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2024年9月13日 (金)

ヴィジュアル系バンドの祖

Title:ゴールデン☆ベスト Sixty Years
Musician:Der Zibet

今回も、レコード会社を超えて廉価版ベストアルバムの共通タイトルとして使われる「ゴールデン☆ベスト」シリーズの紹介。1985年にデビュー。その独特のヴィジュアルや耽美的な楽曲の世界観で、後のヴィジュアル系バンドに大きな影響を与えたと言われています。本作は、タイトル通り、デビューから1989年まで所属していたSixty Records時代の楽曲を集めた初期ベスト盤となっています。

楽曲的には、もろに80年代のギターロックといったイメージの音。アルバムの冒頭を飾る「天国へOVER-DRIVE」は典型的なビートロックの楽曲ですし、「Bad Lemon」もドラムの音に80年代的なものを感じさせる、力強いビートロックのナンバー。一方で、いかにも80年代的なニューウェーヴからの影響も顕著で、「Yo-Yo-Yo」「Blue Film」など、ニューウェーヴ風のサウンドを感じさせる曲も少なくありません。

また、後のヴィジュアル系への影響も感じさせるのは、その妖艶なボーカルスタイル。特にアルバム後半の「LOVE ME」「DANCE INTO THE MIRROR」は、その歌い方はあきらかにその後のヴィジュアル系バンドに続くスタイルに感じさせます。

その楽曲性やボーカルスタイルなど、同時期にデビューし、同じくヴィジュアル系の元祖的な存在のBUCK-TICKに近いものを感じさせます。実際、Der Zibeのボーカル、ISSAYはBUCK-TICKの櫻井敦司と仲が良かったようで、音楽的にもお互い影響を与えていた模様なので、ある意味、似ている部分があるのは当たり前なのかもしれません。

もっと言えば、「もろに80年代のギターロック」という彼らのスタイル、今の視点からすると「よくあるタイプ」と思ってしまうのかもしれませんが、むしろ彼らの方がオリジナルで、彼らの後に似たようなバンドが数多く出てきたために、そのように感じてしまうのかもしれません。また、ヴィジュアル系の祖とはいえ、その耽美的なボーカルも、後のヴィジュアル系のように、熱心なリスナー以外には抵抗感があるような、必要以上に癖のあるものではありません。良くも悪くも、後のヴィジュアル系は、彼らのスタイルのうち、その特徴的な部分を強調していったことが伺えます。

彼らは1996年に一度解散した後、2007年に再結成。コンスタントに活動を続けていたようですが、2023年にボーカルのISSAYが不慮の事故により急逝。バンドとしては活動停止という状況となってしまったようです。非常に残念ですが、そのスタイルに影響を受けたバンドは今なお数多く活動しており、その影響の大きさをうかがわせます。そんな今の日本の音楽シーンに大きな影響を与えた彼らの初期ベスト。J-POPの歴史を知るためにも最適な1枚です。

評価:★★★★

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