シューゲイザーシーンを網羅
Title:Still in a Dream: Story of Shoegaze 1988-1995
これはなかなかすごいボックスセットです。主に1990年にイギリスで生まれ、インディーシーンを中心に多くの支持を得て、30年以上経た今でも、脈々とその影響が続いているジャンル、シューゲイザー。そのシーンの楽曲を一堂に会した5枚組のボックスセットとなるのが本作。もともと2016年にリリースされていたのですが、今年、再プレスして再リリース。遅ればせながら、この圧巻のボックスセットを聴いてみました。
参加しているミュージシャンたちも申し分なく豪華。ボックスセットのスタートは、まさにシューゲイザーの祖とも言えるTHE JESUS AND MARY CHAINの「Rollercoaster」からスタート。その後もCocteau TwinsやThe House Of Loveといった黎明期のミュージシャンたちの曲が並び、Spaceman3やGalaxie 500といったバンドがDisc1に収録。Disc2はまさにシューゲイザー全盛期といったミュージシャンたちが並び、RIDEやChapterhouse、SWERVEDRIVERにSlowdiveといったシューゲイザーの代表格が並びます。
その後もSpiritualizedやFlaming Lips、Mercury Revといった、どちらかというとポストロックやドリームポップにカテゴライズされつつも、シューゲイザーからの影響も強いバンドも網羅。また、今回のボックスセットでは主に英米のミュージシャンたちがほとんどを占める中、英米以外のシューゲイザーバンドも収録。その中には日本からかのCOALTER OF THE DEEPERSが参加。収録曲「Charming Sister Kiss Me Dead!!」はノイジーでダイナミックなバンドサウンドにキュートなメロというシューゲイザーの王道を行くような楽曲が収録されており、他の曲と比べても、日本のバンド代表として十分にその実力を感じさせる楽曲を聴かせてくれていました。
また、シューゲイザーと一言で言っても、様々なタイプの楽曲が収録されており、その耳を楽しませてくれています。個人的に気に入ったのが、例えばA.C.Mariasの「One Of Our Girls Has Gone Missing」は、ニューウェーヴ的な打ち込みに、清涼感あふれるクリアな女性ボーカルが魅力的。THE CHARLOTTESの「Liar」も、力強いバンドサウンドに女性ボーカルのポップでキュートなメロの王道的なシューゲイザーなのですが、シンプルでポップなメロが個人的には好み。CURVEの「Drive Blind」も、ノイジーなギターサウンドに加えて、非常にグルーヴ感あふれるバンドサウンドが耳を惹きます。
FLAMING LIPSの「Talkin' 'Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To Live Forever) 」もホワイトノイズのバンドサウンドとキュートなメロといったシューゲイザーのスタイルを保ちつつ、どこかコミカルで捻くれたサウンドになっているのが彼ららしい感じ。MEDICINEの「Aruca」も破壊的でメタリックのサウンドながらも、バックのボーカルが非常にキュートでポップなこのアンバランスさもシューゲイザーの魅力といった感じでしょうか。同じようにFLYING SAUCER ATTACKの「Soaring High」も強烈な不協和音的なノイズで埋め尽くされていながらも、バックに流れるメロは至ってポップでキュートといったあたりもシューゲイザーらしさを感じます。
そんなバリエーションを感じながらも、どの曲も楽器を埋め尽くすようなノイジーなギターサウンドと、そのサウンドに隠れるようなキュートでポップなメロディーという点が共通項。ギターのホワイトノイズもメロディーラインもどちらも非常に心地よさを感じさせますし、その心地よさが直感的に多くのリスナーを魅了するからこそ、いまだにフォロワーが登場してくるような、一部で根強い支持を受け続けているのでしょう。今回も全5枚組というボリューム量ながらも、聴いていてそのサウンドとメロに終始魅了される、夢のような時間を過ごすことが出来ました。シューゲイザー好きなら文句なくお勧めのボックスセットです。
評価:★★★★★
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