スマパンらしさを強く感じる原点回帰な新作
Title:Aghori Mhori Mei
Musician:The Smashing Pumpkins
2005年の再結成以降、いまひとつ、活動が断続的な状況が続いているスマパン。はじめたプロジェクトが中途半端な形になってしまったり、メンバーが脱退・加入を繰り広げていたり、不安定な活動状況が続いていたような印象を受けます。ただ、ここに来て、ようやくバンドとして軌道に再び乗り出しているように感じます。昨年は、3部作からなる壮大なロックオペラ「Atum」が無事完結。ギターのジェフ・シュローダーの脱退というニュースがあったものの、この壮大なプロジェクトからわずか1年というインターバルを経て、ギタリスト脱退という事態がありながらもニューアルバムが完成しているあたり、バンドとしていい状態であることを示しているのでしょう。
そんな今回のニューアルバムは、これぞスマパンといった感じの、いい意味でいかにも彼ららしい作品に仕上がっています。ダイナミックなギターリフでいきなり迫力満点の出だしとなる「Edin」からスタート。続く「Pentagrams」もヘヴィーなギターサウンドを前面に押し出したメタリックな作風でありつつ、これでもかというほど狂おしいようなメランコリックなメロディーラインがいかにもスマパンらしい楽曲。続く「Sighommi」も、イントロのヘヴィーなギターリフにまずはガッツポーズしたくなるような、ヘヴィーなロックチューン。このダイナミックと対照的なようなメランコリックなメロディーラインもまた、実にスマパンらしさを感じます。
今回の作品は、このように、ある種の原点回帰とも言うべき、メタル色も強いヘヴィーなギターサウンドを押し出した作風になっているのが大きな特徴。ここ最近の作品は、ヘヴィーなサウンドやメランコリックなメロというスマパンらしさはしっかり保たれていたものの、シンセやエレクトロサウンドを積極的に取り入れた作品が目立ちました。一方で本作はあくまでもダイナミックなギターリフを聴かせるヘヴィーなバンドサウンドが作品の基軸。これぞスマパンといった感じの曲が並ぶ作品になっています。
中盤の「War Dreams Of Itself」なども、まさにそんなダイナミックなギターリフが前面に押し出されたロックなナンバー。さらには終盤の「Sicarus」もヘヴィーでメタリックな楽曲と、最後までヘヴィーなギターサウンドが目立つ楽曲が続きます。一方で後半には、もっとオルタナ系ロックの色合いも強い、ポップなギターロックの曲も並び、特に「Goeth The Fall」などはメロディアスでポップ、ほどよくメランコリックさを感じさせるメロディーラインが耳を惹きます。比較的シンプルなアレンジのメロディーを前に押し出した楽曲となっており、ダイナミックなサウンドに頼らずとも、メロディーでしっかり勝負できるスマパンの魅力を感じさせます。
そしてラストを締めくくる「Murnau」はストリングスを取り入れて、これでもかというほど仰々しくダイナミックなナンバー。ある意味、最後の最後でコテコテのとんこつラーメンで締めくくるような感覚のエンディングとなるのですが、それだけに聴き終わった後、おなか一杯になるような展開。これはこれでスマパンの大きな魅力と言えるでしょう。
個人的にはここ最近のアルバムの中では最も楽しめた作品。もっと言えば、再結成後の作品の中では一番の出来の良さだったような印象も受けます。スパマンらしさを存分に楽しめると共に、彼ららしさを再認識できた傑作アルバム。昔聴いていたけど最近は・・・という方も含めて、チェックして損のない作品です。
評価:★★★★★
The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.
CYR
ATUM-actⅠ
ATUM-actⅡ
ATUM-actⅢ
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