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2024年8月24日 (土)

デビュー作からボーカリストとしてのスタイルを確立

Title:Believe In (2024 Remaster)
Musician:谷村有美

1990年代に「ガールズポップ」の代表的なミュージシャンとして一世を風靡した谷村有美。その彼女のリリースしたアルバムが、リマスター版としてCD及びLP盤としてリリースが決定されました。まずリリースされたのが1987年のデビュー作「Believe In」。彼女が22歳の時の作品となります。

今回のリマスター盤リリースにあたって、谷村有美をシティポップとしての流れから捉える向きがあるようです。ただ、この捉え方については、リアルタイムに聴いていた立場からすると、当初、正直ちょっと違和感を覚えたのは事実です。シティポップというと、どちらかというと洋楽テイストの強いポップスというイメージがあります。一方、谷村有美の楽曲は典型的なJ-POPというイメージ。ちょっとシティポップという枠組みに入れるのは違和感がありました。

ただ、今回のデビューアルバムをあらためて聴くと、確かにシティポップの枠の中に谷村有美を入れるというのもわからなくはないな、ということを感じました。例えば「未完成」などは軽くラテン風のリズムを入れつつ、全体的にはAORという印象の強い作品。以前から何度も聴いたことあるデビュー作「Not For Sale」も、あらためて聴くと確かにAORという枠組みにあてはまるようなポップスに仕上がっています。

全体的に爽やかなメロディーラインの流れるAOR風のポップスがメイン。今から聴くと、後期の作品に比べると、もっとメロウなAOR路線がより強く感じられるような印象を受けました。谷村有美が全盛期だった90年代は、いわゆるアイドル冬の時代。そのような時期に彼女はキュートなルックスでアイドル的な人気を博しながら、よりミュージシャン性を強めることによって、アイドル路線をあえて外すことによって人気を得てきた面があります。このAOR路線というのは、このアイドル路線をあえて外した結果、たどり着いた音楽性のようにも感じます。全体的にメロディーラインも、あえてアイドルポップのようなフックを利かせることを避けたような作風にも感じますし、全体的により「ミュージシャン路線」を強調したような作風に感じました。

また、デビュー作、また彼女はまだ22歳という時期の作品なのですが、既にボーカリスト谷村有美のスタイルが確立されているように感じました。ちょっと舌ったらずな感じと、クリスタルボイスとも称されるその歌声が非常にキュートで耳に残りますし、それがアイドル的な人気を博したのもわかるように思います。

そんなデビュー作にして既に谷村有美の魅力を存分に感じさせてくれた本作。今回リマスター版ということなので、当初、特にリマスター版らしいボーナストラックもなく、ちょっと残念にも感じていたのですが、なんと実際に聴いてみると、アルバムの最後にシークレットトラックが収録!情報が全く出ていないので、詳しいことは不明なのですが、楽曲は「ためいき色のタペストリー」のピアノ弾き語りバージョン。おそらく、現在の彼女による再録音ではないかと思われます。そうだとすると、声はちょっと震えて不安定になっている部分はあるのですが、今なお変わらないクリスタルボイスを聴くことが出来、ボーカリスト谷村有美の健在ぶりを感じます。

8月には2枚目の「Face」のリマスターが、11月には3枚目「Hear」のリマスターのリリースが決定されており、今後もリマスターシリーズが続きそう。昔、聴いたいたアルバムで、久しぶりに彼女のアルバムを聴くことになりそうですが、あらためて谷村有美の魅力を感じされそうで楽しみです。

評価:★★★★★

谷村有美 過去の作品
タニムラベスト

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