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2024年8月 5日 (月)

「愛」にあふれた作詞家

Title:山上路夫 ソングブック-翼をください-

1960年以降、数多くの楽曲の作詞を手掛け、数多くのヒット曲を世に送り出した作詞家、山上路夫。作詞家生活60周年を迎えて、彼の代表曲を収録した集大成となる5枚組となるアルバムがリリースされました。彼の代表的なヒット曲も数多く収録されているほか、知られざるレアソングも収録されています。代表曲ではおなじみなのは何といってもサブタイトルにもなっている赤い鳥の歌う「翼をください」でしょうか。他にも「夜明けのスキャット」「瀬戸の花嫁」「学生街の喫茶店」「ガンダーラ」など、日本歌謡曲のスタンダードナンバーとも言えるような曲もズラリと並んでいます。ちょっと意外なところでは、ご存じテレビ「水戸黄門」の主題歌「あゝ人生に涙あり」も彼の作曲。地上波のテレビ番組が終わってしまって久しいのですが、おそらく30代以上の世代にとっては、この曲と学校の合唱曲としてもおなじみの「翼をください」が最もなじみのある曲ではないでしょうか。

山上路夫の楽曲の特徴として、Wikipediaの紹介では「山上の作風はヒューマニズムに満ちているものが多い。」と一言だけ紹介されています。ただ実際、彼の代表曲を聴いてみると、非常に情熱的な「愛」にあふれた曲が目立つように思います。それこそ彼の最初のヒット曲となった「世界は二人のために」など、かなり情熱的な「愛」の歌ですし、他にも「禁じられた恋」とか「許されない愛」とか、特に初期の作品については、かなり熱い「愛」を歌ったような曲が目立つように感じました。

さて、そんな山上路夫の集大成とも言えるこの作品ですが、今回、是非とも紹介したい1曲があります。これがDisc3に収録されている西村晃(こちらも私くらいの世代には黄門様で有名ですね)の「人間バンザイ!」という曲です。この曲、山上路夫のWikipediaにも紹介されておらず、知る人ぞ知る的・・・どころか、ほとんど誰にも知られていないような曲なのですが、これが聴いてみてぶっ飛びました。まず1番の歌詞なのですが

「自民の先生がするときにゃ 無理やり通そとなさいます はぁなさいます」
(「人生バンザイ!」より 作詞 山上路夫)

と、はっきり言ってしまって完全に性行為について歌った春歌なのですが、上記の通り、実在の政党名がそのまま出てくる点がかなりの衝撃。自民党の名前が出てきているだけに、政府を皮肉るような反権力的な曲かと思いきや、この後、社会党、公明党、民社党、共産党と右から左まで同時の国政政党の名前がそのまま出てきて、かなり強烈な皮肉を浴びせかけています(まあ、政治風刺という意味では列記とした「反権力」的な曲なのですが)。これだけ強烈でありながらも、ネット上で調べてもほとんど出てきませんし、YouTubeでもほとんど曲はアップされていません。まさにほとんど誰にも知られていない珍曲。当時も「放送禁止」になってしまったようですが、今、発表したら、右から左から抗議が相次いで、あっという間に販売中止に追い込まれそうな・・・。昔の方が余裕があったんだろうなぁ、とは感じてしまいます・・・。

ただ、かなり強烈な珍歌で、これが今、ネットを含めてほとんど誰も取り上げていないことに、逆に驚いてしまうほど。この曲が収録されているだけでも、このオムニバスアルバムに価値があるようにすら感じてしまいます。この曲を聴くため、だけにでも本作をチェックしてみて損はないかと思います。

今回、この1曲を紹介したいがために、あえて大きくこのアルバムを取り上げました。歌詞で紹介したのは自民党バージョンのみでしたが、それ以降の歌詞もかなり強烈なので一度、チェックしてみてほしいです。右も左も変に突っ走ってしまっている感のある現在こそ、政治をユーモラスに皮肉るような歌、出てきてほしい感じがするんですけどね。

評価:★★★★

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