ロサンゼルスで作成した最新作
Title:L.A.Times
Musician:TRAVIS
スコットランドはグラスゴー出身のロックバンド、Travisによる約4年ぶりとなるニューアルバム。スコットランドのバンドなのに、ロサンゼルス?といった感じもするのですが、ボーカルのフラン・ヒーリィがロサンゼルスに所有しており、長い時間を過ごしてきたスタジオで作成した作品になっているそうです。
今回のアルバムはヒーリィ本人が「『The Man Who』以来、最も私的なアルバム」と語っているようですが、非常にシンプルでフォーキーな作風となっています。まず1曲目「Bus」などが典型的で、60年代のフォークを彷彿とさせるような哀愁たっぷりのメロディーラインが印象的。「Live It All Again」もアコギのアルペジオでフォーキーに聴かせる楽曲になっており、ファルセットのボーカルも耳を惹きます。「Naked In New York City」もアコギをバックに感情たっぷりに歌い上げるフォーキーな作品になっています。
そのほかにもバンドサウンドをバックに、ゆっくりメロディアスに聴かせる「Raze the Bar」、哀愁たっぷりのピアノでテンポよく聴かせる「Gaslight」、「The River」は分厚いバンドサウンドでダイナミックに聴かせるロックバンドらしい作品になっていますが、この曲でもメランコリックな美メロがしっかりと印象に残ります。
ここ数作、シンプルな歌をシンプルなサウンドで聴かせるアルバムが続いていますが、今回のアルバムも基本的にはここ数作の彼らの方向性に沿ったアルバムになっていました。正直言って、目新しさはほとんどないのですが、それでもアルバムをしっかり聴かせてくれる美しいメロディーラインは本作も健在。このメロだけで十分アルバムを傑作と言えるレベルに押し上げられるのはさすがといった感じでしょう。
ただ、そんなアルバムの中で唯一、異色的だったのが最後を飾るタイトルチューンの「L.A.Times」。メランコリックなサウンドにポエトリーリーディング的なボーカルで、ラップを取り入れたともいえる本作ですが、ヒーリィがロサンゼルスで経験した格差社会を描写した社会派な歌詞が描かれています。基本的に内省的な歌詞が多い彼らで、なおかつ本作ではその影響がより顕著なだけに、かなり異色に感じれますが、それだけロサンゼルスの格差の状況がヒーリィにとっては大きな印象を残したのでしょう。また、このような異色な作品が含まれていることがまた、アルバムにバリエーションと奥行きを与えていました。
基本的にはいつものTravisらしい作品ですが、一方でロサンゼルスという立地が重要な要素となったアルバムになっていた本作。ここ最近、美メロをしっかりと聴かせる傑作が続いていましたが、本作もそんなアルバムと並ぶ傑作に仕上がっていました。最近は、日本では一時期ほどアルバムがリリースされた時に話題にあがらなくなってしまった感もありますが、イギリスの公式チャートでは本作も最高位2位を記録し、変わらぬ人気を見せています。これだけの傑作をリリースし続けるだけに、この人気は納得でしょう。これからもまだまだ彼らの人気は続きそうです。
評価:★★★★★
TRAIVS 過去の作品
Ode to J.Smith
WHERE YOU STAND
Everything at Once
10 Songs
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