いかにも80年代という時代を感じる
Title:ゴールデン☆ベスト 1986-1989 MOON YEARS
Musician:CADILLAC
複数のレコード会社が共同で使用している廉価版ベストシリーズ、ゴールデン☆ベスト。そのミュージシャンの代表曲が、CD1枚もしくは2枚程度のボリュームで網羅されているため、入門盤としてはピッタリのシリーズ。今回紹介するのは1980年代に活動していた3人組ロックバンド、CADILLACのベストアルバムです。
といっても、CADILLACというバンド、音源を聴くのもはじめてなら、名前を聴くのも完全にはじめて。1982年に結成し、1986年にシングル「悲しきRadio Station」、アルバム「キャディラック」でデビュー。1987年にはシングル「青春のあいうえお」がTBS系ドラマ「毎度おさわがせします3」の挿入歌に起用、さらにシングル「NO NO NO」が同じくTBS系ドラマ「オヨビでない奴!」の主題歌にも起用。当時はレコード会社的にもかなり「売ろう」としていたことを感じさせます。
ただ、残念ながら大ブレイクには至らず。オリコンの情報によると、デビュー作「悲しきRadio Station」は最高位27位と、デビュー作としてはそこそこ好調なスタートを切ったようですが、ドラマ挿入歌となった「青春のあいうえお」も最高位21位と、そこそこのヒットは記録したものの大ヒットには至っていません。結果、1989年にシングル7枚、アルバム5位をリリースして解散。ただ、2007年には再結成し、アルバムもリリース。現在もライブを中心に活動を続けているようです。
今回のゴールデン☆ベストでは、彼らの代表曲を網羅。アルバム未収録だった「先生!あんた踊れるか?」「NO NO NO」も収録されています。ジャケット写真からもわかるように、不良性を前に出してきた、いかにも風貌のロックンロールバンドといった感じで、特に髪型については若干の時代性も感じさせます。
楽曲的には昔ながらのロックンロールの影響を感じさせる楽曲。「holiday」や「キャロライン」などはいかにもオールドファッションなロックンロールやロカビリーの影響を受けたを聴かせてくれています。ただ一方で、パッと聴いた感じだと、ロックンロールやロカビリーという色合いよりも歌謡曲の色合いを強く感じます。ドラマ主題歌となっている「NO NO NO」などはまさに典型で、ロックンロールの影響を感じさせつつも、メロディーラインはもろに歌謡曲。「青春のあいうえお」もまた、哀愁感漂うメロディーラインはいかにも歌謡曲的です。
おそらく、80年代という時代により、今よりルーツ志向を前に押し出すことが出来ず、また、事務所的に売ろうとしているスタンスがあるため、必要以上に歌謡曲的になってしまっているような印象を受けます。おそらく、様々なタイプの曲がヒットするようになってきた今だったら、もっとロックンロール色を押し出したような作品がリリースできたのではないか、と残念には感じてしまいます。
メジャーデビューから最初の解散までがわずか3年と短かったことも含めて、正直、業界に翻弄されちゃったのかな、ということも感じます。もっとも、それを含めて彼らの実力だった、と言われると否定はできないのですが。全体的に80年代という時代を感じさせる楽曲にはある種のなつかしさも感じるベスト盤でした。
評価:★★★★
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