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2024年8月27日 (火)

膨大な楽器を用いる

Title:Song Symbiosis
Musician:トクマルシューゴ

新作としては実に約8年ぶり。かなり久しぶりのニューアルバムとなります。ここ最近のトクマルシューゴの話題といえば、「ちいかわ」のアニメの音楽を手掛けたということ。お茶の間で親しまれているアニメの音楽を彼が手掛けるというのはちょっとビックリしましたが、主題歌含めてアニメの世界にもピッタリとマッチしており、トクマルシューゴの才能を感じることが出来ました。

さて、トクマルシューゴといえば、膨大な量の楽器を操り、その楽曲を作り上げる点がひとつの大きな特徴でした。今回のアルバムは公式サイトの説明によると「本作での使用楽器は、これまでのアルバムを超え、より一層おびただしい数に達している」そうです。今回のアルバムタイトル「Symbiosis」というのはあまり聞きなれない英語ですが、「共生」という意味だとか。まさにこの膨大な楽器と歌が「共生」している、という趣旨のタイトルになるのでしょうか。

実際、今回のアルバムもまた、様々な音が次々と登場してくる、とても楽しいアルバムになっています。最初の「Toloope」ではバンジョーのように聞こえますし続く「Counting Dog」ではテルミンの音色も登場。その後もアコースティックギターやエレキギター、ドラムやピアノなどといったおなじみの楽器はもちろん、「Sakiyo No Furiko」ではアコーディオン的な音も登場しますし、「Bird Symbiosis」で登場するのはマリンバでしょうか?他にも様々な楽器が登場しており、さほど詳しくない私はどのような楽器が登場するのかわかりかねる部分も多いのですが、多種多様な音の宝庫。すごい陳腐な言い方になってしまい申し訳ないのですが、まさに「おもちゃ箱をひっくり返したような」という表現が、これほどピッタリくる音楽はないかもしれません。

また、加えて面白いのは、これだけ様々な楽器を取り入れていながら、音としては非常にすっきりしており、あくまでも歌を主軸にした曲になっているという点でしょう。とかくJ-POPでは「様々な音を取り入れる」というと、これでもかというほど分厚い音の壁を作り上げた、のっぺりとした音作りが目立つのですが、トクマルシューゴの音は、これだけたくさんの音を取り入れつつも非常にシンプルさを感じさせる音像になっており、全体的にオーガニックさを感じさせる暖かくメロディアスな歌モノの曲が並びます。

ただ、そんな曲の中でも微妙に実験的な精神が垣間見れるのもユニークなところ。「Kotohanose」はピアノの音色のシンプルでドリーミーな感触が耳に残りますし、「Resham Firiri」もトライバルなリズムに、南国的な言語で歌われるエキゾチックさあふれる作品に。「Chanda Mama Door Ke」も1分に満たない作品ながらも、エキゾチックな雰囲気が漂う作品に、彼の挑戦心を感じます。

冒頭に、最近のトクマルシューゴの仕事というと「ちいかわ」への楽曲提供と書きました。「ちいかわ」も、お茶の間で受けそうなキャラクターを前面に押し出しつつ、実は話によっては「毒」を持ったような回も少なくありません。ある意味、トクマルシューゴの音楽も、パッと聴いた感じだとポップな歌モノでありつつも、実は実験精神あふれているという二面性は「ちいかわ」に通じるところがあるのかもしれません。

久々の新作となった本作でしたが、今回もトクマルシューゴらしさを感じさせる実験性とポピュラリティーをしっかりと兼ね備えた傑作アルバムに仕上がっていました。幅広い層が楽しめるポップなアルバムです。

評価:★★★★★

トクマルシューゴ 過去の作品
Port Entropy
In Focus
TOSS


ほかに聴いたアルバム

Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2023 at EX THEATER ROPPONGI/LOVE PSYCHEDELICO

昨年全10箇所13公演で開催したアコースティックホールツアー「Premium Acoustic Live "TWO OF US" Tour 2023」のうち、東京・EX THEATER ROPPONGI公演を収録したライブ盤。彼女たちの代表曲をアコースティックなアレンジで聴かせてくれます。シンプルなサウンドをバックに力強く歌い上げるスタイルが印象的。シンプルなだけに彼女たちの歌の良さがより前に出てきているように感じる作品で、全3枚組のボリューミーな内容ながらも、最後まで飽きずに聴けるアルバムでした。

評価:★★★★★

LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ

15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE
LOVE YOUR LOVE
LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2017 LOVE YOUR LOVE at THE NAKANO SUNPLAZA
"TWO OF US"Acoutsic Session Recording at VICTOR STUDIO 302
Complete Singles 2000-2019
20th Anniversary Tour 2021 Live at LINE CUBE SHIBUYA
A revolution

北山修/きたやまおさむ ゴールデン☆ベスト

レコード会社共通の廉価版ベストシリーズ「ゴールデン☆ベスト」シリーズ。今回は、「ザ・フォーク・クルセイダーズ」のメンバーとして知られ、主に作詞家として数多くのヒット曲を手掛けてきた北山修のベスト盤。北山修のゴールデン☆ベストというと、てっきり、彼が作詞を手掛けた多くの作品が収録されたベスト盤かと思いきや、こちらは基本的に北山修が歌った曲を集めた、あくまでも「ミュージシャン北山修」のベスト盤。ただ、北山修が作詞を手掛けた代表曲を彼自身が歌った音源を集めたため、微妙なMCも収録されたライブ音源なども収録されており、資料的な価値は大きいものの、熱心なファン以外が聴くのはちょっと厳しい側面も・・・。彼が歌った曲、ではなく、純粋に彼が作詞を手掛けた代表曲をまとめた作品集が聴きたかったかも。

評価:★★★

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