谷村有美としてのスタイルを確立
Title:Face(2024 Remaster)
Musician:谷村有美
今年、谷村有美が過去のアルバムのリマスター版を順次、LPとCDでリリースしています。6月にはデビューアルバム「Believe In」のリマスター版がリリースされ、当サイトでも紹介しましたが、本作はその第2弾。1988年にリリースされた彼女の2枚目となるアルバムが、リマスターとしてリリースされました。
前作「Believe In」はデビュー作からボーカリストとしてのスタイルを確立させている作品と書きました。それに対してこの2枚目となるアルバムは、これ以降の谷村有美の楽曲のイメージ、90年代のガールズポップというスタイルを確立させた作品と感じました。
彼女の楽曲のスタイルを紹介するときによく用いられるこの「ガールズポップ」というイメージ。特に90年代の女性シンガーに対してよく用いられてきた言葉なのですが、基本的に「ミュージシャン」という立ち位置ながらも、アイドル的人気の高かったシンガーに用いられました。彼女がデビューした90年代は、80年代までの飽和したアイドルブームが崩壊した、いわゆるアイドル冬の時代。男女問わずアイドルという存在は全く売れなくなり(ジャニーズ系も例外ではありませんでした)、むしろ若い世代には「アイドルを聴く=ダサい」的なイメージすら持たれていた時代でした。
ただ一方で、そうとは言ってもやはりアイドル的な存在を求めるのが人の常。そんな中で登場したのは、ミュージシャンという立ち位置ながらもアイドル的なルックスを持ったシンガーたち。アイドルを聴くのは抵抗があるけれども・・・という若いリスナー層に広く受け入れられました。そんな中で谷村有美はそんなガールズポップ勢の代表格。他にも永井真理子や遊佐未森あたりが代表格でしょうか。広い意味では渡辺美里もカテゴライズできたかもしれません。
特に谷村有美のガールズポップ的な楽曲のイメージと言えば、明るく爽快で軽快なJ-POPチューン。本作でいえばまさに1曲目の「生まれたての朝」がドンピシャといった感じ。明るく軽快、彼女のキュートなボーカルが生かされた軽快なJ-POPチューンでありつつ、同時にアイドルソングのようなボーカリストの「かわいさ」に必要以上に焦点をあてたものはない、本作は谷村有美本人が作詞作曲を手掛けているによう、第三者の作家による楽曲ではなく、シンガーソングライターの楽曲である、という点に特徴づけられるポップチューンに仕上がっています。
他にも軽快なシンセのサウンドがいかにも90年代的な「FEEL ME」も同じく、いかにもガールズポップといった感じの明るいポップチューン。一方では、前作でシティポップ路線を強く感じさせた彼女でしたが、今回のアルバムでも「Tonight」のように、シティポップ風な作風も聴かせてくれており、前作からのイメージもしっかりと維持していました。
そんな彼女の今後のスタイルを確立させた本作。ちなみにアナウンスはされていませんが、シークレットトラックは本作も収録されており、「朝は朝 嘘は嘘」のピアノ弾き語りバージョンを収録。こちらは、今の彼女による歌でしょうか?そうだとしたら、今も変わらず魅力的なボーカルを聴かせてくれています。
リマスター企画第2弾となった本作。11月には3枚目「Hear」のリマスターも予定されており、この企画はまだ続くのでしょうか。あと、特に今回、彼女のデビューから区切りのよいタイミングではないのに、なぜ、リマスター企画?ちょっとうかった見方になるけれど、3年ほど前、彼女の旦那が、彼女へのDV行為で逮捕されるというニュースが騒がれました。もしこのリマスター企画をスタートに、徐々にミュージシャンとしての仕事を再開・・・となると、当然考えられるのは??
評価:★★★★★
谷村有美 過去の作品
タニムラベスト
Believe In(2024 Remaster)
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2024年」カテゴリの記事
- コミカルさも感じるテクノが心地よい(2024.10.07)
- 「お茶の間」対応(?)(2024.10.04)
- すごみを感じる最期のパフォーマンス(2024.10.01)
コメント