」というスタイルもあるのですが、このライブに関しても、正直、椅子席でじっと見ているのではなくて、声を出して、一緒に歌いながら見たかったな、という気持ちになりました。ま、そういう上映のスタイルって、はたから見るとかなりシュールかもしれませんが。

oasisの魅力を再度認識できた映画でしたし、この1996年時点の彼らが、いかに神がかっていたかを再認識できた映画でもありました。今年、ついに再結成した彼ら、またライブを見れればよいのですが・・・。

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2024年10月28日 (月)

Definitely Maybeが出来るまで

Title:Definitely Maybe (30th Anniversary Deluxe Edition)
(邦題 「オアシス」30周年記念デラックス・エディション)
Musician:oasis

今年の音楽業界最大のニュースは、なんといってもoasis再結成というビッグニュースでしょう。2009年の解散後、常に言われ続けていた再結成の可能性。解散後も、お互い(特にお兄ちゃん大好きなリアムは)何度となくお互いの動向にそれとなく言及していただけに、いつかは・・・と思っていたのですが、それがついに実現というのは、とにかくうれしいの一言につきます。まあ、正直、ライブの前にまた大喧嘩を繰り広げて、やっぱり解散!という可能性が50%くらいあると思っているので、今後の動向についてはあまり変な想像をしないようにしているのですが(笑)。

今回、この再結成というタイミングが良かったのが、彼らのデビュー作「Definitely Maybe」(邦題「オアシス」)の30周年記念の年だったということ。完全に偶然だったのか、それともやはり30周年という話題性もあって周りから急かされたのかは微妙なのですが、この記念すべき2024年にoasisが再結成ということとなりました。そして、その再結成のニュースの前にリリースされたのが本作、「Definitely Maybe」の30周年記念盤です。

既に2014年に「20周年記念盤」がリリースされており、その時にも当サイトで取り上げていますので「Definitely Maybe」のアルバム自体に関しての感想はいまさら不要でしょう。すべての曲がシングルカットできそうなインパクトを持った、これでもかというほどの名曲揃いの名盤ではることはいまさら言うまでもありません。

今回の「30周年記念盤」、アルバム自体もリマスター処理をされており、その点も注目なのですが、今回の記念盤の大きな目玉となっているのが、ウェールズのロックフィールドにあるモノウ・ヴァレー・スタジオで行われたバージョンとコーンウォールのソーミルズ・スタジオで行われたアウトテイク集を収録されている点でしょう。

バンドは最初、Monnow Valley Studioにおいて録音を開始。録音としては非常に端正にバランスの取れた楽曲に仕上がったのですが、バンドとしての本質を捉えられていないとして録音を中断。その後、Sawmills Studioに移動して録音を行い、最終的に楽曲は完成されたという経緯を経たそうです。

今回のアルバムはいわば、「Definitely Maybe」がどのように完成されていったか、ということの歩みを知ることが出来る構成。実際、モノウ・ヴァレーのバージョンと最終音源を聴き比べると、かなりの違いがあります。例えばアルバムの冒頭を飾る「Rock'n'Roll Star」は、印象的なギターのフレーズが前に出てアルバムへの期待を盛り上げるのですが、モノウ・ヴァレーバージョンでは、このギターはちょっと後ろに下がっていってしまっています。歌がスタートしてもモノウ・ヴァレーのバージョンは歌が前に出てバンドサウンドは抑え気味。最終版はより重低音を押し出して、ヘヴィーでグルーヴィーなバンドサウンドを前に押し出しています。

一番目立った違いは「Live Forever」。モノウ・ヴァレーバージョンでは、あの印象的なイントロの力強いドラムのビートがありません。結果として、最終版に比べてかなり軽い印象になっており、楽曲の印象はガラリと異なります。「Columbia」でもかなりサイケさのある最終版のサウンドに比べると、モノウ・ヴァレーバージョンはかなりすっきりしたギターロックという印象となっており、グルーヴ感が全くことなります。

確かに最終版を知った後にMonnow Valley Studioでの録音を聴くと、かなりあっさりとした印象があり、バランスとしては整っており、端正という印象を受けるものの、最終版で聴かせてくれるようなバンドとしてのグルーヴ感や荒々しさ、迫力、そしてそんなサウンドに起因するoasisの魅力は、失われてしまっている点は聴いていても実感できます。この名盤がどのような過程を経て名盤なりえたのか、興味深く聴くことが出来ました。

ただ一方で、それではMonnow Valley Studioのバージョンが音源として今一つだったか、と言われると、全くそんな感じではありません。この音源はこの音源で、十分魅力的な内容でしたし、その後に録音された最終版の音を知っているからこそ、oasisの魅力を引き出していないということがわかりますが、じゃあ、バンドがモノウ・ヴァレーのバージョンを最終版として持ってきたとしたら、私だったらこれはこれで納得してしまうかも・・・。このバージョンはoasisの魅力を十分発揮していない、ということを理解し、新たに録音し直させた当時のスタッフの慧眼ぶりを感じてしまいます。

今回のボーナストラックに関しては、ちょっとファン向けといった感じもするのですが、ただ、「Definitely Maybe」が名盤足りうるまでの歩みがわかるという意味では非常に興味深く、そしてファンなら必聴の音源だと思います。もちろん、いままで本作を聴いたことのなかったような方にもおすすめしたいロック界に残る名盤中の名盤。あらためてoasisというバンドのすばらしさを実感しました。

評価:★★★★★

oasis 過去の作品
DIG OUT YOUR SOUL
Time Flies 1994-2009
Original 1993 Demos
Definitely Maybe (Remastered) (Deluxe)
(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?(Remasterd)(Deluxe)
BE HERE NOW(Deluxe)
KNEBWORTH 1996
The Masterplan - 25th Anniversary Remastered Edition


ほかに聴いたアルバム

Romance/Fontaines D.C.

前々作「A Hero's Death」、前作「Skinty Fia」いずれも個人的に年間ベストクラスの傑作をリリースし続けたFontaines D.C.の最新作。それだけに本作も期待していたのですが・・・率直に言うと、前2作に比べると今一つ・・・。ギターロック路線は後退。ストリングスやアコギなども入ってバラエティーは富んだ感じにはなっているのですが、若干焦点が定まらない感じも。メランコリックなメロディーラインは今回も健在ではあるものの、ちょっと散漫な印象を受けたサウンドと重なり、こちらも印象が薄くなってしまった感じも。要所要所、前作までで感じられたオルタナ系直系のギターロック路線も顔をのぞかせるだけに悪いアルバムではないのですが、年間ベストクラスだったここ最近の作品に比べると、不満も残ってしまうアルバムでした。

評価:★★★★

Fontaines D.C. 過去の作品
A Hero's Death
Skinty Fia

ZOO TV Live In Dublin 1993 EP/U2

1993年8月に行われた、ZOOTVツアーの中の、U2の本拠地、ダブリンはRDSアリーナで行われたライブのうち、5曲を収録したEP盤。ある意味、人気の面で絶頂期とも言える時期のパフォーマンスで、バンドとしていい意味での安定感や余裕が加わってきた時期のパフォーマンスで、脂がのっていることを感じさせます。わずか5曲だけだと、ダイジェスト版のようで消化不良気味になってしまうのは残念。完全収録か、そこまではいかなくてもフルアルバム1枚分のライブアルバムは聴きたいかも。

評価:★★★★

U2 過去の作品
No Line on the Horizon
Songs of Innocence
Songs Of Experience
The Virtual Road – U2 Go Home: Live From Slane Castle Ireland EP
Live At Red Rocks: Under A Blood Red Sky EP
The Virtual Road – PopMart Live From Mexico City EP
The Virtual Road – iNNOCENCE + eXPERIENCE Live In Paris EP
Songs Of Surrender

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2024年10月27日 (日)

ストレートなギターロックバンド

Title:kirin
Musician:リーガルリリー

ギターボーカルのたかはしほのかと、ベースの海の2人からなる女性ロックバンド、リーガルリリーの3枚目のアルバム。2014年に結成し、メンバーの脱退や加入など紆余曲折を経て、今年10年目になる中堅バンド。名前自体は以前から知っていたのですが、今回、はじめてアルバムを聴いてみました。

今回、はじめて彼女たちのアルバムを聴いてみたきっかけとなったのが本作にも収録されている「キラキラの灰」。本作はアニメ「ダンジョン飯」のエンディングテーマとなっていて、これを機にはじめて彼女たちの楽曲を聴いたのですが、シューゲイザー系からの影響も垣間見れるノイジーなギターサウンドに、ちょっとダウナー気味ながらもポップでキュート、そしてどこか切なさも感じさせるメロディーライン、さらにはちょっと舌ったらずな声がかわいらしいボーカルも印象的で、個人的にかなりツボにはまった1曲。一気にはまってしまい、今回はじめてアルバム単位でリーガルリリーの曲を聴いてみました。

このギターノイズを前に出した、ある意味、王道とも言えるオルタナ系のギターロックに、メロディアスだけどもどこか切なさを感じるメロディーライン、そこにたかはしほのかのちょっとほわっとした雰囲気のボーカルがのるというスタイルは基本的にアルバム全体に一貫していました。

今回のアルバムでは、特に配信を含む先行シングルとなった曲が前半に収録されており、アルバムのインパクトを強めている印象ですが、先行配信の「17」や、ドラマ主題歌にも起用された「ハイキ」、さらに「春は嫌い」など、いずれも正統派なギターロックというスタイルで、オルタナ系ギターロックが好きならば間違いなく気に入りそうな内容。「夏のエディ」などはよりパンキッシュな側面を強調した曲になっており、バンドとしての力強さを感じさせます。

中盤、幻想感のある「me mori」や、切ないラブソングの「ムーンライトリバース」といったミディアムチューンも並んでいますが、終盤は再び、「60W」「地球でつかまえて」のようなポップなメロを聴かせるテンポよいギターロックが並び、最後の「ますように」もストリングスを入れて音に厚みを加えていますが、基本的には他の曲と同様、ポップなギターロックで締めくくられています。

アルバム全体として、ストレートにギターサウンドとポップなメロを聴かせるロックチューンが並んでおり、下手な「ひねり」や、変に凝ったようなサウンドはありません。そういう意味でバンドとしてある種の潔さも感じますし、彼女たちの強みをしっかりと生かしているとも感じます。オルタナ系のギターロックバンドが好きならば、文句なしにおすすめできますし、キュートでほんわかとしたボーカルスタイルから、ちょっとネオアコ系っぽい部分もあり、ネオアコ好きでもひょっとしたら気に入るかも?「キラキラの灰」ではまった私にとっても、問題なく気に入ったアルバムとなりました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

40+ ~Thanks to CITY HUNTER~/TM NETWORK

TM NETWORKのデビュー40周年の記念日4月21日にリリースされた企画盤。Disc1にはNetflix映画「シティーハンター」のエンディングテーマ「Get Wild Continual」とそのカラオケバージョンを収録。Disc2には「STILL LOVE HER(失われた風景)」「Whatever Comes」など、「シティーハンター」のタイアップ曲を収録した内容。「Get Wild Continual」は、時として原曲からかなり変化する場合もある「Get Wild」の別バージョンの中では、比較的原曲に準拠したシンプルなアレンジに。Disc2も同じくの「シティーハンター」の曲が並んでおり、TMやシティハンターのファンならずとも楽しめる内容に。ただ・・・完全生産限定盤で、定価5,500円の内容としてはちょっと物足りない印象も・・・。あくまでもファンズアイテムといった印象を受けるアルバム。「Get Wild Continual」はストリーミングでも聴けるので、熱心なファン意外はこちらで十分かと・・・。

評価:★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30
GET WILD SONG MAFIA
GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition
Gift from Fanks T
Gift from Fanks M
LIVE HISTORIA T 〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
LIVE HISTORIA M〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
DEVOTION

Extended Vol.1/スカート

Extended1

男性シンガーソングライター澤部渡のソロプロジェクト、スカートの最新作は配信限定の5曲入りのミニアルバム。「拡張された」というタイトルの通り、5人のミュージシャンをゲストに迎えた企画盤的な作品。ホーンセッションを取り入れて軽快な「地下鉄の揺れるリズムで」や女性ボーカルで爽快なギターロックにまとめた「波のない夏」、エレクトロアレンジの「ストーリー(Remix Version)」など、5曲ともタイプが異なる楽曲が並ぶのがユニーク。ただ、ベースにはスカートの暖かくメロディアスなポップチューンが流れており、スカートの楽曲の魅力をあらためて様々な形で提示された作品になっていました。タイトルにVol.1とついているように、第2弾、第3弾もありそう。今後の展開も楽しみです。

評価:★★★★★

スカート 過去の作品
CALL
20/20
トワイライト
アナザー・ストーリー
SONGS

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2024年10月26日 (土)

一世を風靡したプロデューサー

今日は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

「WOWとYeah 小室哲哉~起こせよ、ムーヴメント~」。著者はNHKのチーフ・プロデューサー、神原一光。もともと本作は、2022年にNHKで放送された「インタビューここから 音楽家・小室哲哉」をもとに、そこに追加のインタビューと取材内容を追加して構成された内容になっています。本書は3章立てとなっており、第一章は原点として、彼がミュージシャン、もっといえばプロデューサーを目指した少年時代から、デビュー、ブレイク、さらにはtrfでプロデューサーとしてブレイクするまでが語られ、第二章は小室系全盛期について、プロデュースを手掛けたミュージシャン毎に語り、第三章では現在の彼について語られています。

この第一章については、特にいろいろと興味深く感じさせる部分がありました。特に渡辺美里への提供曲について、「My Revolution」をめぐるエピソードは有名ですが、次作の「Teenage Walk」について語られている点。「Teenage Walk」の提供により楽曲の引き出しが増えて、自信になったという話は興味深く感じました。「Teenage Walk」は楽曲としては決して有名曲ではありませんが、その後の「悲しいね」や「ムーンライトダンス」などの原点になったような曲。小室哲哉本人にとっても意味のある曲だったというのは興味深く感じました。

また、観月ありさに「TOO SHY SHY BOY!」を提供した時の話もなかなか興味深かったです。リアルタイムで知っている身としては、あの頃の小室哲哉はもうTMでブレイクして久しい時期で、既に「大物」というイメージがあったのですが、本人が語るところでは、まだまだ楽曲提供者としては駆け出しのペーペー、といったイメージだったのですね。ここらへんも興味深く感じました。

このように興味深い話も少なくなかったのですが、全体としては、小室ファンならばどこかで聴いたことあるような話が多く、正直言って、この本ではじめて小室哲哉の知られざる側面を知った!という話は少なかったように感じます。小室哲哉に関するエピソードを、本人インタビューによる裏付けとともに卒なくまとめている、といった印象で、そういう観点ではよく出来ている内容ですし、ファンならずとも小室哲哉という人物に興味がある人とっては楽しめる内容だったのではないでしょうか。

ただ、一方で本書で大きく気になってしまう点が2つありました。まず1つは著者の神原一光。NHKのチーフプロデューサーであり、音楽の専門家ではありません。そのため、本書では「取材を重ねた」と記載されていますが、音楽面での深い考察はほとんどありません。小室系の全盛期といえば、J-POPも全盛期に近く、メインストリームやサブカルチャーでも数多くのミュージシャンが登場してきた頃ですが、他のミュージシャンたちと比べての小室哲哉の立ち位置といった話もありません。終章では「坂本龍一亡きいま『シンセサイザー音楽の第一人者』というバトンが、小室に託された感がある」という記載にはちょっと仰天してしまいました。確かに坂本龍一と小室哲哉はお互いをリスペクトしていまし、坂本龍一もメインはピアノなので、音楽の根幹は鍵盤楽器ですが、彼の活動をある程度知っていれば、「シンセサイザー音楽の第一人者」とは書かないと思います。坂本龍一=YMO程度の知識しかない素人レベルの記載にちょっとビックリしてしまいました。

もうひとつ、こちらの方がむしろ非常に残念に感じたのですが、第三章で小室系全盛期の話題が語られた後、一気に話が現代に飛んでいる点は非常に残念に感じました。特に2000年代以降、小室哲哉はともすればどん底と言えるまで低迷しています。宇多田ヒカルのデビューに衝撃を受けた話はよく語られていますし、本書でも語っていますが、正直、話として出来すぎていて、個人的には若干眉唾モノで、話半分でとらえています。それより音楽的にもこの時期の小室哲哉は明らかに迷走しており、金銭面でもプライベートの面でもトラブルが相次いでいます。さらには詐欺事件まで起こしていることは万人が知っていること。プライベートな側面まで掘り起こす必要はありませんが、ただ、この時期の話も、ちゃんと語っていることもあるだけに、小室哲哉をテーマにする以上は、逃げずにしっかりと取材してほしかったな、ということは強く感じました。この時期がほぼスルーされているのは、小室哲哉の本として画竜点睛を欠いているように感じます。

もっとも、小室哲哉のインタビューを読んでいると、基本的にこの人は本当に音楽が好きなんだな、ということは強く感じます。特に本書では、「プロデューサー」という側面をよく語っているだけに、序盤では音楽のビジネス的な側面を強調して語っており、あまりに「お金儲けの道具」的に音楽を捉えている話に最初引いてしまった部分もあるのですが、特に第二章でプロデュースを手掛けた楽曲について語る時は、嬉々として音楽について語っており、純粋に音楽が好きなんだな、ということを強く感じました。まあ、これは以前から感じていたことなのですが・・・。

そんな訳で、先にも書いた通り、小室哲哉というミュージシャンについて、インタビューを中心によくまとめらている一方、取材としての突っ込みの弱さも感じてしまいました。個人的には、この段階で書く小室哲哉の書籍ならば、もうちょっと音楽的にも彼の活動的にも深堀してほしかった感は否めません。楽しめた本なのは間違いありませんが、残念な部分も感じてしまった1冊でした。

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2024年10月25日 (金)

ビッケブランカ流ナイトクラブ

Title:Knightclub
Musician:ビッケブランカ

途中、ベスト盤のリリースがあったり、ミニアルバムやEP盤のリリースもあったため、これだけ間隔があいているというのはちょっと意外に感じられるのですが、オリジナルフルアルバムとしては約3年ぶりとなるビッケブランカのニューアルバム。この新作でやはり注目したいのが1曲目「Yomigaeri」。なんとこの曲、槇原敬之と絢香とのコラボ曲。もっとも作詞作曲はビッケブランカ本人で、ファルセットボイスでスケール感もって歌い上げる哀愁感たっぷりのミディアムナンバーなこの曲は、槇原敬之はコーラスでの参加のため、マッキーらしい感じはないのですが、ただ、自分の好きなミュージシャン同士のコラボに、やはりうれしくなってしまいます。

また、マッキーの参加ということで注目をした方にとっても、ちょっとアルバム全体の感触としてはマッキーのイメージとはちょっと異なるかもしれません。今回のアルバムはパーティーをコンセプトにかかげて、ナイトクラブでかかるような音楽をイメージした作品。マッキーと絢香とのコラボ曲に続く「Snake」は、まさにパーティーというコンセプトにピッタリのリズミカルなダンスチューン。その後も「Daddy(Dying in NY)」「Never Run」などダンサナブルな楽曲も目立ちます。

ただ、全体的なイメージとしては、彼のファルセット気味なハイトーンボイスを生かしながら哀愁感たっぷりに聴かせるような楽曲がメイン。彼のイメージとしてはナイトクラブの「ナイト」の部分がより強調された感じでしょうか。ファルセットを生かしてメランコリックに歌い上げる「High Love」や軽快なリズムのちょっと切ないメロが印象的な「Bitter(Days To Glitter Ways)」、テレビ朝日系ドラマ「科捜研の女 season24」の主題歌にもなった、スケール感たっぷりのバラードナンバー「白夜」と、哀愁感あるメロディアスな歌をしっかりと聴かせる楽曲が並びます。

終盤はピアノの音色を入れつつ、郷愁感のある暖かいメロをのびやかに聴かせる「またね」もビッケブランカらしいポップチューン。ナイトクラブのパーティーを締めくくるような、実質的なラストナンバーといった感じでしょうか。そしてアルバムの最後に収録されている「Old Rivals」は「ヒプノシスマイク」への楽曲提供曲のセルフカバーで、軽快でちょっとユーモラスな、こちらもビッケブランカらしいダンスチューンで、アンコールのような立ち位置の曲。楽しいイメージを抱えつつ、アルバムは幕を下ろします。

メロディアスなポップを軸としつつ、ほどよく今風のR&Bを取り入れた今回もビッケブランカのメロディーセンスを感じさせるポップアルバム。ビッケブランカがプロデュースした素敵なナイトクラブを楽しめる、そんな作品に仕上がっていました。いい意味で非常に安定感もある傑作アルバム。これだけポップな楽曲をコンスタントに書いている彼だけに、そろそろ楽曲単位での大きなヒットも出そうな気もするんだけどなぁ。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS
wizard
Devil
HEY
BYE
FATE
BEST ALBUM SUPERVILLAIN
United
Worldfly


ほかに聴いたアルバム

JUMBO MONET/デキシード・ザ・エモンズ

2006年に解散したロックバンド、デキシード・ザ・エモンズ。2014年以降、解散中と称しながら、散発的にライブを行ってきたものの、このたび「解散」をやめ、実に18年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。もともと60年代風のレトロなロックを奏でてきた彼らですが、本作もそんな彼ららしい、60年代のロックサウンドそのもの。さらにユニークなのは、洋楽のガレージロックをメインとしながら、おなじ60年代の日本のグループサウンズ風の作品やモータウン風の作品もあったりして、ジャンル問わず60年代らしさが貫かれています。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★

DAICHI MIURA ARENA LIVE 2024 OVER at 有明アリーナ(2024.3.24)/三浦大知

タイトル通り、今年3月に有明アリーナで行われた三浦大知のライブの模様を収録したライブアルバム。映像作品としてリリースされ、その中にCDも封入されていますが、音源部分は配信でリリース。今回は、こちらをチェックしてみました。全25曲、2時間強の収録内容。MC等は収録されていないので、実質、2時間半程度のステージだったのでしょうか。ゲストにKREVAやFurui Rihoが登場。会場の盛り上がりも伝わってきます。全体的にはテンポのよい曲を中心とした構成で、三浦大知のボーカルをしっかり聴かせる、といった感じよりも、会場を盛り上げる方向性といった感じなのですが、安定感あるパフォーマンスに、やはりボーカリストとしての実力も実感したライブアルバムでした。

評価:★★★★

三浦大知 過去の作品
D.M.
The Entertainer
FEVER
HIT
BEST
球体
OVER

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2024年10月24日 (木)

「大御所」の新曲が

今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

https://www.nicovideo.jp/watch/sm42224358

先週まで、ハチの楽曲が1位を獲得していましたが、今週もボカロPの「大御所」とも言えるミュージシャンの曲が1位にランクイン。それがDECO*27「ラビットホール」。もともと昨年5月に発表していた曲でしたが、ランクイン53週目にして初の1位獲得となりました。今週、4位に新曲「ネバーランド」がランクインしていますので、その影響でしょうか。ただ、大御所の活躍が続きますが、シーンを活性化させるためにも若い世代にも頑張ってほしいところです。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は男性アイドル勢が上位に並びました。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループSEVENTEENのミニアルバム「SPILL THE FEELS」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数3位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上40万9千枚で1位初登場。前作はベスト盤の「17 IS RIGHT HERE」で、同作の初動33万3千枚(1位)からはアップしています。

2位は旧ジャニーズ系男性アイドルグループKing&Prince「Re:ERA」が獲得。12月11日にCDリリース予定のアルバムの先行配信。ダウンロード数で1位を獲得し、総合チャートも1位獲得となっています。

3位初登場も韓国の男性アイドルグループ、RIIZE「RIIZING:Epilogue」。6月にリリースしたミニアルバム「RIIZING」に、デビュー1周年を記念した新曲「Combo」を追加したミニアルバム。相変わらずアコギな商売をしていますね・・・。CD販売数2位。オリコンでは、輸入盤が先行で販売されたのか、10月7日付チャートで2千枚を売り上げて32位にランクインし、今週、2万7千枚を売り上げて、2位にランクアップし、ベスト10初登場。前作は、そのミニアルバム「RIIZING」ですが、同作の初動6万枚(1位)からは、さすがに大きくダウンしています。

次に4位以下の初登場盤。まず4位にバーチャルYouTuberの宝鐘マリン「Ahoy!! キミたちみんなパイレーツ」が初登場。6位は声優によるラッププロジェクト、ヒプノシスマスクに登場するHIP HOPグループどついたれ本舗「.どついたれ本舗」。9位にはパンクミュージシャンKen Yokoyamaによるカバーアルバム「The Golden Age Of Punk Rock」がランクイン。そして10位には韓国の男性アイドルグループNCT WISHのミニアルバム「Steady」がランクインしています。

また、その他に、L'Arc~en~CielのボーカリストHYDEのソロアルバム「HYDE[INSIDE]」がCDリリースに合わせてランク圏外から5位に返り咲き。5週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。一方、先週まで8週連続でベスト10入りを果たしていた米津玄師「LOST CORNER」は今週12位にダウン。ベスト10記録は8週連続でストップとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、今週もと変わらず弌誠「モエチャッカファイア」が1位獲得。これで5週連続1位にとなります。また、動画再生回数も先週と変わらず1位を獲得。今後、Hot100にどこまで食い込んでくるのか気になるところです。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTokチャートは先週と変わらず、女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が1位獲得。これで3週連続の1位となりました。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年10月23日 (水)

新たなロングヒットとなるか?

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

前作に続く大ヒットとなるでしょうか。

Otonoke

今週は、先週4位にランクインしたCreepy Nuts「オトノケ」がチャートイン2週目にして1位獲得。ダウンロード数、ストリーミング数に加えて、動画再生回数も2位にランクイン。ラジオオンエア数も10位にランクインし、総合順位で見事1位獲得となっています。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」も今週、先週と変わらず7位にランクイン。これで連続40週目のベスト10ヒットとなりました。

「オトノケ」は「Bling-Bang-Bang-Born」に続くロングヒットになるのでしょうか。Creepy Nutsも「Bling-Bang-Bang-Born」の一発ヒットに終わらず、ヒゲダンや米津玄師クラスの人気ミュージシャンになった感があります。

2位初登場は旧ジャニーズ系男性アイドルグループSnow Man「One」が獲得。旧ジャニーズ系アイドルとしては珍しい配信限定シングルで、アニメ「ブルーロック VS. U-20 JAPAN」エンディングテーマになっています。ダウンロード数1位、動画再生回数5位。

3位にはMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週から同順位をキープ。ストリーミング数はこれで18週連続の1位獲得。動画再生回数は2位から3位にダウン。これで27週連続のベスト10ヒット&通算20週目のベスト3ヒットとなります。一方「familie」も先週から変わらず9位をキープ。これで10週連続のベスト10入り。Mrs.GREEN APPLEは以下11位に「ケセラセラ」、18位に「Soranji」、19位に「青と夏」と、「点描の唄」がベスト20から圏外にダウンしたものの、今週もベスト20に5曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に≒JOY「初恋シンデレラ」がランクイン。指原莉乃プロデュースによる声優の女性アイドルグループ。CD販売数で1位を獲得。オリコン週間シングルランキングでも初動売上9万7千枚で1位初登場。前作「体育館ディスコ」の初動10万4千枚(1位)からダウン。

8位初登場はMISAMO「NEW LOOK」がランクイン。MISAMOは韓国の女性アイドルグループTWICEの日本人メンバーによる派生ユニット。本作は安室奈美恵の2008年のナンバーのカバー曲で配信限定シングルとなっています。ストリーミング数4位、ラジオオンエア数11位、動画再生回数11位。

最後、10位にはAKASAKI「Bunny Girl」が初登場。現在18歳の高校生シンガーソングライターで、TikTokを中心に話題になっているシンガー。ストリーミング数6位、動画再生回数は9位にランクイン。本作でついにHot100でもベスト10入りを果たしました。今後、さらにその名前を聞く機会は増えそうです。

ロングヒット曲ではこっちのけんと「はいよろこんで」が先週の8位から6位にアップ。ダウンロード数は10位から8位、ストリーミング数も10位から9位にアップ。動画再生回数は先週と変わらず4位をキープ。これで14週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週までベスト10ヒットを続けていたback number「新しい恋人達に」は10位から14位にダウン。ベスト10ヒットは通算11週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年10月22日 (火)

コロナ禍からの復活後の、初レキシ!

レキシツアー2024 秋~稲穂をまだ振ってる途中でしょうが~

会場 Zepp Nagoya 日時 2024年10月17日(木) 18:30~

Rekishi2024

約2年ぶりに、レキシのライブに足を運んできました!2023年に所属事務所との契約が終了し、一時期、事実上の活動休止になるなど、若干、その動向が心配されたのですが、その後、無事活動再開。活動再開後、すぐのツアーはチケットを確保できなかったのですが、今回のライブでは無事チケットも確保し、ライブに望みました。

会場はもちろん満員。スタートは今回のライブツアータイトルの元ネタとなった「北の国から」のオープニング風にスタート。今回はライブハウスツアーのためか、恒例の映像はなし。ナレーションのみでのスタートとなり、ほぼ定刻通りのスタートでメンバーの登場となりました。

ライブは今回も相変わらず。自身の楽曲の演奏中に、どんどん小ネタやコント(?)を取り入れてきて、会場を沸かせて笑わせるスタイルのステージ。この日は1曲目「LOVE弁慶」からスタート。続く「大奥~ラビリンス~」では、さっそく途中に小ネタを入れてきて、途中からドリカムの「決戦は金曜日」ならぬ替え歌の「決戦は木曜日」が飛び出し、ドリカム世代(?)がメインの会場を沸かせます。

さらに「KATOKU」で会場を盛り上げた後、「Let's忍者」の途中では、なぜか元気出せ!遣唐使ことキーボードの渡和久に、「名古屋あるある」を振るシーンに。名古屋あるあるは「料理にみそを使いがち~」と、こういう場じゃなければ微妙な空気になりそうなネタだったのですが(笑)、こういう場所なだけにちゃんと大盛り上がりにはなりました。

続いてはライブではちょっと珍しい感のある「つれづれ」。途中では伊藤へいくならヒロブミことドラマーの伊藤大地に、「乗り鉄」ということで電車クイズ。電車の音を表現し、それを会場にあてるということなのですが、「スーー」という音で、すぐにリニモだとわかりました(笑)。さらにはライブではおなじみ「SHIKIBU」に、この時点での最新曲「エレキテルミー」から「奈良に大きな仏像」へ。こちらではなぜか途中から楽曲がサンバ調に。そのままTHE BOOMの「風になりたい」やら、「情熱大陸のテーマ」やら、さらには元気出せ!遣唐使が「ランバダ」になって踊りだしたり、最後には「勝手にシンドバッド」が飛び出して、下手すればレキシの曲以上に盛り上がったり(笑)と、これまた脱線しまくりで会場は盛り上がりまくりました。

さらに「salt&stone」から、ライブでは恒例のハイライトとも言える「KMTR645」!2年前のライブでは、まだコロナ禍の中で感染症対策ということで、イルカの風船、「よしお」が観客席でダイブする、という演出はなかったのですが(で、それをライブの「大ネタ」としていたのですが)今回はイルカの「よしお」が会場に登場!(確か)5体くらいの大きなイルカの風船が観客席の上を舞っていました。ともすればこの日、一番盛り上がったシーンでした。

後半は「ほととぎす」で、このライブでは珍しい(?)しんみりと聴かせた後はクライマックスへ「Let's FUJIWARA」「妹子なぅ」「きらきら武士」と定番曲の連続で一気に盛り上がります。途中、「妹子なぅ」では、途中、「YAH YAH YAH」や玉置浩二の「田園」が途中にはさまったり、「きらきら武士」ではミラーボールが回ったりと大盛り上がり。そしてラストは一転「最後の将軍」を感情たっぷりに歌い上げ、ライブは幕を下ろします。

もちろんその後はアンコールへ。ここで再びステージは「北の国から」風に。「北の国から」の五郎の真似をしたレキシが登場し、会場はどっと沸きます。その後、なぜかアコギをかかえて長渕剛風のパフォーマンスをしたり、さらには「北の国から」さながらにキツネを呼び出したかと思えば・・・バンドメンバー全員が女装にキツネ耳をつけて登場!全員できつねダンスを披露します。毎回恒例のバンドメンバー全員での変装パフォーマンスに会場は大盛り上がりとなります。

その後はこちらもライブの定番「狩りから稲作へ」に。レキシのライブではおなじみのライブグッズである稲穂(のおもちゃ)が観客席全体に揺れます。また「縄文土器~弥生土器~」の繰り返しから「劇団四季」になって最後は「キャッツ!」と叫ぶまでの流れもお約束。途中、ドリカムの「LOVE LOVE LOVE」が飛び出したかと思えば、「北の国から」のテーマ曲がサンバアレンジで登場。さらには「マツケンサンバ」も飛び出し、また会場は盛り上がります。最後は再び「狩りから稲作へ」に戻り、締めくくりとなりました。

約3時間弱の長丁場でのライブ。今回は「北の国から」と「サンバ」がライブ全体のテーマとなっていました。相変わらず曲の途中で脱線しまくりのパフォーマンスで、3時間ながらもたった16曲のみというのはレキシらしいステージ。ただ、今回はライブハウスでのステージである影響でしょうか、スクリーンによる映像はなく、「コント映像」はなく、ステージセットもほとんどなく、比較的控えめなステージになっていました。とはいえ、その点を除けば、いつものお約束を含めて、いい意味で変わらず楽しめるエンターテイメント。3時間という長丁場もあっという間のライブで、やはりレキシのライブは最高に楽しい!ということを感じさせてくれるパフォーマンスでした。

相変わらずの満足度の高いステージ。ただ、あえて言えば、オールスタンディング3時間はさすがに長い・・・。次はまたホールライブがいいなぁ・・・自分ももう若くはないので・・・。

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2024年10月21日 (月)

今のR&Bを俯瞰的に理解できる1冊

今回も最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

音楽ライターの川口真紀とつやちゃん監修による「オルタナティヴR&Bディスクガイド」。主に2010年代以降のR&Bシーンにおける新しい潮流である「オルタナティヴR&B」について網羅的に紹介したディスクガイド。2009年から現在までのR&Bシーンを「萌芽期」「成熟期」「百花繚乱」と名付け、それぞれ代表的なアルバムを紹介。加えて韓国と日本のオルタナティヴR&Bに連なるアルバムを紹介しています。

オルタナティヴR&Bという名称、一応、Wikipediaでもページがあるようですし、ジャンルとして一般的に呼ばれているものではあるようです。ただ、広く使われている用語かと言われると微妙な部分はありますし、オルタナティヴR&Bという括りでのディスクガイドはおそらく本書がはじめてではないでしょうか。私自身、ここで紹介されているミュージシャンやアルバムを「オルタナティヴR&Bだ」と認識していた訳ではありませんが、なんとなく「今時のR&B」として認識していたミュージシャンばかり。あらためて今のシーンを自分の中で整理し、俯瞰するには最適な1冊となっていました。

また、本書の大きな特徴として、ディスクガイドというタイトルなのですが、コラムが非常に充実しているという点。これにより、オルタナティヴR&Bに属するミュージシャンたちや作品が、音楽シーンの中でどのような立ち位置でどのような意味を持っていたのか、わかる構成となっています。さらにはフランク・オーシャンやSZAという重要ミュージシャンたちのインタビュー記事も紹介。こちらに関しては海外のインタビュー記事の邦訳であり、独自のインタビューではないものの、オルタナティヴR&Bを代表するミュージシャンたちの貴重なインタビュー記事は読みごたえ十分。ディスクガイドと題しながらも、このようなコラムやインタビュー記事が占める割合も多いため、オルタナティヴR&Bの入門書としても楽しむことが出来る1冊となっています。

そしてこの本を読むと、あらためて2010年代においてオルタナティヴR&Bと称されるようなミュージシャンが、特に2019年以降を「百花繚乱」と題されるように、広く浸透していったのかが実感できます。序盤はFrank OceanやThe Weekndのアルバムが続けて紹介されているなど、かなりミュージシャンの数も限られているのですが、取り上げられているミュージシャンの数やアルバムも徐々に増えていき、最後は本当に数多くのミュージシャンたちの名前がシーンに登場してきます。日本における影響も興味深く、名前だけ知っているミュージシャンや、名前も音も全く聴いたことのないミュージシャンもいて興味が湧きました。ただ、若干小袋成彬はいいミュージシャンだとは思うのですが、ちょっと評価が高すぎるような気もしないではないのですが・・・。

さらにこうやってオルタナティヴR&Bのシーンを取り上げられて改めて感じるのは、最近、J-POPの評価が高くなったり、洋楽を聴かず、邦楽で十分と考えるような若者が増えてきたというニュースもありますが、なんだかんだ言っても、まだまだ洋楽と邦楽には差があるな、ということを感じてしまいました。やはりサウンドの先駆性に感じては洋楽の方が一歩先を行っているのは間違いありません。今回取り上げられているミュージシャンたちを見てみても、邦楽勢にも素晴らしいミュージシャンは多いものの、一歩後塵を拝しているのは間違いなく、そういう意味でも、洋楽と邦楽は、例えるならば現在でもMLBとNPBくらいの差はあるだろうな、ということをあらためて感じてしまいました。

アルバムの紹介などには固有名詞が多く、その点、若干読んでいて読みにくさを感じた部分はマイナスなのですが、その点を除いて、現在のR&Bシーンを俯瞰するには最適な1冊。現在のR&Bシーンはもちろん、洋楽シーン全体に興味がある方にもおすすめしたいディスクガイド。私もこの本を読んで、あらためて今のR&Bシーンに対する見方が変わったようにも思います。あらためて、オルタナティヴR&Bの作品をいろいろと聴いていきたいと感じさせてくれる1冊でした。

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2024年10月20日 (日)

メランコリックな作品が目立つ

Title:残心残暑
Musician:aiko

約1年5か月ぶりのリリースとなるaikoのニューアルバム。ここ最近のaikoの話題と言えば、シングル「相思相愛」が映画「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」となったことでしょう。映画として毎回ヒットを飛ばすコナンの映画の主題歌として注目を集めた本作。残念ながら、同映画の前作の主題歌となったスピッツほどの大ヒットにはならなかったものの、ここ最近のaikoの楽曲の中では一番のヒット作となり、本作においてもひとつの軸となっています。

3曲目という、アルバムの中で前半の盛り上がる位置に配された本作はちょっとユニークなのは「相思相愛」というタイトルでありながらも、切ないラブソングに仕上げているという点でしょう。お互い恋人同士でありながらも、やはりお互い別の人ということを実感し、その心境を率直につづった歌詞は、実にaikoらしい1曲になっています。

ただ、このアルバムのひとつの核となっている「相思相愛」を含めて、今回のアルバムは全体的に切ないラブソングが多かったように思います。そもそも本作自体、「blue」は思いっきり切なくムーディーにスタート。「このハンカチ湿った夏の匂いがするな」という冒頭のフレーズからして、いきなり本作の世界観が目の前に広がってくるようです。

続く「skirt」は、まさにaiko節とも言えるグルーヴ感あって複雑な節回しの楽曲になっており、明るい曲調になっているものの、歌詞については恋人との別れを描いたような内容。「好きにさせて」も、ホーンセッションの入った、これまたaikoらしい軽快なナンバーなのですが、明るい曲調とは裏腹な、切ない片思いの歌詞が印象に残る楽曲になっています。

特に同曲以降はメランコリックなナンバーが目立ちます。恋人と別れて何もできない自分を「ガラクタ」と自虐的に語る「ガラクタ」や、過去の恋を思い出して切なく歌「願い事日記」、先行シングルでもある「星の降る日に」も、ジャジーなエレピとストリングスで爽やかながらもメランコリックな曲調に。そして最後を締めくくる「赤い手で」も恋をしている中での相手を思う切ない心境を歌ったメランコリックなラブソングに。一方、そのような曲の中にも「アンコール」のような前向きなラブソングもあったりして、全体的にしっかり最後まで聴かせるバラエティーを感じる構成にもなっています。

全体的には実にaikoらしいとも言える安定感のあるアルバムに。個人的にはここ数作の中では一番の出来だったようにも感じます。楽曲の出来ももちろんですが、先行シングル曲3曲がほどよいバランスで並んでおり、アルバムの中のちょうどよいインパクトになっていた点も大きいのでしょう。非常によくできた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
May Dream
湿った夏の始まり
aikoの詩。
どうしたって伝えられないから
今の二人をお互いが見てる


ほかに聴いたアルバム

SOMEONE IS DANCING SOMEWHERE/SUGIURUMN

実に約7年ぶりとなるSUGIURUMNのニューアルバム。一時期は様々なミュージシャンの作品に参加していたりして、その名前をよく聞いたのですが、ここ最近、あまり名前を聞く機会がなくなりました。昨年公開されたサニーデイ・サービスの映画で本人が出演しており、久しぶりにその名前を聞き、ここに来て、本当に久しぶりとなるニューアルバムのリリース。久々となった理由は、不明なのですが・・・。今回のアルバムは初となる日本語による楽曲だそうで、前述の曽我部恵一や、WINO(こちらも超久しぶり!)の吉村潤などがゲストとして参加しています。楽曲的にはロックテイストの強い曲、メロウなナンバーなどバラエティーを感じさせつつ、全体的にはリズミカルなビートとポップなメロで聴きやすいテクノやハウスのナンバーが並んでいて、比較的、王道な印象を受けます。ここらへん、以前の彼とスタイルは良くも悪くも大きな変化はないような印象も。非常に聴きやすさを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

SUGIURUMN 過去の作品
Midi In Midi Out
Do You Remember That Night?

May The House Be With You

3+5/Melt Banana

日本よりもむしろ海外で高い人気を誇る、既にレジェンド的な立ち位置となっているノイズロックバンド、Melt Bananaの約9年ぶりとなるニューアルバム。もちろんその名前は以前から知っていたのですが、ノイズロックということでなんとなく敬遠しており、アルバムを聴くのは今回が初。ただ、聴いてみて非常に意外だったのは、確かにギターノイズを前に押し出していたのですが、メロディアスな歌はしっかりと鳴っており、全体的にはむしろパンクロックに近い感じの楽曲となっていたのが印象的。意外と「ポップ」という印象すら受けた、いい意味で聴きやすいアルバムでした。

評価:★★★★

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2024年10月19日 (土)

懐かしいスペーシーなエレクトロポップ

Title:Paradise State Of Mind
Musician:Foster The People

アメリカのインディーポップバンド、Foster The Peopleの、オリジナルアルバムとしては実に約7年ぶり。4枚目となるニューアルバムがリリースされました。その7年前の前作「Sacred Heart Club」はダウナーな雰囲気の強くなった作品でしたが、今回のアルバムに関しては、非常に明るく、祝祭色あるサウンドにシフト。Foster The Peopleの持つ「ポップス」さがより強調された作品に仕上がっています。

まず1曲目「See You In The Afterlife」から、80年代っぽい雰囲気漂う軽快なエレクトロディスコチューンからスタート。ライブで流れたら盛り上がりそうな、素直にワクワクできるようなポップチューンからスタート。続く「Lost In Space」もリズミカルな重低音のエレクトロトラックからスタート。さらに祝祭色のあるストリングスの音色も加わり、エフェクトのかかったボーカルも含めて、非常にスペーシーで鮮やかなダンスチューンとなっています。

その後も、この80年代的な雰囲気の漂うスペーシーなエレクトロチューンというスタイルは続きます。3曲目の「Take Me Back」は、そこまで盛り上げていたリスナーを落ち着かせるようなミディアムファンクチューン。「Let Go」はフィーリーな雰囲気のミディアムチューン。中盤のタイトルチューン「Paradise Sate Of Mind」も、ちょっとサイケ気味なアレンジの、メランコリックなミディアムポップ。

後半も「Glitchzig」のようなリズミカルなナンバーも挟みつつ、「The Holy Shangri-La」「Sometimes I Wanna Be Bad」など、80年代のフィリーソウルからの影響も感じる、メロディアスでメロウなミディアムチューンのナンバーが目立ちます。ただ、いずれも明るく爽やかなメロディーラインとサウンドが特徴的で、いい意味で聴きやすく、かつ懐かしく、祝祭色を感じさせるポップチューンが特徴となっています。

終盤の先行シングルとなった「Chasing Low Vibrations」は暖かさを感じさせるスペーシーなエレクトロトラックと懐かしくメロディアスな歌が耳に残る、フックに効いたナンバー。ラストを締める「A Diamond To Be Born」は、この懐かしくもスペーシーなアルバムのラストを締めくくるにふさわしい、ミディアムチューンのエレクトロチューンとなっています。

全体的にフィリーソウルや80年代ポップの影響を感じさせる、ちょっとベタさも感じるスペーシーなエレクトロチューンが印象的なアルバム。ポップで、いい意味でわかりやすく、聴いていて素直にワクワクと楽しめるような作品になっていました。ただ、デビュー当初のサイケな要素は薄れて、良くも悪くも「ベタ」という印象を受けるのは賛否わかれそうな感じはするのですが・・・。もっとも、広いリスナー層におすすめできそうなアルバムである点は間違いないかと思います。1作目2作目といきなりビルボードチャートでベスト10入りしてきた彼らですが、3作目以降、売上面で大きく成績を落としており、本作もビルボードで最高位170位とかなり奮わない結果となってしまったようですが、ただ、これだけポップなアルバムをリリースしてこれば、今後の巻き返しも十分あるかと。これからの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

Foster the People 過去の作品
Torches
Supermodel
Sacred Hearts Club
In The Darkest Of Nights, Let The Birds Sing


ほかに聴いたアルバム

F-1 Trillion/Post Malone

アメリカのラッパー、Post Maloneの最新アルバムは、なんとカントリーアルバム。日本人でもロック系のミュージシャンがベテランになると、歌謡曲のカバーとかやりだしたりするのですが、それと同じ感覚でしょうか?全編、メランコリックでメロディアスな歌モノのアルバムで、カントリーという以上にカントリーロックに近いような印象も。もっともPost Maloneは直近作「AUSTIN」でもメランコリックな歌を前面に押し出していましたので、そういう意味ではイメージ的に「ガラッと変わった」といった感じでもありません。良くも悪くも保守的という印象は否めませんが。

評価:★★★★

Post Malone 過去の作品
Beerbongs & Bentleys
Hollywood's Bleeding
Twelve Carat Toothache
AUSTIN

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2024年10月18日 (金)

偉大なるドラマーへ捧げる評伝

今日は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

世界を代表するロックンロールバンド、THE ROLLING STONES。そのオリジナルメンバーでありドラマーのチャーリー・ワッツ。2021年に80歳で惜しまれつつこの世を去った彼。偉大なるバンド、ローリング・ストーンズの独特のリズムを担っていたメンバーの死は音楽シーンに大きなショックを与えました。本作は、そんなチャーリー・ワッツの生涯を綴った公認の評伝「チャーリー・ワッツ公認評伝 人生と時代とストーンズ」(原題 Charlie’s Good Tonight: The Life, the Times, and the rolling Stones:The Authorized Biography of Charlie Watts)。作者は30年以上にわたりストーンズの取材を続けてきたジャーナリストのポール・セクストン。「公認評伝」というタイトルの通り、遺族からの承諾も取れた1冊となっているそうです。2022年9月にまずは本国イギリスで出版。昨年8月に邦訳が日本でも出版され、私も遅ればせながら本書を読んでみました。

全392ページからなる、かなりの重厚感もある本作。遺族からのインタビューも多数収録されているほか、前文にはミックとキースがコメントを寄せています。全9章から成り立つ本書は、チャーリー・ワッツの人生が、ストーンズの歩みと共に語られているほか、章の間には「バックビート」と称して、そのチャーリー・ワッツの人柄に関する様々なエピソードも挿入されています。

やはり本書を読んで強く印象付けられるのは、間違いなくチャーリー・ワッツの人柄の部分でしょう。いままでもわかってはいたことなのですが、破天荒なミックやキースと比べると、彼の性格を一言で言えば、圧倒的な常識人。バンドを離れた彼は、なによりも家族を大切にする心優しき英国紳士。ストーンズのメンバーの中で唯一離婚歴がないのは彼ですし、また、ストーンズといえば(特にキース)、薬物というイメージとは切っても切り離せない中、チャーリーも一応経験こそあるようですが、ほぼ無縁。ストーンズという世界を代表する巨大バンドのメンバーでありながらも、彼の日常のエピソードは、そんな常識人としてのエピソードが多く、奇人変人的なエピソードの多いミックやキースと比べると、読んでいて親しみやすさすら感じられました。

ただ一方で、もちろん、あのストーンズのドラマーとして第一線で活動し続けた彼が、凡人と同様の「一般人」である訳はありません。特に要所要所に感じさせる彼の「こだわり」のエピソードも数多く紹介されています。特にファッションに関しては、かなりのこだわりがあったようで、そんな彼のファッションに対する思いを感じさせる話や、またコレクター気質もあったそうで、そんなエピソードも数多く紹介されています。すごく下世話な言い方をすると「おたく気質」があったんだろうな、と感じてしまうチャーリー。ただ、そんなこだわりのエピソードもまた、どこか親近感も覚えてしまいます。

また、特にストーンズに関する興味深いエピソードとしては、彼自身、非常に音楽に対して幅広い好奇心を示していたという点。ストーンズと言えば、スタートはブルースの影響を強く受けたバンドだったのですが、その後、時代が下るとレゲエやディスコなどの要素を取り入れた曲も発表しているのですが、どちらかというと新しいジャンルの音楽に関して消極的なキースに対して、ミックと、そしてチャーリーはそういった新しいジャンルの音楽をかなりポジティブに捉えていたエピソードが語られています。チャーリーと言えば、もともとはジャズドラマーとしてそのキャリアをスタートさせており、生涯、ジャズを愛好していたことはよく知られていますし、また、クラシック音楽に対しても興味があったとか。ジャンルを問わず、様々な音楽へと興味を抱いていたエピソードの数々には、彼が心の底から音楽が好きだったんだろうなぁ、ということを強く感じました。晩年、インターネットに対してはほとんど興味を示さなかったそうで、音楽とそれ以外のテクノロジー的な部分との興味の持ち方への差がまたユニークにも感じました。

本当にチャーリー・ワッツに関する、そして彼に関連するストーンズに関するエピソード満載の評伝で、ワクワクしながら読み進めることが出来た1冊となっていました。また、もうひとつ大きな特徴だったのは、洋書の和訳本なのですが、日本語が非常に読みやすかったという点。音楽関連の評論書の邦訳本などは、和訳がこなれていない部分が多く、読んでいて非常に読みにくいというケースも多々あるのですが、本書に関しては和訳を手掛けた久保田祐子の文章力が優れている影響でしょうか、違和感なく読み進められる和訳となっており、スラスラと読み進めることが出来ました。

チャーリー・ワッツのファンはもちろんですが、まずはTHE ROLLING STONESが好きだったのならば、間違いなくお勧めした評伝。かなりボリュームがある内容ですが、興味深いエピソード満載で読み応えもあり、一気に読み進めることが出来た1冊。チャーリー・ワッツという人物の人柄が伝わってきて、また彼がいかに素晴らしい人物であったか、ということをあらためて感じられた評伝でした。

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2024年10月17日 (木)

大ベテランのロックバンドが1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はあのベテランロックバンドが1位獲得です。

今週1位を獲得したのはGLAYのニューアルバム「Back To The Pops」。インディーズでのデビューから今年30周年を迎える彼らの約3年ぶりとなるニューアルバム。CD販売数及びダウンロード数いずれも1位を獲得し、総合順位でも1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上2万5千枚で1位初登場。直近作は過去作の復刻版「THE FRUSTRATED Anthology」で、同作の初動5千枚(7位)からはアップ。ただ、オリジナルアルバムの前作「FREEDOM ONLY」の初動3万枚(1位)からはダウンしています。

2位は韓国の女性アイドルグループIVE「ALIVE」が先週の5位からアップし、6週ぶりにベスト3返り咲き。10月13日、14日でイベントが行われた影響の模様。

3位はロックバンド和楽器バンドのベストアルバム「ALL TIME BEST ALBUM THANKS~八奏ノ音~」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数2位。オリコンでは初動売上9千枚で3位初登場。前作「I vs I」の初動1万4千枚(6位)からダウンしています。

4位以下には5位に女性アイドルグループNiziU「RISE UP」が初登場。彼女たち初のEP盤。6位はLDH系。FANTASTICS from EXILE TRIBE「Temporal Transition」がランクイン。こちらも彼ら初となるミニアルバム。7位初登場ははバーチャルYouTuber鷹嶺ルイ「Liberty」。9位には女性アイドルグループでんぱ組.inc「We need the DEMPA」が初登場。2025年初頭の解散を表明している彼女たちのラストEP。10位にはうたの☆プリンスさまっ♪HE★VENSドラマCD 「新選組~残陽の行く末~」がランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲームからのドラマCD。

また今週8位には米津玄師「LOST CORNER」がランクイン。こちらはこれで8週目のベスト10ヒットとなりました。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、今週も先週と変わらず弌誠「モエチャッカファイア」が1位獲得。これで4週連続1位に。動画再生回数ではついに1位を獲得しています。現在ヒット中のこっちのけんと「はいよろこんで」も動画から火がついてヒットとなりましたが、こちらも総合チャートでも上位に食い込んでくるのでしょうか。楽曲的にはインパクトあるのですが、ただ若干、おたく層向け過ぎて、一般受けはしなさそうな感もあるのですが。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTokチャートは女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が先週に引き続いての1位獲得となっています。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

https://www.nicovideo.jp/watch/sm44158937

ボカロチャートでも1位はハチ「ドーナツホール2024」が2週連続の1位獲得。2位にも先週から引き続きじん「Summering」がランクインしており、懐かしい名前が今週も並んだチャートとなっています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年10月16日 (水)

男女アイドル勢が1位2位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、男女アイドル勢が1位2位に並びました。

まず今週1位に初登場したのは旧ジャニーズ系のアイドルグループAぇ!group「Gotta Be」がランクイン。CD販売数1位、ラジオオンエア数4位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上39万枚で1位初登場。本作が2枚目となるシングルで、前作「《A》BEGINNING」の初動62万5千枚(1位)からダウンしています。

2位はAKB48の姉妹グループNMB48「がんばらぬわい」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上17万枚で2位初登場。前作「これが愛なのか?」の初動20万3千枚(2位)からダウン。

3位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は17週連続の1位。動画再生回数も3位から2位に再びアップ。これで26週連続のベスト10ヒット&通算19週目のベスト3ヒットとなりました。また「familie」も先週の10位から9位にアップ。ストリーミング数は3週連続の3位。こちらもベスト10ヒットを連続9週に伸ばしています。

Mrs.GREEN APPLEは以下「ケセラセラ」は先週と同順位の11位、「青と夏」は14位からダウンの17位、「Soranji」も先週と同順位の19位、そして「点描の唄 feat.井上苑子」が18位から20位にダウン。今週も6曲同時にベスト20にランクインという結果となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にCreepy Nuts「オトノケ」がランクイン。ダウンロード数及びストリーミング数2位、ラジオオンエア数9位。前作に引き続き本作もアニメタイアップがついており、TBS系アニメ「ダンダダン」オープニングテーマ。ストリーミング数は好調な滑り出しで、本作もロングヒットになるのでしょうか。ただ、前作に比べるとインパクトはちょっと薄いような印象も・・・。ちなみに「Bling-Bang-Bang-Born」は先週の9位から7位にアップ。こちらはベスト10ヒットを連続39週に伸ばしています。

初登場もう1曲は6位にKID PHENOMENON「Unstoppable」がランクイン。CD販売数3位。LDH所属の男性アイドルグループによる新作。オリコンでは初動売上5万7千枚で3位初登場。前作「ONE DAY」の初動4万6千枚(3位)よりアップしています。

続いてロングヒット曲ですが、まずこっちのけんと「はいよろこんで」は6位から8位にダウン。動画再生回数は4位をキープしていますが、ダウンロード数は8位から、ストリーミング数は7位から、どちらも10位にダウン。これでベスト10ヒットは13週連続となりましたが、来週以降、若干厳しい状況になってきています。

そしてもう1曲、back number「新しい恋人達に」は今週8位から10位にダウン。ダウンロード数はランク圏外、先週まで2位をキープしたストリーミング数は5位にダウン。こちらもベスト10ヒットは通算11週に伸ばしましたが、後がない状況となってきています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年10月15日 (火)

インディーレーベル移籍作

Title:Curve 1
Musician:Mura Masa

Curve1_muramasa

イギリスのエレクトロミュージシャン、Mura Masaの約2年ぶりとなるニューアルバム。デビュー作「Mura Masa」が大きな話題となりグラミー賞も受賞。一躍注目を集めたミュージシャンですが、残念ながら売上面ではその後は伸び悩んでおり、今回のアルバムはメジャーレーベルを離れて、自身のレーベル「Pond Recordings」からのリリースとなっているようです。ここらへんのメジャーレーベルとインディーレーベルの関連性というのは、日本もイギリスもさほど変わらないんですね・・・。

今回のアルバムで前作と比べて最も大きな影響となっているのが、すべての曲にゲストを迎えていた前作と異なり、本作はゲストを迎えた曲が数曲のみ。ここらへんはインディーレーベルに移籍した影響というのもあるのでしょうか?ただ、多くの曲に歌が入っているので、ここらへんはボーカルトラックをサンプリングして使用されているということなのでしょうか。

そんなゲストが少なかった影響もあるのでしょう、比較的HIP HOPの影響も強かった前作と比べると、今回の作品はHIP HOPやR&Bなどの影響は薄めで、エレクトロを前面に押し出したような作風になっています。疾走感あるエレクトロビートが心地よい「gimme」にメロウな女性ボーカルにダンサナブルなリズムが印象的な「SXC」「giddyup」などはまさにスペーシーなエレクトロサウンドに、サンプリングされたボーカルが同じフレーズを繰り返すトリップ感満載の楽曲に。さらに後半はドリーミーでメロウな「rep 4 me」「Still」と、いずれもハウスの楽曲となっています。

一方、ゲストを迎えた楽曲ではもちろんしっかりとボーカルを前に押し出した軽快でポップな歌モノの作品となっています。「We Are Making Out」では当サイトでも何度か取り上げたこともある、シンガポール出身のシンガーソングライターyeuleを起用し、軽快で明るいエレクトロポップに仕上げていますし、「Drugs」でもペルー出身のマルチプレイヤー、ダニエラ・ラリタを起用。こちらも軽快なエレクトロポップの作品となっており、アルバムの中でひとつのインパクトとなっています。

自らのレーベルに移籍したことにより、以前に比べて、より自由度は増した感もあるでしょうか。ただ、全体的にはMura Masaらしい、比較的シンプルで王道路線のエレクトロチューンが並ぶアルバムだったという印象を受けます。楽曲自体にさほど目新しさは感じませんが、一方ではポップで聴きやすく、エレクトロチューンのリズムやサウンドの心地よさがそのまま楽曲につまっているアルバムになっていたと思います。シンプルにワクワクさせてくれるMura Masaらしい傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Mura Masa 過去の作品
R.Y.C.
demon time

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2024年10月14日 (月)

切なくポップなメロが魅力的

Title:life till bones
Musician:Oso Oso

Lifetillbones

ニューヨークはロングビーチのエモロックバンド、Oso Osoの約2年ぶりとなるアルバム。メンバーはジェイド・リトリ1人のみの、事実上、ソロプロジェクトとなるのですが、メロディアスで、日本人の琴線に触れるようなちょっと切なく暖かいメロディーラインが特徴のバンド。前作「soro thump」はブレイクもしていないアメリカのバンドとしては珍しく、国内版もリリースされたのですが、残念ながら本作は国内でのリリースはない模様。ただし、前作同様、メランコリックなメロディーが心に響くポップな傑作アルバムに仕上がっていました。

まず印象的なのがイントロ的な1曲目から続く、事実上のオープニングナンバー「the country club」が耳を惹きます。ハーモニーで聴かせるちょっと切ないメロディーラインが印象的。さらにグッと来るのが、この曲から続く「all of my love」への入り。軽快で分厚いサウンドのギターのストロークのイントロにまず心をつかまされます。それに続くのが、疾走感あるポップなメロなのですが、ハイトーンボイスを微妙にからませてメランコリックに聴かせるメロディーライン。もう、アルバム序盤のこの2曲でOso Osoの魅力をこれでもかというほど感じてしまいます。

その後もメロディーにちょっとメロウさが加わった「that's what time does」や分厚いバンドサウンドをバックに暖かくポップな歌を聴かせてくれる「dog withouut its bark」、打ち込みのリズムにギターと宅録っぽいサウンドとポップなメロが魅力な「application」と続き、さらに終盤の「skippy」でもこれでもかというほど聴かせてくれるキュートなメロが大きな魅力。最後はパワーポップ的なバンドサウンドを前に押し出した「other people's stories」で締めくくり。最後まで分厚く力強いギター主導のバンドサウンドに、切なさを内包したメロディアスでポップな歌が続くアルバムとなっています。

今回のアルバムでは、「成長、変化、時間の経過」をテーマとした作品だそうで、これらのテーマは、彼のいとこであり、クリエイティブ面でのパートナーであったTravish Maloneyが2021年に亡くなったことが影響しているそう。それだけ今回のアルバムは、非常にエモーショナルでしたし、ポップでキュートさも感じられる歌の中に、微妙な切なさも加わっているのも、そんなTravishの死の影響もあるのでしょうか。

メランコリックで切なく、メロディアスなメロと、そんなメロを裏打ちするような分厚く包み込まれるようなバンドサウンドが魅力的。この点、決して斬新さはないのかもしれませんが、冒頭でも書いたように日本人の琴線に触れてくるようで、間違いなく多くの方が聴けばはまりそうなアルバムになっています。毎回、年間ベストクラスのアルバムをリリースしてくる彼ですが、今回も間違いなく年間ベスト候補となりうる傑作アルバム。エモバンドやパワーポップが好きならマストな1枚です。

評価:★★★★★

Oso Oso 過去の作品
Basking In The Glow
sore thumb

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2024年10月13日 (日)

バンドサウンドでよりエモーショナルに

Title:Sky Hundred
Musician:Parannoul

Skyhundredparannoul

韓国のシューゲイザー系ミュージシャン、Parannoulのニューアルバム。既に活動開始から7年、これが4作目となる中堅ミュージシャンの彼ですが、アルバムを聴くのはこれが2枚目。前作「After The Magic」が大きな話題となり、日本でも一躍、注目を集めました。

そんな彼が前作からわずか1年というインターバルを経てリリースしたのが今回のニューアルバム。前作は、シューゲイザーの王道を行くような、ギターノイズとポップなメロで彩られた楽曲が非常に美しかったのですが、今回も聴いていて、その美しいサウンドやメロにうっとり聴き入るようなそんなサウンドを展開しています。ただ、今回のアルバムの特徴として、よりギターやバンドサウンドを前面に押し出して、ダイナミックさを増したサウンドを展開しているという点。シューゲイザーの王道を行く前作に比べ、今回は彼のサウンドを形作るもうひとつの要素、エモコアの要素がより強調されているように感じます。

とはいえ、ノイジーなギターサウンドとメロディーで狂おしいほどポップで美しく展開される楽曲という点は今回も変わりありません。まさに1曲目の「A Lot Can Happen」は高揚感ある美しいピアノのフレーズに、ヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドという組み合わせが実にメランコリックでドリーミーな作品。Parannoulの魅力を体現化したといっていい楽曲になっています。続く「Gold River」も、イントロのバンドサウンドの破壊的なビートに、高揚感が増すナンバーですが、楽曲がスタートすると、メランコリックでメロディアスなその歌に心惹かれるポップな側面が表に出てきます。

その後も「Painless」でもノイジーなバンドサウンドをバックに流れる切なくポップなメロが印象的ですし、「Lights Off Repentance」は疾走感あるバンドサウンドで、どちらかというとパンクやハードロック色も感じられるロックチューン。さらに中盤のハイライトとも言えるのが14分にも及ぶ長尺曲「Evoke Me」で、これでもかというほどダイナミックなバンドサウンドに清涼感のあるピアノが絡み、さらにメランコリックでキュートなメロの歌が実に美しい楽曲。最後はノイズを前面に押し出して、よりアバンギャルドさやサイケさが増してくる構成もまた、耳に強く残ります。

終盤の「Backwards」も、ピアノのアルペジオが美しく、メランコリックな歌が印象に残る切ないナンバー。そしてラストの「Fantasy」もダイナミックなバンドサウンドを前に押し出した、アルバムを総括するかのような楽曲で締めくくり。ほどよい余韻を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

前作に比べてメロコア的な要素を強くし、よりダイナミックさを増した今回のアルバム。一方では狂おしいほど美しいメランコリックなメロやサウンドは本作も健在。前作から引き続きParannoulの魅力を伝える一方で、加えて、彼の新たな側面も感じさせるアルバムでした。前作も昨年度の私的年間ベストアルバムの8位に選びましたが、今回も間違いなくベスト盤候補と言える傑作アルバム。シューゲイザーやエモコア好きなら間違いなくチェックしてほしい作品です。

評価:★★★★★

Parannoul 過去の作品
After the Magic

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2024年10月12日 (土)

アフリカ音楽の歴史を探るコンピ第3弾

Title:NIGERIAN GUITAR ROOTS

Nigerianguitarroots

今回紹介するのは、エル・スール・レコーズからリリースされた、アフリカのSP音源復刻コレクションの第3弾となるアルバム。以前リリースされ、当サイトでも紹介した「PALMWINE MUSIC OF GHANA」「Early Congo Music」に続く作品で、先の2作品と同じく、音楽評論家の深沢美樹氏選曲・監修によるコンピレーションアルバムとなります。

今回取り上げられているのは、パームワインミュージックを基礎として発展したナイジェリアのギター音楽の歴史をたどる企画。2枚組となっている本作のうち、1枚目はナイジェリアの民族、ヨルバ人によって主に発展していくジュジュの音源を紹介しており、一方、2枚目は同じナイジェリアでパームワインミュージックを基礎としつつ、南東部のイボ・ランドと呼ばれる地域で発展したギター・バンド・ハイライフと呼ばれる音楽を紹介しています。

同じパームワインミュージックを起源とし、近い地域で発展しながらも音楽的に異なる系譜をたどっていくジュジュとハイライフという2つのジャンルの比較はなかなか興味深いもの。今回のアルバムでは、主にリリース順に並べられており、その変化の状況についても把握できる構成となっています。

ジュジュに関しては、ヨルバ系独特のパーカッションを取り入れて、かつ徐々にエレキギターなどの電子楽器を取り入れて発達してきたそうですが、序盤から軽快なパーカッションとコール・アンド・レスポンスという形態が目立つサウンドの構成で、特に独特なトライバルのリズムが特徴的。語弊を恐れずに言ってしまえば、基本的にアフリカ音楽と言われてまずは想像されるようなタイプの音楽、と言ってしまっていいかもしれません。

そんなサウンドのスタイルが時代の経過を経て徐々に確立されていき、特に60年代にはI.K.Dairoというミュージシャンが絶大な人気を集めたようですが、本作で収録された「Ka Sora」「Ero Bami Dele」は軽快なパーカッションとギターのサウンドでかなりあか抜けた印象もあるジュジュの完成形のようなスタイルを聴くことが出来ます。そしてラストを締めくくるのがアフリカ音楽の代表格のミュージシャンとも言えるSunny Adeの「Alanu L'oluwa」で締めくくり。軽快なパーカッションのリズムとコールアンドレスポンス、そしてそこに絡む軽快なギターというスタイルでその音色を聴かせてくれています。

一方、2枚目に収録されているギター・バンド・ハイライフの方は、同じくトライバルなパーカッションやギターサウンドがからみつつ、どこかラテンやカリブ海近辺の音楽も彷彿させるようなメロウな音楽性が特徴的。「River Jordan」などはかなりラテン風のパーカッションが特徴的ですし、「Abasi Ye Enye」なども、ちょっとハワイアンを彷彿とさせるような雰囲気すら感じさせます。こちらもリリース順に楽曲が並べられており、後半になるにつれ、楽曲がより洗練され、かつハイライフとしてのスタイルを確立していっていることも感じさせます。

アフリカの音楽の歴史と、その奥深さも知ることの出来るコンピレーションアルバム。今回も84ページにも及ぶ解説がついた冊子が同封されており、しっかりと読み込めば、ハイライフやジュジュの歴史も知ることが出来ます(ただ、なじみのない固有名詞の連続で、読み解くのにはかなり苦労するかも・・・)。アフリカの音楽やワールドミュージックに興味がある方には文句なしにお勧めのアルバムです。

評価:★★★★★

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2024年10月11日 (金)

オーケストラを従えて

Title:nothing
Musician:Louis Cole

オーケストラをバックに、まるで大ボスのように降臨するジャケットがユニークなルイス・コールの最新作。昨年も、自身のユニットKNOWERのアルバムが大きな話題となりましたが、毎年のようにアルバムをリリースするなど、積極的な活動が目立ちます。最新作である本作は、このジャケット写真からもわかるようなオーケストラを取り入れた作品。メトロポール・オーケストラとの共演作。メトロポール・オーケストラはオランダの交響楽団だそうで、ジャズのビックバンドと交響楽団を組み合わせ、ジャズやポップスの作品に取り組んでいるのが特徴的なオーケストラだそうです。

今回のアルバムも1曲目「Ludovici Cole Est Frigus」は、ダイナミックスなオーケストラアレンジの曲からスタートし、いつものルイス・コールの雰囲気とはちょっと異なる雰囲気からのスタートとなります。ただ続く「Things Will Fall Apart」はダイナミックなオーケストラアレンジは加わるものの、ハイトーンボーカルと打ち込みのリズムを取り入れた軽快なポップスはまさにルイス・コールらしい楽曲。まさしくルイス・コールの曲にオーケストラアレンジが加わった、ある意味、このプロジェクトのイメージ通りの作品になっています。

その後も基本的に、オーケストラアレンジが加わった、ダイナミックな要素が加味されたものの、ルイス・コールらしいハイトーン気味のボーカルを軸としてポップな作風を聴かせる楽曲が並びます。「Life」はハイテンポのエレクトロビートを軸として、疾走感あるリズムを強調するかのようなストリングスアレンジがユニーク。「A Pill in the Sea」も女性ボーカル入ってメランコリックでメロディアスなポップをベースに、力強い打ち込みのビートとダイナミックなオーケストラのアレンジでスケール感ある作品に仕上げています。

もちろん、オーケストラであることを存分に味合わさせてくれる楽曲も少なくありません。特に終盤では「Shallow Laughter」「Let it Happen」をオーケストラアレンジでカバーしていますし、「Doesn't Matter」では全11曲にも及ぶ長尺のナンバー。オーケストラアレンジでスケール感を持ちつつ、幻想的な曲想も印象的な作品。オーケストラアレンジを最大限に生かしたような楽曲に仕上げています。

全体的にはオーケストラアレンジと言って、いままでのルイス・コールのイメージがガラリと変わる訳ではなく、ちゃんとルイス・コールの最新作として楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。また、オーケストラアレンジというと、ともすれば仰々しいアレンジで胸焼け気味になる場合もあるのですが、本作に関してはダイナミックなアレンジはあるものの、打ち込みなどでシンプルに聴かせる部分もあり、全体的にはしっかりとバランスが取れている印象。そういう意味でもバランスよく楽しめるアルバムに仕上がっていました。このアレンジの妙も含めて、ルイス・コールの実力がしっかりと発揮された作品。その魅力を存分に味わえる作品でした。

評価:★★★★★

Louis Cole 過去の作品
Quality Over Opinion


ほかに聴いたアルバム

VULTURES 2/¥$

Vultures2

いろいろと物議を醸し出しているカニエ・ウェストとラッパーのタイ・ダラー・サインによるユニットによる、2枚目となるアルバム。配信では最初のバージョンから徐々にアップデートされたものが、どんどんと上書きされた公表されるスタイルも賛否両論で話題となったり、また、カニエの娘が日本語のラップを披露しており、こちらも賛否両論で話題になっているようですが・・・全体的にネガティブな評価が多かった前作に比べると、メディア的には「無視」されている感も強い本作。それでもビルボードチャートでは2位を獲得しており、根強い人気を感じてしまうのですが。確かに純粋に歌詞の内容など無視して聴く分には非常に心地よくメランコリックな曲調がインパクトもあるのですが、ただ、かつてのカニエに比べると、作品の目新しさといい勢いといい失速しているのは否めません。全体的に評価は難しいアルバムではありそうですが・・・。

評価:★★★

¥$ 過去の作品
VULTURES

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2024年10月10日 (木)

なんと、ハチの楽曲が!

今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

https://www.nicovideo.jp/watch/sm44158937

なんと今週1位はハチ「ドーナツホール2024」が1位獲得。ハチは、いまをときめくシンガーソングライター、米津玄師のボカロPでの名義。本作はもともと2013年に公表されていた曲で、米津玄師のアルバム「YANKEE」でも本人歌唱のバージョンが収録されています。本作は、このたびMVを新しくして、再度アップロードされたもの。ちなみにオリジナルバージョンの「ドーナツホール」も今週3位にランクインしています。

ちなみに2位にも「カゲロウプロジェクト」でおねじみのじんの「Summering」がランクインしており、「今は何年だよ?」と思うほど、懐かしいボカロPの名前がランキングに並んでいます。それがいいことなのかと言われると、非常に微妙なのですが・・・。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

こちらも米津玄師が上位に食い込んでいます。

まず1位はONE N'ONLY「Fiesta」がランクイン。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループによる3枚目のEP盤。CD販売数1位で総合チャートも1位に。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上3万4千枚で1位初登場。前作「You are/Hook Up」の初動2万9千枚(4位)からアップ。

2位もavex所属の男性アイドルグループDa-iCE「MUSi-aM」が獲得。CD販売数2位、ダウンロード数7位。オリコンでは初動売上1万5千枚で2位初登場。前作「SCENE」の初動1万枚(10位)よりアップしています。

そして3位には先週7位の米津玄師「LOST CORNER」が4ランクアップで3週ぶりのベスト3返り咲き。CD販売数は8位から6位、ダウンロード数も3位から2位といずれもアップ。前述の通り、ハチ名義でリリースした楽曲の新MVが発表されて大きな話題となりましたが、その影響もあるのでしょうか。

次に4位からの初登場盤。6位にはWACK所属の女性アイドルグループASP「Terminal disease of ASP」がランクイン。7位はアニメキャラによるバンドプロジェクト、BanG Dream!に登場する架空のバンドAve Mujica「ELEMENTS」が初登場。8位初登場は家入レオ「My name」。9位にはKing Gnu「King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME」がランクイン。同タイトルの映像作品と同時リリースとなった配信限定のライブアルバムで、ダウンロード数では同盤が見事1位獲得。そして10位には音楽家澤野弘之の別名義、SawanoHiroyuki[nZk]「bLACKbLUE」が初登場でランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、今週も先週と変わらず弌誠「モエチャッカファイア」が1位獲得。これで3週連続1位に。動画再生回数では今週も2位をキープしています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTokチャートは先週までコレサワ「元彼女のみなさまへ」が1位を獲得してきましたが、今週は残念ながら2位にダウン。代わって1位を獲得したのは女性アイドルグループCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が1位を獲得しています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年10月 9日 (水)

アイドル系の新譜ラッシュ

今週のHot100

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今週は、Hot100としては珍しく新譜ラッシュとなり、ベスト10のうち5曲が初登場となりました。ただ、うち4曲はアイドル系です。

まず1位初登場はJO1「WHERE DO WE GO」がランクイン。吉本興業と韓国のCJ ENMとの合弁会社LAPONEエンタテイメント所属の男性アイドルグループ。CD販売数1位、ダウンロード数4位、ラジオオンエア数2位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上54万2千枚で1位初登場。前作「HITCHHIKER」の初動50万5千枚(1位)からアップしています。

2位は秋元康系。SKE48「告白心拍数」。CD販売数2位、そのほかはすべてランク圏外。オリコンでは初動売上20万9千枚で2位初登場。前作「愛のホログラム」の初動27万1千枚(1位)からダウン。

そして3位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は16週連続の1位をキープ。ただし、動画再生回数は1位から3位にダウンしています。これで25週連続のベスト10ヒット&通算18週目のベスト3ヒットとなりました。

Mrs.GREEN APPLEは「familie」が先週の6位から10位にダウンしているものの、今週もベスト10をキープ。これで本作も8週連続のベスト10ヒットに。ストリーミング数は先週に引き続き、今週も3位を獲得しています。

一方、「ケセラセラ」は8位から11位、「ダンスホール」も9位から13位にダウン。今週はベスト10は2曲のみのランクインに留まりました。ただ「青と夏」は14位、「点描の唄 feat.井上苑子」は18位と、「Soranji」はベスト20圏外となりましたが、今週もベスト20に6曲同時ランクインという結果に。Mrs.GREEN APPLEの勢いはまだまだ続いています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に韓国の男性アイドルグループATEEZ「Birthday」がランクイン。CD販売数3位。オリコンでは初動売上12万2千枚で3位初登場。前作「NOT OKAY」の初動21万6千枚(2位)からダウン。

5位には旧ジャニーズ系男性アイドルグループ、King&Prince「WOW」が初登場。12月11日リリース予定のアルバム「Re:ERA」からの先行配信シングルで、ダウンロード数及びラジオオンエア数で1位を獲得し、総合順位は5位にランクインしています。

唯一の非アイドル系の初登場曲は7位にOfficial髭男dism「Same Blue」がランクイン。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数4位、動画再生回数20位。TBS系アニメ「アオのハコ」オープニングテーマ。ストリーミング数がランクインしておらず、出だしとしてはまだベスト10下位からのスタートですが、今後、ロングヒットとなっていくのでしょうか。

続いてロングヒット曲ですが、まずはこっちのけんと「はいよろこんで」は、先週ベスト3目前まで行きましたが、今週は残念ながら6位にダウン。ダウンロード数は3位から8位、動画再生回数は3位から4位にダウン。ただストリーミング数は8位から7位と若干のアップとなっています。これでベスト10ヒットは12週連続となりました。

back number「新しい恋人達に」は今週3位から8位にダウン。ダウンロード数は5位から19位に大幅ダウン。ただ、ストリーミング数は先週から2位をキープしています。これでベスト10ヒットは通算10週目に。

そしてCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」も5位から9位にダウン。ただストリーミング数は5週連続の5位をキープしています。これで38週連続のベスト10ヒットになりました。

一方、今週は先週7位だったOmoinotake「幾億光年」は12位にダウン。ベスト10ヒットは通算32週で再びストップとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHoa Albums&各種チャート!

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2024年10月 8日 (火)

バラエティーの増した3作目

Title:This Is How Tomorrow Moves
Musician:beabadoobee

イギリスのシンガーソングライター、beabadoobee(ビーバドゥービー)の3枚目となるニューアルバム。デビュー作「Fake It Flower」からいきなり話題となりブレイク。2022年にはサマソニにも来日し、話題となりました。そして本作では初の全英チャート1位を獲得。さらなる飛躍を果たしたアルバムとなりました。

もともと彼女は、90年代オルタナ系ロックからの影響を公言しており、デビュー作もその方向性に沿ったアルバムになっていました。ただ一方、2枚目となる前作「Beatopia」ではギターロック路線からポップ路線に大きなシフト。その後の方向性にも注目を集めました。

そしてリリースされた3作目。結果としては前作を踏襲するポップ路線のアルバムになっていました。もっと言えば、楽曲のバリエーションは増えて、ロックというよりもポップスシンガーであることを前に押し出したような作風に。売上面では前作はデビュー作を上回っただけに、その路線を続けるということなのでしょう。

とはいえまず序盤は、基本的に彼のルーツであるギターロック路線の楽曲からスタートしています。哀愁たっぷりのギターロック「Take A Bite」からスタートし、続く「California」は、まさに90年代のグランジ系のサウンドを踏襲したギターロック路線。ミディアムチューンの「One Time」も力強いバンドサウンドが特徴的な楽曲となっています。

 ただ、楽曲の雰囲気が変わるのは中盤以降。ピアノも入ってレトロ調のポップスとなっている「Real man」に、フォーキーな「Tie My Shoes」。さらに「Girl Song」はピアノの弾き語りでしんみり聴かせるナンバーに、トラッド風の「Ever Seen」やメロウでけだるい、南国風のサウンドが特徴的な「A Cruel Affair」と、様々な作風の曲が展開していきます。

アルバムとしては非常にバラエティーの飛んだ作風となっているのですが、ただそれでもアルバム全体として統一感があり、強い魅力を感じさせるのは、やはり彼女の最大の魅力であるポップでキュートなメロディーラインがあるからでしょう。先行シングルにもなっている「Coming Home」は、まさにそんなキュートなポップが魅力的なアコースティックのナンバーになっていますし、特にアルバム終盤の「The Man Who Left Too Soon」「This Is How It Went」はアコースティックベースのシンプルなサウンドをバックに、キュートでメロディーラインが特徴的な曲で締めくくられており、アルバムを聴き終わった後、そんなイメージをより強く印象付ける構成になっていました。

ギターロックという統一感のあったデビュー作などに比べると、アルバムの統一感が薄れた影響でちょっと最初、地味という印象も抱く作品になっていました。ただ、キュートなメロはやはり大きな魅力で、何度か聴いてみると、優れたポップアルバムということに気が付きました。いい意味で万人受けするポップ路線の楽曲が並んでいますので、洋楽を普段聴かないようなリスナー層にもアピールできそうなポピュラリティーがあります。サマソニにも出演しましたし、日本でももっと知名度があがっていいように感じるシンガー。個人的にデビュー作のようなギターロック路線のアルバムをまた聴きたいとは思ってしまうのですが・・・これはこれで魅力的な傑作でした。

評価:★★★★★

beabadoobee過去の作品
Fake It Flowers
Beatopia


ほかに聴いたアルバム

Milton+esperanza/Milton Nascimento&Esperanza Spalding

ジャズベーシストであり、グラミー賞受賞歴もあるエスペランサ・スポルディングと、「ブラジルの声」という異名を持つ、ブラジルを代表するシンガーソングライター、ミルトン・ナリメントが組んでリリースしたアルバム。ピアノやフルート、アコースティックギターなど、アコースティックな楽器をベースに、ジャジーでメロウに聴かせる歌が魅力的。基本的にエスペランサがメインボーカルを取っているものの、ミルトン・ナリメントは御年80歳ながらも、さすが「ブラジルの声」という異名を持つ彼だけに、いまなお力強く、そしてセクシーな魅力を感じさせるボーカルを聴くことが出来ます。ジャズをベースに、ちょっとラテンの要素も入った音楽性も独特でユニーク。コラボの相性の良さも感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

3rd Shift/J.U.S.×SQUADDA B

Jus_3rd

アメリカはデトロイトのラッパー、J.U.Sと、同じくアメリカ・オークランドのラッパーでプロデューサーのSQUADDA Bによるコラボアルバム。ダークでメランコリックなトラップベースのリズミカルなトラックに、ダウナー気味ながらもリズミカルなラップが重なるスタイル。全14曲で28分という短さもあって、いい意味でサクサク聴ける内容になっており、ポピュラリティーも十分。テンポよいリズムとラップの楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

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2024年10月 7日 (月)

コミカルさも感じるテクノが心地よい

Title:DONGRHYTHM
Musician:どんぐりず

最近、注目を集めているエレクトロユニット、どんぐりず。2022年にはフジロックに初出演。深夜時間帯にも関わらず、入場制限が生じるなど、大反響を巻き起こしたそうで、その後もサマソニなどに出演し、大きな話題を呼びました。メンバーはラッパーの森とトラックメイカーのチョモの2人組ユニット。本作が4作目となるオリジナルアルバムとなります。

このアルバムに最初に出会ったのは、実は某タワーレコードの試聴機コーナー。最近では、CDショップに行く回数もめっきり減ってしまったのですが、行って、試聴機コーナーでいろいろと聴いてみると、今でもよくおもしろそうなアルバムに出会うのですが、本作は、なにげなく試聴してみた1枚が、かなりのヒットだった作品。名前だけはどこかで聴いたような・・・程度の認識だったのですが、今回はじめてアルバムを聴いてみました。

楽曲は、ジャンル的にはテクノ、ハウス。リズミカルなビートを全編に聴かせる、あえて言えばかなり王道的、ストレートな作風といった感じ。基本的にはエレクトロのビートに森のラップが加わるようなスタイル。サウンドやメロディーラインは至ってポップでどこかコミカルさも感じられます。

このどこかユーモアさを感じさせるテクノミュージックというスタイルは比較的広い範疇で、電気グルーヴとの類似性も感じさせます。実際、「Onsen」は、歌詞やメロディーの節回しも含めて完全に電気グルーヴっぽい感じになっており、正直、人によっては怒る人も出てくるかも・・・・・・。

ただ、電気グルーヴっぽい楽曲はこの曲くらいで、他の曲に関しては、例えば「Hacha Mecha」はどちらかというとUNDERWORLDっぽさを感じさせるテクノチューン。ただ、和風な横笛の音色がここに加わっているのがユニークな作風に。「bingo bango bongo」もタイトルそのまま、ラテン風のリズムがユニークな作品に。「Rapa Dan Dan」はスペーシーなエレクトロチューンと、バリエーションも感じさせます。また、電気グルーヴとの比較という観点で言えば、ラッパーがユニットに入っているように、基本的にはエレクトロのトラックとラップという組み合わせとなっており、その点も大きな違いでしょうか。個人的には主に2000年代に活動していたヒップホップユニット、アルファに近いような雰囲気も感じました。

ポップでコミカルなエレクトロチューンがとにかく楽しく、インパクトも十分。難しいこと抜きに楽しめるアルバムでした。正直、まだサウンド的にいろいろと挑戦している感もあり、前述のように電気グルーヴやUNDERWORLD、アルファとの類似性が感じられるように「これがどんぐりずの音だ!」とはっきりと確立したものはまだ完成されていない部分もあります。ただ、逆にだからこそ、まだまだ伸びしろを感じられるユニット。確かに各所で注目のグループとして名前があがるのも納得の1枚でした。

評価:★★★★★

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2024年10月 6日 (日)

James Blakeらしい楽曲にHIP HOPの要素をプラス

Title:Bad Cameo
Musician:James Blake,Lil Yachty

Badcameo

イギリスのエレクトロミュージシャン、James Blakeの最新作。デビュー作「James Blake」が大きな話題となり一躍ブレイクした後、最近では2019年にリリースした「Assume Form」がグラミー賞にノミネート。現時点での最新アルバム「Playing Robots into Heaven」も、原点回帰的な傑作アルバムに仕上がっていました。

そんな彼の最新作は、アメリカのHIP HOPミュージシャン、リル・ヨッティとのコラボレーションアルバム。彼も2018年にリリースしたアルバム「Lil Boat 2」が全米ビルボードチャートで2位を獲得するなど大ヒットを記録。昨年リリースした「Let's Start Here」も最高位9位を記録するなど、大人気のミュージシャンです。

イギリスのエレクトロミュージシャンとアメリカのHIP HOPミュージシャン・・・意外といった感じまでは受けないものの、なかなか興味深い組み合わせですが、ただ、基本的にはJames Blakeの楽曲の方向性がベースとなっている作品だったと思います。冒頭を飾る「Save The Savior」は、重厚なエレクトロサウンドをベースに、メランコリックなメロディーの流れる楽曲。リル・ヨッティのラップも加わっていますが、まずはそのJames Blakeがファルセット気味に美しく歌い上げる、その「歌」に耳がいきます。

続く「In Grey」もドリーミーなエレクトロサウンドに耳がいく、メランコリックでメロディアスな作品。「Midnight」もファルセット気味に聴かせるJames Blakeの切なくメランコリックな歌が強く印象に残ります。中盤以降も、特に「Run Away From The Rabbit」などは、静かなピアノの音が流れる中、子供のコーラスラインも入って荘厳さも感じさせる「歌」が印象的な、James Blakeらしい作風の曲になっていますし、最後の「Red Carpet」も荘厳に歌を聴かせる楽曲で締めくくり。おそらく、James Blakeが好きならば気に入りそうな、そんなアルバムになっていたと思います。

もちろん、一方ではリル・ヨッティとのコラボらしさを見せる部分ももちろん要所要所に感じられます。「Woo」などはリル・ヨッティのラップも目立つ作品で、メランコリックなJames Blakeの歌が前面に立ちつつも、リズムにはHIP HOP的な要素も感じます。また「Twice」も、同じくループするトラックにHIP HOPからの影響を強く感じさせる作品に。James Blakeのメランコリックな歌に、リル・ヨッティのラップも効果的に加わっており、コラボらしい作品となっています。

James Blakeは前作も傑作でしたし、本作についても、彼自身、目新しいスタイルを提示している感じではないものの、ドリーミーなサウンドとメランコリックなその歌は非常に魅力的。そこにリル・ヨッティのHIP HOP的な要素が程よく組み込まれており、心地のよさを感じさせる傑作に仕上がっていました。非常に程よいコラボアルバムです。

評価:★★★★★

JAMES BLAKE 過去の作品
JAMES BLAKE
ENOUGH THUNDER
OVERGROWN
The Colour In Anything
Assume From
Covers
Friends That Break Your Heart
Playing Robots Into Heaven


ほかに聴いたアルバム

Ultimate Love Songs Collection/DORIS

Ultimate-doris

日本語の情報がほとんどないので、ちょっと謎な部分も大きいのですが・・・アメリカ・ニュージャージー州出身のHIP HOPミュージシャンによる最新作。ジャンル的には「オルタナティブ・ヒップホップ」にカテゴライズされるミュージシャンのようで、49分弱という長さながらも、脅威の50曲入りというアルバム。様々なサウンドや曲がサンプリングされた楽曲が並び、日本人にもおなじみなカーディガンズ(懐かしい!)の曲もサンプリング。様々なアイディアが次から次へと展開されるようなアルバムといった感じで、ただ、全体的にはメロウな女性ボーカルの歌と男性ラッパーという組み合わせと、ループするトラックという構成がメイン。次から次へと展開していくサウンドに、最後まで耳を離せないようなアルバムになっていました。

評価:★★★★

No More Water: The Gospel of James Baldwin/Meshell Ndegeocello

ネオソウルの先駆け的存在とも言われているアメリカのシンガーソングライターによる最新作。前作「The Omnichord Real Book」ではじめて彼のアルバムを聴き、そのきっかけは、Music Magazine誌のジャズ部門での年間ベスト1位獲得だったのですが、本作はジャズというよりもソウルのアルバムといった感じ。ただ、トライバルなビートを入れてきたり、ジャジーなサウンドを入れてきたりと、バラエティーもあり一言では言い表せない複雑さがあります。一方で軸となる「歌」はソウルフルでメロウに聴かせる、比較的いい意味で広い層が楽しめそうなソウルのナンバーに仕上げており、そういう意味ではポピュラリティーとのバランスがほどよく取れたアルバムにも感じました。

評価:★★★★★

Meshell Ndegeocello 過去の作品
The Omnichord Real Book

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2024年10月 5日 (土)

60年代ブリティッシュ・ロックの奥深さを知る

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

MUSIC MAGAZINE増刊のアルバム・セレクションシリーズの最新作。「60年代ブリティッシュ・ロック」。同シリーズは音楽雑誌の「ミュージック・マガジン」の増刊として発行しているディスクガイドの1冊。当サイトでもいままで何度か紹介してきましたが、最新シリーズは音楽評論家の大鷹俊一監修により、タイトル通り、60年代のイギリスのロックのアルバムを紹介する1冊となっています。

基本的にはディスクガイドとして非常にオーソドックスな1冊。本書に限らず、当シリーズは同じような構成なのですが、前半はミュージシャン毎にコーナーが設けられ、各ミュージシャンの略歴と代表的なアルバム数枚の紹介。ここではビートルズ、ストーンズにはじまり、キンクスやTHE WHO、ジミヘンやCREAM、ピンク・フロイドにキング・クリムゾン、デイヴィット・ボウイまで60年代イギリスの代表的なミュージシャンがズラリと並びます。ジミヘンはアメリカのミュージシャンですが、デビューはイギリスなのでこちらの枠組みということなのでしょう。

後半は1960年から1969年までのアルバムを、1年毎に区切ってリリース順に紹介。こちらにはレッドツェッペリンやエルトン・ジョンのアルバムも紹介。時代に沿ったイギリスのロックシーンの流れをつかむことが出来ます。どちらもセレクトされているミュージシャン、アルバムについては基本のミュージシャンやアルバムがしっかり抑えられており、「入門書」としてもしっかり機能するようなアルバムとなっています。

さて、本書を読んで驚かされた点が2点あります。それが、1960年代におけるイギリスのロックシーンの充実ぶりと、このわずか10年という期間のロックシーンの発展のすさまじさでした。

1960年代におけるイギリスのロックシーンの充実ぶりについては、本書のイントロダクションの冒頭に、監修の大鷹俊一自身で「60年代ブリティッシュ・シーンにはロックの魅力と秘密のすべてが詰まっている」と書いていますが、まさにその通り。ここで紹介されているイギリスのミュージシャンたちだけで、ほぼ60年代のロックシーンを語れてしまうのではないか、というほどのメンバーがそろっています。このディスクガイドでは、あらためてその事実を突きつけられて、あらためてこの時期のイギリスのロックシーンの充実ぶりに驚かされました。

これは単なる推測なのですが、イギリスという土地柄、アメリカと一定の距離があったために、アメリカで盛んになってきていたブルースやソウルというブラックミュージックを、差別的な感情なしに接することが出来、その結果、見事にブリティッシュ・ロックという形で花開いたのでしょう。もちろん、アメリカと同じ英語圏であり、歌がアメリカという巨大消費地で容易に受け入れられたという点も大きな要素なのでしょうが。

また、60年代というわずか10年でのロックの発展ぶりにも驚かされます。1960年のロックは、まさにオールディーズと呼ばれるようなシンプルなロックンロールだったのに、そこからわずか10年で、ブルースロックにサイケやプログレまで花開き、1969年にはキングクリムゾンの「In The Court Of The Crimson King」がリリースされているという発展のスピードには驚かされます。このディスクガイドで紹介されているミュージシャンやアルバムの登場が、わずか10年の間という事実には、あらためて驚かされました。

そんな本書なだけに、60年代ブリティッシュ・ロックの・・・というよりは、60年代のロックの入門書と言ってしまってもいいような1冊。アルバムの紹介も、ミュージシャンの略歴やアルバムリリースの背景にもちゃんと触れられており、その点でも入門書としてもピッタリの1冊だったと思います。あえていえば、ミュージシャンの略歴などで60年代で終わらせてしまっており、70年代以降の活躍があまり触れられていない点は、本書の性格として仕方ないとはいえ、ちょっと残念にも感じるのですが・・・。内容的にも比較的シンプルで、必要十分な知識がまとめられており、著者の好みや癖などもあまり感じられず、そういう意味でも非常にオーソドックスなディスクガイド。60年代ブリティッシュ・ロックの魅力をあらためて感じた1冊でした。

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2024年10月 4日 (金)

「お茶の間」対応(?)

Title:LOST CORNER
Musician:米津玄師

おそらく、今、もっとも日本で一番勢いのあるミュージシャンの一人である米津玄師の、約4年ぶりとなるニューアルバム。その充実ぶりは本作に収録されている曲にもあらわれています。アニメ「チェンソーマン」主題歌として大ヒットを記録した「KICK BACK」に、映画「シン・ウルトラマン」主題歌「M八七」、NHK朝ドラ「虎に翼」主題歌「さよーならまたいつか!」、さらには映画「君たちはどう生きるか」主題歌「地球儀」まで。アルバム自体、全20曲というボリューム感もさることながら、うち11曲が既発表曲という内容となっています。

その既発表曲の多くがタイアップ曲という点もまた、彼の勢いをあらわしているのですが、そのタイアップ先もまた特筆すべき感があり、ウルトラマン映画に、NHKの朝ドラにジブリ映画と、完全に「お茶の間レベル」の人気と知名度を確保しているタイアップ先ばかり。そういうこともあって、今回の米津玄師のアルバムも、「お茶の間対応」な作品といった感じがします。

「お茶の間対応」な作品というと、いかにもな売れ線の無難なミュージシャンという解釈をされそうですが、そうではなく、いい意味で広い層の支持を集めそうな、インパクトがあるヒットポテンシャルのある作品ばかりという意味。朝ドラ主題歌の「さよーならまたいつか!」も、ストリングスを入れつつ、ちょっと切ないメロが耳に残るインパクト強いメロディーラインが魅力的ですし、ウルトラマン映画の主題歌「M八七」もストリングスでスケール感を出しつつ、悲しげなメロディーラインが耳に残ります。特に印象的なのは、ジブリ映画主題歌の「地球儀」で、郷愁感のあって涙腺を刺激するような歌詞とメロディーラインが耳に残ります。

かつての米津玄師といえば、ネットコミュニティー発のミュージシャンらしく、パッと聴いただけでは聴き取りにくいような早口の歌詞や、これでもかというほど詰め込んだ過剰気味なアレンジに、少々リスナーを選ぶような幻想的な歌詞の世界観が特徴的だったのですが、今の彼の曲は、そういった聴く人を選ぶような要素はほとんどありません。そういう意味でも、「国民的ミュージシャン」になったんだな、ということも強く感じます。

ただ一方で、そういうかつての米津玄師の要素が完全に消えてなくなったか、というとそうではない点もまた彼の大きな魅力でしょう。アレンジにしろメロディーラインにしろ、複雑な要素は残しており、バンドサウンドにストリングスやエレクトロサウンドの要素を加えて、時としてサンプリングもうまく使用するスタイルは、かなり凝ったものを感じます。むしろ、デビュー当初は「過剰気味」と考えられたアレンジの複雑な要素を、うまく過剰さを感じさせないバランスの良さを身に着けたと言えるかもしれません。

歌詞の世界についても、どこか虚無的な部分というか、社会に疎外されたような人々の観点を残しているというか、朝ドラ主題歌の「さよーならまたいつか」にしても、「さよなら100年先でまた会いましょう」という歌詞に、今の時代にはまだ認められないような、主人公の疎外感と、そのような中での決意のようなものを感じさせます。「お茶の間」レベルのヒット曲を連続させながらも、どこか毒のような要素が潜んでいるのも大きな魅力に感じます。

要するに、デビュー当初の米津玄師からすっかり変わってしまった・・・というよりも、デビュー当初の彼のスタイルを、広いリスナー層にも受け入れてもらうために、ちゃんと彼のコアな部分を残した上でうまく変容させた、と言っていいかもしれません。そういう点でも彼の才能、実力を感じることが出来ます。

ただし、今回のアルバム、ちょっと気になったのは、ひとつのアルバムとしてのまとまりは悪く、ともすればプレイリスト的に感じてしまう、という点でした。YOASOBIやVaundyのように、既発表曲だけを並べ、アルバムに関しては完全にプレイリスト化してしまっているミュージシャンも少なくありませんが、本作の場合、半分近くがアルバム曲であり、その点、決して既発表曲の寄せ集め、といった感じではありません。

しかし、既発表曲についてバリエーションが多すぎて、アルバム全体としてのまとまりに欠ける部分があり、結果として数多いヒット曲が目立つため、プレイリスト的に感じてしまうのでしょう。比較的、既発表曲が多かったにもかかわらず、曲順を工夫することによって、「アルバム」的になっていた先日のヒゲダンのニューアルバムとはある意味対照的といったイメージも・・・。それも、それだけ米津玄師が様々な曲調に対応できる実力を持っているから、とも言えるのでしょうが。

もっとも、そんな点を差し引いても、本作が本年度ベストクラスの傑作であることは間違いないと思います。彼の勢いと実力を存分に詰め込んだ、そんなアルバム。あらためて彼のすごさを感じさせてくれました。

評価:★★★★★

米津玄師 過去の作品
diorama
YANKEE
Bremen
BOOTLEG
STRAY SHEEP


ほかに聴いたアルバム

進撃の記憶/Linked Horizon

Sound Horizonのタイアップ用名義であるLinked Horizon。特にいままで、テレビアニメ「進撃の巨人」関連には数多くの楽曲を提供してきていましたが、本作はそんな「進撃の巨人」関連の楽曲を集めたベスト盤。これでもか、というほどダイナミックで、仰々しい楽曲が並ぶ作品なのですが、「進撃の巨人」の世界観にもマッチしている感じで、以前のアルバムは聴いていてその仰々しさに胸焼け気味になったのですが、私自身聴きなれたためか、本作に関しては、そこまで胸焼け気味にならず最後まで楽しめたアルバムになっていました。

評価:★★★★

Sound Horizon 過去の作品
Moira
Marchen
Chronology[2005-2010]
Nein
進撃の軌跡(Linked Horizon)

BIRDMAN/和田唱

Birdmanwadasho

TRICERATOPSのボーカリストによる3枚目のソロアルバム。ルーツ志向のロックンロールというトライセラのスタイルとは大きく異なり、ピアノやストリングスを取り入れたサウンドや、打ち込みを取り入れたサウンドがメイン。メロディーラインは至ってポップなのはトライセラと同様ながらも、歌詞はパーソナルな心境を反映されたものがメイン。いままでの作品以上にポップスさが増した感もあり、さらにソロアルバムらしさが増した感のあるアルバム。ただ、トライセラはこのたび、無期限の活動休止を発表。本作は、その活動休止発表前にリリースされた作品ですが、ソロとバンドの差が顕著だっただけに、バンドはバンドで活動を続けるものと思っていました。バンドが活動休止になったとなると、ソロでの次回作はバンド色の強い楽曲が入ってくることになるのかなぁ。このアルバムリリース後にバンドが活動休止というのは、ちょっと意外にも感じられる、そんなソロらしいソロアルバムでした。

評価:★★★★

和田唱 過去の作品
地球 東京 僕の部屋
ALBUM.

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2024年10月 3日 (木)

コレサワが2週連続の1位!

今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

先週のTikTokチャートで1位を獲得したコレサワ「元彼女のみなさまへ」が見事今週も1位をキープ。2週連続の1位獲得となっています。ちなみに通常のチャートだと、ストリーミング数で20位を獲得。今後のさらなるヒットもあるのでしょうか?


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も日本の男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位はNumber_i「No.I」が獲得。現在、TOBEに所属している、元King&Princeのメンバーによるアイドルグループ。本作がフルアルバムとしては1枚目のアルバムとなります。CD販売数及びダウンロード数で共に1位獲得。CDは公式サイトでの通販のみのようで、そのためオリコンチャートでは未反映となっています。

2位はWayV「The Highest」がランクイン。韓国の男性アイドルグループNCTより、中国系メンバーを集めたサブグループによる6曲入りのEP盤。CD販売数2位、ダウンロード数19位。オリコン週間アルバムランキングでは本作が初動売上6万2千枚を記録し、1位初登場。前作「Give Me That」はリリース5週目に8千枚を売り上げて5位にランクインしており、その時の売上を大きく上回る結果となっています。

3位は三枝明那「UniVerse」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数9位。バーチャルYouTuberグループにじさんじ所属のバーチャルライバー。本作がデビュー作となります。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。

続いて4位以下は、4位に男性アイドルグループAXXX1S「大変でエスケープ(^o^)/」が初登場。5位もスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループICExのデビューアルバム「Retro Toy Pop」がランクイン。6位には、こちらもバーチャルYouTuberさくらみこ「flower rhapsody」がランクイン。8位にはメディアミックス作品「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」及び「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に登場する架空のアイドルグループ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会「どこにいても君は君」が初登場でランクイン。9位には、Mrs.GREEN APPLE「The White Lounge in CINEMA - Original Soundtrack -」が初登場。現在ヒット中の、Mrs.GREEN APPLEのライブドキュメンタリー映画「The White Lounge in CINEMA」の配信限定のサントラ盤。そして最後10位には、メイド姿で演奏する5人組ガールズハードロックバンドBAND-MAID「Epic Narratives」が初登場でランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、先週と変わらず弌誠「モエチャッカファイア」が2週目の1位獲得。特に動画再生回数では2位を獲得。今後の総合チャートでの上位ランクインも期待されます。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

ボカロチャートは、サツキ「メズマライザー」が今週も1位。これで3週連続、通算8週目の1位獲得となっています。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年10月 2日 (水)

Mrs.GREEN APPLEの快進撃は続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、ベスト100圏内に15曲同時ランクインと話題となったMrs.GREEN APPLEですが、今週も快進撃が続いています。まず大ヒット中の「ライラック」は今週も2位をキープ。ストリーミング数は15週連続、動画再生回数も3週連続の1位。これで24週連続のベスト10ヒット&通算17週目のベスト3ヒットとなりました。

また、6位には先週4位だった「familie」が2ランクダウンながらもベスト10をキープ、「ケセラセラ」も9位から8位にアップし、通算28週目のベスト10ヒットを記録。さらに今週、「ダンスホール」が20位から10位に大きくアップ。昨年1月4日付チャート以来のベスト10返り咲き。これで今週は4曲同時ベスト10ヒットという記録に。さらには11位には「青と夏」、13位に「点描の唄 feat.井上苑子」、16位に「Soranji」と、ベスト20圏内に今週も7曲同時ランクインという結果になっています。

ただ、今週1位は旧ジャニーズ系。1位はHey!Say!JUMP「UMP」が獲得。CD販売数1位、ラジオオンエア数6位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上21万6千枚で1位初登場。前作「DEAR MY LOVER」の初動24万2千枚(1位)からダウンしています。

3位はback number「新しい恋人達に」が先週から同順位をキープ。ダウンロード数は4位から5位にダウンしたものの、ストリーミング数が3位から2位にアップ。これで通算9週目のベスト10ヒット&通算4週目のベスト3ヒットとなrました。

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲がゼロ。代わりに、あと1曲、ベスト10返り咲き曲がありました。それが10位の米津玄師「さよーならまたいつか!」。先週のベスト20圏外から一気にランクアップ。5月22日付チャート以来、19週ぶりのベスト10返り咲きとなります。特にダウンロード数がベスト20圏外から4位、動画再生回数も20位から5位と一気にアップ。9月27日で、本作が主題歌となっていたNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」が最終回を迎えた影響でしょう。また、18日には、「虎に翼×米津玄師スペシャル」というスペシャル番組が放送された影響も大きそうです。

他のロングヒット曲は、まずこっちのけんと「はいよろこんで」が7位から4位にアップ。これで11週連続のベスト10ヒットになります。ダウンロード数は9位から3位にアップ。ストリーミング数は先週と変わらず8位をキープ。動画再生回数も先週から変わらず3位。ベスト3ヒットを伺う位置となってきましたが、ただその割にはストリーミング数が伸び悩んでいる感も・・・。

5位にはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が先週の6位から再びアップ。こちらもストリーミング数は4週連続の5位、動画再生回数も3週連続の4位となっています。これで37週連続のベスト10ヒットとなります。

Omoinotake「幾億光年」も先週の8位から7位にアップ。こちらもストリーミング数は6週連続の4位をキープ。これで通算32週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年10月 1日 (火)

すごみを感じる最期のパフォーマンス

Title:Opus
Musician:坂本龍一

昨年3月、71歳で惜しまれつつこの世を去った音楽家、坂本龍一。本作は、今年4月に公開された、彼のコンサート映画の音源を収録したアルバム。2022年9月に、彼が「日本でいちばん音のいいスタジオ」と評する東京のNHK509スタジオで、ヤマハのグランドピアノのみで演奏された模様を収録したものとなります。

もともと、本作の一部は2022年の12月にピアノソロコンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022」としてオンライン配信されました。私もその時、リアルタイムで鑑賞し、その感想を当サイトにもアップしています。今回の作品はいわばその時のライブの完全版。本作収録の20曲中12曲は、オンラインライブで配信済。8曲については、この映画で初公開となっています。

本作で、やはりまずは注目したいのはその選曲でしょう。本作を収録した段階で、これが最期であることを意識したパフォーマンスとなっていた訳ですが、選曲は彼の音楽活動を総括する形で、彼自身が選曲した20曲。それだけに、その選曲にも深い意味を感じられます。例えば本作の冒頭を飾るのが「Lack Of Love」という、ドリームキャストのゲームに提供した楽曲からスタートという点で、かなり意外性のある選曲。ゲームへの楽曲提供というのも異色的な作品ながらも、とても悲しげなメロディーが印象に残る楽曲で、それだけ思い入れのある1曲ということだったのでしょうか。

この曲に限らず、比較的、知る人ぞ知る的な楽曲が並ぶ作品となっており、いわばベスト盤的な選曲とは全く異なります。ただ、その後も、「BB」は、彼が出演した映画「ラストエンペラー」の監督であるベルナルド・ベルトルッチへ捧げた1曲だそうで、2018年に亡くなった彼への弔いの1曲。さらに「for Johann」も同じく、2018年に亡くなった音楽家のヨハン・ヨハンソンへ捧げた1曲だそうで、このような選曲を行うあたりも、彼なりの活動の集大成、そしていままでかかわってきた人たちへの感謝の気持ちを感じさせます。

さらに「Aqua」は彼の愛娘、坂本美雨への楽曲。この選曲に関しても、父親としての愛情を感じられます。また、YMOのナンバーとしても「TongPoo」が選曲されています。こちらもピアノアレンジすることにより際立つメロディーラインの美しさが印象的。そして、彼の最後のアルバムとなった「12」からも「20220302 - sarabande」「20180219」も選曲。特に、「20180219」は、ピアノの弦に、様々な「異物」を挟むことによって独特の音が鳴るように仕組まれたPrepared Pianoを使用。最後の最後まで実験精神を感じられる演奏になっています。

そして、ラストから3曲前の楽曲が「Happy End」というのも、彼らしいウィットさを感じます。さらにそこから彼の代表曲ともいえる「Merry Christmas Mr.Lawrence」へ。ハイライトにこの曲を持ってくるあたりは、彼のこの曲へ関する思い入れの深さも感じさせる選曲となっていました。

全20曲、1時間36分に及ぶパフォーマンス。グランドピアノ1本で静かに聴かせる演奏が続きます。ただ、オンラインライブの時にも感じたのですが、これが最期であるということを意識したパフォーマンスは、まさに鬼気迫るもの。ピアノだけで研ぎ澄まされた演奏はシンプルながらも、いやシンプルだからこそ、耳を惹きつけて離しません。やはりそれ以上にすごいのは演奏の迫力。はっきり言って、これが最期だとはとても感じられません。ピアノのタッチも非常に力強く、衰えなどは全くありません。それだけ、このパフォーマンスにかける意気込みも感じられました。

映画は残念ながら見ることが出来なかったのですが、DVDなどもリリースされているので、機会があればそちらもチェックしてみたいところ。あらためて音楽家坂本龍一のすごさを感じされた作品でした。

評価:★★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
12
サウンドトラック「怪物」
TRAVESIA RYUICHI SAKAMOTO CURATED BY INARRITU
The Best of Tohoku Youth Orchestra 2013~2023(東北ユースオーケストラと坂本龍一)

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