懐かしのガールズバンド
Title:ゴールデン☆ベスト BEST FOR YOU 2024
Musician:PINK SAPPHIRE
おそらく私と同年代、アラフィフ世代にとっては懐かしい感覚を覚えるミュージシャンではないでしょうか。PINK SAPPHIRE。今となっては珍しくなくなりましたが、当時としてはかなり珍しかった、メンバー全員女性という4人組ロックバンド。もともと、バンドブームを巻き起こしたオーディション番組「いかすバンド天国」に出演し話題を呼びメジャーデビュー。1990年にデビューシングル「P.S.I LOVE YOU」が大ヒットを記録し、一躍人気バンドの仲間入りを果たしました。特に当時は同じくメンバー全員女性というロックバンド、プリンセス・プリンセスの全盛期ということもあり、両者、よく比較されていたことも記憶にあります。
本作は、各レコード会社共通タイトルとして用いられている廉価版ベストシリーズの最新作。彼女たちのシングル及びカップリング曲を中心に、彼女たちの代表曲がリリース順に並べられたベストアルバム。特にシングル曲に関してはデビュー作「P.S.I LOVE YOU」から最後のシングルとなった「クラスメイト」まで、リリース順に並べられています。
基本的に楽曲のスタイルとしてはハードロック調のバンドサウンドに対して、ポップでキャッチーなメロディーラインという、良くも悪くも「売れ線」といったスタイルが特徴的。いかにも90年代のJ-POP的なメロディーラインも耳に残ります。とはいえ、大ヒットを記録した彼女たちのデビュー作「P.S.I LOVE YOU」はやはり今聴いても秀逸。特にサビの部分は、ピッチを上下させながら徐々に盛り上がっていき、最後に一気にピッチを上げて盛り上がるという楽曲の構成は、ベタな展開とはいえ、素直にワクワクしてしまうこのメロディーラインは実に見事です。
あと、PINK SAPPHIREというバンドのイメージとして、そもそもボーカリストの塚田彩湖が、バンドとしてのデビューが決まった後にタレント事務所に所属していたタレントをボーカリストとしてつかせたという経緯もあったりして、どちらかというと「ロックバンド」というよりも「アイドル」色も強いバンドという認識がありました。ただ、今回あらためて彼女たちの楽曲をまとめて聴くと、意外とヘヴィーで骨太なバンドサウンドを聴かせてくれており、思った以上にロック色、特にハードロックの色合いの強さを感じさせます。楽曲に関しては、基本的に外部の作家に頼ることの多かった彼女たちですが、ここらへん、もともとは、決して作られたタレントの集合体ではなく、列記としたバンド出身であるという矜持も感じることが出来ました。
一方、残念ながら彼女たちの人気に関しては、その人気は永くは続きませんでした。デビュー作から4作目の「ハッピーの条件」までベスト10ヒットを続けたので、決して一発屋ではないものの、ベスト10入りしたのはデビュー翌年の1991年にリリースしたシングルまで。音源のリリースも1993年にストップ。1995年には活動休止となっています。
ただ、このベストアルバムを聴くと、なんとなくその理由はわかるような気もします。単純に、特にシングル曲に関しては「P.S.I LOVE YOU」路線の焼き直しのような曲が目立ちます。基本的に爽快でポップなギターロック路線がメイン。例えば同じガールズバンドの代表格であるプリプリの場合、大ヒットした「Diamonds」の両A面シングルとして、バラードナンバー「M」を提示し、バンドとしての幅の広さをアピールしましたが、彼女たちの場合、残念ながらカップリング曲はともかくとして、シングル曲として幅広い音楽性をアピールすることが出来ていませんでした。
彼女たちはその後、2014年に再結成。その後も散発的にライブを中心に活動を行っていたようですが、2023年にギターの鈴木孝子が56歳という若さでこの世を去り、バンドとしての活動は完全にストップしてしまったようです。非常に残念ではあるのですが、ただ、このようなベストアルバムのリリースからもわかるように、彼女たちの残した楽曲は今後も残り続けるでしょう。活動期間は短いバンドでしたが、その楽曲のインパクトは強く、アラフィフ世代にとってはとても懐かしさを感じるアルバムでした。
評価:★★★★
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