音の向こうに風景が広がるような
Title:熱のあとに Original Soundtrack
Musician:岡田拓郎
バンド「森は生きている」の活動が大きな注目をあつめ、同バンド解散後も、ソロとしてリリースされたアルバムがいずれも高い評価を獲得。現在、もっとも注目をあつめているソングライターの一人ともいうべき岡田拓郎。非常に高い評価を受けた前作「Betsu No Jikan」から約2年を経てリリースされた新作は、山本英監督による映画「熱のあとに」のオリジナルサウンドトラック。全6曲入り30分強の内容になっていますが、内容的には劇伴音楽にとどまらない、岡田拓郎の魅力を感じさせる新作となっていました。
アルバムの1曲目はまず、タイトルチューンとも言える「After the Fever(Theme)」からスタート。ジャジーなドラムのリズムをバックに、ピアノとサックスで聴かせてくれるメロディーラインは優しくメランコリックながらも、どこか独特のフレーズを感じさせ、耳が惹きつけられます。
「Lake」はタイトル通り、湖のほとりで静かにたたずむ姿を彷彿とさせる、こちらは劇伴音楽らしい静かな楽曲。ただ、時折入るシンセの音色が美しく、静寂感が強い印象にの折る作品に。「Planetarium」も静かなピアノとサックスのメロディーが美しい楽曲。「プラネタリウム」というタイトルの通り、満天の星空の下で奏でられる音楽のよう。「Tunnel」もピアノとジャジーなサックスも美しい、メランコリックに聴かせるナンバー。メロディアスなサックスのフレーズが心地よく流れています。
そしてアルバムのハイライトとも言うべきなのは最後の「After the Fever(Long Version)」。16分にも及ぶこの曲は、ピアノとサックス、そしてドラムのリズムでジャジーに美しく聴かせてくれる楽曲ですが、楽曲の中で川のせせらぎのように流れていくピアノとサックスの音色が非常に心地よく、16分間、そのサウンドに心地よく身をゆだねられる、そんな楽曲となっています。
今回は映画のサントラ盤ということもあって、岡田拓郎として新たな実験を行う、といった感じのアルバムではありません。基本的にはピアノやサックス、ウッドベースにドラムを用いてジャジーなサウンドを構築している楽曲が並ぶ作品に。前作に引き続き、ジャズ色の強いアルバムにはなっていましたが、バリエーションについても、そんなに「富んだ」といった感じのアルバムではありません。
ただ、とはいっても作品的にはしっかりと岡田拓郎の魅力の詰まったアルバムになっていたと思います。メロディアスな作風はやはり耳を惹きますし、シンプルなメロディーやサウンドながらも、どこか独特のフレーズが印象に残るような楽曲に。いずれの曲も音の向こうになにか風景が広がってくるような作品になっており、目をつぶりながら音楽の世界に心地よく浸ると、目の前に風景が広がってくるかのよう・・・そんな魅力あふれるアルバムになっていました。
映画のサントラといえ、しっかりと岡田拓郎のニューアルバムとして位置付けても過言ではない作品になっていたように思います。次のオリジナルアルバムにも非常に期待が持てるところですが、まずはこの作品で、彼の世界を味わいたいところ。あらためて彼の実力を感じさせてくれた作品でした。
評価:★★★★★
岡田拓郎 過去の作品
ノスタルジア(Okada Takuro)
Morning Sun
都市計画(Urban Planning)(Okada Takuro+duenn)
Betsu No Jikan
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