« ありそうでなかった対バンライブ | トップページ | 暖かい歌モノの傑作 »

2024年8月11日 (日)

心からワクワクするロック

Title:THE LATEST BEST
Musician:ZIGGY

今年、結成40周年を迎えたロックバンド、ZIGGY。途中、活動休止の時期を挟みながらも、今でも第1線で活動を続けています。特に2017年以降は事実上、森重樹一のソロプロジェクトとなってからはフットワークが軽くなったのか、アルバムシングル共に積極的なリリースが続いています。今回のアルバムは、その2017年以降の作品を収録したベストアルバム。アルバム紹介では「メンバー自らセレクト」と書いてあるのですが、メンバー、森重樹一しかいないじゃん・・・。

このベストアルバム、その特徴を一言で言ってしまうと、笑ってしまうほどベタなロックという点でしょう。冒頭を飾る「I STAY FREE FOREVER」も疾走感あるバンドサウンドにストリングスやピアノが入ってダイナミックさを増したハードロックナンバー。「ROCK'N'ROLL QUEEN」もヘヴィーなギターリフ主導のバンドサウンドに軽快なピアノも加わった、こちらも軽快なハードロックナンバーと、冒頭から勢いのある陽気なロックナンバーを連発していきます。

その後も、ファンキーなベースラインが特徴的な「証」や、シンセも入った、異色的とも言えるダンスチューン「ヒカリノアメ」などの楽曲も交えつつも、基本的にはベタなハードロックナンバーが続きます。また、基本的にはポップなメロディーラインを聴かせてくれる点も大きな特徴で、「虹を見た」はピアノのリズムが軽快なメロディアスなポップチューン。他にも「SWING,DRIVE,ROCK'N'ROLL」「WONDERFUL FEELING」など、軽快で疾走感あるロックナンバーながらもポップなメロがまずは印象に残るような曲が続きます。

全体的にはグラムロックやハードロック、80年代ヘヴィーメタルの流れを感じつつ、サウンド的には90年代J-POPやビートロックからの流れも感じるサウンドで、アラフィフ世代にとっては、かなり懐かしさを感じさせるサウンドになっているように感じます。ポップなメロは歌謡曲的な部分は垣間見れるのもも、こちらは歌謡曲的なウェットさは薄く、全体的にバタ臭くまとめ上げている点も、ロックとして聴きやすさを感じる要因でしょう。一方、以前の彼らの作品に感じられたブルースの要素は薄め。森重樹一のソロプロジェクトとなり、より彼の嗜好が反映された結果でしょうか。

また、ZIGGYというと、シングルヒット曲が「GLORIA」をはじめ90年代初頭のみなのですが、この手のミュージシャンは、特に最新ベストでも往年のヒット曲を「新バージョン」として再録して、最新アルバムやベストに収録しがちなのですが、今回のベスト盤についてはそのような曲はありません。その点も現役バンドとしての矜持を感じされる点もプラスポイントです。

正直なところベタなサウンドで目新しさは感じさせませんし、むしろちょっと時代遅れのように感じてしまう部分も否定は出来ませんが、一方で、勢いのあるバンドサウンドはデビュー40周年を迎えて、衰えない現役感を覚えますし、なによりロックという楽曲が持っているワクワクさを体現化しているように感じます。ベタなサウンドとか、そういうことは抜きとして、まずは心から楽しめるような作品に仕上がっていたと思います。ロック好き、特に80年代90年代のハードロックが好きなら、文句なしにお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW
HOT LIPS
SDR
SO BAD,IT'S REAL


ほかに聴いたアルバム

只者/稲葉浩志

「稲葉浩志」ソロ名義では実に10年ぶりとなる、ご存じB'zのボーカリストによるソロアルバム。「只者」=「何者でもない一人の人間」として、稲葉浩志が自ら綴った歌詞が特徴的な、まさにソロアルバムらしいソロアルバム。ただ、楽曲的には、以前のソロアルバムも同じなのですが、一応、ハードロックに影響を受けたサウンドながらも、歌謡曲テイストが強いルーツレスな作風が特徴的で、この煮えきらない音楽性がどうにも中途半端さを感じてしまってマイナス。音楽的にももっとB'zから離れても面白いとは思うのですが。

評価:★★★★

稲葉浩志 過去の作品
Hadou
Singing Bird
CHERRY GROOVE(INABA/SALAS)
Maximum Huavo(INABA/SALAS)

|

« ありそうでなかった対バンライブ | トップページ | 暖かい歌モノの傑作 »

アルバムレビュー(邦楽)2024年」カテゴリの記事

コメント

初めまして。
稲葉浩志の只者に関してですが、最近のB'zにはほぼ皆無なギターロック・オルタナ志向が強いかなという印象がありました。ギターもDURANのシングルコイルがメインで松本のハムバッカーで厚塗りされたような音像とはまったく違う線の細い音だし、「ブラックホール」のうねるような感じは稲葉が敬愛していたサウンドガーデンっぽい感じだし……ただこれをファン以外が差別化できるかどうか考えると微妙なところですが。
ここ数作いずれもゆういちさんは「ルーツレス」と書いてありますが、B'zとは異なる稲葉のルーツをアルバムから見出すとすればそこなのかなぁと過去のレビューも含め思ったところでした。

投稿: pzr | 2024年8月12日 (月) 09時00分

>pzrさん
はじめまして!稲葉浩志の「只者」の感想、ありがとうございました。なるほど、そういう視点があるのですね。参考になります。どうもありがとうございました!

投稿: ゆういち | 2024年12月 3日 (火) 22時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ありそうでなかった対バンライブ | トップページ | 暖かい歌モノの傑作 »