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2024年9月24日 (火)

暖かさを感じる

Title:On the shore
Musician:踊ってばかりの国

前作「Paradise review」はミニアルバムでしたので、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる踊ってばかりの国のニューアルバム。「渚にて」と名付けられた今回のアルバムは、ジャケットの海辺で飛び跳ねる子供の写真も印象的なアルバムとなっています。

踊ってばかりの国といえば、サイケなサウンドと、そんなサウンドと対照的とも言えるポップなメロディーラインが特徴的なバンドですが、今回のアルバムに関して言えば、このキュートさすら感じるポップなメロディーラインが大きな魅力に感じました。特に印象的だったのが「Au te amour」。レトロポップな雰囲気も感じさせるこの曲は、非常にキュートで切ないメロが強い印象に残る楽曲。「サテン」も美しくメランコリックなメロディーラインが印象的なナンバー。「燈」も暖かさを感じさせるメロディーラインを切なく聴かせてくれる楽曲となっています。

もちろん、このキュートなメロディーラインというのはいままでの彼らの作品でも聴くことが出来ます。ただ、今回の作品で特にこのメロが目立った理由としては、やはり本作のテーマ性に大きな影響があるようにも感じます。今回のアルバムのテーマについて、ギターボーカルの下津光史はWebメディアのインタビュー「都会で暮らす人に向けて『海に逃げてもいいんやで』というのがテーマ」と語っています。実際、このテーマ性は「Au te amour」でストレートに「この街を抜け海へと出かけようよ」と歌われています。

先のミニアルバム「Paradise review」は「死」を意識したような歌詞が多かったので、その点では前作とは全く異なる方向性の歌詞と言えるかもしれません。実際、「Au te amour」を含めて、全体的に暖かい雰囲気の歌詞が多く、街の中で疲弊してしまう私たちを、生命の源である海へと導こうとする、やさしさや暖かさ、包容力のようなものを感じます。そんな暖かさが、キュートなメロディーラインに反映されているからこそ、このメロがより前に押し出されているように感じたのでしょう。

とはいえ、今回の作品についても踊ってばかりの国らしい、サイケなサウンドは健在。サイケでドリーミーな「H2O」や、微妙にゆがんだギターサウンドがサイケさを醸し出す「ビー玉」など、彼ららしいサイケでドリーミーなサウンドはアルバムの要所要所に流れています。ドリーミーでポップながら、どこか引っ掛かりのある独特な音楽性は今回のアルバムでももちろん健在でした。

相変わらず独特なポップチューンを奏でる踊ってばかりの国。フルアルバムとしてはちょっと久々のアルバムとなりましたが、今回ももちろん傑作に仕上げてきました。文句なしいおすすめの1枚です。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS
君のために生きていくね
光の中に
moana
Paradise review

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