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2024年9月

2024年9月30日 (月)

圧巻の本物P-Funk

PARLIAMENT FUNKADELIC Feat.GEORGE CLINTON LIVE IN JAPAN 2024

会場 ダイアモンドホール 日時 2024年9月19日(木)19:00~

今回は大レジェンドのライブに足を運んできました。P-Funkというジャンルを作り出し、その後のミュージックシーンに大きな影響を与えたミュージシャン、ジョージ・クリントンと、彼が率いるバンド、PARLIAMENTとFUNKADELIC。その来日公演が行われるということで足を運んできました。会場はダイアモンドホール。正直、現役バリバリのバンドではないだけに、会場は比較的余裕があるのではないか、と予想していたのですが、これが予想外に会場はほぼ満員!日本でも多くの根強いファンがついていることが実感できます。

Parliament_live_1

19時10分頃に会場にメンバーは登場。ステージ上に立っているメンバーは総勢11~12名という大所帯のステージ。ステージ中央にジョージ・クリントン御大という並びになっており、ライブがスタート。最初は「(Not Just) Knee Deep」で大所帯からなる爆音とファンキーなグルーヴで会場を沸かせます。

次にはいきなりMCへ。もちろん英語だったのですが、挨拶代わりのMCなので、比較的言っていることはわかりやすく・・・まずはなんといってもジョージ・クリントンの紹介。会場は多いに盛り上がります。

そして序盤からFunkadelicの代表曲とも言える「One Nation Under a Groove」へ。ここらへんからは続けざまに次々と曲が展開。Parliamentの「Flash Light」やFunkadelicの「Pole Power」「Meow Meow」などといったナンバーが次々と展開していきます。

Parliament_live_2

↑のように、会場はほぼ満員。会場を包み込む爆音と、ファンキーなリズムに会場は大盛り上がりでした。

中盤はバンドメンバーのソロシーンも。ギターやドラムスのソロに、ホーンセッションのソロや女性コーラスもソロでその力強いコーラスを聴かせてくれます。メンバーが多いだけに、このソロパートはかなり長い時間が費やされたのですが・・・最初から最後までテンションが下がらず、会場の盛り上がりは続きます。

Parliament_live_3

↑ギターは、ユニークな被り物をかぶっての登場。力強いギターソロを聴かせてくれます。

中盤は「P. Funk (Wants to Get Funked Up)」から、「All Your Goodies Are Gone」ではピアノで弾き語りのシーンも。ただ、続く「Maggot Brain」は、サイケなギターノイズでこれでもかというほどの爆音を聴かせてくれたのですが・・・正直言って、あまりにも音が大きすぎ、さらには音の状態もあまりよくなく、正直、ちょっと厳しかった・・・。

終盤、特に盛り上がったのは「Jump Around」で、文字通り、観客全員をジャンプさせて会場は大盛り上がりを見せます。その後も「Atomic Dog」や「Red Hot Mama」と続き、ラストは「Up for the Down Stroke」で締めくくり。終了時間は21時15分。約2時間15分のステージでした。

Parliament_live_4

とにかく、大所帯でのこれでもかというほどの爆音とファンキーなリズムが楽しめたステージ。ただ、正直、中盤から後半にかけて、あまりにノイジーな爆音のサウンドは、さすがにちょっと厳しかったかも・・・。ダイホの音もそれほどよくなかったように思いましたし・・・。これが野外の会場だったら、このくらいの爆音がちょうどよかったかもしれないのですが、ちょっと厳しく感じてしまいました。

ただ、その点を除けば、これが本物のP-Funkか、と圧巻させられたステージ。特にジョージ・クリントンは、さすがに座っている時間も長かったのですが、たびたび立ち上がってはライブを盛り上げて、御年83歳とは思えない、パワフルで元気なパフォーマンスを見せてくれました。その年齢を感じさせない元気な姿には驚きです。

最初から最後まで盛り上がる、ファンクの楽しさを体現できたステージでした。ただ、音量のバランスはもうちょっと考えてほしかったかも・・・その点は残念だったのですが、2時間があっという間に過ぎた、素晴らしいステージ。ジョージ・クリントン御大はいつまでのお元気で!!

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2024年9月29日 (日)

シンプルなロックチューンがカッコよい

Title:No Name
Musician:Jack White

ご存じ、Jack Whiteのニューアルバムはそのリリース方法が大きな話題となりました。彼はアメリカでサード・マン・レコーズというレコードレーベルを運営し、レコードショップも経営しているのですが、そこへ買い物に来た客の買い物袋に、こっそりとアナログ盤を入れるというサプライズな方式で新作を発表。最初、何のレコードかわからなかったファンが「ひょっとしたらJack Whiteの新作では?」とSNSで話題となり、広まっていった、というユニークな形態でのリリースとなりました。

もちろん、その後、正式なリリースに至ったわけですが、今回のアルバム、まずは非常にJack Whiteらしい新作であった、これに尽きるかと思います。ここ最近の彼は、新たなサウンドに挑戦するタイプのアルバムと、いかにも彼らしいロックな作品を交互にリリースしてきた印象があります。前作「Entering Heaven Alive」はフォーキーな作風と、新たな挑戦を感じさせる作風、前々作「Fear of the Dawn」は彼らしいゴリゴリのギターリフ主導の作品、その前の作品「Boarding House Reach」は幅広い音楽性に挑戦した作品と、アルバム毎にそのスタイルを変えてきていました。

その流れでいえば本作はまさに彼らしいゴリゴリのロックな作品を当然期待してきた訳ですが、まさに本作はその期待に違わない作品に。冒頭の「Old Scratch Blues」からして、タイトルそのままなのですが、ゴリゴリのギターリフを前面に押し出した、いかにもオールドスタイルなハードロック路線にまずはJack Whiteらしさを感じて、喝采を送ったリスナーも多いのではないでしょうか。

続く「Bless Yourself」もシャウト気味なボーカルとヘヴィーなギターリフを主導とする、いかにもなハードロックチューン。一方、3曲目の「That's How I'm Feeling」は、冒頭2曲とはちょっと方向性を変えて、ガレージロックのナンバーとなっているのですが、こちらも軽快なロックンロールなナンバーが気持ちよい、いかにもロックというナンバーとなっています。

そんな訳で、いかにもJack Whiteらしいハードロックなアルバムとなった本作ですが、今回のアルバムに関しては特に、かつて彼が所属していたThe White Stripesを彷彿とさせるルーツ回帰的な部分を指摘するCD評も目立ちます。とにかくシンプルなギターサウンドをゴリゴリと押し出したスタイルは、まさに彼の原点ともいえるThe White Stripesを彷彿とさせますし、特に、サウンドの構成としてパッと聴いた感じ、ギターとドラムスのサウンドだけが耳に飛び込んでくるようなシンプルかつ音数も最小限に留めたスタイルもまた、The White Stripesを彷彿とさせます。最初、聴いていて、「ベースレスか?」とも思ったのですが、ただ、クレジットを見る限りだとベースも入っている模様です。

その後もギターリフがいかにも70年代のハードロックを彷彿とさせるような「Archbishop Harold Holmes」や、パンクロックの色合いが強い「Bombing Out」、ブルージーなギターが印象的な「Underground」、疾走感あるギターロックはむしろ90年代以降のグランジの色合いも感じる「Number One With A Bullet」など、基本的にゴリゴリのギターサウンドを前に押し出したハードなロックナンバーという共通項ながらも、その中でも様々な要素が顔をのぞかせる点も魅力的です。

また、60年代あるいは70年代のハードロックの要素を感じさせつつも、全体的にレトロさもあまり感じません。それは微妙にパンクロックやグランジなど、ハードロック以降のロックの要素も入れているという点もあるのでしょうが、それ以上にやはり勢いのあるギターサウンドは現役感とそして若々しさを感じさせ、それがアルバムをレトロであることから遠ざけているのでしょう。バリバリに2024年のロックを奏でているアルバムとなっています。

個人的にはJack Whiteのアルバムの中でも指折りの傑作だったと思いますし、年間ベスト候補にあげられる傑作だったと思います。申し分なく、ロックの魅力を堪能できる1枚でした。

評価:★★★★★

Jack White 過去の作品
BLUNDERBUSS
Lazaretto
Boarding House Reach
Fear of the Dawn
Entering Heaven Alive

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2024年9月28日 (土)

懐かしのガールズバンド

Title:ゴールデン☆ベスト BEST FOR YOU 2024
Musician:PINK SAPPHIRE

おそらく私と同年代、アラフィフ世代にとっては懐かしい感覚を覚えるミュージシャンではないでしょうか。PINK SAPPHIRE。今となっては珍しくなくなりましたが、当時としてはかなり珍しかった、メンバー全員女性という4人組ロックバンド。もともと、バンドブームを巻き起こしたオーディション番組「いかすバンド天国」に出演し話題を呼びメジャーデビュー。1990年にデビューシングル「P.S.I LOVE YOU」が大ヒットを記録し、一躍人気バンドの仲間入りを果たしました。特に当時は同じくメンバー全員女性というロックバンド、プリンセス・プリンセスの全盛期ということもあり、両者、よく比較されていたことも記憶にあります。

本作は、各レコード会社共通タイトルとして用いられている廉価版ベストシリーズの最新作。彼女たちのシングル及びカップリング曲を中心に、彼女たちの代表曲がリリース順に並べられたベストアルバム。特にシングル曲に関してはデビュー作「P.S.I LOVE YOU」から最後のシングルとなった「クラスメイト」まで、リリース順に並べられています。

基本的に楽曲のスタイルとしてはハードロック調のバンドサウンドに対して、ポップでキャッチーなメロディーラインという、良くも悪くも「売れ線」といったスタイルが特徴的。いかにも90年代のJ-POP的なメロディーラインも耳に残ります。とはいえ、大ヒットを記録した彼女たちのデビュー作「P.S.I LOVE YOU」はやはり今聴いても秀逸。特にサビの部分は、ピッチを上下させながら徐々に盛り上がっていき、最後に一気にピッチを上げて盛り上がるという楽曲の構成は、ベタな展開とはいえ、素直にワクワクしてしまうこのメロディーラインは実に見事です。

あと、PINK SAPPHIREというバンドのイメージとして、そもそもボーカリストの塚田彩湖が、バンドとしてのデビューが決まった後にタレント事務所に所属していたタレントをボーカリストとしてつかせたという経緯もあったりして、どちらかというと「ロックバンド」というよりも「アイドル」色も強いバンドという認識がありました。ただ、今回あらためて彼女たちの楽曲をまとめて聴くと、意外とヘヴィーで骨太なバンドサウンドを聴かせてくれており、思った以上にロック色、特にハードロックの色合いの強さを感じさせます。楽曲に関しては、基本的に外部の作家に頼ることの多かった彼女たちですが、ここらへん、もともとは、決して作られたタレントの集合体ではなく、列記としたバンド出身であるという矜持も感じることが出来ました。

一方、残念ながら彼女たちの人気に関しては、その人気は永くは続きませんでした。デビュー作から4作目の「ハッピーの条件」までベスト10ヒットを続けたので、決して一発屋ではないものの、ベスト10入りしたのはデビュー翌年の1991年にリリースしたシングルまで。音源のリリースも1993年にストップ。1995年には活動休止となっています。

ただ、このベストアルバムを聴くと、なんとなくその理由はわかるような気もします。単純に、特にシングル曲に関しては「P.S.I LOVE YOU」路線の焼き直しのような曲が目立ちます。基本的に爽快でポップなギターロック路線がメイン。例えば同じガールズバンドの代表格であるプリプリの場合、大ヒットした「Diamonds」の両A面シングルとして、バラードナンバー「M」を提示し、バンドとしての幅の広さをアピールしましたが、彼女たちの場合、残念ながらカップリング曲はともかくとして、シングル曲として幅広い音楽性をアピールすることが出来ていませんでした。

彼女たちはその後、2014年に再結成。その後も散発的にライブを中心に活動を行っていたようですが、2023年にギターの鈴木孝子が56歳という若さでこの世を去り、バンドとしての活動は完全にストップしてしまったようです。非常に残念ではあるのですが、ただ、このようなベストアルバムのリリースからもわかるように、彼女たちの残した楽曲は今後も残り続けるでしょう。活動期間は短いバンドでしたが、その楽曲のインパクトは強く、アラフィフ世代にとってはとても懐かしさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

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2024年9月27日 (金)

谷村有美としてのスタイルを確立

Title:Face(2024 Remaster)
Musician:谷村有美

今年、谷村有美が過去のアルバムのリマスター版を順次、LPとCDでリリースしています。6月にはデビューアルバム「Believe In」のリマスター版がリリースされ、当サイトでも紹介しましたが、本作はその第2弾。1988年にリリースされた彼女の2枚目となるアルバムが、リマスターとしてリリースされました。

前作「Believe In」はデビュー作からボーカリストとしてのスタイルを確立させている作品と書きました。それに対してこの2枚目となるアルバムは、これ以降の谷村有美の楽曲のイメージ、90年代のガールズポップというスタイルを確立させた作品と感じました。

彼女の楽曲のスタイルを紹介するときによく用いられるこの「ガールズポップ」というイメージ。特に90年代の女性シンガーに対してよく用いられてきた言葉なのですが、基本的に「ミュージシャン」という立ち位置ながらも、アイドル的人気の高かったシンガーに用いられました。彼女がデビューした90年代は、80年代までの飽和したアイドルブームが崩壊した、いわゆるアイドル冬の時代。男女問わずアイドルという存在は全く売れなくなり(ジャニーズ系も例外ではありませんでした)、むしろ若い世代には「アイドルを聴く=ダサい」的なイメージすら持たれていた時代でした。

ただ一方で、そうとは言ってもやはりアイドル的な存在を求めるのが人の常。そんな中で登場したのは、ミュージシャンという立ち位置ながらもアイドル的なルックスを持ったシンガーたち。アイドルを聴くのは抵抗があるけれども・・・という若いリスナー層に広く受け入れられました。そんな中で谷村有美はそんなガールズポップ勢の代表格。他にも永井真理子や遊佐未森あたりが代表格でしょうか。広い意味では渡辺美里もカテゴライズできたかもしれません。

特に谷村有美のガールズポップ的な楽曲のイメージと言えば、明るく爽快で軽快なJ-POPチューン。本作でいえばまさに1曲目の「生まれたての朝」がドンピシャといった感じ。明るく軽快、彼女のキュートなボーカルが生かされた軽快なJ-POPチューンでありつつ、同時にアイドルソングのようなボーカリストの「かわいさ」に必要以上に焦点をあてたものはない、本作は谷村有美本人が作詞作曲を手掛けているによう、第三者の作家による楽曲ではなく、シンガーソングライターの楽曲である、という点に特徴づけられるポップチューンに仕上がっています。

他にも軽快なシンセのサウンドがいかにも90年代的な「FEEL ME」も同じく、いかにもガールズポップといった感じの明るいポップチューン。一方では、前作でシティポップ路線を強く感じさせた彼女でしたが、今回のアルバムでも「Tonight」のように、シティポップ風な作風も聴かせてくれており、前作からのイメージもしっかりと維持していました。

そんな彼女の今後のスタイルを確立させた本作。ちなみにアナウンスはされていませんが、シークレットトラックは本作も収録されており、「朝は朝 嘘は嘘」のピアノ弾き語りバージョンを収録。こちらは、今の彼女による歌でしょうか?そうだとしたら、今も変わらず魅力的なボーカルを聴かせてくれています。

リマスター企画第2弾となった本作。11月には3枚目「Hear」のリマスターも予定されており、この企画はまだ続くのでしょうか。あと、特に今回、彼女のデビューから区切りのよいタイミングではないのに、なぜ、リマスター企画?ちょっとうかった見方になるけれど、3年ほど前、彼女の旦那が、彼女へのDV行為で逮捕されるというニュースが騒がれました。もしこのリマスター企画をスタートに、徐々にミュージシャンとしての仕事を再開・・・となると、当然考えられるのは??

評価:★★★★★

谷村有美 過去の作品
タニムラベスト
Believe In(2024 Remaster)

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2024年9月26日 (木)

コレサワ、ブレイクなるか?

今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週はTikTok Weeklyから。今週1位は、先週も取り上げたのですが、コレサワ「元彼女のみなさまへ」がランクイン2週目にして1位獲得。先週まで1位だったMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」の7週目の1位を阻止しました。女性の心境をストレートにつづった歌詞が特徴的なシンガーソングライターのコレサワですが、本作は、イマカノからモノカノへのメッセージソングというのは、ありそうでなかった視点の歌詞。それが話題になったからということもあるのでしょうか、TikTokチャートで見事1位を獲得しています。これを機に、コレサワは一気にブレイクとなるのでしょうか?


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は日本の男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位はBUDDiiS「UtopiiA」。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループの2枚目となるアルバム。CD販売数で1位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上12万6千枚で1位初登場。前作「BRiLLiANT」の初動5万1千枚(2位)よりアップ。

2位初登場は西野カナ「Love Again」。結婚・出産のため活動一時休止していた彼女ですが、今年6月から活動を再開。本作は、実に約7年ぶりとなるニューアルバムとなります。CD販売数2位、ダウンロード数3位。オリコンでは初動売上9万7千枚で2位初登場。初動売上はなんと7年前のアルバム「LOVE it」の初動7万9千枚(2位)からアップ。7年というインターバルで、さらにはこの7年、CD市場がどんどん縮小していく中、この結果は驚き。女性シンガーが結婚・出産を経て活動を再開すると、得てして人気を落とすケースが多いのですが、ファン層が女性メインだと、全く影響がないということなのでしょう。あらためて彼女の根強い人気には驚かされます。

3位はTMG「TMGⅡ」が初登場。B'zのギタリスト、松本孝弘を中心に結成されたロックバンドによるアルバム。先日は松本孝弘名義でカバーアルバムをリリースしたばかりで、ソロでの積極的な活動が目立ちます。オリコンでは初動売上2万3千枚で3位初登場。直近のカバーアルバム「THE HIT PARADEⅡ」の初動2万2千枚(7位)からは微増。TMG名義では前作「TMGⅠ」の初動売上9万枚(1位)からはダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。6位初登場は日韓合同の男性アイドルグループORβIT「蘭」。本作が3枚目となるミニアルバム。8位にはスピッツ「空の飛び方」がランクイン。もともと1994年にリリースされた、彼らが「ロビンソン」でブレイクする直前にリリースされたアルバム。今回、その30周年記念盤がリリースされ、見事ベスト10入りしています。9位初登場は麻天狼「.麻天狼」。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」に登場する架空のラップグループによるアルバム。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekers Songsは、こちらも先週まで3週連続1位だったKvi Baba「Friends, Family & God (feat. G-k.i.d & KEIJU)」を下し、弌誠「モエチャッカファイア」が1位獲得。これで「イッセイ」と読む男性シンガーソングライターによる楽曲で、本作はRPGゲーム「ゼンレスゾーンゼロ」のキャラクター、エレン・ジョーの同人的キャラクターソングになっています。動画再生回数ではなんと2位を獲得しており、今後のさらなるヒットも期待できそうです。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

TikTok、Heartseekrs共に、長らく1位を続けた曲が入れ替わった今週のチャートでしたが、ボカロチャートは、サツキ「メズマライザー」が今週も1位をキープ。これで2週連続、通算7週目の1位獲得となっています。こちらもニコニコ動画休止前からのヒット曲なので、そろそろ最新のボカロ曲のブレイクに期待したいところですが・・・。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年9月25日 (水)

Mrs.GREEN APPLE人気上昇中

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、まずMrs.GREEN APPLEの話題から。現在、大ヒット中の「ライラック」は今週、3位から2位に再びアップ。ストリーミング数は14週連続の1位をキープし、動画再生回数も先週から変わらず1位をキープ。1位返り咲きを伺います。これで23週連続のベスト10ヒット&通算16週目のベスト3ヒットとなりました。

さらに今週は、「familie」が先週の7位から4位にアップしたほか、「ケセラセラ」も16位から9位にアップ。4月10日付チャート以来のベスト10ヒット返り咲きを記録。ベスト10ヒット記録を通算27週に伸ばしています。さらに11位に「青と夏」、15位に「点描の唄 feat.井上苑子」がランクインしているほか、17位に「Soranji」、20位に「ダンスホール」もランクアップし、ベスト20入り。ベスト20に7曲同時ランクインとなっています。

なんとビルボードのニュースによると、ベスト100圏内に15曲が同時にランクインしているそうで、圧倒的な強さを感じる結果となっています。9月13日から、彼らのライブツアーをドキュメンタリー化した映画「Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”」が公開。興行収入10億に迫るヒットを記録しているそうで、今回のランクアップの要因のひとつでしょう。それにしても、ここに来ての彼らの人気ぶりには驚きです。

一方、1位初登場は秋元康系女性アイドルグループ日向坂46「絶対的第六感」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数16位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上47万5千枚で1位初登場。前作「君にハニーデュー」の初動44万9千枚(1位)からアップしています。

Mrs.GREEN APPLEを挟んで3位にランクインしたのは、先週1位だったback number「新しい恋人達に」。先週の1位獲得の要因となったCD販売数は一気に20位以下に。ダウンロード数は2位から4位、ストリーミング数も2位から3位にダウン。ただ、これで今週、通算8週目のベスト10ヒットに。ベスト3ヒットも通算3週目となります。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位に男性アイドルグループパンダドラゴン「ないとびふぉーあだんす」が初登場でランクイン。CD販売数2位、その他はランク圏外。オリコンでは初動売上7万2千枚で2位初登場。前作「じゃぱかわんだほ~」の初動1万7千枚(4位)からアップしています。

そして10位には女性アイドルグループFRUITS ZIPPER「NEW KAWAII」が初登場。CD販売数3位、その他はランク圏外。オリコンでは初動売上5万5千枚で3位初登場。前作「わたしの一番かわいいところ」の初動3万6千枚(4位)からアップ。

続いてロングヒット曲ですが、まずはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。先週、9位までランクダウンし、崖っぷちの様相でしたが、今週は6位までランクアップ。ストリーミング数5位、動画再生回数4位は先週と変わらず。ただし、ダウンロード数は20位以下までダウンしてしまっています。これでベスト10ヒットを連続36週に伸ばしています。

こっちのけんと「はいよろこんで」は8位から7位にアップ。こちらは10週連続のベスト10ヒット。ただ、ストリーミング数は6位から8位、ダウンロード数は3位から9位、動画再生回数も2位から3位とそれぞれダウン。ここに来て伸び悩んでいる感もあり、さらなる上位へのランクインは難しい状況。

一方、しぶといのはOmoinotake「幾億光年」で、今週は10位から8位に再度のランクアップ。ストリーミング数は5週連続の4位。これで通算31週目のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年9月24日 (火)

暖かさを感じる

Title:On the shore
Musician:踊ってばかりの国

前作「Paradise review」はミニアルバムでしたので、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる踊ってばかりの国のニューアルバム。「渚にて」と名付けられた今回のアルバムは、ジャケットの海辺で飛び跳ねる子供の写真も印象的なアルバムとなっています。

踊ってばかりの国といえば、サイケなサウンドと、そんなサウンドと対照的とも言えるポップなメロディーラインが特徴的なバンドですが、今回のアルバムに関して言えば、このキュートさすら感じるポップなメロディーラインが大きな魅力に感じました。特に印象的だったのが「Au te amour」。レトロポップな雰囲気も感じさせるこの曲は、非常にキュートで切ないメロが強い印象に残る楽曲。「サテン」も美しくメランコリックなメロディーラインが印象的なナンバー。「燈」も暖かさを感じさせるメロディーラインを切なく聴かせてくれる楽曲となっています。

もちろん、このキュートなメロディーラインというのはいままでの彼らの作品でも聴くことが出来ます。ただ、今回の作品で特にこのメロが目立った理由としては、やはり本作のテーマ性に大きな影響があるようにも感じます。今回のアルバムのテーマについて、ギターボーカルの下津光史はWebメディアのインタビュー「都会で暮らす人に向けて『海に逃げてもいいんやで』というのがテーマ」と語っています。実際、このテーマ性は「Au te amour」でストレートに「この街を抜け海へと出かけようよ」と歌われています。

先のミニアルバム「Paradise review」は「死」を意識したような歌詞が多かったので、その点では前作とは全く異なる方向性の歌詞と言えるかもしれません。実際、「Au te amour」を含めて、全体的に暖かい雰囲気の歌詞が多く、街の中で疲弊してしまう私たちを、生命の源である海へと導こうとする、やさしさや暖かさ、包容力のようなものを感じます。そんな暖かさが、キュートなメロディーラインに反映されているからこそ、このメロがより前に押し出されているように感じたのでしょう。

とはいえ、今回の作品についても踊ってばかりの国らしい、サイケなサウンドは健在。サイケでドリーミーな「H2O」や、微妙にゆがんだギターサウンドがサイケさを醸し出す「ビー玉」など、彼ららしいサイケでドリーミーなサウンドはアルバムの要所要所に流れています。ドリーミーでポップながら、どこか引っ掛かりのある独特な音楽性は今回のアルバムでももちろん健在でした。

相変わらず独特なポップチューンを奏でる踊ってばかりの国。フルアルバムとしてはちょっと久々のアルバムとなりましたが、今回ももちろん傑作に仕上げてきました。文句なしいおすすめの1枚です。

評価:★★★★★

踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS
君のために生きていくね
光の中に
moana
Paradise review

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2024年9月23日 (月)

おやじのロック

Title:Collage
Musician:SKYE

鈴木茂、小原礼、林立夫、松任谷正隆という、日本のポップス史上に燦然と名前を残すレジェンドたちによるスーパーグループ、SKYE。2021年にメジャーデビューし大きな話題となりましたが、その後も活動を続け、今年、約3年ぶりにリリースされた2枚目となるアルバムが本作です。

参加メンバーについては、いまさら言及する必要はないかもしれません。鈴木茂はご存じ、はっぴいえんどのメンバー。アレンジャーやセッションミュージシャンとして活躍し、また彼自身がソロでリリースしたアルバム「BNAD WAGON」も名盤としてその名を知られています。小原礼も、ご存じサディスティック・ミカ・バンドのメンバーだったベーシスト。彼も奥田民生や忌野清志郎はじめ、数多くのミュージシャンとの活動でも知られています。林立夫もまた、数多くのミュージシャンのセッションに参加している日本を代表するドラマー。さらに松任谷正隆は、今ではユーミンの旦那として知られていますが、言うまでもなく彼自身も、日本を代表するプロデューサーとして知られています。

そんなレジェンドたちによるスーパーバンドSKYEは、もともと鈴木茂、小原礼、林立夫の3人が高校時代に組んでいたアマチュアバンドがスタートだとか。その後、鈴木茂がはっぴいえんどを組んだことにより消滅していたそうですが、2019年に佐野史郎のレコーディングで、3人が集結。さらに松任谷正隆も参加し、「佐野史郎 meets SKYE with 松任谷正隆」名義でアルバムをリリース。そして2021年にメジャーデビューアルバムをリリースし、現在に至っています。

さて、そんな彼らが奏でる楽曲を聴くと、端的に言うと「おやじのロック」というイメージを受けました。楽曲的には、60年代70年代のブルースロックの色合いの強い作品が特徴的。もともと学生時代は、ヤードバーズやクリームのカバーを主に手掛けていたそうなので、基本的にはその延長線上といった感じでしょうか。特に「ウッドストック」はタイトルそのまま60年代のロックシーンを懐かしむナンバーで、伝説のロックフェス、ウッドストックの思い出を語った歌詞も印象的。楽曲自体も、ベタなハードロックのギターリフからスタートする、カントリーロックのナンバーとなっています。

ただ、ここで「おやじのロック」という印象を受けたのは、ただ単に60年代、70年代のロック風の作品を奏でていたから、ではありません。作品はブルースロックの要素を強く感じるのですが、その反面、オールドスタイルのロックを追求したバリバリのルーツ志向、といった感じでもありません。例えば「Smiling Faces」は、哀愁感たっぷりのギターが鳴り響く、むしろ歌謡曲テイストの強い楽曲。60年代、70年代の洋楽ロックの要素を取り込みつつも、同時に歌謡曲的な要素も強い楽曲も多く、洋楽志向、歌謡曲志向関係なく、自由な音楽性、言い方を変えると「ゆるい」音楽性が特徴的だったようにも感じますし、そのゆるさが「おやじ」らしさを感じました。

そういうこともあるため、全体的にバリバリに洋楽志向が強いロックリスナーが喜びそうな名曲が並ぶアルバム、というよりは、同い年のおじさんたちが肩の力を抜いて演奏した、同窓会的な要素も強い楽曲が並ぶ作品といった印象を強く受けます。もちろん、レジェンドたちがあつまったアルバムである以上、そのクオリティーは間違いなく高い作品が並んでいます。ただ、それ以上に気の良いおやじの仲間たちが集まって自由に演奏した、そんなアルバムに仕上がっていました。これだけゆるいバンドだからこそ、個性的なミュージシャンが集まっても活動が続けられるんでしょうね。

評価:★★★★

SKYE 過去の作品
SKYE


ほかに聴いたアルバム

スターダスト☆レビュー TOUR ブギウギ ワンダー☆レビュー 野外編 with んなアホなホーンズ@日比谷公園大音楽堂/スターダストレビュー

スタレビおなじみのライブアルバムは、2023年9月24日に東京は日比谷公園野外大音楽堂で行われたライブの模様を収録したアルバム。基本的にはいつもと変わらないスタイルで、いい意味でベテランらしい安定感ある演奏を楽しめます。今回のライブ盤は、直近のアルバム「ブギウギ ワンダー☆レビュー」が陽気な曲を中心に収録していたということもあり、全体的にはいつも以上に陽気で楽しい雰囲気なのが特徴的。MC部分がほとんど未収録なのは残念ですが、彼らのライブの魅力を感じられるライブ盤になっていました。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年
STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク
スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」
年中模索
STARDUST REVUE「楽園音楽祭 2019 大阪城音楽堂」
Mt.FUJI 楽園音楽祭2021 40th Anniv.スターダスト☆レビュー Singles/62 in ステラシアター
ブギウギ ワンダー☆レビュー

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2024年9月22日 (日)

スリム・シェイディの死

Title:The Death of Slim Shady(Coup De Grace)
Musician:EMINEM

発売された当時、画期的なHIP HOPの入門書として話題となった「文科系のためのヒップホップ入門」。その書籍の中で著者が主張する「筆甫ホップは『プロレス』である」という大胆な仮説が大きな話題を呼びました。そして、この「ヒップホップは『プロレス』である」というのを、お茶の間ベースでわかりやすくリスナーに伝えたのは間違いなくEMINEMのスリム・シェイディというキャラクターでしょう。彼は自身の楽曲の中で、露悪的、道化的であるスリム・シェイディという別人格を作り出し、そのキャラクターに自由にモノを申させることにより、大きな注目を集め、EMINEMの方向性を確立。EMINEM本人とは別のキャラクターがラップすることにより、プロレス的なノンフィクションの要素、メタ的な要素を楽曲に加え、より自由なスタイルでの楽曲の発表が可能となっていました。

そんな彼の最新アルバムは、まさに直訳すると「スリム・シェイディの死(とどめの一撃)」と題された本作。彼自身の分身である、このスリム・シェイディを葬り去る作品として大きな話題を呼んでいます。ただし、特に先行シングルとなった「Houdini」はむしろかつてのスリム・シェイディに回帰したような作風に。いわゆるポリコレやキャンセルカルチャーにアンチを呈して、不謹慎ネタがちりばめられている本作は、まさにスリム・シェイディの本領発揮といった作風となっており、賛否両論の大きな話題となっています。

今回のアルバムでもスリム・シェイディというキャラクターを使い、多くの有名人をディスった作品になっているそうで、その歌詞はまさに賛否を巻き起こす内容に。また、アルバムの構成として、順に聴くと、EMINEM自身がスリム・シェイディを殺す、という構成になっているそうで、まさにタイトル通り、スリム・シェイディにとどめの一撃を与える作品となっている一方、アルバムを逆から聴くと、逆にスリム・シェイディがEMINEMをやっつけるという解釈が出来る構成にもなっているそうで、様々な解釈もできる作品になっているそうです。

残念ながら日本語ネイティブではない私たちにとって、英語詞であることも含め、アメリカのポップカルチャーを存分に取り入れた今回のアルバムをEMINEMの意図通り、存分に味わうのは難しい部分があります。ただ、その点を差し引いても、おそらく純粋に楽しめるポップなアルバムであることは間違いないでしょう。今回のアルバム、スリム・シェイディを前面に出してきた作品であるためか、初期のEMINEMの作品を彷彿とさせるようなリズミカルでポップな作風が特徴的。露悪的なスリム・シェイディのキャラを彷彿とさせるような不気味なトラックが入りつつ、同時にコミカルさを感じさせるラップやトラックが耳を惹きます。

楽曲的にも、かつての「Stan」を彷彿とさせるような、哀愁たっぷりの女性ボーカルの歌を主軸に据えた「Temporary」のような曲や、ちょっとトライバル的な雰囲気がかいまみれる「Head Honcho」や荘厳さすら感じさせる「Guilty Conscience2」。前述の先行シングル「Houdini」はリズミカルなラップは、それだけで耳を惹かれるインパクトのある1曲ですし、ラストを締めくくる「Somebody Save Me」は、父親として至らなかった自分を娘たちに懺悔する楽曲なのですが、哀愁たっぷりのトラックやラップが耳を惹きます。

ある意味、原点回帰的である一方、日進月歩のHIP HOPというジャンルの中で、彼のスタイルはいささか時代遅れ的、マンネリ的な部分も否めません。そういう意味で純粋に音楽性を考えると、決して優れた作品とは言えないかもしれませんし、実際、欧米のメディア等の評価は、賛否両論のあるリリックを含めて、決して芳しいものではありません。ただ、その点を差し引いても、聴いていて素直にEMINEMの、そしてスリム・シェイディの「プロレス」的なパフォーマンスを楽しめる、そんなアルバムになっていましたし、ある意味、冒頭にあげた「文科系のためのヒップホップ入門」によると、実にHIP HOPらしい作品と言えるのかもしれません。実際、本作は全米ビルボードチャートで1位を獲得し、その変わらぬ人気を感じさせます。

ただ一方、今回、スリム・シェイディを殺した彼が、次の作品でどんな姿を見せてくれるのか、それもまた大きな勝負のように感じます。なんとなく「スリム・シェイディの復活」みたいなものもありえそうな気がしてしまうのですが・・・。もっとも、いまだにEMINEMというミュージシャンに大きな注目が集まっているのは間違いありません。そういう意味でもすごいラッパーだな、ということを感じてしまいます。まだまだ、その活躍は止まらなさそうです。

評価:★★★★★

EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY

THE MARSHALL MATHERS LP 2
REVIVAL
Kamikaze
Music To Be Murdered By
Music To Be Murdered By - Side B
Curtain Call 2

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2024年9月21日 (土)

URCの代表曲がズラリ

Title:URC銘曲集-4「1970年頃、高円寺『ムーヴィン』で流れていたレコード」

日本のインディーレーベルの先駆けとして、1960年代から70年代にかけて、数多くのアルバムをリリース。数々の名曲、名盤を世に送り出し、日本ポップス史に燦然とその名前を残すURC(アングラ・レコード・クラブ)。2023年にその販売権がソニー・レコードに移り、URCのアルバムの数多くが再発されています(もっとも、何度も「再発」されてきているので、このこと自体は珍しくもなんともないのですが・・・)。それと同時に、URCの楽曲を様々な観点から集めたコンピレーションアルバムもリリース。いままでのアルバムも当サイトでは紹介してきましたが、本作がその第4弾となります。

今回のコンピレーションアルバムは、タイトルの通り、1970年代に高円寺にあったロック喫茶「ムーヴィン」で流れていたレコード、というテーマに、同喫茶のオーナー兼マスターで、はちみつぱいのベーシストであり、現在は主にオーディオ評論家として活動している和田博巳選曲・監修によるコンピレーションアルバムとなっています。

正直、この「ロック喫茶」という存在、既にアラフィフの域に達している私でも、あまりピンと来ていません。かつてはいろいろなところにこのロック喫茶というものがあったようで、要するにコーヒーを飲みながら、爆音でロックを楽しむことが出来る喫茶店だったよう。ライブハウスやクラブが発展し、ジャズならまだしも、ロックというジャンルで「ただコーヒーを飲みながら音楽を聴くだけ」というスタイルが寂れてしまった現在では、もう、なかなか受け入れがたい形態なのでしょう。もっとも今でも、まだ営業を続けているロック喫茶も現存するようですが。

今回のコンピレーションアルバムに選曲されていた曲は、まず非常にいろいろな意味で癖の強い作品が収録されていた印象があります。特に序盤のはっぴいえんど「12月の雨の日」「はいからはくち」は、今聴いてもヘヴィーに感じられるような分厚いバンドサウンドを前に押し出したロックな作品。ここらへんの選曲は「ロック喫茶」ならでは、といった感じでしょうか。

ただ一方、中盤から後半にかけて、特に後半についてはフォークな作品が多く、あまりロックという印象はありません。ロック喫茶で流れていたレコード・・・というコンセプトのはずなのですが、当時は、こういうフォークソングも普通にロック喫茶に流れていたということなのでしょうか。ここらへんは状況がわからないので何とも言えないのですが。

一方でこれから後半のフォーク系の曲も含めて、印象に残るインパクトの強い曲が多かったのも特徴的。特にURCの代表曲ともいえる作品も多く、金延幸子の「み空」や、ザ・ディランⅡの「プカプカ」、高田渡の「自衛隊に入ろう」など、メロディーラインの面や歌詞の面から一度聴いたら忘れられないような曲が多く、URCの代表作ともいえる曲が並ぶコンピレーションアルバムとなっていました。

それだけに、URCがどんな曲を出していたのか、代表曲を聴いてみたいと考えているようなリスナーには入門盤的にも最適な1枚だったと思います。しかし一方で、有名曲が多い選曲であったゆえに、ある意味、この手のコンピ盤では何度も収録されているような、何度も聴いたことある曲の連続。どういう点が「ロック喫茶」で流れているような・・・というコンセプトに沿っているのか、若干疑問にも感じてしまいました。そういう意味ではテーマ性のあるコンピレーションとしては物足りなさを感じてしまったのは事実。もうちょっと、あまり聴いたことないようなURCの曲を収録してほしかったかも、とも思ってしまったのですが。

評価:★★★★

URC銘曲集-1 戦争と平和
心に響くフォークソング -イムジン河 (URC銘曲集2)
URC銘曲集3 伊藤銀次セレクション ‐フォークとロックの出会い、そして自由への旅立ち


ほかに聴いたアルバム

ゴールデン☆ベスト BEE PUBLIC/BEE PUBLIC

廉価版ベスト「ゴールデン☆ベスト」シリーズの最新作は、80年代に活躍したロックバンドBEE PUBLICのベスト盤。本作にも収録されている1986年にリリースしたシングル「お前にハート・ビート」がTBS系ドラマ「夏・体験物語2」の挿入歌に起用され、オリコン最高位12位というスマッシュヒットを記録しています。楽曲は典型的な80年代風のアメリカンロックといった感じで、あえて言えば佐野元春や尾崎豊に連なる系統といった感じもするのですが、それにしてはアイドルテイストも強く、メロにしろボーカルにしろインパクトは薄くて中途半端な感じは否めません。結局、シングル5枚、アルバム1枚リリース後、デビュー作を超えるヒットも出せず解散するのですが、それも仕方なかった感も・・・。ちなみに、本作、唯一のオリジナルアルバム「Mr.Rockin' Man」に同作未収録のシングル曲及びカップリング曲をすべて収録した、ベスト盤というよりも完全に「全曲集」となっており、彼らの名前を聴いて懐かしい!と感じられる方には最適な1枚かも。

評価:★★★★

NOW/阿部真央

約1年半ぶりとなる阿部真央のニューアルバム。阿部真央と言えば、女性の素直の心境をストレートにつづった歌詞が特徴的なのですが、今回はあまりハッと印象に残るような歌詞の曲がなく、さらに英語詞も2曲あったりして、あまり歌詞の印象が残らない作品に。また、全体的にアコギを入れて聴かせるタイプの曲が多く、楽曲のバリエーションも少ない感じに。彼女らしいポップな曲調は魅力的ではあるのですが、アルバムとしては地味といった印象を受ける作品になっており、ちょっと物足りなかったかなぁ。悪いアルバムではないとは思うのですが。

評価:★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU
阿部真央ベスト
まだいけます
MY INNER CHILD MUSEUM
Not Unusual
Acoustic -Self Cover Album-

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2024年9月20日 (金)

スマパンらしさを強く感じる原点回帰な新作

Title:Aghori Mhori Mei
Musician:The Smashing Pumpkins

2005年の再結成以降、いまひとつ、活動が断続的な状況が続いているスマパン。はじめたプロジェクトが中途半端な形になってしまったり、メンバーが脱退・加入を繰り広げていたり、不安定な活動状況が続いていたような印象を受けます。ただ、ここに来て、ようやくバンドとして軌道に再び乗り出しているように感じます。昨年は、3部作からなる壮大なロックオペラ「Atum」が無事完結。ギターのジェフ・シュローダーの脱退というニュースがあったものの、この壮大なプロジェクトからわずか1年というインターバルを経て、ギタリスト脱退という事態がありながらもニューアルバムが完成しているあたり、バンドとしていい状態であることを示しているのでしょう。

そんな今回のニューアルバムは、これぞスマパンといった感じの、いい意味でいかにも彼ららしい作品に仕上がっています。ダイナミックなギターリフでいきなり迫力満点の出だしとなる「Edin」からスタート。続く「Pentagrams」もヘヴィーなギターサウンドを前面に押し出したメタリックな作風でありつつ、これでもかというほど狂おしいようなメランコリックなメロディーラインがいかにもスマパンらしい楽曲。続く「Sighommi」も、イントロのヘヴィーなギターリフにまずはガッツポーズしたくなるような、ヘヴィーなロックチューン。このダイナミックと対照的なようなメランコリックなメロディーラインもまた、実にスマパンらしさを感じます。

今回の作品は、このように、ある種の原点回帰とも言うべき、メタル色も強いヘヴィーなギターサウンドを押し出した作風になっているのが大きな特徴。ここ最近の作品は、ヘヴィーなサウンドやメランコリックなメロというスマパンらしさはしっかり保たれていたものの、シンセやエレクトロサウンドを積極的に取り入れた作品が目立ちました。一方で本作はあくまでもダイナミックなギターリフを聴かせるヘヴィーなバンドサウンドが作品の基軸。これぞスマパンといった感じの曲が並ぶ作品になっています。

中盤の「War Dreams Of Itself」なども、まさにそんなダイナミックなギターリフが前面に押し出されたロックなナンバー。さらには終盤の「Sicarus」もヘヴィーでメタリックな楽曲と、最後までヘヴィーなギターサウンドが目立つ楽曲が続きます。一方で後半には、もっとオルタナ系ロックの色合いも強い、ポップなギターロックの曲も並び、特に「Goeth The Fall」などはメロディアスでポップ、ほどよくメランコリックさを感じさせるメロディーラインが耳を惹きます。比較的シンプルなアレンジのメロディーを前に押し出した楽曲となっており、ダイナミックなサウンドに頼らずとも、メロディーでしっかり勝負できるスマパンの魅力を感じさせます。

そしてラストを締めくくる「Murnau」はストリングスを取り入れて、これでもかというほど仰々しくダイナミックなナンバー。ある意味、最後の最後でコテコテのとんこつラーメンで締めくくるような感覚のエンディングとなるのですが、それだけに聴き終わった後、おなか一杯になるような展開。これはこれでスマパンの大きな魅力と言えるでしょう。

個人的にはここ最近のアルバムの中では最も楽しめた作品。もっと言えば、再結成後の作品の中では一番の出来の良さだったような印象も受けます。スパマンらしさを存分に楽しめると共に、彼ららしさを再認識できた傑作アルバム。昔聴いていたけど最近は・・・という方も含めて、チェックして損のない作品です。

評価:★★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.
CYR
ATUM-actⅠ
ATUM-actⅡ
ATUM-actⅢ

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2024年9月19日 (木)

ボカロチャートは1位2位入れ替わり

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まずHot Albumsは韓国のアイドルグループが1位獲得です。

今週1位は韓国の男性アイドルグループBOYNEXTDOOR「19.99」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数12位。3枚目となる韓国盤のミニアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上13万3千枚で1位初登場。前作「HOW?」の初動7万6千枚(1位)からアップしています。

2位はあいみょんの2年ぶりとなるニューアルバム「猫にジェラシー」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上5万5千枚で2位初登場。前作「瞳に落ちるよレコード」の初動6万1千枚(2位)からダウン。これで「瞬間的シックスセンス」以来、4作連続の2位。どうもリリースのタイミングが悪いみたい・・・。

3位は先週4位の米津玄師「LOST CORNER」がワンランクアップで2週ぶりのベスト3返り咲きを果たしています。

次に4位以下の初登場盤ですが、まず4位にWHITE SCORPION「Caution」がランクイン。秋元康プロデュースによる女性アイドルグループによるデビューミニアルバム。7位にはJAEHYUN「J」が初登場。韓国の男性アイドルグループNCTのメンバーによるデビュー作となるミニアルバム。9位はHYDE「HYDE[INSIDE]」がランクイン。ラルクのボーカルによるソロアルバム。10月CDリリース予定の先行配信分でのベスト10入りとなります。10位にはしぐれうい「fiction」がランクイン。漫画家兼バーチャルYouTuberによる2枚目のアルバムです。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位は今週もKvi Baba「Friends, Family & God (feat. G-k.i.d & KEIJU)」が1位を獲得。これで3週連続の1位となっています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTok Weeklyも今週は先週と一緒。Mega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が6週連続の1位を獲得しています。ちなみにTikTok  Weekly、今週2位にはコレサワ「元彼女のみなさまへ」がランクイン。コレサワは4位にも「SPARK!!」がランクインしており、なにげにTikTokでバズっている模様。当サイトでも何度か取り上げている彼女で、個人的にも女性心理をストレートに描いた歌詞に注目しているのですが、TikTok発でブレイクとなりそうな予感がします。


今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

復活後2週目となるボカロチャートは、先週2位だったサツキ「メズマライザー」が1位に返り咲き。一方、先週1位だった吉田夜世「オーバーライド」は2位にランクダウン。1位2位が入れ替わる結果となりました。ちなみに「メズマライザー」はこれで通算6週目の1位獲得となります。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年9月18日 (水)

1位返り咲き!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

CD販売分が加味されて、見事1位返り咲きです!

今週、1位を獲得したのはback number「新しい恋人達に」。先週の7位からランクアップし、8週ぶりに1位返り咲きで、2度目の首位獲得となります。フジテレビ系ドラマ「海のはじまり」主題歌。配信が先行していましたが、今回、CDシングルもリリース。CD販売数が6位にランクインしたほか、ストリーミング数、ダウンロード数共に3位から2位にランクアップしています。ベスト10ヒットは今週で7週目となりますが、このままロングヒットとなりそう。オリコン週間シングルランキングでは初動売上2万4千枚で6位初登場。前作「黄色」の初動2万6千枚(3位)から若干のダウンとなっています。

2位は旧ジャニーズ系男性アイドルグループ、WEST.「まぁいっか!」が初登場。元ジャニーズWEST。CD販売数1位で、そのほかはランク圏外。オリコンでは初動売上24万2千枚で1位初登場。前作「ハート」の初動26万6千枚(1位)からダウン。

3位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の1位からダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は13週連続1位をキープ。また動画再生回数も3位から1位にアップし、5週ぶりの1位返り咲き。これで22週連続のベスト10ヒット&通算15週目のベスト3ヒット。「familie」は今週7位にダウンしていますが、今週も2曲同時ランクイン。以下、13位に「青と夏」、16位に「ケセラセラ」、19位に「点描の唄 feat.井上苑子」と、今週も5曲同時ベスト20入りをキープしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、女性アイドル曲が並びました。まず4位にハロプロ系女性アイドルグループOCHA NORMA「ちはやぶる」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数19位。オリコンでは初動売上7万3千枚で4位初登場。前作「ちょっと情緒不安定?・・・夏」の初動7万7千枚(2位)から若干のダウン。

もう1曲は秋元康系。HKT48「僕はやっと君を心配できる」が5位にランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上9万5千枚で3位初登場。前作「バケツを被れ!」の初動12万1千枚(3位)からダウン。

一方、ロングヒット曲ですが、まずこっちのけんと「はいよろこんで」は今週5位から8位にダウン。動画再生回数は1位から2位にダウン。ただストリーミング数は6位をキープ、ダウンロード数は6位から3位にアップしています。これで9週連続のベスト10ヒット。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週6位から9位にダウン。ストリーミング数は5位をキープしていますが、ダウンロード数は14位から15位、動画再生回数も2位から4位にダウンと下落傾向が続いています。これで35週連続のベスト10ヒットとなりましたが、さすがにそろそろベスト10ヒットは厳しい感じ。

しぶとい人気を見せるのがOmoinotake「幾億光年」で、今週は9位から10位とワンランクダウンながらもベスト10をキープ。ストリーミング数は4週連続の4位をキープ。これで通算30週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年9月17日 (火)

アジカンの歴史をたどる

Title:Single Collection
Musician:ASIAN KUNG-FU GENERATION

昨年、メジャーデビュー20周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION。本作は、そんな彼らのシングルコレクションとなります。アルバムの冒頭に収録されているのが、彼らのメジャーデビュー作であるミニアルバム「崩壊アンプリファー」の1曲目に収録されている「遥か彼方」の再録バージョン。その後は現時点での最新シングルとなる「宿縁」からデビューアルバム「未来の破片」まで、彼らがいままでリリースしたシングル30枚を、最近の曲から過去の曲にさかのぼる形で収録しています。

アジカンのベストアルバムは2012年にベストアルバム「BEST HIT AKG」を、2018年にはその続編「BEST HIT AKG(2012-2018)」と、さらにはオフィシャルブートレグと名乗って「HONE」「IMO」2枚のアルバムをリリースしています。既に、彼らの楽曲についての総括的な印象は、そのベスト盤の時にも記載しているため、今回のシングルコレクションで大きく変わることがありません。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲は、端的に言うと、ロックバンドとしてある種の王道的であり、ヘヴィーでノイジーなバンドサウンドが聴いていて直感的に心地よい、という印象を受けています。歌詞にしてもラブソングを主軸としつつ、ほどよく内省的な歌詞やメッセージ性の歌詞も兼ね備えており、バランスの良さも感じます。20年間、第一線で人気を確保してきた彼らですが、確かにロックバンドとしていい意味で広いリスナー層に支持を得ているのも納得の楽曲を作り続けているバンドに感じます。

今回、シングルコレクションということで、彼らのシングルを最近の曲から過去にさかのぼる形で収録していますが、それ故に彼らの楽曲の変遷を感じることが出来ます。とはいっても、そのスタイルはデビュー当初から最近まで大きく変わることはありません。あえて言えば、初期作品の方が、非常に分厚いギターサウンドとポップなメロディーという楽曲を、ある種の迷いもなく発表し続けているのに対して、ここ最近のシングルは、やはり同じスタイルを続けているのに迷いもあるのでしょうか、ギターロックというスタイルをベースとしつつ、バリエーションを増やしてきているように感じます。

例えば「触れたい 確かめたい」では羊文学の塩塚モエカとのデゥオというスタイルを取り入れたり、「エンパシー」ではピアノの音色やドラムンベースなリズムを取り入れたりと、デビュー当初の作品と比べるとシングルのバリエーションを増やしてきているのを感じます。

一方では「出町柳パラレルユニバース」「ダイヤローグ」のように最近の曲でも、初期の作品を彷彿とさせるような、分厚いギターサウンドにポップなメロディーという、いかにもアジカンらしい曲もチラホラ並んでおり、そういう意味ではデビュー当初からそのスタイルを大きくは変更していない点も感じさせます。逆に、こういうアジカンらしいスタイルを極初期から貫かれているということは、デビュー直後から既にその個性を確立していた、という訳で、デビュー当初から注目を集め、早い段階でブレイクした彼らですが、その理由を、今回のシングルコレクションではあらためて感じることも出来ました。

そんな訳で、シングルコレクションらしい逆発売順の選曲により、アジカンの歴史をたどることが出来たベスト盤。ASIAN KUNG-FU GENERATIONというバンドの魅力をあらためて感じることが出来たシングルコレクションでした。

評価:★★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク
THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO
フィードバックファイル2
Wonder Future
ソルファ(2016)
BEST HIT AKG 2(2012~2018)
BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"
BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"

ホームタウン
プラネットフォークス
サーフ ブンガク カマクラ(半カートン)
サーフ ブンガク カマクラ(完全版)


ほかに聴いたアルバム

ghosts/My Hair is Bad

約2年3か月ぶりとなるスリーピースバンドによるニューアルバム。分厚いギターサウンドを聴かせてくれるロックが特徴的ながらも、歌詞については具体性、ドラマ性あるラブソングがメインという、ある意味、意外性のある組み合わせが特徴的なバンド。別れた恋人への思いをつづった「鳩かもめ」など、印象的な歌詞も。ただ今回はそんな中でも「ぶっこむ.com」のような、ラップ的なスタイルを取り入れたユニークな曲もあったりします。とはいえ、良くも悪くも似たタイプのラブソングが多く、個人的にはもうちょっとバラエティーがあった方がいいようにも思うのですが。

評価:★★★★

My Hair is Bad 過去の作品
woman's
mothers
hadaka e.p.
boys
angels

Logic 2/LEX

Logic2

前作「Logic」が2021年度のMusic Magazine誌ラップ/ヒップホップ[日本]部門で1位を獲得するなど、高い評価を受けたMCによるニューアルバム。タイトル通り、基本的には前作「Logic」の続編的な作品で、前作同様、トラップの影響を強く受けたエレクトロのトラックに、メランコリックな要素たっぷりのラップが重なるスタイル。前作同様、歌モノの作品が多く、ちょっと不気味なジャケットと裏腹に、いい意味で聴きやすさを感じる作品でした。

評価:★★★★

LEX 過去の作品
LOGIC

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2024年9月16日 (月)

バンド名のイメージと反して・・・

Title:All Hell
Musician:Los Campesinos!

イギリスはウェールズ出身の6人組ロックバンド。全員がラモーンズ風にCampesinos!姓を名乗っている点が特徴的。ちなみに、Los Campesions!という、いかにもラテン風なバンド名はスペイン語で「農民」を意味するそうです。最近、徐々に注目を集めているインディーロックバンドで、このアルバムもイギリスの公式チャートで14位と自己最高位を記録。徐々に人気を伸ばしてきています。

正直、バンド名だけ見ると、ラテン系、あるいはトラッド系のバンドのように最初印象を受けました。また、6人組という大所帯の構成もまた、同じくいかにもトラッド系のバンドにありがちな構成。しかし、アルバムを聴いてみるとその印象とは全く異なります。むしろ、比較的王道なオルタナ系のギターロック路線が彼らの大きな特徴でした。

今回のアルバム、最初はちょっと泥臭さを感じる曲からスタート。冒頭を飾る「The Coin-Op Guillotine」はメランコリックにゆっくりと聴かせるカントリーロック的なナンバー。冒頭を飾るナンバーとしては、ダウナー的な楽曲で、いささか地味さを感じさせる楽曲となっています。

ただ、続く「Holy Smoke(2005)」「A Psychic World」はいずれも疾走感あるギターロックナンバー。ノイジーなバンドサウンドで、まさに王道を行くようなオルタナ系のロックナンバーとなっており、アルバムを最初聴いて、バンドイメージから意外さを感じたのは、まずこの2曲を聴いた時でした。

前半はギターのアルペジオでブルージーに聴かせるインターリュード的な「I.Spit;or, a Bite Mark in the Shape of the Sunflower State」やミディアムチューンの「Long Throes」など、比較的泥臭さを感じさせる楽曲が並び、どちらかというとブルースロック、カントリーロック的な印象も受けます。彼らが本領を発揮したのはアルバム後半。

インターリュード曲を挟んで、ある意味アルバムの後半戦の1曲目ともいえる「To Hell in a Handjob」は疾走感のあるギターロックで、まさに王道のオルタナ系ギターロックナンバー。「Moonstruck」もいかにもなギターロック。ギターのフレーズもどこかで聞き覚えがあるような感じですし、メロディアスでポップな曲調もいかにもといった感じの曲調となっています。

オルタナ系ギターロック好きならば間違いなく気に入りそうなアルバム。個人的にもツボにはまったアルバムでした。ただ一方、楽曲自体は「似たような曲はどこかで聴いたような・・・」という曲は少なくなく、そういう意味ではマイナスだったかも、という点も感じました。メロディアスな楽曲はヒットポテンシャルもありそうで、今後の成長も含めて期待のバンドといった感じでしょうか。オルタナ系ギターロック好きとして十分楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Everyone's Getting Involved:A Tribute to Talking Heads' Stop Making Sense

今年2月、4Kレストアバージョンが公開されたトーキング・ヘッズのライブ映画「ストップ・メイキング・センス」に合わせてリリースされた、トーキング・ヘッズへのトリビュートアルバム。Lorde、The National、The Linda Lindasなど、比較的若手のミュージシャンを中心として、トーキング・ヘッズの曲をカバーした作品なのですが、ミュージシャンによって様々な解釈を披露。ムーディーに聞かせたり、ファンクの要素を強めたり、ディスコ風にカバーしたり、様々なタイプの曲が並びます。基本的にアフロビート、ニューウェーヴというトーキング・ヘッズの音楽性に沿ったカバーも多いだけに、全体的にトライバルなリズムが目立つ曲が多いのですが、16組のミュージシャンがそれぞれに個性を発揮している楽しいトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2024年9月15日 (日)

音の向こうに風景が広がるような

Title:熱のあとに Original Soundtrack
Musician:岡田拓郎

Afterthefever

バンド「森は生きている」の活動が大きな注目をあつめ、同バンド解散後も、ソロとしてリリースされたアルバムがいずれも高い評価を獲得。現在、もっとも注目をあつめているソングライターの一人ともいうべき岡田拓郎。非常に高い評価を受けた前作「Betsu No Jikan」から約2年を経てリリースされた新作は、山本英監督による映画「熱のあとに」のオリジナルサウンドトラック。全6曲入り30分強の内容になっていますが、内容的には劇伴音楽にとどまらない、岡田拓郎の魅力を感じさせる新作となっていました。

アルバムの1曲目はまず、タイトルチューンとも言える「After the Fever(Theme)」からスタート。ジャジーなドラムのリズムをバックに、ピアノとサックスで聴かせてくれるメロディーラインは優しくメランコリックながらも、どこか独特のフレーズを感じさせ、耳が惹きつけられます。

「Lake」はタイトル通り、湖のほとりで静かにたたずむ姿を彷彿とさせる、こちらは劇伴音楽らしい静かな楽曲。ただ、時折入るシンセの音色が美しく、静寂感が強い印象にの折る作品に。「Planetarium」も静かなピアノとサックスのメロディーが美しい楽曲。「プラネタリウム」というタイトルの通り、満天の星空の下で奏でられる音楽のよう。「Tunnel」もピアノとジャジーなサックスも美しい、メランコリックに聴かせるナンバー。メロディアスなサックスのフレーズが心地よく流れています。

そしてアルバムのハイライトとも言うべきなのは最後の「After the Fever(Long Version)」。16分にも及ぶこの曲は、ピアノとサックス、そしてドラムのリズムでジャジーに美しく聴かせてくれる楽曲ですが、楽曲の中で川のせせらぎのように流れていくピアノとサックスの音色が非常に心地よく、16分間、そのサウンドに心地よく身をゆだねられる、そんな楽曲となっています。

今回は映画のサントラ盤ということもあって、岡田拓郎として新たな実験を行う、といった感じのアルバムではありません。基本的にはピアノやサックス、ウッドベースにドラムを用いてジャジーなサウンドを構築している楽曲が並ぶ作品に。前作に引き続き、ジャズ色の強いアルバムにはなっていましたが、バリエーションについても、そんなに「富んだ」といった感じのアルバムではありません。

ただ、とはいっても作品的にはしっかりと岡田拓郎の魅力の詰まったアルバムになっていたと思います。メロディアスな作風はやはり耳を惹きますし、シンプルなメロディーやサウンドながらも、どこか独特のフレーズが印象に残るような楽曲に。いずれの曲も音の向こうになにか風景が広がってくるような作品になっており、目をつぶりながら音楽の世界に心地よく浸ると、目の前に風景が広がってくるかのよう・・・そんな魅力あふれるアルバムになっていました。

映画のサントラといえ、しっかりと岡田拓郎のニューアルバムとして位置付けても過言ではない作品になっていたように思います。次のオリジナルアルバムにも非常に期待が持てるところですが、まずはこの作品で、彼の世界を味わいたいところ。あらためて彼の実力を感じさせてくれた作品でした。

評価:★★★★★

岡田拓郎 過去の作品
ノスタルジア(Okada Takuro)
Morning Sun
都市計画(Urban Planning)(Okada Takuro+duenn)
Betsu No Jikan

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2024年9月14日 (土)

ソウルとHIP HOPの要素が融合

Title:Why Lawd?
Musician:NxWorries

Whylawd

アメリカ西海岸で活躍するプロデューサーのKnxwledgeと、シンガーソングライターAnderson Paakによるユニット、NxWorriesによる2枚目のアルバム。それぞれソロとして活躍しているミュージシャン同士がタッグを組んだスーパーグループである彼ら。前作は高い評価を得たアルバムで、特に2016年の年間ベストアルバム、ミュージック・マガジン誌R&B/ソウル/ブルース編で1位を獲得。個人的には遅ればせながら、その後追いで聴いた1枚となるのですが、高い評価も納得の傑作となっていました。

その前作で特徴的だったのは、昔ながらのソウルと、今風のHIP HOPのサウンドを融合させたような楽曲だったという点。今回のアルバムも基本的にその方向性は一緒。1曲目「ThankU」は、まずメロウなネオソウル風のサウンドが耳を惹きつけますし、一方、続く「86Sentra」はラップを前に押し出したHIP HOP的な側面を強く押し出した作品に。特に「KeepHer」ではメロウなボーカルで歌い上げる、ソウルの色合いが強い歌に、ループするサウンドはHIP HOP的。まさに昔ながらのソウルと現代風のHIP HOPのサウンドが融合した曲となっています。

また、そのほかにも「Daydreaming」など、まさに80年代的なAOR風のナンバー。途中のむせび泣くにようなギターソロなど、まさに80年代的なのがユニーク。さらにアルバムのある種のハイライト的に感じたのがラスト。「NVR.RMX」「DistanceSpace」「WalkOnBy」と、いずれも感情たっぷりにムーディーに歌い上げるナンバー。どこか懐かしさすら感じさせるメロウなソウルナンバーになっており、その心に染み入るような歌に耳を惹きつけられます。

さらに本作では、前作と異なり多くのゲストが参加しているのも特徴的。「KeepHer」ではかのThundercatが、ここではボーカリストとして参加。メロウな歌声を聴かせてくれますし、「Where I Go」では女性シンガーソングライターのH.E.R.が参加し、その歌声を披露。さらに「FromHere」ではかのSnoop Doggが参加。こちらはメロウに聴かせる歌モノのナンバーになっており、力強い歌声を聴かせてくれています。

今回のアルバムもまた、前作に引き続き、全19曲入りで45分弱という長さ。1曲あたり2分弱から3分程度の曲が並んでおり、サクサクと展開していくのも特徴的ですし、最後まで飽きさせません。ポップで聴きやすいという面ではこの点も大きなポイントでしょう。前作に引き続き今回も傑作アルバムとなった1枚。個人的には年間ベスト候補の1枚と言ってもよい出来だったかと思います。今時のリスナーから、なにげに40代50代のリスナー層も楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★★

NxWorries 過去の作品
Yes Lawd!


ほかに聴いたアルバム

Passage Du Desir/Johnny Blue Skies

以前は本名であるSturgill Simpsonの名前で活動していたアメリカのカントリーシンガーが、ミュージシャン名義をJohnny Blue Skiesに変更し、ミュージシャン名義変更後、初となるオリジナルアルバムが本作。全編、ムーディーに聴かせるカントリーソングが主体のアルバム。良質のポップアルバムというイメージと同時に、全体的に地味という印象も・・・。あまり日本人受けしなさそうなスタイルである一方、本人は以前、アメリカ海軍の横須賀基地にいたこともあり、大の親日家だとか。そう考えると、なんとなく応援したくもなってしまうのですが。

評価:★★★★

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2024年9月13日 (金)

ヴィジュアル系バンドの祖

Title:ゴールデン☆ベスト Sixty Years
Musician:Der Zibet

今回も、レコード会社を超えて廉価版ベストアルバムの共通タイトルとして使われる「ゴールデン☆ベスト」シリーズの紹介。1985年にデビュー。その独特のヴィジュアルや耽美的な楽曲の世界観で、後のヴィジュアル系バンドに大きな影響を与えたと言われています。本作は、タイトル通り、デビューから1989年まで所属していたSixty Records時代の楽曲を集めた初期ベスト盤となっています。

楽曲的には、もろに80年代のギターロックといったイメージの音。アルバムの冒頭を飾る「天国へOVER-DRIVE」は典型的なビートロックの楽曲ですし、「Bad Lemon」もドラムの音に80年代的なものを感じさせる、力強いビートロックのナンバー。一方で、いかにも80年代的なニューウェーヴからの影響も顕著で、「Yo-Yo-Yo」「Blue Film」など、ニューウェーヴ風のサウンドを感じさせる曲も少なくありません。

また、後のヴィジュアル系への影響も感じさせるのは、その妖艶なボーカルスタイル。特にアルバム後半の「LOVE ME」「DANCE INTO THE MIRROR」は、その歌い方はあきらかにその後のヴィジュアル系バンドに続くスタイルに感じさせます。

その楽曲性やボーカルスタイルなど、同時期にデビューし、同じくヴィジュアル系の元祖的な存在のBUCK-TICKに近いものを感じさせます。実際、Der Zibeのボーカル、ISSAYはBUCK-TICKの櫻井敦司と仲が良かったようで、音楽的にもお互い影響を与えていた模様なので、ある意味、似ている部分があるのは当たり前なのかもしれません。

もっと言えば、「もろに80年代のギターロック」という彼らのスタイル、今の視点からすると「よくあるタイプ」と思ってしまうのかもしれませんが、むしろ彼らの方がオリジナルで、彼らの後に似たようなバンドが数多く出てきたために、そのように感じてしまうのかもしれません。また、ヴィジュアル系の祖とはいえ、その耽美的なボーカルも、後のヴィジュアル系のように、熱心なリスナー以外には抵抗感があるような、必要以上に癖のあるものではありません。良くも悪くも、後のヴィジュアル系は、彼らのスタイルのうち、その特徴的な部分を強調していったことが伺えます。

彼らは1996年に一度解散した後、2007年に再結成。コンスタントに活動を続けていたようですが、2023年にボーカルのISSAYが不慮の事故により急逝。バンドとしては活動停止という状況となってしまったようです。非常に残念ですが、そのスタイルに影響を受けたバンドは今なお数多く活動しており、その影響の大きさをうかがわせます。そんな今の日本の音楽シーンに大きな影響を与えた彼らの初期ベスト。J-POPの歴史を知るためにも最適な1枚です。

評価:★★★★

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2024年9月12日 (木)

ボカロチャート復活

今週はまずこちらのチャートから・・・

今週のニコニコVOCALOID SONGS

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico

長らくシステム障害で休止状態だったニコニコ動画がようやく復活。ボカロチャートも今週からようやく復活となりました。そして、復帰後初となるチャートで1位を獲得したのは吉田夜世「オーバーライド」。復活前の5月1日付チャート以来、通算3週目の1位獲得となっています。2位も、復活前のチャートで1位だったサツキ「メズマライザー」となっており、休止の影響か、復活前の人気がそのまま続いている形になっていますが、ただ、3位のAdeliae「インプレゾンビ」をはじめ、休止中に公開された曲も上位にランクインしており、来週以降の動向も気になります。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

で、Hot Albumsの方は、あの人気バンドが貫禄の1位獲得です。

今週1位はBUMP OF CHICKEN「Iris」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数2位。実に約5年2か月ぶりの久々となるニューアルバム。オリコン週間アルバムランキングでも11万3千枚で1位を獲得。前作「aurora arc」の初動20万2千枚(1位)からはダウンしています。

2位は韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「CRAZY」がCDリリース分が加味されたことにより先週の12位からアップし、ベスト3初登場。CD販売数2位、ダウンロード数12位。オリコンでも初動売上9万5千枚を記録し、2位初登場。前作「EASY」の初動10万7千枚(2位)からダウン。

3位初登場は不破湊「Persona」。VTuberグループ「にじさんじ」所属のVTuberで、本作がデビューミニアルバムとなります。オリコンでは初動売上5万3千枚で3位初登場。

続いて4位以下ですが、6位にHiromitsu Kitayama「ZOO」が初登場。Kis-My-Ft.2に所属していた男性アイドルで、現在はTOBEに所属しています。本作がソロデビューアルバム。7位にはポルノグラフィティ「ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~」がランクイン。タイトル通り、彼らがリリースしたシングルを網羅したベスト盤。8位初登場はコブクロ「QUARTER CENTURY」。結成25周年を迎えた彼らの集大成的なアルバム。9位にはカミュ(前野智昭) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム カミュ Frost Dream」がランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」のキャラクターによるアルバム。そして最後10位にはアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場する架空のバンド、結束バンドによるEP「We will」が配信限定ながらもベスト10入りしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位はKvi Baba「Friends, Family & God (feat. G-k.i.d & KEIJU)」が2週連続で1位を獲得しています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週のTikTok Weeklyは今週もMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が1位獲得。これで5週連続1位を獲得。ちなみにHeatseekers Songsでも、元曲が2位までランクアップしており、さらなるヒットも期待されます。

ついに再開されたニコニコ VOCALOID SONGS TOP20を含め、今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年9月11日 (水)

見事、1位返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

あの曲が1位返り咲きです。

Lilac

今週、Mrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の3位からランクアップ。8週ぶりに、2度目の1位獲得となりました。ストリーミング数は今週で12週連続の1位を獲得。動画再生回数も4位から3位にアップ。これで21週連続のベスト10ヒット&通算14週目のベスト3ヒットとなります。また「familie」も今週、6位から4位にアップ。今週も2曲同時ベスト10入りを果たしているほか、「青と夏」が11位、「ケセラセラ」が12位、さらに「点描の唄 feat.井上苑子」が15位とベスト20返り咲きを果たしており、5曲同時ベスト20入りを果たしています。

2位は韓国の男性アイドルグループRⅡZE「Lucky」が初登場。CD販売数1位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上21万3千枚で1位を獲得。本作がCDシングルではデビュー作となります。

3位はGEMN「ファタール」が先週の15位からランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。GEMNはSexyZoneの中島健人とシンガーソングライターのキタニタツヤによるユニットで、本作はテレビアニメ「【推しの子】」オープニングテーマに起用されています。今回のベスト10返り咲きは、CDシングルがリリースされた影響で、CD販売数は6位にランクイン。オリコンでは初動売上2万枚で5位に初登場。ただ、「【推しの子】」の前代のオープニングテーマの「アイドル」に比べると、ちょっと苦戦している感は否めません。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週はあと1曲のみ。8位に韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「CRAZY」がランクイン。ダウンロード数8位、動画再生回数7位。同タイトルの4枚目のミニアルバムの表題曲となります。

また、今週は初登場曲も少なかった影響で、ベスト10返り咲き曲が他にもあります。まずback number「新しい恋人達に」が先週の16位から7位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

またロングヒットを続け、先週、ついにベスト10から陥落したOmoinotake「幾億光年」は11位から9位にランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。ストリーミング数は3週連続の4位をキープ。これでベスト10ヒットを通算29週に伸ばしています。

一方、ロングヒット曲ですが、まずはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は先週の8位から6位にアップ。ストリーミング数は3位から5位、カラオケ歌唱回数も2位から4位にダウンしたものの、動画再生回数が5位から2位に再びアップしています。これで34週連続のベスト10ヒットになりました。

そして今週、こっちのけんと「はいよろこんで」が5位にランクイン。ついに8週連続のベスト10ヒットとなりました。こっちのけんとは、ご存じ、菅田将暉の実の弟のシンガーソングライター。本作は、かねひさ和哉による昭和のおとな漫画風のPVも話題になり、動画を中心にヒット。特に今週、動画再生回数が6週ぶりの1位を獲得。ストリーミング数も6位までランクアップし、総合順位も自己最高位タイの5位を記録しています。ノンタイアップの曲のロングヒットは珍しい感じですが、それだけに曲が強く支持されているということなのでしょう。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年9月10日 (火)

台風が近づく中で

ZAZEN BOYS×七尾旅人(BAND SET) NAGOYA CLUB QUATTRO 35th Anniversary "rendezvous"

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2024年8月29日(木)19:00~

Redezvous

今回足を運んだのは、タイトル通り、名古屋CLUB QUATTROの開設35周年を記念して行われたライブイベント。「rendezvous」と名付けられ、数多くのミュージシャン同士のコラボライブが行われた今回の企画。その中でも、なんとZAZEN BOYSと七尾旅人の対バンという、かなり注目度の高いイベントが開催。さっそく足を運んできました。七尾旅人は2019年のあいちトリエンナーレでのイベントで見て以来、約5年ぶり。ZAZEN BOYSに至っては、2012年のワンマンライブ以来、実に約12年ぶり(!)に見たライブということになります。

この日は台風10号が日本に接近していた影響で、新幹線も止まるなど開催が危ぶまれていましたが、29日の夜の名古屋はまだ台風の影響は限定的で、予定通りに開催。ただ、七尾旅人は翌日、東京でライブが予定されているため、早めに帰る必要があるためか、19時に会場に入ると、既にライブがスタートしていました。基本的にバンドセットということでバンドメンバーを率いて、真ん中に七尾旅人が座りながら演奏しているスタイル。最初はいきなりMCから、トレイシー・チャップマンの「Fast Car」の日本語カバーからスタートしたのですが、最初はこの曲の歌詞について解説。自立を余儀なくされるアメリカの黒人女性の悲哀をうたった歌詞で、それに沿った日本語詞をしんみりと聴かせてくれます。

その後は「Wonderful Life」、そしてホームレス排除をめぐって議論が起こった、渋谷の宮下公園で行われたライブイベントに参加した時に、あえてうたったという「ホームレスガール」。さらには新曲「Alright Alright」と続き、本人曰く、「唯一の代表曲」である「Rollin' Rollin'」へと続きます。この曲では途中、ZAZEN BOYSの曲のフレーズを取り入れたり、さらには観客とのコールアンドレスポンスが行われたりと、代表曲らしい盛り上がりを見せてくれます。

さらにMCでパレスチナ紛争について語った後、こちらも新曲「密航者の壁の向こうへ」。パレスチナ紛争の中、仕事のためにイスラエル側の建設現場で働かざるを得ない、パレスチナ側の人間について歌った歌で、今なお起こっている民族紛争について考えさせられる曲になっていました。そしてラストはZAZEN BOYSの「はあとぶれいく」のカバー。ZAZENのバージョンとは打って変わって、しんみり「歌」を聴かせるカバーに。向井秀徳が持っているメロディーセンスの良さを前に押し出したようなカバーに仕上げていました。

七尾旅人のステージは約1時間弱で終了。20分程度のセットチェンジを経て、続いてはZAZEN BOYSのステージとなります。しかし、登場するやいなやいきなり「アンコール、ありがとうございました」というMCからスタート(笑)。「時空を歪めて、今日はアンコールからスタートします」ということで、いきなりアンコールで、七尾旅人が再びステージ上へ!ZAZEN BOYSとのコラボで「サーカスナイト」を披露。途中、「KIMOCHI」のフレーズを挟みつつ、アンコールらしい(?)盛り上がりを見せていました。

まあ、要するに七尾旅人が台風の影響で、早く東京に帰らなくてはいけないため、本来、アンコールで行う予定だった両者のコラボを先に演ってしまった、ということで、その後、しばらくして、ZAZEN BOYSのライブの途中で機材を運び出し、七尾旅人は一足先に会場を後にしていました。

で、ZAZEN BOYSの本編は「DANBIRA」「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」さらにはライブでの定番「Weekend」と続きます。今回のZAZEN BOYS、私が彼らを見るのは実に12年ぶりとなるのですが、ベーシストがMIYAに代わってからは初のステージ。で、このMIYAのベースプレイが最高にカッコいい!かなりヘヴィーで迫力ありつつも、エッジの効いたベースが、ステージの中でも非常に目立っており、ZAZEN BOYSのパフォーマンスの中でも、かなり強く主張しているように感じました。

その後は「バラクーダ」「八方美人」「チャイコフスキーによろしく」「ブッカツ帰りのハイスクールボーイ」と最新アルバム「らんど」の曲が続き、さらには「COLD BEAT」「泥沼」と、こちらはライブの定番曲が並びます。なぜか、ここらへんで、向井秀徳は曲に合わせて、やたら新しい学校のリーダーズの首ふりダンスを踊っていました。気に入っているのでしょうか(笑)。

さらには大定番曲「ポテトサラダ」で会場は大盛り上がり。さらに、この曲の続編??のような「らんど」から「YAKIIMO」と続き、後半は「永遠少女」「乱土」さらには「胸焼けうどんの作り方」で締めくくり。結果的には、最新アルバム「らんど」からの曲を多く聴かせてくれる構成になっていました。

その後は再度のアンコールへ。「アンコールはもう演ったはずなんだが・・・」と向井秀徳が言いながらも再度、登場。おなじみのビールをかっくらいながらもラストは「はあとぶれいく」へ。最後の最後まで盛り上がり、約1時間強。全体では約2時間半のライブは幕を下ろしました。

いやぁ、ZAZEN BOYS、すごくよかった!!久々に見た彼らのステージでした、MIYA加入後、バンドとしてレベルアップしていたことを感じます。もともと息の合った緊迫感あるパフォーマンスは特徴的だったのですが、MIYAの個性に引っ張られる形か、以前よりも各々のメンバーのプレイが、それぞれの個性をより押し出したようなパフォーマンスになっていました。結果、以前に増して、「向井秀徳のワンマンバンド」というよりも、よりZAZEN BOYSがバンドとして、メンバーそれぞれの立場が対等になっていることを感じました。個人的に、今年のベストアクト候補と言えるパフォーマンスでした。

もちろん、七尾旅人のステージパフォーマンスも素晴らしく、特にその主張のある歌詞が心に響いてきました。どちらのパフォーマンスも非常にクオリティーの高いイベントで、まさにあっという間の2時間半。期待していたイベントでしたが、その期待をはるかに上回る内容になっていました。台風が近づいている中ということもあってか、観客の入りもそこそこといった感じで、ほどよく見やすかったのも良かったかも。非常に満足度の高いライブで、2組のミュージシャンの実力を実感できたパフォーマンスでした。

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2024年9月 9日 (月)

シューゲイザーシーンを網羅

Title:Still in a Dream: Story of Shoegaze 1988-1995

これはなかなかすごいボックスセットです。主に1990年にイギリスで生まれ、インディーシーンを中心に多くの支持を得て、30年以上経た今でも、脈々とその影響が続いているジャンル、シューゲイザー。そのシーンの楽曲を一堂に会した5枚組のボックスセットとなるのが本作。もともと2016年にリリースされていたのですが、今年、再プレスして再リリース。遅ればせながら、この圧巻のボックスセットを聴いてみました。

参加しているミュージシャンたちも申し分なく豪華。ボックスセットのスタートは、まさにシューゲイザーの祖とも言えるTHE JESUS AND MARY CHAINの「Rollercoaster」からスタート。その後もCocteau TwinsやThe House Of Loveといった黎明期のミュージシャンたちの曲が並び、Spaceman3やGalaxie 500といったバンドがDisc1に収録。Disc2はまさにシューゲイザー全盛期といったミュージシャンたちが並び、RIDEやChapterhouse、SWERVEDRIVERにSlowdiveといったシューゲイザーの代表格が並びます。

その後もSpiritualizedやFlaming Lips、Mercury Revといった、どちらかというとポストロックやドリームポップにカテゴライズされつつも、シューゲイザーからの影響も強いバンドも網羅。また、今回のボックスセットでは主に英米のミュージシャンたちがほとんどを占める中、英米以外のシューゲイザーバンドも収録。その中には日本からかのCOALTER OF THE DEEPERSが参加。収録曲Charming Sister Kiss Me Dead!!」はノイジーでダイナミックなバンドサウンドにキュートなメロというシューゲイザーの王道を行くような楽曲が収録されており、他の曲と比べても、日本のバンド代表として十分にその実力を感じさせる楽曲を聴かせてくれていました。

また、シューゲイザーと一言で言っても、様々なタイプの楽曲が収録されており、その耳を楽しませてくれています。個人的に気に入ったのが、例えばA.C.Mariasの「One Of Our Girls Has Gone Missing」は、ニューウェーヴ的な打ち込みに、清涼感あふれるクリアな女性ボーカルが魅力的。THE CHARLOTTESの「Liar」も、力強いバンドサウンドに女性ボーカルのポップでキュートなメロの王道的なシューゲイザーなのですが、シンプルでポップなメロが個人的には好み。CURVEの「Drive Blind」も、ノイジーなギターサウンドに加えて、非常にグルーヴ感あふれるバンドサウンドが耳を惹きます。

FLAMING LIPSの「Talkin' 'Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To Live Forever) 」もホワイトノイズのバンドサウンドとキュートなメロといったシューゲイザーのスタイルを保ちつつ、どこかコミカルで捻くれたサウンドになっているのが彼ららしい感じ。MEDICINEの「Aruca」も破壊的でメタリックのサウンドながらも、バックのボーカルが非常にキュートでポップなこのアンバランスさもシューゲイザーの魅力といった感じでしょうか。同じようにFLYING SAUCER ATTACKの「Soaring High」も強烈な不協和音的なノイズで埋め尽くされていながらも、バックに流れるメロは至ってポップでキュートといったあたりもシューゲイザーらしさを感じます。

そんなバリエーションを感じながらも、どの曲も楽器を埋め尽くすようなノイジーなギターサウンドと、そのサウンドに隠れるようなキュートでポップなメロディーという点が共通項。ギターのホワイトノイズもメロディーラインもどちらも非常に心地よさを感じさせますし、その心地よさが直感的に多くのリスナーを魅了するからこそ、いまだにフォロワーが登場してくるような、一部で根強い支持を受け続けているのでしょう。今回も全5枚組というボリューム量ながらも、聴いていてそのサウンドとメロに終始魅了される、夢のような時間を過ごすことが出来ました。シューゲイザー好きなら文句なくお勧めのボックスセットです。

評価:★★★★★

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2024年9月 8日 (日)

全盛期のblurのナンバーを連発

Title:Live At Wembley
Musician:blur

昨年、8年ぶりのニューアルバム「The Ballad of Darren」をリリース。サマソニにも来日したblur。最近は、時折「これが最後」という発言をしながらも、断続的な活動が続いていますが、昨年11月には再び活動休止を宣言。しかし、その後もまたライブに出演するなど、結局、blurとしての活動を続けています。もう、別にわざわざ活動休止を宣言しなくても、メンバー全員、時間が合った時に断続的に活動を続ければいいと思うのですが・・・。

今回、彼らがリリースしたアルバムは昨年7月8日、9日にイギリスのウェンブリー・アリーナで行われたblur史上最大規模での開催となったライブの模様を収録したライブアルバム。スタジアムライブらしいスケール感を感じさせるパフォーマンスで、特に彼らの代表曲が演奏された時の盛り上がりに感じる広い会場全体を覆うような一体感には、スタジアムライブらしいダイナミックさを感じます。

今回のライブアルバムで特徴的なのはそのセットリスト。バンド史上最大規模のライブということもあって、彼らのその代表曲を惜しげもなく披露しています。最新アルバムからのナンバー「St Charles Square」に続いては、いきなり「There's No Other Way」からスタート。前半でも「Coffee&TV」を披露しているほか、後半戦に入ると「End of a Century」「Country House」「Parklife」「Song2」「This Is a Low」と代表曲が続き、会場のテンションが一気に上がる中、おなじみ「Girls&Boys」で大盛り上がり。その後も「Tender」を披露するなど、まさに代表曲づくしのセットリストとなっています。

さらに大きな特徴として、彼らの勢いが最も強かった1993年の「Modern Life Is Rubbish」、1994年の「Parklife」からの選挙区が特に多いのも特徴的。「Modern Life Is Rubbish」からは5曲が、「Parklife」からはなんと6曲が選曲されています。他に「The Great Escape」からは3曲と意外と少な目。「blur」からは4曲が選曲。26曲中18曲までが、1993年から1997年までのナンバーに集中しています。

一方、最新アルバム「The Ballad of Darren」からはわずか2曲。「13」からは2曲、「Leisure」からは1曲、「Think Tank」からもわずか1曲。さらに前々作「The Magic Whip」からは選曲なしという構成に。ベテランバンドがこの手のベスト的なセットリストが組まれる時に、得てして全盛期以降の比較的最近の曲を選曲しがちなのですが、ほとんどが彼らの全盛期のナンバーからの選曲となっているあたり、彼らの潔さを感じます。

また、そんな選曲になっており、彼らの1990年代の楽曲をあらためて聴いてみたからこそ、blurの魅力、あれだけ人気のあった理由をあらためて実感できるライブ盤になっていました。軽快でポップ、わかりやすいメロディーラインを書きながらも、サウンドにしろメロディーにしろ、どこかひねりが加わり、単純なポップにならないとするアイロニック的な視点を感じさせますし、一工夫の入ったサウンドからは彼らのウィットさも感じさせます。

blurといえば90年代のブリットポップブームの中、最近、再結成が大きな話題を呼んだoasisと比較されることが多いのですが、王道路線を行くようなoasisのロックに比べて、ポップより、かつ王道をあえて外したようなblurの楽曲はまさしく対照的。この両者がしのぎを削っていた90年代のイギリスのロックシーンは、本当にすごかったよな・・・と、リアルタイムを経験した身にとってはなつかしさも感じてしまいました。

まさにblurの魅力のつまったベスト盤的なライブアルバム。あらためてblurのすごさも感じましたし、入門盤としてもピッタリのアルバムだったと思います。しかし、blurのライブ、一度生で見てみたい!また、是非日本に来日してライブを披露してほしいものです。

評価:★★★★★

blur 過去の作品
MIDLIFE:A Beginner's Guide to Blur
All the People... Live in Hyde Park: 2nd July 2009
PARKLIVE
The Magic Whip
THE BALLADS OF DARREN

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2024年9月 7日 (土)

最新作は映画のサントラ盤

Title:Confidenza
Musician:Thom Yorke

ご存じRADIOHEADのボーカリスト、トム・ヨークの最新作は映画のサントラ盤。イタリアの映画監督、ダニエレ・ルケッティ監督の最新作「Confidenza」の音楽を担当し、その映画に使われた曲が収録されているのが本作となります。ちなみに、この映画「Confidenza」は残念ながら日本では一般の映画館では公開されていないようで、「信頼」という邦題がつけられて、5月に行われたイタリア映画祭でのみ公開されたようです。

映画のサントラ盤というと、どちらかというと単発的なアイディアをちりばめたような、短いインスト曲が並び、映画を見ていない人が単独で聴くとちょっと厳しい部分がある、という曲が少なくありません。今回のアルバムに関しても、正直、そういう部分もあることは否めません。全12曲入り36分という長さのアルバムで、1分代の短い曲が3曲、1分に満たない曲も1曲収録。短いインスト曲も少なくありません。ただ、それでもこのサントラ盤は、しっかりとトム・ヨークの魅力の詰まったアルバムに仕上がっていました。

1曲目の「The Big City」から、まずはトム・ヨークの本領発揮的な1曲。不気味な雰囲気ただようエレクトロサウンドにストリングスの音色が重なり、幻想的な曲調となっているこの曲は、いわばRADIOHEADの延長戦上にも感じるメランコリックさを覚える1曲。続く「Knife Edge」も静かでメランコリックな歌が印象的な歌モノの1曲。こちらも優しく聴かせるメロディーラインにトム・ヨークのメロディーメイカーとしての才が発揮されています。

中盤の同じく歌モノの「Four Ways In Time」も、メランコリックに歌い上げる歌と哀愁感漂うストリングスのサウンドが印象的。全体的にホーンやストリングスを使って、醸し出す不気味で幻想的な雰囲気が特徴的。楽曲にはアバンギャルドさを感じ、一歩間違えると一気に崩れ落ちそうな危うささを感じさせます。映画は、お互い公になると人生が壊れてしまうような秘密をお互いに打ち明けた男女の物語ということなのですが、この楽曲のスリリングさは、その映画の内容に沿ったもの、といった感じでしょうか。そしてその一方で、そんなスリリングな楽曲の中に流れるメランコリックなメロディーラインにはトム・ヨークらしさを感じます。

最後は賑やかでアバンギャルドな「On The Ledge」で締めくくり。明るい雰囲気ながらも、全体的にごちゃごちゃで崩れ去ってしまいそうな雰囲気は映画のラストともマッチするのでしょうか。最後の締めくくりとしてはまとまりがなく終わった感もあるのですが、それはそれでまた、アルバムに大きなインパクトを与えていたように感じます。

文句なしにトム・ヨークの新作として聴くべき傑作アルバム。映画のサントラ盤ですが、トム・ヨークの最新のオリジナルアルバムの1枚として考えても全く問題ない内容だったと思います。トム・ヨークらしさを存分に感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Thom Yorke 過去の作品
The Eraser Rmx
Tomorrow's Modern Boxes
Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film)
Suspiria Unreleased Material
ANIMA
Not The News Rmx EP


ほかに聴いたアルバム

Louis In London (Live At The BBC)(邦題:この素晴らしき世界~ルイ・イン・ロンドン・ライヴ・アット・ザ・BBC)/Louis Armstrong

ご存じ、ジャズ・ミュージシャンのレジェンド中のレジェンド、サッチモことルイ・アームストロング。本作は1968年7月2日にイギリスBBCで録音された、生前最後のライヴ音源。内容的に彼も相当気に入っていたようで、録音を収録したテープを友人に送り、来客があるたびに聴かせていたそうです。ただ、それだけリリースを望んでいた音源にもかかわらず、いままで音源がリリースされることはなく。彼の死から50年以上を経て、ようやく音源としてリリースされました。

おそらく誰もが知っているであろう「この素晴らしき世界」を含む、彼の代表曲が収録されている本作。ライヴ音源ということで、より自由に楽しむようなパフォーマンスが収録されているのですが、生前最後、という飾り言葉がつくアルバムでありながらも、パフォーマンスに全く衰えはなく、サッチモの、時には陽気に、時にはムーディーにしっかりと聴かせるパフォーマンスが収録されています。まあ、「生前最後」といっても、亡くなるのは、ここから3年も先の話なのですが。代表曲が多く収録されている点でも入門盤としても最適な1枚。彼のパフォーマンスが存分に楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

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2024年9月 6日 (金)

安定した良作

Title:CIRCLES
Musician:Monkey Majik

ここ最近のMonkey Majikは、楽曲の安定感が非常に増したように感じます。もともと2016年の「southview」、2018年の「enigma」が脂ののりまくった傑作アルバムに。その後の「northview」「curtain call」も、その2作には及ばないものの、洋楽テイストと邦楽テイストがバランスよくブレンドされた、Monkey Majikらしさを感じさせる良作が続いていました。

本作は、そんな中、前作から約1年半のインターバルでリリースされた彼ら14作目となるオリジナルアルバム。前作からのリリース間隔の短さにも彼らの勢いを感じさせますが、今回も彼ららしさを感じさせる良作となっていました。

楽曲は、メランコリックでソウルテイストも強い「Scramble」からスタート。続く「O.G.Summer」はDef Techが参加したホーンセッションも軽快な、リズミカルで疾走感あるポップチューン。メランコリックなメロのギターロックテイストの強い「HYLMN」に、エレクトロポップ「Imposter」と、バラエティー富んだ展開が続いていきます。

その後も爽快なギターとメランコリックな歌が印象的な「Borderline」、ピアノバックにしんみり聴かせるJ-POPらしいバラードナンバー「Unknown」、そして締めくくりはエレクトロサウンドでメランコリックに聴かせる「be with you」で締めくくりとなります。

基本的にはJ-POP色が強いのですが、バタ臭さを感じるメランコリックなメロディーラインは洋楽テイストをたっぷりと含んだ感じ。この洋楽っぽいけど、メロなど基本路線はJ-POPであるため日本人にも聴きやすいという絶妙なバランスこそが彼らの大きな魅力。今回のアルバムでもそんなMonkey Majikの魅力を存分に味わうことが出来ました。

ただ、基本的には良作であることは間違いないのですが、一方で目新しさはありませんでしたし、正直、全体的には無難にまとまっていたのも事実。一定の安定感ある作品に仕上がっていた点は間違いないのですが、出来としては「southview」「enigma」には及ばなかったかな、というのが正直な感想です。

とはいえ、アルバム全体としては安定感のある出来になっていたのは間違いありません。バンドは間違いなく今、いい状態なのでしょう。一時期に比べて、売上という面では落ち着いた感じはあるのですが、これだけ良い状態なのですが、ひょっとしたらまた人気も上向きになってくるかも。結成から20年以上を経過したベテランバンドである彼らですが、まだまだこれからも楽しみです。

評価:★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
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2024年9月 5日 (木)

こちらもアイドル系が上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsも男女アイドルグループが1位2位に並んでいます。

まず1位は男性アイドルグループBE:FIRSTの2枚目のアルバム「2:BE」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上10万6千枚で1位初登場。前作「BE:1」の初動16万1千枚(1位)からダウンしています。

そして2位は韓国の女性アイドルグループIVE「ALIVE」が初登場。6曲入りのミニアルバム。CD販売数では本作が1位ながらもダウンロード数は20位に留まり、総合順位は2位となりました。オリコンでは初動売上9万9千枚で2位初登場。直近作のEP盤「IVE SWITCH」の初動1万4千枚(3位)からアップ。

3位は先週1位の米津玄師「LOST CORNER」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位にはaiko「残心残暑」が初登場。約1年5か月ぶりとなるニューアルバム。5位初登場はトゲナシトゲアリ「棘ナシ」。アニメ「ガールズバンドクライ」から誕生した劇中バンドによる新作。6位にはご存じB'zの松本孝弘によるソロアルバムTAK MATSUMOTO「THE HIT PARADEⅡ」がランクイン。彼が歌謡曲を中心にカバーしたアルバムの第2弾。7位には「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」が初登場でランクイン。クリープハイプへのトリビュートアルバムで、SEKAI NO OWARIやUNISON SQUARE GARDENなど豪華のミュージシャンが参加しています。

さらに8位には小沢健二「LIFE」がランクイン。1994年にリリースされたオザケン最盛期のアルバムで、かつJ-POP史に残る名盤という評価を受けている作品。アナログ盤がリリースとなり、その売上でベスト10入りという結果になっています。

9位にはLOVEBITES「LOVEBITES EP Ⅱ」が初登場。女性5人組ヘヴィーメタルバンド。そして10位には日韓共同プロジェクトによる男性アイドルグループHi-Fi Un!corn「FANTASIA」がランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位はKvi Baba「Friends, Family & God (feat. G-k.i.d & KEIJU)」が初登場でランクイン。2019年にデビューした男性シンガーソングライター/ラッパー。2023年にシングル「TOMBI」がアニメ「TRIGUN STAMPEDE」のオープニングテーマに起用され、話題となりました。本作はレゲエ調のメロウなナンバーで、タイトルで想像できるように家族や仲間に感謝という歌詞。彼のリスナー層には、まだまだこの手のテーマがうけるということでしょうか。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週のTikTok Weeklyは今週もMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が1位獲得。これで4週連続1位となりました。TikTokではロングヒットを記録しています。

今週もニコニコ VOCALOID SONGS TOP20の発表はなし。いつ再開されるんだろうか・・・。今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年9月 4日 (水)

女性アイドルグループが目立つ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は女性アイドルグループが非常に目立つチャートとなっています。

まず1位初登場は女性アイドルグループME:I「Hi-Five」。韓国発のオーディション案組の日本版「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」から登場したアイドルグループ。CD販売数2位、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数2位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上24万9千枚で2位初登場。前作「MIRAI」の初動23万2千枚より若干のアップとなっています。

2位はSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属の男性アイドルグループ、なにわ男子「コイスルヒカリ」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数5位、ラジオオンエア数16位。映画「恋を知らない僕たちは」主題歌。オリコンでは初動売上40万枚で1位初登場。前作「I Wish」の初動37万枚(1位)よりアップしています。

そして3位にはMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の4位からランクアップし、再びベスト3入り。ストリーミング数は今週で11週連続の1位をキープ。動画再生回数も先週と変わらず4位を維持。これで20週連続のベスト10ヒット&通算13週目のベスト3ヒットとなりました。ちなみにMrs.GREEN APPLE「familie」は5位から6位にダウンしましたが、今週も2曲同時ベスト10入り。ただ、以下、14位に「青と夏」、17位に「ケセラセラ」と4曲同時ベスト20入りとなっていますが、「点描の唄 feat.井上苑子」はベスト20圏外にランクダウンとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、女性アイドルの曲が並んでいます。まず4位には声優アイドルグループ≠ME「夏が来たから」がランクイン。CD販売数3位。オリコンでは初動売上19万枚で3位初登場。前作「アンチコンフィチュール」の初動18万2千枚(1位)からアップ。

5位はハロプロ系アイドルグループつばきファクトリー「ベイビースパイダー」が初登場。CD販売数4位。オリコンでは初動売上5万9千枚で4位初登場。前作「勇気 It's my Life!」の初動6万枚(2位)から微減。

そして9位には秋元康系アイドルグループNGT48「一瞬の花火」がランクイン。CD販売数5位。オリコンでは初動売上5万5千枚で5位初登場。前作「あのさ、いや別に...」の初動5万2千枚(2位)より微増。

またロングヒット曲ですが、まずはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週6位から8位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず3位。動画再生回数は6位から5位に若干のアップ。またカラオケ歌唱回数も変わらず2位をキープ。これで33週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、長くベスト10ヒットを続けていたOmoinotake「幾億光年」は今週11位にダウン。ついにベスト10ヒットは連続28週でストップとなりました。ただし、ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープ。来週以降のベスト10返り咲きの可能性も高そうです。

今週のベスト10ヒットは以上。Hot Albums&各種チャートはまた明日!

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2024年9月 3日 (火)

山口冨士夫在籍時の貴重な音源

Title:屋根裏 YaneUra Oct.'80
Musician:裸のラリーズ

ここ最近、かつて幻と言われていた音源の再発からスタートし、多くのライブ音源がCDとしてリリース。「幻のバンド」から、徐々にその実態を世に現わしてきている裸のラリーズ。今回もまた、ライブ音源がリリースされました。今回リリースされた音源は、1980年10月29日に東京のライブハウス、屋根裏で行われたライブ音源を収録したもの。このライブ音源が非常に貴重なものであるのは、村八分やTEARDROPSでの活動でも知られる伝説的なギタリスト、山口冨士夫が参加した音源であるため。山口冨士夫は1980年にラリーズに加入し、翌年の3月には脱退。その期間中、行ったライブ活動はわずか7回だったそうで、このライブ音源はそのうちの1回を収録したものということですから、その貴重さはわかるかと思います。

そんな、まさに日本ロック史上に残る貴重なライブの模様を収めた音源であるのですが、まず感じるのは非常に音がいい、ということ。1980年という時代のライブハウスでの音源でもあるにも関わらず、かなり音はクリアに聴こえます。いままで聴いたラリーズのライブアルバムのうち、60年代70年代に比較してももちろんのこと、90年代の録音音源である「CITTA '93」と比べても遜色ありませんし、「BAUS '93」と比べると、こちらの方がより録音状態は良好になっています。

また、山口冨士夫が加わり、ツインギターの体制となったことにより、むしろ音的にはまとまり、裸のラリーズの目指す音楽の方向性がクリアになっているようにすら感じました。

今回の山口冨士夫のギターは、水谷孝のギターと対立して緊迫感あるプレイを聴かせる、というよりも2人が協力してラリーズの音楽を作り上げているというように思います。例えば「俺は暗黒」では2人のギタープレイを聴かせてくれていますが、どちらもノイズを響かせる強烈なギターサウンドを対立させることなく、ともにラリーズのサイケな音世界を作り上げていますし、それは続く「氷の炎」でも同様。本作でももちろん、これでもかというほど狂暴な、ノイズギターの洪水に圧倒されるアルバムになっているのですが、水谷孝と山口冨士夫の2人の共演により、裸のラリーズの世界が、より強調されたように感じました。

また、このツインギターの効用としてもうひとつ感じたのは、他のライブアルバムに比べると水谷孝の「歌」がより目立つものになっていたように感じます。個人的な推測に過ぎないのですが、山口冨士夫のギターがあるからこそ、水谷孝は自身の歌により集中できたのかもしれません。結果、裸のラリーズが狂気のギターサウンドの裏に実は隠し持っていた「ポップ」な部分を強く感じることが出来たように思います。

ある意味、この点でもっとも印象的だったのが彼らの代表作でもある「夜、暗殺者の夜」で、強烈なギターノイズに、メロディアスなギターが絡むような構成となっており、他のライブ音源などに比べても、よりメロディアスな部分が強調されていたようにすら感じました。

これだけライブ音源として「まとまりがあってポップだ」と書いてしまうと、特に裸のラリーズのようなタイプのバンドだと、むしろライブ音源としてまとまりすぎており、緊迫感という意味では他のアルバムの方が上だ・・・と捉えられてしまうかもしれません。しかし、実態としては全くそんなことはなく、ライブ音源として裸のラリーズの狂気や緊迫感はこのアルバムでもしっかり捉えられています。ともすればギターノイズを強調しすぎるあまり、むしろ音的に割れてしまったような音源もある中、今回のライブ音源は間違いなく、裸のラリーズのバンドとしての実力、魅力がしっかりと収められているアルバムとなっており、個人的にはいままで聴いたライブ音源の中でベストに上げても過言ではない作品ですらあったように感じました。

それだけ山口冨士夫のギターは、裸のラリーズのサウンドのひとつのパーツとしてピッタリとあてはまっていたと思うのですが、1年程度、わずか7回のライブだけで脱退してしまったというのは、この音源の内容を考えると、逆に意外に感じてしまいます。まあ、水谷孝と山口冨士夫という2人の個性的なギタリストが、やはり長く同じバンドで活動できなかったのでしょうね。ただ、他の回のライブ音源も世に出てくれないかな、とも期待してしまったりして。どんどん音源の発掘が進むラリーズ。今後、どのような音源が出てくるのかも、楽しみです。

評価:★★★★★

裸のラリーズ 過去の作品
67-’69 STUDIO et LIVE
MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
'77 LIVE
CITTA'93
BAUS'93

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2024年9月 2日 (月)

「長谷川白紙」のアルバム

Title:魔法学校
Musician:長谷川白紙

フルアルバムとしては約4年8か月ぶりと、ちょっと久々となるシンガーソングライター、長谷川白紙のニューアルバム。今回のアルバムで大きな話題となっているのが、かのFlying Lotusが主宰するレーベル、Brainfeederへの移籍後初となる作品という点。海外への積極的な進出・・・といった感じではないのでしょうが、ただネットの普及により、海外のレーベルとの距離も一気に近づき、よりボーダーレスな活動が可能になっているように感じます。

また、もう今回のアルバムリリースに際してひとつのトピックスとなったのが、いままで頑なに拒んでいた自身の写真を今回公開したという点。いままで、長谷川白紙を「男性シンガーソングライター」と勝手に書いてしまっていたのですが、いままでジェンダーも公開していなかったようで、かつてTwitterで、音楽を聴く上で男か女かは意味をなさない、という趣旨の発言もしていたそうです。実際、公開された白紙のアーティスト写真は、やはりジェンダーレスを意識したような写真となっています。

女性が歌うこと、あるいは男性が歌うことに意味のある曲もあるので、楽曲において性別が関係ない、とまでは言えないのですが、ただ実際、ファルセットボイスで美しく聴かせる白紙の歌にジェンダーは意味をなさないのかもしれません。今回のアルバムでも、現代ジャズな要素を取り入れたアバンギャルドなサウンドの中で鳴り響く白紙のボーカルは、あくまでも楽曲の中の様々なサウンド要素のひとつとなっており、ジェンダーは意識されません。さらに言えば今回のアルバムでは、よりファルセットを強調し、性別不詳な感は強くなっており、よりジェンダーレスを意識したボーカルスタイルをとっているように感じます。

さらに今回のアルバムに関しては前作「エアにに」と比べてよりアバンギャルドな要素が強く、かつそんなサウンドをより前に押し出したような楽曲が増えたように感じます。アルバムの冒頭を飾る「行っちゃった」はまさにそんなアバンギャルドさを前面に押し出した、迫力あるサウンドが襲い掛かるような楽曲になっていますし、KID FRESINOとのコラボ曲となった「行つてしまった」も、これでもかというほどBPMをあげたサウンドで突っ走るアバンギャルドなサウンドが特徴的です。

ただ一方で、ファルセット主体で聴かせる長谷川白紙の「歌」はこのアバンギャルドなサウンドの中でも非常にポップに鳴り響いています。バーチャルシンガー花譜への提供曲のセルフカバーである「蕾に雷」では、ジャズの要素も強いサウンドの中、清涼感ある歌をポップに聴かせてくれていますし、ピアノアルペジオ主体と本作の中では比較的シンプルなサウンドとなっている「禁物」では、メランコリックな歌は心に響いてきます。

さて、そんなアバンギャルドさとポップスさを兼ね備えた本作ですが、海外のレーベルからのリリースという意味でのボーダーレス、性別を意識させないボーカルスタイルという意味でのジェンダーレス、音楽を楽しむ上では、本来「不要」であるはずの「壁」を取り除いた作品になっていたように感じます。もっと言えば、このボーダーレスやジェンダーレスをあまり意識させない点も大きな特徴だったように感じます。特にジェンダーレスに関しては、この点を意識した場合、あえて前に押し出しているミュージシャンが多いように感じます。ただ長谷川白紙の本作に関しては、その点も非常に自然体。そういう意味でも、純粋に長谷川白紙というひとりのシンガーソングライターによる音楽を楽しめるアルバムと言えるのかもしれません。個人的には、サウンド的にちょっと詰め込みすぎていて、「エアにに」の方が良かったかな、とは思うのですが、それを差し引いても十分傑作と言える作品だったと思います。ごちゃごちゃと理屈抜きで、「壁」を作らずに純粋に「長谷川白紙のアルバム」として楽しみたい1枚でした。

評価:★★★★★

長谷川白紙 過去の作品
エアにに
夢の骨が襲いかかる!

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2024年9月 1日 (日)

いかにも80年代という時代を感じる

Title:ゴールデン☆ベスト 1986-1989 MOON YEARS
Musician:CADILLAC

複数のレコード会社が共同で使用している廉価版ベストシリーズ、ゴールデン☆ベスト。そのミュージシャンの代表曲が、CD1枚もしくは2枚程度のボリュームで網羅されているため、入門盤としてはピッタリのシリーズ。今回紹介するのは1980年代に活動していた3人組ロックバンド、CADILLACのベストアルバムです。

といっても、CADILLACというバンド、音源を聴くのもはじめてなら、名前を聴くのも完全にはじめて。1982年に結成し、1986年にシングル「悲しきRadio Station」、アルバム「キャディラック」でデビュー。1987年にはシングル「青春のあいうえお」がTBS系ドラマ「毎度おさわがせします3」の挿入歌に起用、さらにシングル「NO NO NO」が同じくTBS系ドラマ「オヨビでない奴!」の主題歌にも起用。当時はレコード会社的にもかなり「売ろう」としていたことを感じさせます。

ただ、残念ながら大ブレイクには至らず。オリコンの情報によると、デビュー作「悲しきRadio Station」は最高位27位と、デビュー作としてはそこそこ好調なスタートを切ったようですが、ドラマ挿入歌となった「青春のあいうえお」も最高位21位と、そこそこのヒットは記録したものの大ヒットには至っていません。結果、1989年にシングル7枚、アルバム5位をリリースして解散。ただ、2007年には再結成し、アルバムもリリース。現在もライブを中心に活動を続けているようです。

今回のゴールデン☆ベストでは、彼らの代表曲を網羅。アルバム未収録だった「先生!あんた踊れるか?」「NO NO NO」も収録されています。ジャケット写真からもわかるように、不良性を前に出してきた、いかにも風貌のロックンロールバンドといった感じで、特に髪型については若干の時代性も感じさせます。

楽曲的には昔ながらのロックンロールの影響を感じさせる楽曲。「holiday」「キャロライン」などはいかにもオールドファッションなロックンロールやロカビリーの影響を受けたを聴かせてくれています。ただ一方で、パッと聴いた感じだと、ロックンロールやロカビリーという色合いよりも歌謡曲の色合いを強く感じます。ドラマ主題歌となっている「NO NO NO」などはまさに典型で、ロックンロールの影響を感じさせつつも、メロディーラインはもろに歌謡曲。「青春のあいうえお」もまた、哀愁感漂うメロディーラインはいかにも歌謡曲的です。

おそらく、80年代という時代により、今よりルーツ志向を前に押し出すことが出来ず、また、事務所的に売ろうとしているスタンスがあるため、必要以上に歌謡曲的になってしまっているような印象を受けます。おそらく、様々なタイプの曲がヒットするようになってきた今だったら、もっとロックンロール色を押し出したような作品がリリースできたのではないか、と残念には感じてしまいます。

メジャーデビューから最初の解散までがわずか3年と短かったことも含めて、正直、業界に翻弄されちゃったのかな、ということも感じます。もっとも、それを含めて彼らの実力だった、と言われると否定はできないのですが。全体的に80年代という時代を感じさせる楽曲にはある種のなつかしさも感じるベスト盤でした。

評価:★★★★

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