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2024年9月29日 (日)

シンプルなロックチューンがカッコよい

Title:No Name
Musician:Jack White

ご存じ、Jack Whiteのニューアルバムはそのリリース方法が大きな話題となりました。彼はアメリカでサード・マン・レコーズというレコードレーベルを運営し、レコードショップも経営しているのですが、そこへ買い物に来た客の買い物袋に、こっそりとアナログ盤を入れるというサプライズな方式で新作を発表。最初、何のレコードかわからなかったファンが「ひょっとしたらJack Whiteの新作では?」とSNSで話題となり、広まっていった、というユニークな形態でのリリースとなりました。

もちろん、その後、正式なリリースに至ったわけですが、今回のアルバム、まずは非常にJack Whiteらしい新作であった、これに尽きるかと思います。ここ最近の彼は、新たなサウンドに挑戦するタイプのアルバムと、いかにも彼らしいロックな作品を交互にリリースしてきた印象があります。前作「Entering Heaven Alive」はフォーキーな作風と、新たな挑戦を感じさせる作風、前々作「Fear of the Dawn」は彼らしいゴリゴリのギターリフ主導の作品、その前の作品「Boarding House Reach」は幅広い音楽性に挑戦した作品と、アルバム毎にそのスタイルを変えてきていました。

その流れでいえば本作はまさに彼らしいゴリゴリのロックな作品を当然期待してきた訳ですが、まさに本作はその期待に違わない作品に。冒頭の「Old Scratch Blues」からして、タイトルそのままなのですが、ゴリゴリのギターリフを前面に押し出した、いかにもオールドスタイルなハードロック路線にまずはJack Whiteらしさを感じて、喝采を送ったリスナーも多いのではないでしょうか。

続く「Bless Yourself」もシャウト気味なボーカルとヘヴィーなギターリフを主導とする、いかにもなハードロックチューン。一方、3曲目の「That's How I'm Feeling」は、冒頭2曲とはちょっと方向性を変えて、ガレージロックのナンバーとなっているのですが、こちらも軽快なロックンロールなナンバーが気持ちよい、いかにもロックというナンバーとなっています。

そんな訳で、いかにもJack Whiteらしいハードロックなアルバムとなった本作ですが、今回のアルバムに関しては特に、かつて彼が所属していたThe White Stripesを彷彿とさせるルーツ回帰的な部分を指摘するCD評も目立ちます。とにかくシンプルなギターサウンドをゴリゴリと押し出したスタイルは、まさに彼の原点ともいえるThe White Stripesを彷彿とさせますし、特に、サウンドの構成としてパッと聴いた感じ、ギターとドラムスのサウンドだけが耳に飛び込んでくるようなシンプルかつ音数も最小限に留めたスタイルもまた、The White Stripesを彷彿とさせます。最初、聴いていて、「ベースレスか?」とも思ったのですが、ただ、クレジットを見る限りだとベースも入っている模様です。

その後もギターリフがいかにも70年代のハードロックを彷彿とさせるような「Archbishop Harold Holmes」や、パンクロックの色合いが強い「Bombing Out」、ブルージーなギターが印象的な「Underground」、疾走感あるギターロックはむしろ90年代以降のグランジの色合いも感じる「Number One With A Bullet」など、基本的にゴリゴリのギターサウンドを前に押し出したハードなロックナンバーという共通項ながらも、その中でも様々な要素が顔をのぞかせる点も魅力的です。

また、60年代あるいは70年代のハードロックの要素を感じさせつつも、全体的にレトロさもあまり感じません。それは微妙にパンクロックやグランジなど、ハードロック以降のロックの要素も入れているという点もあるのでしょうが、それ以上にやはり勢いのあるギターサウンドは現役感とそして若々しさを感じさせ、それがアルバムをレトロであることから遠ざけているのでしょう。バリバリに2024年のロックを奏でているアルバムとなっています。

個人的にはJack Whiteのアルバムの中でも指折りの傑作だったと思いますし、年間ベスト候補にあげられる傑作だったと思います。申し分なく、ロックの魅力を堪能できる1枚でした。

評価:★★★★★

Jack White 過去の作品
BLUNDERBUSS
Lazaretto
Boarding House Reach
Fear of the Dawn
Entering Heaven Alive

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