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2024年8月23日 (金)

ダンスチューンを前面に押し出した新作

Title:Happenings
Musician:KASABIAN

デビューアルバムから前作がベスト10入り、さらには2006年にリリースされた2枚目のアルバムから7作連続、全英チャートで1位を獲得している、まさにイギリスの国民的バンドとも言えるKASABIANの約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「The Alchemist's Euphoria」リリース前にリードボーカルのトム・ミーガンが、妻への暴行という大事件を起こしバンドを脱退。結成以来となるバンドの危機を迎えた彼らでしたが、前作に引き続き、本作も無事に、チャート1位を獲得。その変わらぬ人気ぶりを見せつける結果となりました。

アルバムの方向性としては、ここ最近のKASABIANと大きな変化はありません。ポップなメロディーラインを中心軸に、ダイナミックなバンドサウンドとエレクトロサウンドをいわゆるサウンドの両軸としてリスナーを楽しませてくれる方向性。正直言えば目新しさはないかもしれませんし、ともすれば「ベタ」と言ってしまうサウンドかもしれません。日本のメディアがあまり彼らを強く取り上げないのもそういった、目新しさのなさが大きな要因かもしれません。ただ、そんなある種のわかりやすさ、楽しさがKASABIANの最高の魅力であり、それゆえに彼らが国民的バンドとして人気を確保しているのではないでしょうか。

今回のアルバムに関しては、あえて言えばエレクトロなダンスチューンがより耳に残るアルバムに仕上がっていたように感じます。冒頭を飾る「Darkest Lullaby」は、まさに彼ららしいとも言える哀愁感たっぷりのメロディーラインを、ダンサナブルなエレクトロサウンド載せたディスコチューン。続く「Call」も同様にリズミカルでトランシーなダンスチューンに仕上がています。

そんなエレクトロチューン2曲に続く「How Far Will You Go」は一転、ノイジーでダイナミックなギターロックチューンへとチェンジ。ここでKASABIANのロックバンドらしさを見せつけたかと思えば、続く「Coming Back To Me Good」はバンドサウンドに打ち込みのリズムを入れたダンスチューンとなっており、リズミカルなダンスナンバーの目立つ展開となっています。

その後も「Passenger」のようなダイナミックなギターロックの楽曲を入れつつも、「Hell Of It」「Italian Horror」のように、エレクトロサウンドを取り入れたダンサナブルなナンバーが目立つ展開に。アルバム全体としてリズミカルな曲が多く、そのようなダンスチューンがアルバム全体に強いインパクトを与えています。ただ一方でアルバムの最後を飾る「Algorithms」は、伸びやかで爽やかなメロディーラインを前に押し出した、スケール感もあるギターロックのナンバー。「リズム」でインパクトを持たせたような今回のアルバムでしたが、最後の最後に、しっかりと「歌」を聴かせる、彼らなりの矜持を感じさせるエンディングになっていました。

前述のように楽曲的には目新しさはありません。ただ、そんな点を差し引いても十分すぎるほど楽しむことが出来る「傑作」と言えるアルバムに仕上がっていたと思います。その点、さすが国民的バンドとしてのKASABIANの実力を感じさせる作品。リードシンガーの脱退という危機を乗り越え、KASABIANの快進撃はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

KASABIAN 過去の作品
West Ryder Pauper Lunatic Asylum
VELOCIRAPTOR!
48:13
FOR CRYING OUT LOUD
The Alchemist's Euphoria


Radical Optimism/Dua Lipa

前作「Future Nostalgia」がグラミー賞の最優秀ポップ・ボーカル・アルバムを受賞するなど、ポップアイコンとして快進撃を続けるDua Lipaの3枚目となるアルバム。前作もポピュラリティーの強い、聴いていて純粋にポップアルバムとして楽しめる作品となっていましたが、今回も全体的にダンスミュージックの多い、聴いていて素直に楽しめるアルバムに仕上がっていました。楽曲的な目新しさという面は薄いのですが、それ以上にポップスアルバムとしての強度を感じさせる作品で、特に本国イギリスやアメリカで高い支持を受けるのも納得感のある作品でした。

評価:★★★★★

Dua Lipa 過去の作品
Future Nostalgia

Greatest Hits/Avril Lavigne

ポップアイコンといえば彼女も忘れてはいけないでしょう。日本でも高い人気を誇るシンガーソングライター、アヴリル・ラヴィーンの初となるベストアルバム。既にデビューから20年以上が経過している彼女。初期の作品は今から聴くと、懐かしくも若々しさを感じさせます。今から聴くと、非常にベタな感じもするのですが、ただこういうタイプの曲って、ある意味彼女を起点として多くの女性シンガーたちが影響を受けたスタイルで、結果「ベタ」になった訳で、彼女はいわばオリジナル的な立ち位置にあります。あらためてポップなメロディーはインパクトがありますし魅力的。ほどよくヘヴィーなロックサウンドとのバランスも良く、あらためて彼女がこれだけ人気になった理由も十分わかるような気がするベストアルバムでした。

評価:★★★★★

Avril Lavigne 過去の作品
Goodbye Lullaby
Avril Lavigne
HEAD ABOVE WATER
Love Sux

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