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2024年9月

2024年9月 9日 (月)

シューゲイザーシーンを網羅

Title:Still in a Dream: Story of Shoegaze 1988-1995

これはなかなかすごいボックスセットです。主に1990年にイギリスで生まれ、インディーシーンを中心に多くの支持を得て、30年以上経た今でも、脈々とその影響が続いているジャンル、シューゲイザー。そのシーンの楽曲を一堂に会した5枚組のボックスセットとなるのが本作。もともと2016年にリリースされていたのですが、今年、再プレスして再リリース。遅ればせながら、この圧巻のボックスセットを聴いてみました。

参加しているミュージシャンたちも申し分なく豪華。ボックスセットのスタートは、まさにシューゲイザーの祖とも言えるTHE JESUS AND MARY CHAINの「Rollercoaster」からスタート。その後もCocteau TwinsやThe House Of Loveといった黎明期のミュージシャンたちの曲が並び、Spaceman3やGalaxie 500といったバンドがDisc1に収録。Disc2はまさにシューゲイザー全盛期といったミュージシャンたちが並び、RIDEやChapterhouse、SWERVEDRIVERにSlowdiveといったシューゲイザーの代表格が並びます。

その後もSpiritualizedやFlaming Lips、Mercury Revといった、どちらかというとポストロックやドリームポップにカテゴライズされつつも、シューゲイザーからの影響も強いバンドも網羅。また、今回のボックスセットでは主に英米のミュージシャンたちがほとんどを占める中、英米以外のシューゲイザーバンドも収録。その中には日本からかのCOALTER OF THE DEEPERSが参加。収録曲Charming Sister Kiss Me Dead!!」はノイジーでダイナミックなバンドサウンドにキュートなメロというシューゲイザーの王道を行くような楽曲が収録されており、他の曲と比べても、日本のバンド代表として十分にその実力を感じさせる楽曲を聴かせてくれていました。

また、シューゲイザーと一言で言っても、様々なタイプの楽曲が収録されており、その耳を楽しませてくれています。個人的に気に入ったのが、例えばA.C.Mariasの「One Of Our Girls Has Gone Missing」は、ニューウェーヴ的な打ち込みに、清涼感あふれるクリアな女性ボーカルが魅力的。THE CHARLOTTESの「Liar」も、力強いバンドサウンドに女性ボーカルのポップでキュートなメロの王道的なシューゲイザーなのですが、シンプルでポップなメロが個人的には好み。CURVEの「Drive Blind」も、ノイジーなギターサウンドに加えて、非常にグルーヴ感あふれるバンドサウンドが耳を惹きます。

FLAMING LIPSの「Talkin' 'Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To Live Forever) 」もホワイトノイズのバンドサウンドとキュートなメロといったシューゲイザーのスタイルを保ちつつ、どこかコミカルで捻くれたサウンドになっているのが彼ららしい感じ。MEDICINEの「Aruca」も破壊的でメタリックのサウンドながらも、バックのボーカルが非常にキュートでポップなこのアンバランスさもシューゲイザーの魅力といった感じでしょうか。同じようにFLYING SAUCER ATTACKの「Soaring High」も強烈な不協和音的なノイズで埋め尽くされていながらも、バックに流れるメロは至ってポップでキュートといったあたりもシューゲイザーらしさを感じます。

そんなバリエーションを感じながらも、どの曲も楽器を埋め尽くすようなノイジーなギターサウンドと、そのサウンドに隠れるようなキュートでポップなメロディーという点が共通項。ギターのホワイトノイズもメロディーラインもどちらも非常に心地よさを感じさせますし、その心地よさが直感的に多くのリスナーを魅了するからこそ、いまだにフォロワーが登場してくるような、一部で根強い支持を受け続けているのでしょう。今回も全5枚組というボリューム量ながらも、聴いていてそのサウンドとメロに終始魅了される、夢のような時間を過ごすことが出来ました。シューゲイザー好きなら文句なくお勧めのボックスセットです。

評価:★★★★★

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2024年9月 8日 (日)

全盛期のblurのナンバーを連発

Title:Live At Wembley
Musician:blur

昨年、8年ぶりのニューアルバム「The Ballad of Darren」をリリース。サマソニにも来日したblur。最近は、時折「これが最後」という発言をしながらも、断続的な活動が続いていますが、昨年11月には再び活動休止を宣言。しかし、その後もまたライブに出演するなど、結局、blurとしての活動を続けています。もう、別にわざわざ活動休止を宣言しなくても、メンバー全員、時間が合った時に断続的に活動を続ければいいと思うのですが・・・。

今回、彼らがリリースしたアルバムは昨年7月8日、9日にイギリスのウェンブリー・アリーナで行われたblur史上最大規模での開催となったライブの模様を収録したライブアルバム。スタジアムライブらしいスケール感を感じさせるパフォーマンスで、特に彼らの代表曲が演奏された時の盛り上がりに感じる広い会場全体を覆うような一体感には、スタジアムライブらしいダイナミックさを感じます。

今回のライブアルバムで特徴的なのはそのセットリスト。バンド史上最大規模のライブということもあって、彼らのその代表曲を惜しげもなく披露しています。最新アルバムからのナンバー「St Charles Square」に続いては、いきなり「There's No Other Way」からスタート。前半でも「Coffee&TV」を披露しているほか、後半戦に入ると「End of a Century」「Country House」「Parklife」「Song2」「This Is a Low」と代表曲が続き、会場のテンションが一気に上がる中、おなじみ「Girls&Boys」で大盛り上がり。その後も「Tender」を披露するなど、まさに代表曲づくしのセットリストとなっています。

さらに大きな特徴として、彼らの勢いが最も強かった1993年の「Modern Life Is Rubbish」、1994年の「Parklife」からの選挙区が特に多いのも特徴的。「Modern Life Is Rubbish」からは5曲が、「Parklife」からはなんと6曲が選曲されています。他に「The Great Escape」からは3曲と意外と少な目。「blur」からは4曲が選曲。26曲中18曲までが、1993年から1997年までのナンバーに集中しています。

一方、最新アルバム「The Ballad of Darren」からはわずか2曲。「13」からは2曲、「Leisure」からは1曲、「Think Tank」からもわずか1曲。さらに前々作「The Magic Whip」からは選曲なしという構成に。ベテランバンドがこの手のベスト的なセットリストが組まれる時に、得てして全盛期以降の比較的最近の曲を選曲しがちなのですが、ほとんどが彼らの全盛期のナンバーからの選曲となっているあたり、彼らの潔さを感じます。

また、そんな選曲になっており、彼らの1990年代の楽曲をあらためて聴いてみたからこそ、blurの魅力、あれだけ人気のあった理由をあらためて実感できるライブ盤になっていました。軽快でポップ、わかりやすいメロディーラインを書きながらも、サウンドにしろメロディーにしろ、どこかひねりが加わり、単純なポップにならないとするアイロニック的な視点を感じさせますし、一工夫の入ったサウンドからは彼らのウィットさも感じさせます。

blurといえば90年代のブリットポップブームの中、最近、再結成が大きな話題を呼んだoasisと比較されることが多いのですが、王道路線を行くようなoasisのロックに比べて、ポップより、かつ王道をあえて外したようなblurの楽曲はまさしく対照的。この両者がしのぎを削っていた90年代のイギリスのロックシーンは、本当にすごかったよな・・・と、リアルタイムを経験した身にとってはなつかしさも感じてしまいました。

まさにblurの魅力のつまったベスト盤的なライブアルバム。あらためてblurのすごさも感じましたし、入門盤としてもピッタリのアルバムだったと思います。しかし、blurのライブ、一度生で見てみたい!また、是非日本に来日してライブを披露してほしいものです。

評価:★★★★★

blur 過去の作品
MIDLIFE:A Beginner's Guide to Blur
All the People... Live in Hyde Park: 2nd July 2009
PARKLIVE
The Magic Whip
THE BALLADS OF DARREN

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2024年9月 7日 (土)

最新作は映画のサントラ盤

Title:Confidenza
Musician:Thom Yorke

ご存じRADIOHEADのボーカリスト、トム・ヨークの最新作は映画のサントラ盤。イタリアの映画監督、ダニエレ・ルケッティ監督の最新作「Confidenza」の音楽を担当し、その映画に使われた曲が収録されているのが本作となります。ちなみに、この映画「Confidenza」は残念ながら日本では一般の映画館では公開されていないようで、「信頼」という邦題がつけられて、5月に行われたイタリア映画祭でのみ公開されたようです。

映画のサントラ盤というと、どちらかというと単発的なアイディアをちりばめたような、短いインスト曲が並び、映画を見ていない人が単独で聴くとちょっと厳しい部分がある、という曲が少なくありません。今回のアルバムに関しても、正直、そういう部分もあることは否めません。全12曲入り36分という長さのアルバムで、1分代の短い曲が3曲、1分に満たない曲も1曲収録。短いインスト曲も少なくありません。ただ、それでもこのサントラ盤は、しっかりとトム・ヨークの魅力の詰まったアルバムに仕上がっていました。

1曲目の「The Big City」から、まずはトム・ヨークの本領発揮的な1曲。不気味な雰囲気ただようエレクトロサウンドにストリングスの音色が重なり、幻想的な曲調となっているこの曲は、いわばRADIOHEADの延長戦上にも感じるメランコリックさを覚える1曲。続く「Knife Edge」も静かでメランコリックな歌が印象的な歌モノの1曲。こちらも優しく聴かせるメロディーラインにトム・ヨークのメロディーメイカーとしての才が発揮されています。

中盤の同じく歌モノの「Four Ways In Time」も、メランコリックに歌い上げる歌と哀愁感漂うストリングスのサウンドが印象的。全体的にホーンやストリングスを使って、醸し出す不気味で幻想的な雰囲気が特徴的。楽曲にはアバンギャルドさを感じ、一歩間違えると一気に崩れ落ちそうな危うささを感じさせます。映画は、お互い公になると人生が壊れてしまうような秘密をお互いに打ち明けた男女の物語ということなのですが、この楽曲のスリリングさは、その映画の内容に沿ったもの、といった感じでしょうか。そしてその一方で、そんなスリリングな楽曲の中に流れるメランコリックなメロディーラインにはトム・ヨークらしさを感じます。

最後は賑やかでアバンギャルドな「On The Ledge」で締めくくり。明るい雰囲気ながらも、全体的にごちゃごちゃで崩れ去ってしまいそうな雰囲気は映画のラストともマッチするのでしょうか。最後の締めくくりとしてはまとまりがなく終わった感もあるのですが、それはそれでまた、アルバムに大きなインパクトを与えていたように感じます。

文句なしにトム・ヨークの新作として聴くべき傑作アルバム。映画のサントラ盤ですが、トム・ヨークの最新のオリジナルアルバムの1枚として考えても全く問題ない内容だったと思います。トム・ヨークらしさを存分に感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Thom Yorke 過去の作品
The Eraser Rmx
Tomorrow's Modern Boxes
Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film)
Suspiria Unreleased Material
ANIMA
Not The News Rmx EP


ほかに聴いたアルバム

Louis In London (Live At The BBC)(邦題:この素晴らしき世界~ルイ・イン・ロンドン・ライヴ・アット・ザ・BBC)/Louis Armstrong

ご存じ、ジャズ・ミュージシャンのレジェンド中のレジェンド、サッチモことルイ・アームストロング。本作は1968年7月2日にイギリスBBCで録音された、生前最後のライヴ音源。内容的に彼も相当気に入っていたようで、録音を収録したテープを友人に送り、来客があるたびに聴かせていたそうです。ただ、それだけリリースを望んでいた音源にもかかわらず、いままで音源がリリースされることはなく。彼の死から50年以上を経て、ようやく音源としてリリースされました。

おそらく誰もが知っているであろう「この素晴らしき世界」を含む、彼の代表曲が収録されている本作。ライヴ音源ということで、より自由に楽しむようなパフォーマンスが収録されているのですが、生前最後、という飾り言葉がつくアルバムでありながらも、パフォーマンスに全く衰えはなく、サッチモの、時には陽気に、時にはムーディーにしっかりと聴かせるパフォーマンスが収録されています。まあ、「生前最後」といっても、亡くなるのは、ここから3年も先の話なのですが。代表曲が多く収録されている点でも入門盤としても最適な1枚。彼のパフォーマンスが存分に楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

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2024年9月 6日 (金)

安定した良作

Title:CIRCLES
Musician:Monkey Majik

ここ最近のMonkey Majikは、楽曲の安定感が非常に増したように感じます。もともと2016年の「southview」、2018年の「enigma」が脂ののりまくった傑作アルバムに。その後の「northview」「curtain call」も、その2作には及ばないものの、洋楽テイストと邦楽テイストがバランスよくブレンドされた、Monkey Majikらしさを感じさせる良作が続いていました。

本作は、そんな中、前作から約1年半のインターバルでリリースされた彼ら14作目となるオリジナルアルバム。前作からのリリース間隔の短さにも彼らの勢いを感じさせますが、今回も彼ららしさを感じさせる良作となっていました。

楽曲は、メランコリックでソウルテイストも強い「Scramble」からスタート。続く「O.G.Summer」はDef Techが参加したホーンセッションも軽快な、リズミカルで疾走感あるポップチューン。メランコリックなメロのギターロックテイストの強い「HYLMN」に、エレクトロポップ「Imposter」と、バラエティー富んだ展開が続いていきます。

その後も爽快なギターとメランコリックな歌が印象的な「Borderline」、ピアノバックにしんみり聴かせるJ-POPらしいバラードナンバー「Unknown」、そして締めくくりはエレクトロサウンドでメランコリックに聴かせる「be with you」で締めくくりとなります。

基本的にはJ-POP色が強いのですが、バタ臭さを感じるメランコリックなメロディーラインは洋楽テイストをたっぷりと含んだ感じ。この洋楽っぽいけど、メロなど基本路線はJ-POPであるため日本人にも聴きやすいという絶妙なバランスこそが彼らの大きな魅力。今回のアルバムでもそんなMonkey Majikの魅力を存分に味わうことが出来ました。

ただ、基本的には良作であることは間違いないのですが、一方で目新しさはありませんでしたし、正直、全体的には無難にまとまっていたのも事実。一定の安定感ある作品に仕上がっていた点は間違いないのですが、出来としては「southview」「enigma」には及ばなかったかな、というのが正直な感想です。

とはいえ、アルバム全体としては安定感のある出来になっていたのは間違いありません。バンドは間違いなく今、いい状態なのでしょう。一時期に比べて、売上という面では落ち着いた感じはあるのですが、これだけ良い状態なのですが、ひょっとしたらまた人気も上向きになってくるかも。結成から20年以上を経過したベテランバンドである彼らですが、まだまだこれからも楽しみです。

評価:★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number
southview
enigma
COLLABORATED
northview
20th Anniversary BEST 花鳥風月
curtain call

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2024年9月 5日 (木)

こちらもアイドル系が上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsも男女アイドルグループが1位2位に並んでいます。

まず1位は男性アイドルグループBE:FIRSTの2枚目のアルバム「2:BE」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上10万6千枚で1位初登場。前作「BE:1」の初動16万1千枚(1位)からダウンしています。

そして2位は韓国の女性アイドルグループIVE「ALIVE」が初登場。6曲入りのミニアルバム。CD販売数では本作が1位ながらもダウンロード数は20位に留まり、総合順位は2位となりました。オリコンでは初動売上9万9千枚で2位初登場。直近作のEP盤「IVE SWITCH」の初動1万4千枚(3位)からアップ。

3位は先週1位の米津玄師「LOST CORNER」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位にはaiko「残心残暑」が初登場。約1年5か月ぶりとなるニューアルバム。5位初登場はトゲナシトゲアリ「棘ナシ」。アニメ「ガールズバンドクライ」から誕生した劇中バンドによる新作。6位にはご存じB'zの松本孝弘によるソロアルバムTAK MATSUMOTO「THE HIT PARADEⅡ」がランクイン。彼が歌謡曲を中心にカバーしたアルバムの第2弾。7位には「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」が初登場でランクイン。クリープハイプへのトリビュートアルバムで、SEKAI NO OWARIやUNISON SQUARE GARDENなど豪華のミュージシャンが参加しています。

さらに8位には小沢健二「LIFE」がランクイン。1994年にリリースされたオザケン最盛期のアルバムで、かつJ-POP史に残る名盤という評価を受けている作品。アナログ盤がリリースとなり、その売上でベスト10入りという結果になっています。

9位にはLOVEBITES「LOVEBITES EP Ⅱ」が初登場。女性5人組ヘヴィーメタルバンド。そして10位には日韓共同プロジェクトによる男性アイドルグループHi-Fi Un!corn「FANTASIA」がランクインしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

Heatseekers Songs1位はKvi Baba「Friends, Family & God (feat. G-k.i.d & KEIJU)」が初登場でランクイン。2019年にデビューした男性シンガーソングライター/ラッパー。2023年にシングル「TOMBI」がアニメ「TRIGUN STAMPEDE」のオープニングテーマに起用され、話題となりました。本作はレゲエ調のメロウなナンバーで、タイトルで想像できるように家族や仲間に感謝という歌詞。彼のリスナー層には、まだまだこの手のテーマがうけるということでしょうか。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週のTikTok Weeklyは今週もMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が1位獲得。これで4週連続1位となりました。TikTokではロングヒットを記録しています。

今週もニコニコ VOCALOID SONGS TOP20の発表はなし。いつ再開されるんだろうか・・・。今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年9月 4日 (水)

女性アイドルグループが目立つ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は女性アイドルグループが非常に目立つチャートとなっています。

まず1位初登場は女性アイドルグループME:I「Hi-Five」。韓国発のオーディション案組の日本版「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」から登場したアイドルグループ。CD販売数2位、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数2位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上24万9千枚で2位初登場。前作「MIRAI」の初動23万2千枚より若干のアップとなっています。

2位はSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属の男性アイドルグループ、なにわ男子「コイスルヒカリ」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数5位、ラジオオンエア数16位。映画「恋を知らない僕たちは」主題歌。オリコンでは初動売上40万枚で1位初登場。前作「I Wish」の初動37万枚(1位)よりアップしています。

そして3位にはMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週の4位からランクアップし、再びベスト3入り。ストリーミング数は今週で11週連続の1位をキープ。動画再生回数も先週と変わらず4位を維持。これで20週連続のベスト10ヒット&通算13週目のベスト3ヒットとなりました。ちなみにMrs.GREEN APPLE「familie」は5位から6位にダウンしましたが、今週も2曲同時ベスト10入り。ただ、以下、14位に「青と夏」、17位に「ケセラセラ」と4曲同時ベスト20入りとなっていますが、「点描の唄 feat.井上苑子」はベスト20圏外にランクダウンとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、女性アイドルの曲が並んでいます。まず4位には声優アイドルグループ≠ME「夏が来たから」がランクイン。CD販売数3位。オリコンでは初動売上19万枚で3位初登場。前作「アンチコンフィチュール」の初動18万2千枚(1位)からアップ。

5位はハロプロ系アイドルグループつばきファクトリー「ベイビースパイダー」が初登場。CD販売数4位。オリコンでは初動売上5万9千枚で4位初登場。前作「勇気 It's my Life!」の初動6万枚(2位)から微減。

そして9位には秋元康系アイドルグループNGT48「一瞬の花火」がランクイン。CD販売数5位。オリコンでは初動売上5万5千枚で5位初登場。前作「あのさ、いや別に...」の初動5万2千枚(2位)より微増。

またロングヒット曲ですが、まずはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今週6位から8位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず3位。動画再生回数は6位から5位に若干のアップ。またカラオケ歌唱回数も変わらず2位をキープ。これで33週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、長くベスト10ヒットを続けていたOmoinotake「幾億光年」は今週11位にダウン。ついにベスト10ヒットは連続28週でストップとなりました。ただし、ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープ。来週以降のベスト10返り咲きの可能性も高そうです。

今週のベスト10ヒットは以上。Hot Albums&各種チャートはまた明日!

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2024年9月 3日 (火)

山口冨士夫在籍時の貴重な音源

Title:屋根裏 YaneUra Oct.'80
Musician:裸のラリーズ

ここ最近、かつて幻と言われていた音源の再発からスタートし、多くのライブ音源がCDとしてリリース。「幻のバンド」から、徐々にその実態を世に現わしてきている裸のラリーズ。今回もまた、ライブ音源がリリースされました。今回リリースされた音源は、1980年10月29日に東京のライブハウス、屋根裏で行われたライブ音源を収録したもの。このライブ音源が非常に貴重なものであるのは、村八分やTEARDROPSでの活動でも知られる伝説的なギタリスト、山口冨士夫が参加した音源であるため。山口冨士夫は1980年にラリーズに加入し、翌年の3月には脱退。その期間中、行ったライブ活動はわずか7回だったそうで、このライブ音源はそのうちの1回を収録したものということですから、その貴重さはわかるかと思います。

そんな、まさに日本ロック史上に残る貴重なライブの模様を収めた音源であるのですが、まず感じるのは非常に音がいい、ということ。1980年という時代のライブハウスでの音源でもあるにも関わらず、かなり音はクリアに聴こえます。いままで聴いたラリーズのライブアルバムのうち、60年代70年代に比較してももちろんのこと、90年代の録音音源である「CITTA '93」と比べても遜色ありませんし、「BAUS '93」と比べると、こちらの方がより録音状態は良好になっています。

また、山口冨士夫が加わり、ツインギターの体制となったことにより、むしろ音的にはまとまり、裸のラリーズの目指す音楽の方向性がクリアになっているようにすら感じました。

今回の山口冨士夫のギターは、水谷孝のギターと対立して緊迫感あるプレイを聴かせる、というよりも2人が協力してラリーズの音楽を作り上げているというように思います。例えば「俺は暗黒」では2人のギタープレイを聴かせてくれていますが、どちらもノイズを響かせる強烈なギターサウンドを対立させることなく、ともにラリーズのサイケな音世界を作り上げていますし、それは続く「氷の炎」でも同様。本作でももちろん、これでもかというほど狂暴な、ノイズギターの洪水に圧倒されるアルバムになっているのですが、水谷孝と山口冨士夫の2人の共演により、裸のラリーズの世界が、より強調されたように感じました。

また、このツインギターの効用としてもうひとつ感じたのは、他のライブアルバムに比べると水谷孝の「歌」がより目立つものになっていたように感じます。個人的な推測に過ぎないのですが、山口冨士夫のギターがあるからこそ、水谷孝は自身の歌により集中できたのかもしれません。結果、裸のラリーズが狂気のギターサウンドの裏に実は隠し持っていた「ポップ」な部分を強く感じることが出来たように思います。

ある意味、この点でもっとも印象的だったのが彼らの代表作でもある「夜、暗殺者の夜」で、強烈なギターノイズに、メロディアスなギターが絡むような構成となっており、他のライブ音源などに比べても、よりメロディアスな部分が強調されていたようにすら感じました。

これだけライブ音源として「まとまりがあってポップだ」と書いてしまうと、特に裸のラリーズのようなタイプのバンドだと、むしろライブ音源としてまとまりすぎており、緊迫感という意味では他のアルバムの方が上だ・・・と捉えられてしまうかもしれません。しかし、実態としては全くそんなことはなく、ライブ音源として裸のラリーズの狂気や緊迫感はこのアルバムでもしっかり捉えられています。ともすればギターノイズを強調しすぎるあまり、むしろ音的に割れてしまったような音源もある中、今回のライブ音源は間違いなく、裸のラリーズのバンドとしての実力、魅力がしっかりと収められているアルバムとなっており、個人的にはいままで聴いたライブ音源の中でベストに上げても過言ではない作品ですらあったように感じました。

それだけ山口冨士夫のギターは、裸のラリーズのサウンドのひとつのパーツとしてピッタリとあてはまっていたと思うのですが、1年程度、わずか7回のライブだけで脱退してしまったというのは、この音源の内容を考えると、逆に意外に感じてしまいます。まあ、水谷孝と山口冨士夫という2人の個性的なギタリストが、やはり長く同じバンドで活動できなかったのでしょうね。ただ、他の回のライブ音源も世に出てくれないかな、とも期待してしまったりして。どんどん音源の発掘が進むラリーズ。今後、どのような音源が出てくるのかも、楽しみです。

評価:★★★★★

裸のラリーズ 過去の作品
67-’69 STUDIO et LIVE
MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
'77 LIVE
CITTA'93
BAUS'93

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2024年9月 2日 (月)

「長谷川白紙」のアルバム

Title:魔法学校
Musician:長谷川白紙

フルアルバムとしては約4年8か月ぶりと、ちょっと久々となるシンガーソングライター、長谷川白紙のニューアルバム。今回のアルバムで大きな話題となっているのが、かのFlying Lotusが主宰するレーベル、Brainfeederへの移籍後初となる作品という点。海外への積極的な進出・・・といった感じではないのでしょうが、ただネットの普及により、海外のレーベルとの距離も一気に近づき、よりボーダーレスな活動が可能になっているように感じます。

また、もう今回のアルバムリリースに際してひとつのトピックスとなったのが、いままで頑なに拒んでいた自身の写真を今回公開したという点。いままで、長谷川白紙を「男性シンガーソングライター」と勝手に書いてしまっていたのですが、いままでジェンダーも公開していなかったようで、かつてTwitterで、音楽を聴く上で男か女かは意味をなさない、という趣旨の発言もしていたそうです。実際、公開された白紙のアーティスト写真は、やはりジェンダーレスを意識したような写真となっています。

女性が歌うこと、あるいは男性が歌うことに意味のある曲もあるので、楽曲において性別が関係ない、とまでは言えないのですが、ただ実際、ファルセットボイスで美しく聴かせる白紙の歌にジェンダーは意味をなさないのかもしれません。今回のアルバムでも、現代ジャズな要素を取り入れたアバンギャルドなサウンドの中で鳴り響く白紙のボーカルは、あくまでも楽曲の中の様々なサウンド要素のひとつとなっており、ジェンダーは意識されません。さらに言えば今回のアルバムでは、よりファルセットを強調し、性別不詳な感は強くなっており、よりジェンダーレスを意識したボーカルスタイルをとっているように感じます。

さらに今回のアルバムに関しては前作「エアにに」と比べてよりアバンギャルドな要素が強く、かつそんなサウンドをより前に押し出したような楽曲が増えたように感じます。アルバムの冒頭を飾る「行っちゃった」はまさにそんなアバンギャルドさを前面に押し出した、迫力あるサウンドが襲い掛かるような楽曲になっていますし、KID FRESINOとのコラボ曲となった「行つてしまった」も、これでもかというほどBPMをあげたサウンドで突っ走るアバンギャルドなサウンドが特徴的です。

ただ一方で、ファルセット主体で聴かせる長谷川白紙の「歌」はこのアバンギャルドなサウンドの中でも非常にポップに鳴り響いています。バーチャルシンガー花譜への提供曲のセルフカバーである「蕾に雷」では、ジャズの要素も強いサウンドの中、清涼感ある歌をポップに聴かせてくれていますし、ピアノアルペジオ主体と本作の中では比較的シンプルなサウンドとなっている「禁物」では、メランコリックな歌は心に響いてきます。

さて、そんなアバンギャルドさとポップスさを兼ね備えた本作ですが、海外のレーベルからのリリースという意味でのボーダーレス、性別を意識させないボーカルスタイルという意味でのジェンダーレス、音楽を楽しむ上では、本来「不要」であるはずの「壁」を取り除いた作品になっていたように感じます。もっと言えば、このボーダーレスやジェンダーレスをあまり意識させない点も大きな特徴だったように感じます。特にジェンダーレスに関しては、この点を意識した場合、あえて前に押し出しているミュージシャンが多いように感じます。ただ長谷川白紙の本作に関しては、その点も非常に自然体。そういう意味でも、純粋に長谷川白紙というひとりのシンガーソングライターによる音楽を楽しめるアルバムと言えるのかもしれません。個人的には、サウンド的にちょっと詰め込みすぎていて、「エアにに」の方が良かったかな、とは思うのですが、それを差し引いても十分傑作と言える作品だったと思います。ごちゃごちゃと理屈抜きで、「壁」を作らずに純粋に「長谷川白紙のアルバム」として楽しみたい1枚でした。

評価:★★★★★

長谷川白紙 過去の作品
エアにに
夢の骨が襲いかかる!

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2024年9月 1日 (日)

いかにも80年代という時代を感じる

Title:ゴールデン☆ベスト 1986-1989 MOON YEARS
Musician:CADILLAC

複数のレコード会社が共同で使用している廉価版ベストシリーズ、ゴールデン☆ベスト。そのミュージシャンの代表曲が、CD1枚もしくは2枚程度のボリュームで網羅されているため、入門盤としてはピッタリのシリーズ。今回紹介するのは1980年代に活動していた3人組ロックバンド、CADILLACのベストアルバムです。

といっても、CADILLACというバンド、音源を聴くのもはじめてなら、名前を聴くのも完全にはじめて。1982年に結成し、1986年にシングル「悲しきRadio Station」、アルバム「キャディラック」でデビュー。1987年にはシングル「青春のあいうえお」がTBS系ドラマ「毎度おさわがせします3」の挿入歌に起用、さらにシングル「NO NO NO」が同じくTBS系ドラマ「オヨビでない奴!」の主題歌にも起用。当時はレコード会社的にもかなり「売ろう」としていたことを感じさせます。

ただ、残念ながら大ブレイクには至らず。オリコンの情報によると、デビュー作「悲しきRadio Station」は最高位27位と、デビュー作としてはそこそこ好調なスタートを切ったようですが、ドラマ挿入歌となった「青春のあいうえお」も最高位21位と、そこそこのヒットは記録したものの大ヒットには至っていません。結果、1989年にシングル7枚、アルバム5位をリリースして解散。ただ、2007年には再結成し、アルバムもリリース。現在もライブを中心に活動を続けているようです。

今回のゴールデン☆ベストでは、彼らの代表曲を網羅。アルバム未収録だった「先生!あんた踊れるか?」「NO NO NO」も収録されています。ジャケット写真からもわかるように、不良性を前に出してきた、いかにも風貌のロックンロールバンドといった感じで、特に髪型については若干の時代性も感じさせます。

楽曲的には昔ながらのロックンロールの影響を感じさせる楽曲。「holiday」「キャロライン」などはいかにもオールドファッションなロックンロールやロカビリーの影響を受けたを聴かせてくれています。ただ一方で、パッと聴いた感じだと、ロックンロールやロカビリーという色合いよりも歌謡曲の色合いを強く感じます。ドラマ主題歌となっている「NO NO NO」などはまさに典型で、ロックンロールの影響を感じさせつつも、メロディーラインはもろに歌謡曲。「青春のあいうえお」もまた、哀愁感漂うメロディーラインはいかにも歌謡曲的です。

おそらく、80年代という時代により、今よりルーツ志向を前に押し出すことが出来ず、また、事務所的に売ろうとしているスタンスがあるため、必要以上に歌謡曲的になってしまっているような印象を受けます。おそらく、様々なタイプの曲がヒットするようになってきた今だったら、もっとロックンロール色を押し出したような作品がリリースできたのではないか、と残念には感じてしまいます。

メジャーデビューから最初の解散までがわずか3年と短かったことも含めて、正直、業界に翻弄されちゃったのかな、ということも感じます。もっとも、それを含めて彼らの実力だった、と言われると否定はできないのですが。全体的に80年代という時代を感じさせる楽曲にはある種のなつかしさも感じるベスト盤でした。

評価:★★★★

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