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2024年8月31日 (土)

貫禄すら感じさせる新作

Title:Rejoice
Musician:Official髭男dism

おそらく、今、最も人気のあるミュージシャンの一組であるOfficial髭男dism。本作でも「ミックスナッツ」「Subtitle」という大ヒットシングルを収録しており、その勢いは止まりません。前作「Editorial」では人気ミュージシャンとしての余裕と勢いを感じられた作品でしたが、今回のアルバムもまた、そんな今や日本を代表するミュージシャンとなった彼らの余裕と、ある種の貫禄すら感じさせるアルバムになっています。

まず今回の作品に関して思うことは、非常にアルバムらしい構成になっているという点でした。アルバムの冒頭を飾る「Finder」は、まず静かなピアノのアルペジオからスタートし、徐々に高揚感があがっていくような構成。2分程度という比較的短い、オープニング的な曲となっており、そこに続く「Get Back To 人生」はファンク風なリズムで軽快に聴かせるポップチューンでリスナーの耳をつかんだ上に、3曲目は大ヒットナンバー「ミックスナッツ」へと続く展開で、一気にリスナーをアルバムの世界に惹きこむような展開になっています。

中盤は爽快でポップなナンバーが続きつつ、アルバムが後半に突入する前に、また大ヒットしたシングル「Subtitle」でリスナーを惹きつけ、さらにダイナミックなロックナンバー「Anarchy」で盛り上げつつ、一気に後半に突入。終盤は「TATTOO」で盛り上げた上でラストは「B-Side Blues」というピアノバラードでしんみり締めくくられます。

アルバム全体の流れを考えつつ、リスナーの耳を惹きつけ、要所要所にヒットシングルを配するという構成で、全16曲でひとつの「作品」としても作り上げられていると感じさせます。ともすれば最近のアルバム、特に今時のミュージシャンのアルバムは、先行配信シングルを並べただけのプレイリスト的な作品が多くなっています。本作についても全16曲中、8曲が先行配信されている内容になっているものの、(インターリュード1曲を含むものの)半数はアルバム曲となっており、アルバムを単なるプレイリスト化させずに作品として作り上げようとする彼らの意思を感じさせます。

また、ヒゲダンの作品は以前からR&Bやソウルといったブラックミュージック的な要素を入れつつ、全体的にはいい意味で万人受けするポップスに仕上げている点が大きな特徴であり魅力でしたが、今回のアルバムに関しても、そのバランスが絶妙に保たれています。「Get Back To 人生」ではファンクの要素を、「日常」ではネオソウル的な部分など、彼らのブラックミュージックからの影響は随所に感じさせますが、ほどよく彼らのルーツを楽しみつつも、全体としてはそんな難しいことを考えずに楽しめるポップな作品に仕上げています。

なによりも1曲目の「Finder」や「Chessborad」のように、楽曲としてスケール感を覚えるような曲も多かったのもこのアルバムの大きな特徴。広い会場でのライブや、そのような会場で多くのファンと盛り上がるシーンを想定しているような曲も多く、彼らの人気バンドとしての自信や余裕を感じさせるとともに、同時に貫禄すら感じさせるアルバムにもなっていました。

前作も人気バンドとしての余裕を感じさせるアルバムでしたが、さらにそこから一歩進んで、日本を代表するバンドとしての貫禄すら感じさせるアルバム。楽曲としても充実作が多く、バンドとして脂ののった状況であることも感じさせます。ただ、以前からバンドとして脂ののった状況の時に生み出されるような「奇跡の1枚」を期待していたのですが、ただ、すでに彼らはそんな「奇跡」で傑作を生みだすのではなく、このレベルのアルバムはコンスタントに生み出してきそう、そんな安定感も覚える作品になっていました。個人的には現時点でのヒゲダンの最高傑作かも。バンドのさらなる成長と進化を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館
Traveler-Instrumentals-
HELLO EP
Editorial
ミックスナッツEP
one-man tour 2021-2022-Editorial-@さいたまスーパーアリーナ

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