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2024年9月 7日 (土)

最新作は映画のサントラ盤

Title:Confidenza
Musician:Thom Yorke

ご存じRADIOHEADのボーカリスト、トム・ヨークの最新作は映画のサントラ盤。イタリアの映画監督、ダニエレ・ルケッティ監督の最新作「Confidenza」の音楽を担当し、その映画に使われた曲が収録されているのが本作となります。ちなみに、この映画「Confidenza」は残念ながら日本では一般の映画館では公開されていないようで、「信頼」という邦題がつけられて、5月に行われたイタリア映画祭でのみ公開されたようです。

映画のサントラ盤というと、どちらかというと単発的なアイディアをちりばめたような、短いインスト曲が並び、映画を見ていない人が単独で聴くとちょっと厳しい部分がある、という曲が少なくありません。今回のアルバムに関しても、正直、そういう部分もあることは否めません。全12曲入り36分という長さのアルバムで、1分代の短い曲が3曲、1分に満たない曲も1曲収録。短いインスト曲も少なくありません。ただ、それでもこのサントラ盤は、しっかりとトム・ヨークの魅力の詰まったアルバムに仕上がっていました。

1曲目の「The Big City」から、まずはトム・ヨークの本領発揮的な1曲。不気味な雰囲気ただようエレクトロサウンドにストリングスの音色が重なり、幻想的な曲調となっているこの曲は、いわばRADIOHEADの延長戦上にも感じるメランコリックさを覚える1曲。続く「Knife Edge」も静かでメランコリックな歌が印象的な歌モノの1曲。こちらも優しく聴かせるメロディーラインにトム・ヨークのメロディーメイカーとしての才が発揮されています。

中盤の同じく歌モノの「Four Ways In Time」も、メランコリックに歌い上げる歌と哀愁感漂うストリングスのサウンドが印象的。全体的にホーンやストリングスを使って、醸し出す不気味で幻想的な雰囲気が特徴的。楽曲にはアバンギャルドさを感じ、一歩間違えると一気に崩れ落ちそうな危うささを感じさせます。映画は、お互い公になると人生が壊れてしまうような秘密をお互いに打ち明けた男女の物語ということなのですが、この楽曲のスリリングさは、その映画の内容に沿ったもの、といった感じでしょうか。そしてその一方で、そんなスリリングな楽曲の中に流れるメランコリックなメロディーラインにはトム・ヨークらしさを感じます。

最後は賑やかでアバンギャルドな「On The Ledge」で締めくくり。明るい雰囲気ながらも、全体的にごちゃごちゃで崩れ去ってしまいそうな雰囲気は映画のラストともマッチするのでしょうか。最後の締めくくりとしてはまとまりがなく終わった感もあるのですが、それはそれでまた、アルバムに大きなインパクトを与えていたように感じます。

文句なしにトム・ヨークの新作として聴くべき傑作アルバム。映画のサントラ盤ですが、トム・ヨークの最新のオリジナルアルバムの1枚として考えても全く問題ない内容だったと思います。トム・ヨークらしさを存分に感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Thom Yorke 過去の作品
The Eraser Rmx
Tomorrow's Modern Boxes
Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film)
Suspiria Unreleased Material
ANIMA
Not The News Rmx EP


ほかに聴いたアルバム

Louis In London (Live At The BBC)(邦題:この素晴らしき世界~ルイ・イン・ロンドン・ライヴ・アット・ザ・BBC)/Louis Armstrong

ご存じ、ジャズ・ミュージシャンのレジェンド中のレジェンド、サッチモことルイ・アームストロング。本作は1968年7月2日にイギリスBBCで録音された、生前最後のライヴ音源。内容的に彼も相当気に入っていたようで、録音を収録したテープを友人に送り、来客があるたびに聴かせていたそうです。ただ、それだけリリースを望んでいた音源にもかかわらず、いままで音源がリリースされることはなく。彼の死から50年以上を経て、ようやく音源としてリリースされました。

おそらく誰もが知っているであろう「この素晴らしき世界」を含む、彼の代表曲が収録されている本作。ライヴ音源ということで、より自由に楽しむようなパフォーマンスが収録されているのですが、生前最後、という飾り言葉がつくアルバムでありながらも、パフォーマンスに全く衰えはなく、サッチモの、時には陽気に、時にはムーディーにしっかりと聴かせるパフォーマンスが収録されています。まあ、「生前最後」といっても、亡くなるのは、ここから3年も先の話なのですが。代表曲が多く収録されている点でも入門盤としても最適な1枚。彼のパフォーマンスが存分に楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

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