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2024年8月

2024年8月31日 (土)

貫禄すら感じさせる新作

Title:Rejoice
Musician:Official髭男dism

おそらく、今、最も人気のあるミュージシャンの一組であるOfficial髭男dism。本作でも「ミックスナッツ」「Subtitle」という大ヒットシングルを収録しており、その勢いは止まりません。前作「Editorial」では人気ミュージシャンとしての余裕と勢いを感じられた作品でしたが、今回のアルバムもまた、そんな今や日本を代表するミュージシャンとなった彼らの余裕と、ある種の貫禄すら感じさせるアルバムになっています。

まず今回の作品に関して思うことは、非常にアルバムらしい構成になっているという点でした。アルバムの冒頭を飾る「Finder」は、まず静かなピアノのアルペジオからスタートし、徐々に高揚感があがっていくような構成。2分程度という比較的短い、オープニング的な曲となっており、そこに続く「Get Back To 人生」はファンク風なリズムで軽快に聴かせるポップチューンでリスナーの耳をつかんだ上に、3曲目は大ヒットナンバー「ミックスナッツ」へと続く展開で、一気にリスナーをアルバムの世界に惹きこむような展開になっています。

中盤は爽快でポップなナンバーが続きつつ、アルバムが後半に突入する前に、また大ヒットしたシングル「Subtitle」でリスナーを惹きつけ、さらにダイナミックなロックナンバー「Anarchy」で盛り上げつつ、一気に後半に突入。終盤は「TATTOO」で盛り上げた上でラストは「B-Side Blues」というピアノバラードでしんみり締めくくられます。

アルバム全体の流れを考えつつ、リスナーの耳を惹きつけ、要所要所にヒットシングルを配するという構成で、全16曲でひとつの「作品」としても作り上げられていると感じさせます。ともすれば最近のアルバム、特に今時のミュージシャンのアルバムは、先行配信シングルを並べただけのプレイリスト的な作品が多くなっています。本作についても全16曲中、8曲が先行配信されている内容になっているものの、(インターリュード1曲を含むものの)半数はアルバム曲となっており、アルバムを単なるプレイリスト化させずに作品として作り上げようとする彼らの意思を感じさせます。

また、ヒゲダンの作品は以前からR&Bやソウルといったブラックミュージック的な要素を入れつつ、全体的にはいい意味で万人受けするポップスに仕上げている点が大きな特徴であり魅力でしたが、今回のアルバムに関しても、そのバランスが絶妙に保たれています。「Get Back To 人生」ではファンクの要素を、「日常」ではネオソウル的な部分など、彼らのブラックミュージックからの影響は随所に感じさせますが、ほどよく彼らのルーツを楽しみつつも、全体としてはそんな難しいことを考えずに楽しめるポップな作品に仕上げています。

なによりも1曲目の「Finder」や「Chessborad」のように、楽曲としてスケール感を覚えるような曲も多かったのもこのアルバムの大きな特徴。広い会場でのライブや、そのような会場で多くのファンと盛り上がるシーンを想定しているような曲も多く、彼らの人気バンドとしての自信や余裕を感じさせるとともに、同時に貫禄すら感じさせるアルバムにもなっていました。

前作も人気バンドとしての余裕を感じさせるアルバムでしたが、さらにそこから一歩進んで、日本を代表するバンドとしての貫禄すら感じさせるアルバム。楽曲としても充実作が多く、バンドとして脂ののった状況であることも感じさせます。ただ、以前からバンドとして脂ののった状況の時に生み出されるような「奇跡の1枚」を期待していたのですが、ただ、すでに彼らはそんな「奇跡」で傑作を生みだすのではなく、このレベルのアルバムはコンスタントに生み出してきそう、そんな安定感も覚える作品になっていました。個人的には現時点でのヒゲダンの最高傑作かも。バンドのさらなる成長と進化を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館
Traveler-Instrumentals-
HELLO EP
Editorial
ミックスナッツEP
one-man tour 2021-2022-Editorial-@さいたまスーパーアリーナ

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2024年8月30日 (金)

今度のテーマはフォーク!

Title:町あかりのニューフォーク
Musician:町あかり

女性シンガーソングライター、町あかりの最新作は全4曲+うち1曲の別バージョン1曲、及び同曲のカラオケバージョン全10曲が収録されたEP盤。今年は「町あかりの歌謡曲春夏秋冬2024」というプロジェクトを立ち上げたそうで、春夏秋冬それぞれ別のテーマのEP盤をリリースする予定だとか。既に「春」バージョンとしてディスコをテーマとしたEP「地球出禁にしていいよ」がリリースされ、当サイトでも紹介されましたが、本作はその第2弾。タイトル通り、フォークをテーマとしたEP盤となります。

フォークといっても、60年代や70年代のいわゆる四畳半フォークとった感じではなく、楽曲的にはむしろ80年代以降のニューミュージックや、あるいは歌謡曲的な雰囲気を強く残すタイプの楽曲となっており、彼女の歌謡曲からの影響の強さを感じさせます。もっとも、EPのテーマとして「町あかりの歌謡曲」ですから、60年代フォークよりも歌謡曲の色合いが強いのは、あえての狙いなのかもしれませんが。

町あかりの曲と言えば、いかにも昔ながらの歌謡曲風の楽曲とは相反するような、今時の事象をうまく取り入れたユニークな視点の歌詞が特徴的で、今回の作品に関しても、1曲目「せいぜい星1つか2つ」はWeb上でよくありがちなAmazonなどのレビューコメントに付された星の数を曲に取り込んでいますし、「目立った傷や汚れなし」も楽曲のテーマ的には巣立っていく子供を見送る親をテーマとしつつ、そこにメルカリの評価的なコメントを加えています。

ただやはり気になるのが、いままでの彼女の楽曲でもよくあったのですが、せっかくインパクトある歌詞があったも、ワンアイディアのみで最後まで終わらせてしまって、いまひとつ歌詞の展開に面白さがない曲が少なくないのが残念なところで、本作でいうと、「せいぜい星1つか2つ」がそれ。インパクトある表題曲なのですが、「あいつは星5つ/僕はせいぜい星1つか2つ」という歌詞と「小さな地球でレビューされただけさ/広い宇宙い 僕の星がきっとある」の2つのフレーズが繰り返されるのみで、歌詞の展開としては物足りなさを感じてしまいます。

それでも本作では「100均にあるかもしれない」は、新しい街に来た時の期待が徐々にさみしさと孤独感に変っていく状況を、「100均」をキーワードに展開させていく歌詞は聴かせるものがあり、しっかりと彼女の作詞家としての実力も感じることが出来ました。

そんな訳で、「町あかりの歌謡曲春夏秋冬2024」の第2弾である本作。秋には第3弾、冬には第4弾のリリースが予定されているのでしょうが、今度のテーマは何になるのでしょうか?またユニークなアイディアあふれる歌詞で聴かせてくれそう。楽しみです。

評価:★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し
EXPO町あかり
収穫祭!(町あかり&池尻ジャンクション)
あかりおねえさんの ニコニコへんなうた
それゆけ!電撃流行歌
別冊!電撃流行歌
総天然色痛快音楽
地球出禁にしていいよ~ディスコあかり~

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2024年8月29日 (木)

堂々の1位獲得・・・だが

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

堂々の1位獲得となりました、が・・・。

今週、1位初登場は米津玄師のニューアルバム「LOST CORNER」。CD販売数及びダウンロード数共に1位を獲得し、堂々の1位獲得です。4年ぶりとなるニューアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上37万6千枚を売り上げ、2位以下を引き離す結果となりました・・・が、前作「STRAY SHEEP」の初動売上87万9千枚(1位)からは大きくダウン。初動37万枚という数値も十分立派な結果なのですが、前作からの変動幅の大きさは気にかかるところです。

2位は男性アイドルグループNEXZ「Ride the Vibe (Japanese Ver.)/Keep on Moving」が獲得。CD販売数2位、ダウンロード数4位。日韓合同オーディションによる日本人6名、日本生まれ日本育ちの韓国人1名による7人組グループ。本作が日本でのデビューEPとなります。オリコンでは初動売上7万8千枚で2位初登場。

3位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「17 IS RIGHT HERE」が先週の8位からランクアップ。4週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。

以下、4位からの初登場盤は、4位は旧ジャニーズ系男性アイドルグループ、A.B.C.-Z「F.O.R-変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。」。6位初登場が刀剣男士 formation of 江 おん すていじ 「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ~新編 里見八犬伝~」。育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞」を元としたミュージカル関連のアルバム。8位にはFling Posse「.Fling Posse」が初登場。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」に登場する架空のHIP HOPグループによるアルバム。9位は女性声優水瀬いのり「heart bookmark」。全7曲入りのミニアルバムで、「ハーフアルバム」という取り扱いだそうです。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekersは、ONE OR EIGHT「Don't Tell Nobody」が獲得。8人組男性アイドルグループのデビュー作。現時点で、Googleで「ONE OR EIGHT」で検索をかけてもこのグループが全く出てきません。おそらく「OR」がGoogle検索上、「OR検索」とされ「ONEかEIGHTかどちらかを含むページ」とされているのでしょう。若干、IT戦略上、不利な名前のようにも思うのですが・・・。「ONE OR EIGHT」と検索されて、このグループが問題なくトップに出てくるのは、いつになるでしょうか。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週のTikTok Weeklyは先週に引き続きMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が3週連続1位を獲得。流行の移り変わりが早いTikTokとしては、比較的長くヒットしている印象があります。

ニコニコVOCALOID SONGSは今週もお休み。こちらの再開はまだアナウンスがありません。今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年8月28日 (水)

男女アイドルが1位2位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は男女のアイドルグループが1位2位に並んでいます。

Inzm

1位初登場は男性アイドルグループNumber_i「INZM」がランクイン。TOBE所属の元King&Princeのメンバーによるグループ。本作は配信限定シングルで、9月にリリース予定のアルバム「No.I」からの先行配信となります。ダウンロード数、ラジオオンエア数及び動画再生回数1位、ストリーミング数16位。

2位は秋元康系女性アイドルグループ乃木坂46「チートデイ」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数11位、ラジオオンエア数17位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上50万9千枚で1位初登場。前作「チャンスは平等」の初動51万7千枚(1位)から若干のダウン。

そして3位は韓国のアイドルグループTREASURE「KING KONG」が初登場。CD販売数2位、ラジオオンエア数3位。オリコンでは初動売上9万9千枚で2位初登場。前作「Here I Stand」の初動23万5千枚(2位)からダウン。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週はあと1曲のみ。10位に米津玄師「がらくた」が初登場。映画「ラストマイル」主題歌で、8月21日にリリースされたアルバム「LOST CORNER」から、1日だけ先行して配信したシングルとなります。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数6位、YouTube再生回数18位。

次にロングヒット曲ですが、まずはMrs.GREEN APPLE「ライラック」。今週は先週の2位から4位にダウンし、残念ながらベスト3からは陥落となりました。ただ、ストリーミング数は10週連続の1位をキープ。一方、動画再生回数は3位から4位にダウンしています。これで19週連続のベスト10ヒットとなりました。

Mrs.GREEN APPLEは今週「familie」が3位から5位にダウン。一方、「青と夏」は11位にダウンし、ベスト10ヒットは通算12週で一度ストップ。ただ今週も2曲同時ランクイン。ほかに「ケセラセラ」が13位、「点描の唄 feat.井上苑子」が17位にランクイン。「コロンブス」「Soranji」はベスト20圏外にダウンしてしまい、今週は5曲同時にベスト20ランクインとなっています。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は5位から6位にワンランクダウン。ストリーミング数は2位から3位、動画再生回数も4位から6位にダウン。カラオケ歌唱回数のみ10週連続の2位をキープ。これで32週連続のベスト10ヒットとなっていますが、下降傾向は続いています。

Omoinotake「幾億光年」は7位から9位にダウン。14週連続3位をキープしていたストリーミング数は4位にダウン。これで28週連続のベスト10ヒットとなりましたが、さすがに後がなくなってきました。

今週のベスト10ヒットは以上。先週10位に返り咲いた「怪獣の花唄」は今週16位に再びダウン。ベスト10返り咲きは1週のみとなっています。

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2024年8月27日 (火)

膨大な楽器を用いる

Title:Song Symbiosis
Musician:トクマルシューゴ

新作としては実に約8年ぶり。かなり久しぶりのニューアルバムとなります。ここ最近のトクマルシューゴの話題といえば、「ちいかわ」のアニメの音楽を手掛けたということ。お茶の間で親しまれているアニメの音楽を彼が手掛けるというのはちょっとビックリしましたが、主題歌含めてアニメの世界にもピッタリとマッチしており、トクマルシューゴの才能を感じることが出来ました。

さて、トクマルシューゴといえば、膨大な量の楽器を操り、その楽曲を作り上げる点がひとつの大きな特徴でした。今回のアルバムは公式サイトの説明によると「本作での使用楽器は、これまでのアルバムを超え、より一層おびただしい数に達している」そうです。今回のアルバムタイトル「Symbiosis」というのはあまり聞きなれない英語ですが、「共生」という意味だとか。まさにこの膨大な楽器と歌が「共生」している、という趣旨のタイトルになるのでしょうか。

実際、今回のアルバムもまた、様々な音が次々と登場してくる、とても楽しいアルバムになっています。最初の「Toloope」ではバンジョーのように聞こえますし続く「Counting Dog」ではテルミンの音色も登場。その後もアコースティックギターやエレキギター、ドラムやピアノなどといったおなじみの楽器はもちろん、「Sakiyo No Furiko」ではアコーディオン的な音も登場しますし、「Bird Symbiosis」で登場するのはマリンバでしょうか?他にも様々な楽器が登場しており、さほど詳しくない私はどのような楽器が登場するのかわかりかねる部分も多いのですが、多種多様な音の宝庫。すごい陳腐な言い方になってしまい申し訳ないのですが、まさに「おもちゃ箱をひっくり返したような」という表現が、これほどピッタリくる音楽はないかもしれません。

また、加えて面白いのは、これだけ様々な楽器を取り入れていながら、音としては非常にすっきりしており、あくまでも歌を主軸にした曲になっているという点でしょう。とかくJ-POPでは「様々な音を取り入れる」というと、これでもかというほど分厚い音の壁を作り上げた、のっぺりとした音作りが目立つのですが、トクマルシューゴの音は、これだけたくさんの音を取り入れつつも非常にシンプルさを感じさせる音像になっており、全体的にオーガニックさを感じさせる暖かくメロディアスな歌モノの曲が並びます。

ただ、そんな曲の中でも微妙に実験的な精神が垣間見れるのもユニークなところ。「Kotohanose」はピアノの音色のシンプルでドリーミーな感触が耳に残りますし、「Resham Firiri」もトライバルなリズムに、南国的な言語で歌われるエキゾチックさあふれる作品に。「Chanda Mama Door Ke」も1分に満たない作品ながらも、エキゾチックな雰囲気が漂う作品に、彼の挑戦心を感じます。

冒頭に、最近のトクマルシューゴの仕事というと「ちいかわ」への楽曲提供と書きました。「ちいかわ」も、お茶の間で受けそうなキャラクターを前面に押し出しつつ、実は話によっては「毒」を持ったような回も少なくありません。ある意味、トクマルシューゴの音楽も、パッと聴いた感じだとポップな歌モノでありつつも、実は実験精神あふれているという二面性は「ちいかわ」に通じるところがあるのかもしれません。

久々の新作となった本作でしたが、今回もトクマルシューゴらしさを感じさせる実験性とポピュラリティーをしっかりと兼ね備えた傑作アルバムに仕上がっていました。幅広い層が楽しめるポップなアルバムです。

評価:★★★★★

トクマルシューゴ 過去の作品
Port Entropy
In Focus
TOSS


ほかに聴いたアルバム

Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2023 at EX THEATER ROPPONGI/LOVE PSYCHEDELICO

昨年全10箇所13公演で開催したアコースティックホールツアー「Premium Acoustic Live "TWO OF US" Tour 2023」のうち、東京・EX THEATER ROPPONGI公演を収録したライブ盤。彼女たちの代表曲をアコースティックなアレンジで聴かせてくれます。シンプルなサウンドをバックに力強く歌い上げるスタイルが印象的。シンプルなだけに彼女たちの歌の良さがより前に出てきているように感じる作品で、全3枚組のボリューミーな内容ながらも、最後まで飽きずに聴けるアルバムでした。

評価:★★★★★

LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ

15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE
LOVE YOUR LOVE
LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2017 LOVE YOUR LOVE at THE NAKANO SUNPLAZA
"TWO OF US"Acoutsic Session Recording at VICTOR STUDIO 302
Complete Singles 2000-2019
20th Anniversary Tour 2021 Live at LINE CUBE SHIBUYA
A revolution

北山修/きたやまおさむ ゴールデン☆ベスト

レコード会社共通の廉価版ベストシリーズ「ゴールデン☆ベスト」シリーズ。今回は、「ザ・フォーク・クルセイダーズ」のメンバーとして知られ、主に作詞家として数多くのヒット曲を手掛けてきた北山修のベスト盤。北山修のゴールデン☆ベストというと、てっきり、彼が作詞を手掛けた多くの作品が収録されたベスト盤かと思いきや、こちらは基本的に北山修が歌った曲を集めた、あくまでも「ミュージシャン北山修」のベスト盤。ただ、北山修が作詞を手掛けた代表曲を彼自身が歌った音源を集めたため、微妙なMCも収録されたライブ音源なども収録されており、資料的な価値は大きいものの、熱心なファン以外が聴くのはちょっと厳しい側面も・・・。彼が歌った曲、ではなく、純粋に彼が作詞を手掛けた代表曲をまとめた作品集が聴きたかったかも。

評価:★★★

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2024年8月26日 (月)

ロサンゼルスで作成した最新作

Title:L.A.Times
Musician:TRAVIS

スコットランドはグラスゴー出身のロックバンド、Travisによる約4年ぶりとなるニューアルバム。スコットランドのバンドなのに、ロサンゼルス?といった感じもするのですが、ボーカルのフラン・ヒーリィがロサンゼルスに所有しており、長い時間を過ごしてきたスタジオで作成した作品になっているそうです。

今回のアルバムはヒーリィ本人が「『The Man Who』以来、最も私的なアルバム」と語っているようですが、非常にシンプルでフォーキーな作風となっています。まず1曲目「Bus」などが典型的で、60年代のフォークを彷彿とさせるような哀愁たっぷりのメロディーラインが印象的。「Live It All Again」もアコギのアルペジオでフォーキーに聴かせる楽曲になっており、ファルセットのボーカルも耳を惹きます。「Naked In New York City」もアコギをバックに感情たっぷりに歌い上げるフォーキーな作品になっています。

そのほかにもバンドサウンドをバックに、ゆっくりメロディアスに聴かせる「Raze the Bar」、哀愁たっぷりのピアノでテンポよく聴かせる「Gaslight」「The River」は分厚いバンドサウンドでダイナミックに聴かせるロックバンドらしい作品になっていますが、この曲でもメランコリックな美メロがしっかりと印象に残ります。

ここ数作、シンプルな歌をシンプルなサウンドで聴かせるアルバムが続いていますが、今回のアルバムも基本的にはここ数作の彼らの方向性に沿ったアルバムになっていました。正直言って、目新しさはほとんどないのですが、それでもアルバムをしっかり聴かせてくれる美しいメロディーラインは本作も健在。このメロだけで十分アルバムを傑作と言えるレベルに押し上げられるのはさすがといった感じでしょう。

ただ、そんなアルバムの中で唯一、異色的だったのが最後を飾るタイトルチューンの「L.A.Times」。メランコリックなサウンドにポエトリーリーディング的なボーカルで、ラップを取り入れたともいえる本作ですが、ヒーリィがロサンゼルスで経験した格差社会を描写した社会派な歌詞が描かれています。基本的に内省的な歌詞が多い彼らで、なおかつ本作ではその影響がより顕著なだけに、かなり異色に感じれますが、それだけロサンゼルスの格差の状況がヒーリィにとっては大きな印象を残したのでしょう。また、このような異色な作品が含まれていることがまた、アルバムにバリエーションと奥行きを与えていました。

基本的にはいつものTravisらしい作品ですが、一方でロサンゼルスという立地が重要な要素となったアルバムになっていた本作。ここ最近、美メロをしっかりと聴かせる傑作が続いていましたが、本作もそんなアルバムと並ぶ傑作に仕上がっていました。最近は、日本では一時期ほどアルバムがリリースされた時に話題にあがらなくなってしまった感もありますが、イギリスの公式チャートでは本作も最高位2位を記録し、変わらぬ人気を見せています。これだけの傑作をリリースし続けるだけに、この人気は納得でしょう。これからもまだまだ彼らの人気は続きそうです。

評価:★★★★★

TRAIVS 過去の作品
Ode to J.Smith
WHERE YOU STAND
Everything at Once
10 Songs

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2024年8月25日 (日)

楽曲のバラエティーは富んでいるが・・・。

Title:残夢
Musician:Ado

「狂言」以来、約2年半ぶりとなるAdoの2枚目のオリジナルアルバム。ONE PIECEの映画の劇中歌によるアルバムやカバーアルバムのリリースなどもあったため、オリジナルアルバムが2枚目、かつ2年半もインターバルが開いていたことが意外に感じます。大ヒットした配信シングル「唱」を含む16曲入り。うち、14曲が配信シングルとしてリリース済というのは、最近のアルバムによるある傾向になります。

オリジナルアルバムの前作「狂言」では、作家陣に彼女と同様、ネット発のミュージシャンである、いわゆるボカロPを起用していた彼女。一方、ONE PIECEの劇中歌では、J-POP系のミュージシャンたちを作家陣として起用されており、売れるとやはりそういう「有名所のミュージシャンたち」を作家陣として用いてしまうのか・・・とちょっと複雑な気持ちになりました。ただ今回のオリジナルアルバムでは、著名なJ-POPミュージシャンを起用する一方で、ボカロPも多く作家陣として起用しており、ネット発のミュージシャンとしての矜持も感じさせる作家陣のセレクトとなっていました。

今回のアルバムもまた、彼女のパワフルな歌唱力をこれでもかというほど聴かせるような楽曲が目立ちます。彼女がブレイクした「うっせえわ」もそうですし、本作に収録されている大ヒットシングル「唱」もそうですが、基本的にドスの利いた低音ボーカルで力強く歌い上げるタイプの曲が彼女のスタイルとしては求められているのでしょう。カバーアルバムを聴くと、もっと緩急つけて表現力を聴かせるようなタイプの曲も対応できるシンガーだとは思うのですが、期待に応えるとどうしても、力強くがなり上げるタイプの曲がメインとなってしまうのでしょう。

その上で今回のアルバムに関しては比較的バリエーションのある作風になっているように感じます。Mitchie Mが手掛けた「オールナイトレディオ」はシティポップ風の作品になっていましたし、なとりが手掛ける「MIRROR」はネオソウル風、Vaundyが手掛ける「いばら」は90年代のJ-POP風のギターロック路線と楽曲によっていろいろなタイプの曲が並びます。ただ、その結果として感じてしまうのは、いまひとつAdoのミュージシャンとしての方向性がいまひとつはっきりしないという点でした。

もともとAdo自体が、シンガーソングライターではなくあくまでもボーカリストである、という点にも起因しているのでしょう。ただ、今回のアルバムではいろいろなタイプの曲を起用に歌うがゆえに、ミュージシャンとしてAdoがどのような方向に向かうのか、彼女の軸はどこにあるのか、いまひとつはっきりと感じられず、ただ与えられている曲を起用に歌い上げているだけ・・・いろいろな方向性に散らばった曲を聴くと、どうしてもそう感じてしまいます。

そんな中で比較的、ボカロPとの相性の良さを感じます。ヒットした「唱」もボカロPによる提供曲ですし、あえていえば変な癖がないゆえに、聴いていてAdoのボーカルだけにスポットがあてられる形となり、結果、Adoの魅力を最大限引き出しているのかもしれません。一方、今回のアルバムで言えば、椎名林檎が提供した「行方知れず」はどこか椎名林檎のボーカルに引っ張られているような感がありますし、B'zが提供した「DIGNITY」もいかにもB'zらしいロックバラードに感じます。ここらへん、厳しいことを言ってしまえば、Adoのミュージシャンとしての方向性が定まっていないため、提供するミュージシャンの個性が強い場合には、そのミュージシャンの個性にAdoが引っ張られて行ってしまう傾向になるのかもしれません。

そういう意味でもAdoとしての今後の課題も感じられた作品。個人的にはバラエティーの持たせ方としても、もっとしんみりと表現力を生かしたような作品を増やして、Adoのボーカリストとしての実力を伸ばしたうえで、彼女だけの個性を確立させていった方がいいようにも感じたのですが。まあ、まだまだ伸びしろのあるミュージシャンなだけに、これからといった部分も大きいのでしょう。彼女がどのように自己のスタイルを確立していくのか、今後に注目したいところです。

評価:★★★★

Ado 過去の作品
狂言
ウタの歌 ONE PIECE FILM RED
Adoの歌ってみたアルバム


ほかに聴いたアルバム

Timeless Melodies -a tribute to dustbox-

パンクロックバンドdustboxが現在のメンバーとなってから25周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。先日、スプリットアルバムをリリースしたばかりのHAWAIIAN6やlocofrankのほか、04Limited Sazabysのような下の世代のバンドも参加。パンク系バンドをメインにかなり豪華なメンバーが名前を連ねています。楽曲的にはパンクなカバーがメインなのですが、女性ボーカルでシンセを入れて軽快なポップ風のカバーに仕上げたWienners「Emotions」やエレクトロサウンドを取り入れたDALLJUB STEP CLUB「New Cosmos」をはじめ、同じパンクの枠内であっても意外とバラエティーに富んだ展開が楽しめます。dustboxのファンはもちろん、参加ミュージシャンに興味があればチェックして損はないトリビュートアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2024年8月24日 (土)

デビュー作からボーカリストとしてのスタイルを確立

Title:Believe In (2024 Remaster)
Musician:谷村有美

1990年代に「ガールズポップ」の代表的なミュージシャンとして一世を風靡した谷村有美。その彼女のリリースしたアルバムが、リマスター版としてCD及びLP盤としてリリースが決定されました。まずリリースされたのが1987年のデビュー作「Believe In」。彼女が22歳の時の作品となります。

今回のリマスター盤リリースにあたって、谷村有美をシティポップとしての流れから捉える向きがあるようです。ただ、この捉え方については、リアルタイムに聴いていた立場からすると、当初、正直ちょっと違和感を覚えたのは事実です。シティポップというと、どちらかというと洋楽テイストの強いポップスというイメージがあります。一方、谷村有美の楽曲は典型的なJ-POPというイメージ。ちょっとシティポップという枠組みに入れるのは違和感がありました。

ただ、今回のデビューアルバムをあらためて聴くと、確かにシティポップの枠の中に谷村有美を入れるというのもわからなくはないな、ということを感じました。例えば「未完成」などは軽くラテン風のリズムを入れつつ、全体的にはAORという印象の強い作品。以前から何度も聴いたことあるデビュー作「Not For Sale」も、あらためて聴くと確かにAORという枠組みにあてはまるようなポップスに仕上がっています。

全体的に爽やかなメロディーラインの流れるAOR風のポップスがメイン。今から聴くと、後期の作品に比べると、もっとメロウなAOR路線がより強く感じられるような印象を受けました。谷村有美が全盛期だった90年代は、いわゆるアイドル冬の時代。そのような時期に彼女はキュートなルックスでアイドル的な人気を博しながら、よりミュージシャン性を強めることによって、アイドル路線をあえて外すことによって人気を得てきた面があります。このAOR路線というのは、このアイドル路線をあえて外した結果、たどり着いた音楽性のようにも感じます。全体的にメロディーラインも、あえてアイドルポップのようなフックを利かせることを避けたような作風にも感じますし、全体的により「ミュージシャン路線」を強調したような作風に感じました。

また、デビュー作、また彼女はまだ22歳という時期の作品なのですが、既にボーカリスト谷村有美のスタイルが確立されているように感じました。ちょっと舌ったらずな感じと、クリスタルボイスとも称されるその歌声が非常にキュートで耳に残りますし、それがアイドル的な人気を博したのもわかるように思います。

そんなデビュー作にして既に谷村有美の魅力を存分に感じさせてくれた本作。今回リマスター版ということなので、当初、特にリマスター版らしいボーナストラックもなく、ちょっと残念にも感じていたのですが、なんと実際に聴いてみると、アルバムの最後にシークレットトラックが収録!情報が全く出ていないので、詳しいことは不明なのですが、楽曲は「ためいき色のタペストリー」のピアノ弾き語りバージョン。おそらく、現在の彼女による再録音ではないかと思われます。そうだとすると、声はちょっと震えて不安定になっている部分はあるのですが、今なお変わらないクリスタルボイスを聴くことが出来、ボーカリスト谷村有美の健在ぶりを感じます。

8月には2枚目の「Face」のリマスターが、11月には3枚目「Hear」のリマスターのリリースが決定されており、今後もリマスターシリーズが続きそう。昔、聴いたいたアルバムで、久しぶりに彼女のアルバムを聴くことになりそうですが、あらためて谷村有美の魅力を感じされそうで楽しみです。

評価:★★★★★

谷村有美 過去の作品
タニムラベスト

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2024年8月23日 (金)

ダンスチューンを前面に押し出した新作

Title:Happenings
Musician:KASABIAN

デビューアルバムから前作がベスト10入り、さらには2006年にリリースされた2枚目のアルバムから7作連続、全英チャートで1位を獲得している、まさにイギリスの国民的バンドとも言えるKASABIANの約2年ぶりとなるニューアルバム。前作「The Alchemist's Euphoria」リリース前にリードボーカルのトム・ミーガンが、妻への暴行という大事件を起こしバンドを脱退。結成以来となるバンドの危機を迎えた彼らでしたが、前作に引き続き、本作も無事に、チャート1位を獲得。その変わらぬ人気ぶりを見せつける結果となりました。

アルバムの方向性としては、ここ最近のKASABIANと大きな変化はありません。ポップなメロディーラインを中心軸に、ダイナミックなバンドサウンドとエレクトロサウンドをいわゆるサウンドの両軸としてリスナーを楽しませてくれる方向性。正直言えば目新しさはないかもしれませんし、ともすれば「ベタ」と言ってしまうサウンドかもしれません。日本のメディアがあまり彼らを強く取り上げないのもそういった、目新しさのなさが大きな要因かもしれません。ただ、そんなある種のわかりやすさ、楽しさがKASABIANの最高の魅力であり、それゆえに彼らが国民的バンドとして人気を確保しているのではないでしょうか。

今回のアルバムに関しては、あえて言えばエレクトロなダンスチューンがより耳に残るアルバムに仕上がっていたように感じます。冒頭を飾る「Darkest Lullaby」は、まさに彼ららしいとも言える哀愁感たっぷりのメロディーラインを、ダンサナブルなエレクトロサウンド載せたディスコチューン。続く「Call」も同様にリズミカルでトランシーなダンスチューンに仕上がています。

そんなエレクトロチューン2曲に続く「How Far Will You Go」は一転、ノイジーでダイナミックなギターロックチューンへとチェンジ。ここでKASABIANのロックバンドらしさを見せつけたかと思えば、続く「Coming Back To Me Good」はバンドサウンドに打ち込みのリズムを入れたダンスチューンとなっており、リズミカルなダンスナンバーの目立つ展開となっています。

その後も「Passenger」のようなダイナミックなギターロックの楽曲を入れつつも、「Hell Of It」「Italian Horror」のように、エレクトロサウンドを取り入れたダンサナブルなナンバーが目立つ展開に。アルバム全体としてリズミカルな曲が多く、そのようなダンスチューンがアルバム全体に強いインパクトを与えています。ただ一方でアルバムの最後を飾る「Algorithms」は、伸びやかで爽やかなメロディーラインを前に押し出した、スケール感もあるギターロックのナンバー。「リズム」でインパクトを持たせたような今回のアルバムでしたが、最後の最後に、しっかりと「歌」を聴かせる、彼らなりの矜持を感じさせるエンディングになっていました。

前述のように楽曲的には目新しさはありません。ただ、そんな点を差し引いても十分すぎるほど楽しむことが出来る「傑作」と言えるアルバムに仕上がっていたと思います。その点、さすが国民的バンドとしてのKASABIANの実力を感じさせる作品。リードシンガーの脱退という危機を乗り越え、KASABIANの快進撃はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

KASABIAN 過去の作品
West Ryder Pauper Lunatic Asylum
VELOCIRAPTOR!
48:13
FOR CRYING OUT LOUD
The Alchemist's Euphoria


Radical Optimism/Dua Lipa

前作「Future Nostalgia」がグラミー賞の最優秀ポップ・ボーカル・アルバムを受賞するなど、ポップアイコンとして快進撃を続けるDua Lipaの3枚目となるアルバム。前作もポピュラリティーの強い、聴いていて純粋にポップアルバムとして楽しめる作品となっていましたが、今回も全体的にダンスミュージックの多い、聴いていて素直に楽しめるアルバムに仕上がっていました。楽曲的な目新しさという面は薄いのですが、それ以上にポップスアルバムとしての強度を感じさせる作品で、特に本国イギリスやアメリカで高い支持を受けるのも納得感のある作品でした。

評価:★★★★★

Dua Lipa 過去の作品
Future Nostalgia

Greatest Hits/Avril Lavigne

ポップアイコンといえば彼女も忘れてはいけないでしょう。日本でも高い人気を誇るシンガーソングライター、アヴリル・ラヴィーンの初となるベストアルバム。既にデビューから20年以上が経過している彼女。初期の作品は今から聴くと、懐かしくも若々しさを感じさせます。今から聴くと、非常にベタな感じもするのですが、ただこういうタイプの曲って、ある意味彼女を起点として多くの女性シンガーたちが影響を受けたスタイルで、結果「ベタ」になった訳で、彼女はいわばオリジナル的な立ち位置にあります。あらためてポップなメロディーはインパクトがありますし魅力的。ほどよくヘヴィーなロックサウンドとのバランスも良く、あらためて彼女がこれだけ人気になった理由も十分わかるような気がするベストアルバムでした。

評価:★★★★★

Avril Lavigne 過去の作品
Goodbye Lullaby
Avril Lavigne
HEAD ABOVE WATER
Love Sux

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2024年8月22日 (木)

貫禄の1位・・・か?

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

いまだに根強い人気を感じます。

今週1位は木村拓哉「SEE YOU THERE」が獲得。CD販売数1位。これがソロ3枚目のアルバムとなります。やはり根強い人気を感じるものの、オリコン週間アルバムランキングの初動売上5万5千枚(1位)は前作「Next Destination」の初動7万1千枚(1位)からダウン。前々作「Go with the Flow」の初動12万6千枚からは半減以下となっており、今度、下げ止まるのか、そのまま下落傾向が続くのか、注目されます。

2位は結束バンド「Re:結束バンド」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数1位。アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場する作中のバンドによるミニアルバムで、映画「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:/Re:Re:」の曲を中心に収録されています。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「結束バンド」の初動7万2千枚(1位)からダウン。

3位はLDH系の男性アイドルグループFANTASTICS from EXILE TRIBE「Temporal Transition」が先週のランク圏外から大きくランクアップし、4週ぶりにベスト10返り咲き。おそらく本作のリリースイベントが開催された影響と思われます。

4位以下初登場は、4位に同じくLDH系。THE RAMPAGE from EXILE TRIBEからの派生ユニット、MA55IVE THE RAMPAGE「M5V」が初登場。7位には「THE ALFEEトリビュートアルバム五十年祭」がランクイン。THE ALFEEのデビュー50周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。また、同じくTHE ALFEE関連では、10位にTHE ALFEE本人たちのベストアルバム「THE ALFEE 50 SONGS 1974-1996」もランクインしています。

また今週はベスト10返り咲き組も多く、5位には韓国の男性アイドルグループStray Kids「ATE」が5週ぶりにベスト10返り咲き。CDが販売された影響。また8位には同じく韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「17 IS RIGHT HERE」が先週の19位からランクアップし、3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekersは、鹿乃子のこ (CV.潘めぐみ) & 虎視虎子 (CV.藤田 咲) & 虎視餡子 (CV.田辺留依) & 馬車芽めめ (CV.和泉風花)「シカ色デイズ」が2位から1位にランクアップし、3週ぶりに1位返り咲きを果たしています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週のTikTok Weeklyは先週に引き続きMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が2週連続1位を獲得しています。

ニコニコVOCALOID SONGSは今週もお休み。ニコニコ動画は8月5日より再開しているので、そろそろこちらのチャートも再開してもいいと思うのですが、まだアナウンスはありません・・・。今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年8月21日 (水)

Mrs.GREEN APPLEが躍進

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はベスト3のうち2曲をMrs.GREEN APPLEが締めるチャートとなっています。

まず今週1位は男性アイドルグループBE:FIRST「Blissful」が獲得。8月28日リリース予定のアルバム「2:BE」からの先行配信シングル。ダウンロード数、ラジオオンエア数及び動画再生回数で1位を獲得。ストリーミング数でも7位を獲得し、総合順位で1位を獲得しています。

そして2位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週から同順位をキープ。これで4週連続の2位となります。ストリーミング数は9週連続の1位をキープ。ただ、動画再生回数は1位から3位にダウンしています。これで18週連続のベスト10ヒット&通算12週目のベスト3ヒットとなります。

さらに今週、彼らの配信シングル「familie」が先週の17位から3位に大幅アップ。ダウンロード数2位、ストリーミング数5位、ラジオオンエア数2位、動画再生回数6位。5か月連続リリースのラストとなる本作で、2曲同時ベスト3入りという快挙を達成。さらに先週7位だった「青と夏」もワンランクダウンの8位とベスト10をキープ。これで通算12週目のベスト10ヒットとなっています。Mrs.GREEN APPLEはさらに11位に「ケセラセラ」、16位に「点描の唄 feat.井上苑子」、17位に「コロンブス」、さらに20位に「Soranji」もランクインしており、実にベスト20のうち7曲を同時ランクインさせています。「コロンブス」の炎上騒動は完全に過去のものとなってしまいましたね・・・。炎上騒動のネガティブイメージ以上に、バンドとしての勢いが上回ったということでしょう。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にモーニング娘。'24「なんだかセンチメンタルな時の歌」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数10位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上10万3千枚で1位初登場。前作「すっごいFEVER!」の初動10万4千枚(2位)から微減。

次にベスト10圏外からの返り咲きですが、今週、Vaundy「怪獣の花唄」が12位から10位にアップ。今年の4月3日付チャート以来のベスト10返り咲きとなっています。通算59週目のベスト10ヒット。特にカラオケ歌唱回数が、3月20日付チャートで1位を一度明け渡したものの、6月26日付チャートで1位に返り咲き。以降、9週連続の1位を記録しています。また、ストリーミング数も11位を記録。総合順位でもベスト10返り咲きとなっています。

一方、ロングヒット曲では、まずCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は3位から5位にランクダウン。ストリーミング数及びカラオケ歌唱回数は9週連続の2位となっていますが、動画再生回数が3位から4位にダウンしています。これでベスト10ヒットは31週連続となります。

Omoinotake「幾億光年」は6位から7位にダウン。ストリーミング数はこれで14週連続の3位。27週連続のベスト10ヒットとなります。最高位は2位、ベスト3ヒットは3週のみという派手なチャートアクションはないのですが、かなり根強い人気を感じさせます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年8月20日 (火)

彼女がやりたかったこと

Title:うたうように、ほがらかに
Musician:詩羽

水曜日のカンパネラの2代目ボーカリストとして抜擢され、いきなり注目を集めた詩羽。水曜日のカンパネラのボーカリストとして順調にキャリアを重ね、知名度も上げていった彼女ですが、今年7月にソロ名義のニューアルバムを突如リリース。水カンといえば、ケンモチヒデフミが作詞作曲編曲は手掛けるものの、表に出てくるのは事実上彼女1人という形であるため、水カンとは別に、ソロアルバムをリリースするというのはちょっと驚きでした。

そのソロアルバムは全8曲。すべての曲の作詞は彼女自身が手掛け、作曲に関しても、1曲、青山颯眞との共作はあるものの、全曲、彼女が作曲を手掛けるという内容。プロデュース及び編曲は吉田一郎が全曲手掛けています。そんな水カンとは大きくことなる布陣で手掛けた今回のアルバムですが、楽曲は水曜日のカンパネラと大きく異なる・・・というよりはむしろ真逆。明確に水カンとは方向性の異なる、ソロアルバムらしい作品に仕上がっていました。

まずサウンド面ですが、エレクトロサウンドが主体の水カンに対して、ソロ作ではバンドサウンドがメイン。むしろ方向性的には、ロックやパンクの色合いの濃い作品が並びます。「人間LOVER」はパンキッシュな作品になっていますし、「トワイライト逃避行」もギターのホワイトノイズを前に出したサウンドが特徴的。「あとがき」もハードロックなナンバーとなっていますし、ロック志向がはっきりとわかる音楽性となっています。もともと学生時代はバンドを組んでいたこともあるそうで、彼女の音楽的な好みは、水カンのようなエレクトロポップよりも、むしろロック志向なのでしょう。

さらにもっと特徴的なのが歌詞。水カンの歌詞というと、歌詞の内容というよりも言葉のリズムを意識したワードセレクトだったり、ちょっと変わった視点のユーモラスセンスあふれる歌詞が特徴的でした。一方、詩羽の歌詞は、むしろかなりメッセージ性の強い歌詞が特徴的。特にポジティブに自らを肯定するような前向きな歌詞が印象的で、まさに冒頭を飾る「MY BODY IS CUTE」が代表的。

「MY BODY IS CUTE 抱きしめてキスをしようよ
嫌いなところは隠していいし 好きになるために見せてもいいの」
(「MY BODY IS CUTE」より 作詞 詩羽)

と、自分の身体を肯定的に捉える歌詞が印象的。最近、世界的に自分の身体のありのままを受け入れよう、という「ボディポジティブ」というムーブメントがありますが、それに沿ったような前向きのメッセージ性あふれる歌詞となっています。また同時に

「ありのまんまはサイコーなんだ 強く変わることも正解なんだ」
(「MY BODY IS CUTE」より 作詞 詩羽)

というメッセージも同時に出しており、このポジティブで力強いメッセージ性が大きな魅力に感じました。

まさに歌詞にしろサウンドにしろ、詩羽のやりたいとことを反映させた、ということがよくわかるアルバム。彼女が本来、演りたかった音楽は水曜日のカンパネラと真逆だったんだな、ということを強く感じるような作品になっていました。正直言って、バンドサウンドについても目新しさはありませんし、歌詞にしても、メッセージ性強い歌詞は耳を惹くのですが、テーマ性的にも言葉の選び方についても目新しさはありません。ただ、目新しさがないが故に、逆に彼女が演りたいことをそのままぶつけてきた音楽なんだな、ということは強く感じます。水カンと彼女の演りたい音楽にギャップがあったからこそ、このタイミングでソロアルバムという形でそのギャップを埋めたかったんだな、ということを感じさせてくれるアルバムでした。

こういうソロ作を出しちゃうと、水カンのボーカルもまたチェンジする可能性もあるのでは??とも思ってしまうのですが、今後はソロも水カンも並行して活動を続けて行ってくれそう。こういうソロ作を出すからこそ、水カンにも力を入れられるという点も大きそう。これから、ソロも水カンも、どちらの活動も期待したいところです。

評価:★★★★★

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2024年8月19日 (月)

今回も日本になじみのある題材の曲も・・・

Title:Love Heart Cheat Code
Musician:Hiatus Kaiyote

オーストラリアはメルボルンにて結成された4人組バンド、Hiatus Kaiyote。前作「Moon Valiant」は、リリース前にボーカルのナオミ・ネイマールの乳がんが発覚し、さらにはその後はコロナ禍により録音もままならない状況になるなど、困難な状況が続き、リリースまで約6年という歳月を要してしまいました。それに比べて今回のアルバムは特に大きな障害もなく、前作から3年というインターバルでのリリース。ただ、内容としてはもちろん前作に引き続きの傑作アルバムに仕上がっていました。

Hiatus Kaiyoteの楽曲というと、ソウル、ネオ・ソウルなサウンドをベースに、ロックやジャズなど、幅広い音楽性を取り入れつつも、ポップにまとめあげている作風が大きな魅力。その方向性は今回のアルバムでも変わっていません。まず前半に関しては、シンプルにソウルやR&Bの影響が強いナンバーが並びます。1曲目の「Dreamboat」はストリングスとピアノでスケール感あるドリーミーなサウンドを聴かせつつ、ネイマールの美しい歌声で力強く歌い上げる、ソウルでスケール感のある作品。「Telescope」もリズミカルなビートをバックにメロウに歌い上げるネオソウルのナンバー。「Everything's Beautiful」はファンクのリズムを入れつつも、力強く歌い上げるソウルナンバーと、前半はソウルやR&Bをストレートに取り入れた作品が並びます。

様々な作風の楽曲という点では本作では後半から。エレクトロサウンドを取り入れたドリーミーなポップ「Longcat」からはじまり、「How To Meed Yourself」ではサウンドはジャズからの影響を感じさせますし、タイトルチューンである「Love Heart Cheat Code」では基本的にはメロウなソウルナンバーなのですが、そのサウンドからはサイケデリックな要素も。さらに「Cinnamon Temple」は様々なサウンドを取り入れたダイナミックなサウンドで、ロック的な要素も強く感じる作品となっていますし、ラストは、ジェファーソンエアプレインのカバーなのですが、その「White Rabbit」もアバンギャルドなサウンドで、ロックテイストの強い作品に仕上げています。

アルバムの前半と後半で、楽曲の方向性が変化した作品となっていますが、やはりアルバム通じて大きな魅力であるのが、前作でも感じたのですが、ナオミ・ネイマールのボーカル。ソウルフルに歌い上げる力強さがありつつも、同時に優しさと清涼感のある歌声が大きな魅力。楽曲によってそのスタイルを使い分けるボーカルは大きな魅力でしたし、彼女のボーカルが、アルバム全体に統一感を与える大きなキーにも感じられました。

ちなみに前作「Moon Valiant」では「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」にちなんだ作品があるなど、日本との親和性も強い作品でしたが、今回も前述の「Longcat」は日本初のネットミームである「のびーるたん」の海外での呼び名にちなんでつけられたタイトルだそうです。そういう意味では今回も日本との意外な親和性はうれしいところ。ちなみに10月には来日ライブも予定されています。

前作に引き続き今回も非常に魅力的に仕上がった傑作アルバム。基本的にはポップな作風にまとまっているため、幅広いリスナー層が楽しめそうな作品。前述のとおり、日本になじみのある題材を取り上げた作品もありますし、日本でも広く聴かれてほしい作品です。ドリカムやMISIAあたりが好きなら気に入るかも?

評価:★★★★★

Hiatus Kaiyote 過去の作品
Moon Valiant


ほかに聴いたアルバム

Breathe...Godspeed/Verraco

Verracod

コロンビア出身のDJ、プロデューサーによる4曲入りのEP。リズミカルなエレクトロダンスミュージックは基本的にシンプルで、ある意味、難しいことなく楽しめ、そして踊れるような楽曲が並びます。ただ、楽曲によっては微妙にラテンの要素が加わっているのがユニークなところ。ラテンの要素を前に押し出すというよりも、ちょっと隠し味的に加わっているところがまたユニークで、シンプルなエレクトロながらも、この点が微妙な癖となって、より楽曲を魅力的なものとしています。

評価:★★★★★

The Healer/Sumac

今回紹介するSumacはアメリカ/カナダのポストメタルバンド。日本の灰野敬二ともコラボを組んで、何枚かアルバムをリリースしたことあるバンドのようで、メタリックなサウンドを入れつつも、どちらかというとプログレやポストロック的なサウンドを聴かせてくれるバンド。本作も1時間16分に及ぶ長さがらも、わずか4曲入り。1曲あたり12分~25分という長さとなっており、ダイナミックなバンドサウンドにデス声も入れて、ゆっくりと複雑に構成された楽曲が特徴的。ロックリスナーとしてはヘヴィーなサウンドはやはり聴いていて心地よさを感じさせつつ、その凝った楽曲には耳を惹かれます。長尺の楽曲ながらも、飽きることなくしっかりと楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

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2024年8月18日 (日)

アバンギャルドさとポピュラリティーが同居

Title:Sentir Que No Sabes
Musician:Mabe Fratti

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今回紹介するのは、グアテマラ出身で、メキシコシティーを中心に活動しているチェリスト、Mabe Frattiの4枚目となるアルバム。以前からアルバムは高い評価を受けていたようですが、特に今回のアルバムでは、各種メディアで高評価を受けて、さらに注目が高まっているようです。

彼女の音楽性に関しては、英語版のWikipediaではアバンギャルド、エクスペリメンタルという表現をされています。チェリストというと、イメージとしてはクラシックというイメージを受けるのですが、彼女の楽曲に関しては、そんな一般的なチェリストのイメージとはかけ離れています。アルバムの冒頭を飾る「Kravitz」は一定のリズムを刻むベースラインに、ピアノとホーンセッションが不穏なセッションを繰り広げるアバンギャルドなサウンドが耳に行きます。挑戦的と言えば「Elastica Ⅱ」はまさにそんな1曲で、アバンギャルドなストリングスと力強いドラムスのリズムの実験的なインストナンバーに仕上がっています。

同じ、「Elastica Ⅰ」も「Ⅱ」と同様、サイケな雰囲気を醸し出すメタリックなインストナンバーですし、このメタリックでサイケなサウンドはそのまま次の「Margen del indice」へと続いていきます。アルバム全体として、アヴァンギャルドな作風の楽曲が多く、次の展開を読めないようなサウンドに耳をひかれる内容に。ポストロック、サイケロック的な様相の強いアルバムになっています。

ただし、おそらくこれだけならこのアルバム、そこまで高い評価を受けるような作品にはなっていなかったように感じます。このアルバムの大きな魅力は、これだけアバンギャルドなサウンドを組み込みつつ、非常にポピュラリティーの高いメロディーラインが流れていること。そして、それを歌い上げる彼女の歌声が、清涼感あふれて耳を惹きつけるものである、という点でしょう。

まさにそんな特徴が発揮されるのが2曲目の「Pantalla azul」。1曲目の雰囲気から一転、メランコリックなサウンドにメロディアスでポップなメロディーライン、そして彼女の美しい歌声というグッとポピュラリティーのあふれる作品に仕上がっています。その後、アバンギャルドな「ElasticaⅡ」に続く「Oidos」も、メランコリックなチェロの響きと彼女の歌声が実に美しいナンバー。先ほど、サイケな作風と紹介した「Margen del indice」でも彼女はテンポよいチェロの音色をバックに美しい歌声を聴かせてくれていますし、ラストを締めくくる「Angel nuevo」は幻想的なコーラスラインを取り入れたドリーミーな雰囲気を醸し出すナンバーとなっています。

アバンギャルドな要素とポップな要素が絶妙なバランスで配された作品ともいえる本作。それゆえに、その独特なサウンドに耳を惹かれつつ、一方ではいい意味でポップで聴きやすいアルバムとなっていました。いろいろな側面から非常に魅力的な傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Mabe Fratti 過去の作品
Se Ve Desde Aqui


ほかに聴いたアルバム

Below The Waste/Goat Girl

イギリスはサウスロンドン出身のガールズバンド、Goat Girlの3枚目となるアルバム。ノイジーでローファイなギターサウンドに気だるい雰囲気の女性ボーカルという組み合わせが魅力的。基本的には淡々と楽曲は進んでいくのですが、楽曲によっては力強いシャウトを入れてきたり、よりポップなメロを聴かせてくれたり、フォーキーなサウンドを聴かせてくれたりと、意外とバラエティーの富んだ展開も魅力的。基本的には前作から大きな変化はないのですが、何気に惹かれるサウンドが魅力的な新作です。

評価:★★★★★

Goat Girl 過去の作品
On All Fours

One Hand Clapping/Paul McCartney&Wings

本作は、もともと1974年に録音されたスタジオライブ作品。同タイトルのWINGSのドキュメンタリー番組のために録音された作品だったのですが、同番組がお蔵入りとなったため、録音音源も未発表に。その後、一部の音源は公開されたのですが、このたびアルバムとしてリリースされ、話題となっています。WINGSの代表曲にビートルズのカバーも含めた全26曲。全曲、ポップで明るくメロディアスな本作は、聴いていて直に楽しいものがあります。もちろん録音状態にも問題ありませんし、これが長年、未発表だったのが逆に不思議な感じが。純粋にPaul McCartney&Wingsの新たな作品として楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

PAUL McCARTNEY 過去の作品
Good Evening New York City
NEW
Egypt Station
McCartneyIII
McCartney III Imagined

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2024年8月17日 (土)

多種多様な選曲に驚き

Title:SPOILS #3 Dragon Blood Jasper
Musician:上杉昇

90年代にWANDSのボーカリストとして活躍し、一世を風靡した上杉昇。音楽性の違いから1995年にWANDSを脱退後、al.ni.co、猫騙などのバンドを経て、現在はソロとして活動を続けていますが、今回紹介するのはそんな彼のカバーアルバムです。もともと2006年に「SPOILS」という名前のカバーアルバムをリリース。さらに2023年にその第2弾をリリースしたのですが、今回はその前作のカバーアルバムからわずか1年というインターバルでリリースされたカバーアルバムの第3弾となります。

このカバーアルバムでユニークなのは、その選曲の幅広さ。1曲目は、いきなりBAZRAの「おうお」のカバーからスタート。いや、まずBAZRAという名前自体、久々に聞いた!といった感じですし、「知る人ぞ知る」的なこのバンドの曲を選曲した時点でかなり驚きです。かと思えば、それに続くのは中島みゆきの「命の別名」に、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」と、いずれも有名曲ではあるものの、上杉昇のイメージとはまた異なる選曲に、これまた驚きですし、さらにそれに続くのがXXXTentacionの「WHAT ARE YOU SO AFRAID OF」と、これまた中島みゆきや西田佐知子と、絶対に並んで名前が並ぶことのないようなミュージシャンが続いています。その後も、KODOMO BANDや平沢進、BUCK-TICKやeastern youth、Coccoや小比類巻かほると、まさに多種多様なミュージシャンたちの選曲にまずは驚かされます。

そして、彼のカバー自体もなかなかユニーク。もともと上杉昇の歌声自体、しゃがれ声でちょっとあくの強さを感じさせます。特にWANDS時代の歌い方は非常に端正で、癖のないちょっとアイドルテイストな歌い方だったのですが、WANDS脱退後はその頃の歌い方を逆に避けるように、がなり声を入れ、あくの強さをあえて出した歌い方をしているのですが、本作では、そんな特徴的なボーカルを用いて、あえて自分の領域に楽曲を引きずりこんで自分の曲にしてしまうような、そんなカバーに仕上げています。

特に中島みゆきの「命の別名」ではハードロック風なアレンジで、これでもかというほど力強く歌い上げるボーカルスタイルが特徴的。原曲自体、ボーカルの力強さを押し出した楽曲となっているのですが、そのスタイルを継承しつつ、しっかりと上杉昇なりのハードロックなカバーに仕上げています。逆に「アカシアの雨がやむとき」は原曲の雰囲気をガラリと変えたパンクロック風のアレンジに。自分の色をしっかりと出したカバーが耳に残ります。

そんな訳で、まさに楽曲を上杉昇の色に染め上げるような、そんなカバーが目立つのですが、ただよく聴くと、実は比較的原曲の色をしっかりと残したカバーも多いことに気が付かされます。前述の「命の別名」もそうですし、平沢進の「庭師KING」も原曲のエキゾチックな作風を残したアレンジとなっていますし、BUCK-TICKの「月世界」も基本的には原曲に沿ったようなアレンジに。Coccoの「東京ドリーム」もボーカルの声色やスタイルが全く異なるため、原曲と大きく異なるように感じるのですが、アレンジは基本的にシンプルなピアノアレンジと原曲を踏襲しています。

そういう意味では原曲の魅力をしっかりと残しつつも、ボーカリストとしての力量により、しっかりと自分のものとしてしまっている、カバーアルバムとしては理想的な形態のアルバムとも言えるのかもしれません。また、そのためボーカリスト上杉昇の実力を存分に感じられる作品になっていたようにも思います。WANDS時代の彼を知っている人も知らない人も、ボーカリスト上杉昇の魅力を感じられる、お勧めしたいカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

上杉昇 過去の作品
永劫回帰I
永劫回帰Ⅱ


ほかに聴いたアルバム

Concert Tour 2023 ALL BEST 2/徳永英明

2023年に行われたコンサートツアー「ALL BEST 2」より、2023年12月2日に行われた川口総合文化センター リリア メインホールでのライブの模様を収録したライブアルバム。彼のオリジナルソングの代表曲はもちろん、「VOCALIST」シリーズからのカバー曲も収録された選曲となっています。徳永英明の全盛期をリアルタイムで知っている世代なのですが、当時の彼というと、若い世代向けの今どきの曲を歌うミュージシャンというイメージだったのですが、歌謡曲のカバーと並んで今聴くと、驚くほど彼の曲って「歌謡曲」だったんだな・・・ということを実感してしまいます。それが「悪い」ことでは決してなく、そんな代表曲を網羅的に聴けるこのアルバムは非常に魅力的な作品だったのですが。

評価:★★★★★

徳永英明 過去の作品
SINGLES BEST
SINGLES B-Side BEST

WE ALL
VOCALIST4
VOCALIST&BALLADE BEST
VOCALIST VINTAGE
STATEMENT
VOCALIST 6
ALL TIME BEST Presence
Concert Tour 2015 VOCALIST&SONGS 3 FINAL at ORIX THEATER
ALL TIME BEST VOCALIST
BATON
永遠の果てに~セルフカヴァー・ベストI~
太陽がいっぱいPlein Soleil~セルフカヴァー・ベストII/徳永英明
LOVE PERSON

劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiro/スピッツ

Yasaspi

昨年劇場公開された同タイトルのライブドキュメンタリーがDVDとしてリリースされるにあたって、音源部分のみをライブアルバムとして配信限定リリースされた作品。映画の方は昨年、映画館で見て、感想はこちらに書きました。セットリストは代表曲から、比較的マニアックなナンバーまで並べた構成となっているのですが、タイトル通り、優しさあふれるスピッツのメロディーを堪能できるアルバム。音響状態もよい会場での無観客の状態でのライブですので、「ライブアルバム」というよりもライブレコーディングの形をとった企画盤に音源的には近いのかも。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物
醒めない
CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
見っけ
花鳥風月+
ひみつスタジオ

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2024年8月16日 (金)

言うほど黒くない

Title:Unspoiled
Musician:Kroi

バンド名がそのまま「黒い」と名乗る大胆不敵なこのバンド。結成6年目となる5人組バンドで、もともと2019年にサマソニのオーディションに当選し、サマーソニックの舞台を踏んで注目を集め、その後、フジロックにも出演。3枚目になる本作ではビルボードチャートで10位を獲得するなどブレイクを果たし、現在、もっとも注目を集めているバンドの一組となっています。

そんなバンドですが、まずは大胆不敵なそのバンド名が強いインパクトとなっています。先日、マーヴィン・ゲイのアルバムタイトルをそのままバンド名として使用し、なおかつ、非常にインパクトのある名前を用いている、その名も「離婚伝説」というバンドを紹介しました。彼らについても、あまりにストレートな名前は、一度聴いたら忘れられないようなインパクトを持っているかと思います。

ストレートに「黒い」というバンド名をつけているだけに、どす黒いグルーヴ感あふれるサウンドを聴くことが出来るだろう・・・と思いきや、確かにブラックミュージックから影響を強く受けたグループではあるのですが、率直なところ、言うほど黒くありません。1曲目の「Stellar」は爽やかなポップチューンで、メロウなR&Bの影響を受けているのですが、どす黒いグルーヴ感といった感じではありません。

「Green Flash」はファンキーなリズムにラップも入って、比較的「黒い」作品になっているのですが、こちらもどちらかというとポップス寄り。「GAS」などはブラックミュージックというよりもハードロックな楽曲ですし、「PULSE」は爽やかなシンセのサウンドで、アイドルポップ的な雰囲気すら感じれるポップチューン。「Sesame」も爽やかでテンポのよいR&Bの影響を受けたJ-POPといったイメージが強いですし、「Water Carrier」もソウル風の軽快なエレピを聴かせつつも、どちらかというとロック寄りのポップスとなっています。

ただもっともこの「Kroi」というバンド名、ブラックミュージックをそのまま差す訳ではなく、「あらゆる音楽ジャンルの色を取り入れて新しい音楽性を創造したいという考えで、全ての色を混ぜると黒になる」ということからこの名前を命名したとか。そのような由来からすると、確かに必ずしもブラックミュージック一本やりではない彼らの音楽性には納得がいきます。

もっとも、じゃあ言うほど様々なジャンルが混じっているか、と言われると、それはそれで若干微妙な点は否めず。ファンクやソウル、R&BやHIP HOP、ロック、ポップスなどの要素が混じっているのは事実なのですが、それをバンドの特徴とするには、これらのジャンルの融合は目新しさもありませんし、インパクトという面でも物足りなさも感じてしまいました。

とはいえ、ソウルやR&Bの要素を取り込みつつ、全体的にJ-POPに落とし込んでいるそのスタイルには、やはりバンドとしての実力は感じさせますし、そのポップスセンス含めて期待できるバンドであることは間違いないかと思います。今後のさらなるブレイクに期待したいところ。また、どんどんいろいろな色を混ぜて行って、本当に黒く塗りつぶしてほしい、とも感じるバンドでした。

評価:★★★★

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2024年8月15日 (木)

今週も旧ジャニ系が1位を獲得

今週のHot Albums

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今週も1位は旧ジャニ系の男性アイドルグループが獲得しました。

今週1位はNEWS「JAPANEWS」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上10万7千枚で1位初登場。前作「NEWS EXPO」の初動14万9千枚(1位)からダウンしています。

2位初登場は美風藍(蒼井翔太) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 美風藍 アンビバレント」が獲得。恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」に登場するキャラクターによるベストアルバム。オリコンでは初動売上2万1千枚で2位初登場。同シリーズの前作、黒崎蘭丸(鈴木達央) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 黒崎蘭丸 MUSIC FOR LIFE」の初動1万8千枚(2位)からアップ。

3位初登場は「BATTLE OF TOKYO Jr.EXILE vs NEO EXILE」。「BATTLE OF TOKYO」は、「Jr.EXILE世代」と称されるLDH系のグループ(GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZ、PSYCHIC FEVER)が、ゲーム、音楽など様々なジャンルで「バトル」を繰り広げるプロジェクトだそうで、今回はそこに「NEO EXILE世代」と称されるグループ(LIL LEAGUE、KID PHENOMENON、WOLF HOWL HARMONY、THE JET BOY BANGERZ)が加わり、楽曲でバトルを繰り広げるそうです。正直、コアなファン以外には何ら興味を抱かされることはないプロジェクトが、こういう風にどんどん膨張していくのは、グループ全体として人気が行き詰まっている感は否めないのですが・・・。オリコンでは初動売上1万8千枚で3位初登場。

続いて4位以下の初登場盤です。5位はLinked Horizon「進撃の記憶」。Linked Horizonがアニメ「進撃の巨人」関連に書き下ろした楽曲をまとめたベストアルバム。6位には森口博子「ANISON COVERS 2」がランクイン。タイトル通り、アニメソングをカバーしたアルバム。7位には女性アイドルグループTEAM SHACHI「待ち合わせに、飽きもと。」が初登場しています。


今週のHeatseekers Songs

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今週のHeatseekersは、韓国の女性アイドルグループKISS OF LIFE「Sticky」が先週に引き続き1位を獲得しています。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

今週のTikTok Weeklyで1位を獲得したのは男性シンガーソングライターMega Shinnosuke「愛とU (Sped Up Ver.)」が獲得。Sped Upとは、以前、ゲスの極み乙女が自身の楽曲をSped Upバージョンでリリースし、当サイトでも取り上げたことがあるのですが、動画投稿サイトで流行している既存の楽曲を早回しにして楽しむムーブメントのこと。本作はもともと6月にリリースした彼の配信シングル「愛とU」のSped Upバージョン。TikTokで歌詞の「グラス越しに君を拝む」のところでグラスを目の前にかざして踊るというチャレンジが広がっている影響のようです。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年8月14日 (水)

新曲は少な目

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は新曲は少な目。既存曲のランクアップが目立つチャートとなりました。

そんな中で1位を獲得したのは&TEAM「青嵐(Aoarashi)」。CD販売数1位、ダウンロード数16位。韓国の芸能事務所HYBEの日本法人HYBE LEBELS JAPAN所属の日韓台混合メンバーによる男性アイドルグループ。オリコン週間シングルランキングでは初動売上33万8千枚で1位初登場。前作「五月雨(Samidare)」の初動27万6千枚(2位)よりアップしています。

2位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が3週連続同順位をキープ。ストリーミング数は8週連続、動画再生回数は2週連続の1位獲得。これで17週連続のベスト10ヒット&通算11週目のベスト3ヒットに。また「青と夏」は8位から7位に再びアップ。通算11週目のベスト10ヒットになっています。今週は以下「ケセラセラ」が11位、「コロンブス」が14位にランクインした他、「点描の唄 feat.井上苑子」が16位にランクアップしており、5曲同時ベスト20入りという結果となっています。

3位はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が4位から3位にアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数及びカラオケ歌唱回数はいずれも8週連続の2位、動画再生回数が4位から3位にアップしています。これで30週連続のベスト10ヒット&通算26週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲となりますが、今週は新曲はあと1曲のみ。秋元康系の女性アイドルグループ僕が見たかった青空「スペアのない恋」がランクイン。CD販売数2位、ラジオオンエア数4位。オリコンでは初動売上4万5千枚で2位初登場。前作「卒業まで」の初動3万1千枚(2位)からアップしています。

また新曲が少なかった影響で、ベスト10返り咲き曲も。キタニタツヤと元SexyZoneの中島健人によるユニットGEMN「ファタール」が先週の12位から10位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

他のロングヒット曲では、Omoinotake「幾億光年」が先週と同順位の6位をキープ。ストリーミング数は13週連続の3位をキープ。これで26週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年8月13日 (火)

「アンビエント」と一言で言っても・・・

Title:Ethreal Essence
Musician:Cornelius

ソロデビュー30周年を迎えた小山田圭吾ことCorneliusのニューアルバム。例のオリンピックをめぐる炎上騒動以降、ミュージシャンとしての活動も心配されたのですが、昨年は無事、ニューアルバムもリリース。さらに今回に新たなアルバムをリリースと、ミュージシャンとしての活動は正常モードに戻ってきており、個人的にはかなりホッとしています。ただし今回のアルバムは新作ではなく、ここ最近発表した彼の作品のうちアンビエント色の強い作品をまとめた企画盤的な作品。ただし、13曲中9曲が、CD化も配信も今回が初という構成。そういう意味では、よっぽど熱心に彼の活動を追いかけているようなファン以外にとっては、初耳の作品も多く、「新作」と同じようなイメージで聴くことの出来る作品になっていました。

ただ、一言でアンビエント色が強い、といってもアンビエントとして一定方向を目指して作った作品ではないので、曲調はバラバラ。1曲目の「Quantum Ghost」はスペーシーなエレクトロチューンからスタートしたかと思えば、続く「Sketch for Spring」はギターでゆっくりと聴かせるインスト。「サウナ好きすぎ、より深く」は音数を絞ったドリーミーなエレクトロサウンドが特徴の彼らしい歌モノ。ドラマ「サ道」の主題歌ということで、サウナに因んだ歌詞もまたユニークな作品になっています。

中盤の「Koko」もかなりユニークかつ実験的な作品。谷川俊太郎展の展示楽曲らしいのですが、谷川俊太郎の詩を谷川自身が朗読。その一つ一つの声を解析してドレミの音に当て込んだ曲だそうで、谷川の朗読が鮮やかなメロディーに変化していくユニークな作品に仕上がっています。

「Forbidden Apple」は配信シングルということもあって、ある意味、Corneliusらしさを感じさせるエレクトロのポップチューン。「Melting Moment」は夏の夕方の海辺のような気だるさを感じさせるギターの音色と波の音が耳を惹くAOR風の楽曲に仕上げていますし、そしてラストを締めくくる「Thatness And Thereness」は「A Tribute to Ryuichi Sakamoto」に収録された坂本龍一のナンバーのカバー。しんみり聴かせる歌モノがドリーミーで心地よい楽曲に仕上がっており、気持ちよくアルバムは幕を下ろします。

このように「アンビエント」と一言で言っても作風はバラバラ。ポップな色合いが強い作品から、実験的な作品まで様々に収録されており、その音楽性の幅広さを感じさせますし、そこに小山田圭吾の変わらぬ実力も感じさせます。また、既発表曲から選ばれた楽曲を収録した企画盤ということもあって、アルバムとしての流れみたいなものは薄い反面、全体的に柔らかさを感じさせつつ、音数を絞った楽曲はいかにもCorneliusらしく、その結果、ちゃんとアルバムとしての統一感も保たれた作品になっていました。

アンビエントということで派手な作風はありませんが、しっかりと心に染み入るアルバムになっている本作。インパクトという面でも十分、心に残りますし、特に最近のアルバムはアンビエント寄りの作品が多いだけに、ここ最近の彼の活動の中のピースとしてもしっかりとはまる1枚になっていました。

評価:★★★★★

cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius
Mellow Waves
デザインあ2
Ripple Waves
デザインあ3
夢中夢-Dream In Dream-


ほかに聴いたアルバム

1980年11月28日 札幌教育文化会館実況録音盤/森田童子

1993年に「ぼくたちの失敗」がドラマ主題歌に起用され、一躍、名前を知られたものの、リアルタイムで活動していた時は、どちらかというとカルト的な人気を誇っていたシンガーソングライター森田童子。いままで2枚のライブアルバムがリリースされていたものの、今回、はじめて1980年のライブ音源がリリース。貴重な音源として話題を呼んでいます。

・・・が、このライブ音源、録音状況がかなり悪い。あきらかにライブ会場でカセットテープレコーダーを用いての録音となっており、ボタンを押す音やらレコーダーを動かす音やらもそのまま入っています。さらにMCもそのまま収録されているのですが、音が悪すぎて聴き取れません・・・。正直、今の時代、AIを使ってもっと音をクリアにするような技法もあるように思うのですが、この音質のままリリースしようとしたレコード会社の方針に疑問を感じてしまいます。こんな不十分な音質でしかリリースできないのならば、もっと技術の進歩を待って欲しかった・・・。貴重な音源ではあるものの、かなり熱心なファン以外にはあまりお勧めできない1枚です。

評価:★★★

森田童子 過去の作品
FM東京パイオニア・サウンドアプローチ実況録音盤

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2024年8月12日 (月)

暖かい歌モノの傑作

Title:呪文
Musician:折坂悠太

個人的に、今、最も新作のリリースを待っているミュージシャンの一人が折坂悠太です。2018年にリリースされた彼の2枚目のアルバム「平成」で一躍注目を集めた彼。同作も文句なしの傑作でしたが、それに続く2021年のアルバム「心理」も「平成」に勝るとも劣らない傑作で、2021年の私的年間ベストアルバムの1位に選んだほど、個人的にもはまったアルバムでした。

そんな待ちに待ったとも言える彼の最新アルバム。前作から約2年8ヶ月。ちょっと久々のアルバムとなりましたが、個人的には、もう前作からそんなに月日が経ったのか・・・という印象も同時に受けます。単純に私が年を取って時間がたつのが早くなった、ということもあるのですが、それ以上にそれだけ前作のインパクトが大きかったということもあるのでしょう。

さて、そんな折坂悠太の楽曲と言うと、様々なタイプの音楽を取り入れた無国籍な音楽性が特徴的ですが、今回のアルバムに関しては、よりシンプルに、歌を聴かせるような作品になっていました。特に序盤、「スペル」はアコギでしんみり聴かせるフォーキーな作風となっていますし、続く「夜香木」はムーディーなサックスも入って、郷愁感たっぷりの楽曲に。続く「人人」もまた、シンプルなアコースティックのサウンドで聴かせてくれるムーディーでアコースティックな作品となっています。アルバムの最後を締めくくる「ハチス」もサックス入って伸びやかに聴かせるムーディーでメロディアスに歌をしっかり聴かせる作品で締めくくり。こぶしを利かせた折坂悠太のボーカルも印象的ですし、伸びやかなサックスの音色にちょっとシティポップ的な要素も感じます。

ただ、もちろん全編アコースティックでムーディーなだけのアルバム・・・ではありません。例えば「無言」などは、最初はアコースティックサウンドでフォーキーに聴かせる作品なのですが、後半はノイジーなサウンドが入ってサイケな要素も感じます。また「凪」もテンポよくメロディアスなポップスなのですが、軽快なギターサウンドでグルーヴィーなリズム感が魅力的。「努努」も力強く疾走感あるバンドサウンドにホーンセッションも加わったサウンドはプログレッシブロックからの影響を強く感じます。ちなみに最後にはアルバムタイトルにも繋がったようにも感じる「うん べれ びんぼ うば」という奇妙な歌詞が登場してくるのも楽曲に独特の魅力を加えています。

さらに歌詞というと耳に残るのは「正気」でしょう。基本的に日常を描いたような暖かい雰囲気の歌詞が多い中、ラストに

「私は本気です
戦争しないです」
(「正気」より 作詞 折坂悠太)

という歌詞が登場。ワンフレーズのみながらも印象的なフレーズで、彼の力強いメッセージも感じます。

インパクトの強かった前作に比べると、前々作「平成」と近い、ちょっと地味な雰囲気も感じさせます。ただ、歌モノを中心としつつも、折坂悠太らしい様々な音楽性も垣間見れる傑作アルバムに仕上がっており、今回もまた年間ベスト候補とも言える1枚だと思います。彼の実力をあらためて感じさせれたアルバムでした。

評価:★★★★★

折坂悠太 過去の作品
平成
朝顔
心理


ほかに聴いたアルバム

MELLOW FELLOW/DOPING PANDA×the band apart

DOPING PANDAとthe band apartによるスピリットEP。両者のコラボ作「MELLOW FELLOW」「SEE YOU」に、DOPING PANDAは新曲「goodbye to the old me」を、the band apartはthe band apart(naked)でリリースされている「夢太郎」のバンドアレンジバージョンを収録。さらにお互いがお互いの曲をカバーした楽曲を加えた作品に。微妙に方向性の異なる感のある2人ですが、それぞれがそれぞれの持ち味をしっかりと出している楽曲が並んでいますし、コラボ作「MELLOW FELLOW」では、DOPING PANDAらしい軽快なダンスチューンながらも、ギターやメランコリックなメロはthe band apartらしさを強く感じる作品になっており、まさにコラボならではの内容に。お互いの良さがしっかり出ているスピリットになっていました。

評価:★★★★★

DOPING PANDA 過去の作品
Dopamaniacs
decadance
anthem
THE BEST OF DOPING PANDA
YELLOW FUNK
Doping Panda
High Hopes

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))
Memories to Go
前へ(□□□ feat.the band apart)
2(the band apart(naked))
20years
POOL e.p.
3(the band apart(naked))
Ninja of Four
4(the band apart(naked))

マジカル・パワー・マコ ゴールデン☆ベスト/マジカル・パワー・マコ

主に70年代から80年代にかけて注目を集めた男性シンガーソングライター、マジカル・パワー・マコのベスト盤。Wikipediaの説明によると「奇想天外で実験的な音楽性が一部で絶賛される」と記載されていますが、まさにそんなイメージの、スペーシーなエレクトロの楽曲がメイン。ただ、曲によってはよりアバンギャルドさを増した曲や、逆にハードロック風の曲、フォーキーな作品などもあり、まさにバラバラな音楽性が特徴的。それが面白いといえば面白いのですが、どこか地面に足がついていないような感がしてしまうのも否めません。

90年代に入ると、「『宇宙人との交信のための音楽』と作りはじめる」なんて奇抜な説明がWikipediaになされています。不思議ちゃんと言えば言葉は良いのですが、ここらへん、今一つ音楽的に軸足がどこにあるのか感じられないが故に、簡単に変な方向に走ってしまうんだろうなぁ、と感じたりします。Twitterを見ると、現在も活動をしているのですが、かなり奇抜な内容で、かつ陰謀論的なツイートもリツイートしており、かなり微妙な感じ。なんとなく、こうなってしまうのも「さもありなん」といった印象も受けてしまうのですが・・・。ある意味、「奇盤」に近いかもしれませんが、このベストに収録されている作品については、それなりにユニークで楽しめる内容だと思いますので、興味のある方は、どうぞ。

評価:★★★

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2024年8月11日 (日)

心からワクワクするロック

Title:THE LATEST BEST
Musician:ZIGGY

今年、結成40周年を迎えたロックバンド、ZIGGY。途中、活動休止の時期を挟みながらも、今でも第1線で活動を続けています。特に2017年以降は事実上、森重樹一のソロプロジェクトとなってからはフットワークが軽くなったのか、アルバムシングル共に積極的なリリースが続いています。今回のアルバムは、その2017年以降の作品を収録したベストアルバム。アルバム紹介では「メンバー自らセレクト」と書いてあるのですが、メンバー、森重樹一しかいないじゃん・・・。

このベストアルバム、その特徴を一言で言ってしまうと、笑ってしまうほどベタなロックという点でしょう。冒頭を飾る「I STAY FREE FOREVER」も疾走感あるバンドサウンドにストリングスやピアノが入ってダイナミックさを増したハードロックナンバー。「ROCK'N'ROLL QUEEN」もヘヴィーなギターリフ主導のバンドサウンドに軽快なピアノも加わった、こちらも軽快なハードロックナンバーと、冒頭から勢いのある陽気なロックナンバーを連発していきます。

その後も、ファンキーなベースラインが特徴的な「証」や、シンセも入った、異色的とも言えるダンスチューン「ヒカリノアメ」などの楽曲も交えつつも、基本的にはベタなハードロックナンバーが続きます。また、基本的にはポップなメロディーラインを聴かせてくれる点も大きな特徴で、「虹を見た」はピアノのリズムが軽快なメロディアスなポップチューン。他にも「SWING,DRIVE,ROCK'N'ROLL」「WONDERFUL FEELING」など、軽快で疾走感あるロックナンバーながらもポップなメロがまずは印象に残るような曲が続きます。

全体的にはグラムロックやハードロック、80年代ヘヴィーメタルの流れを感じつつ、サウンド的には90年代J-POPやビートロックからの流れも感じるサウンドで、アラフィフ世代にとっては、かなり懐かしさを感じさせるサウンドになっているように感じます。ポップなメロは歌謡曲的な部分は垣間見れるのもも、こちらは歌謡曲的なウェットさは薄く、全体的にバタ臭くまとめ上げている点も、ロックとして聴きやすさを感じる要因でしょう。一方、以前の彼らの作品に感じられたブルースの要素は薄め。森重樹一のソロプロジェクトとなり、より彼の嗜好が反映された結果でしょうか。

また、ZIGGYというと、シングルヒット曲が「GLORIA」をはじめ90年代初頭のみなのですが、この手のミュージシャンは、特に最新ベストでも往年のヒット曲を「新バージョン」として再録して、最新アルバムやベストに収録しがちなのですが、今回のベスト盤についてはそのような曲はありません。その点も現役バンドとしての矜持を感じされる点もプラスポイントです。

正直なところベタなサウンドで目新しさは感じさせませんし、むしろちょっと時代遅れのように感じてしまう部分も否定は出来ませんが、一方で、勢いのあるバンドサウンドはデビュー40周年を迎えて、衰えない現役感を覚えますし、なによりロックという楽曲が持っているワクワクさを体現化しているように感じます。ベタなサウンドとか、そういうことは抜きとして、まずは心から楽しめるような作品に仕上がっていたと思います。ロック好き、特に80年代90年代のハードロックが好きなら、文句なしにお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW
HOT LIPS
SDR
SO BAD,IT'S REAL


ほかに聴いたアルバム

只者/稲葉浩志

「稲葉浩志」ソロ名義では実に10年ぶりとなる、ご存じB'zのボーカリストによるソロアルバム。「只者」=「何者でもない一人の人間」として、稲葉浩志が自ら綴った歌詞が特徴的な、まさにソロアルバムらしいソロアルバム。ただ、楽曲的には、以前のソロアルバムも同じなのですが、一応、ハードロックに影響を受けたサウンドながらも、歌謡曲テイストが強いルーツレスな作風が特徴的で、この煮えきらない音楽性がどうにも中途半端さを感じてしまってマイナス。音楽的にももっとB'zから離れても面白いとは思うのですが。

評価:★★★★

稲葉浩志 過去の作品
Hadou
Singing Bird
CHERRY GROOVE(INABA/SALAS)
Maximum Huavo(INABA/SALAS)

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2024年8月10日 (土)

ありそうでなかった対バンライブ

NAGOYA SOUND PRESS SHOW 2024

竹内アンナ/マハラージャン

会場 名古屋ReNY limited 日時 2024年8月2日(金)19:00~

Nagoyasoundpress

今回は、NAGOYA SOUND PRESS SHOWというイベントライブに足を運んできました。お目当ては、今、最も注目しているシンガーソングライターのひとり、マハラージャン。対バンの竹内アンナはほとんど初耳に近いミュージシャンだったのですが、マハラージャンのライブが見れるよい機会だったので、足を運んできました。この日のイベントは「ありそうでなかった対バン」がテーマだそうで、この両者は初対バンというステージだったようです。

会場は椅子が並べられており、全席指定というスタイル。当日券は売っていましたが、ほぼ満員という状況でした。予定時間を10分程度まわったところで、まず最初のミュージシャン、竹内アンナがスタート。彼女を見るのはもちろん今回がはじめてなのですが、彼女は、華奢な雰囲気のギターをかかえた女の子。同じく女性のベーシストと、男性のドラマーの3人体制でのステージでした。

今回、彼女の音楽を聴くのもはじめてだったのですが、ギターを中心としたバンドサウンドなのですが、楽曲的にはファンクやソウル、R&Bの要素がかなり入っている感じ。一時期、よく言われていた、いわゆる「ギター女子」によくありがちなギターロック風のJ-POPとはちょっと一線を画する感じで、軽快でポップなメロを聴かせてくれるのですが、ほどよくブラックミュージック的な要素が入っている点、個性的であり、かつ魅力的に感じられました。

ステージは全10曲、約40分程度のステージ。もちろん楽曲も今回はじめて聴く曲ばかりなのですが、ダンサナブルな踊れるような曲を中心に、メロウに聴かせるバラードもあったりして、しっかりと楽しめるステージでした。曲名でわかったのは、序盤に「TOKYO NITE」という曲を披露してくれたのと、ラスト前に「生活」という楽曲を聴かせてくれたこと。また最後は彼女のアコギ1本での弾き語りで、締めくくってくれました。

そして続いてはマハラージャンのステージ。トレードマークのターバンを巻いての登場で、メンバーは男性のベーシストと女性ドラマーという3人編成。竹内アンナとは、同じ3ピースながら、性別がちょうど逆という構成になっていました。最初は「蝉ダンスフロア」からスタート。ダンスチューンにまずは会場が盛り上がります。さらに「I'm just looking」と最新アルバムからの曲が続き、最初のMCへ。「これ、誰にも言っちゃいけないけど、名古屋が一番盛り上がった」というどこでも言っているんだろうな(笑)というMCを挟み、「波際のハチ公」へ。この曲ではなぜか途中に、ベーシストの方がヨーヨーの妙技を披露するという謎な(?)シーンも飛び出し、会場を沸かせていました。

中盤は「僕のスピな人」「Eden」とちょっと昔のナンバーが続き、再びMCへ。ここでのネタは「スイカの皮を食べてみた話」で、ネタ的には面白そうながら、スイカの皮を薄切りにして回鍋肉に入れて食べた、という微妙にオチのない話・・・で、そのまま「ゾーンに入ってます。」へ。こちらも最新ナンバーからの楽曲で、力強いボーカルとバンドサウンドで会場のテンションは一気にあがります。その次の曲は残念ながら曲名不明だったのですが、ラストは代表曲「セーラ☆ムン太郎」で締めくくり。彼も約40分程度のステージ。最後は会場のテンションは上がりっぱなしでステージは幕を下ろしました。

最後は再び竹内アンナがステージに登場。簡単な挨拶と、観客含めて全員での写真撮影があり、ライブは終了。約2時間強のライブイベントでした。

今回、竹内アンナもマハラージャンもステージを見るのははじめてのミュージシャン。竹内アンナは曲を聴くのもほぼ初めてだったのですが、ブラックミュージックの要素を加えたギターロックというスタイルはなかなか良く、初耳ながらも楽しめたステージでした。マハラージャンは、思った以上にロックな、迫力のあるステージ。こちらも非常に楽しめたステージ。特に「蝉ダンスフロア」や「ゾーンに入ってます。」のようなナンバーは、ファン以外への訴求力もありそうで、広い会場でも盛り上がれそうです。どちらも魅力的なパフォーマンスで、非常に満足しつつ、会場を後にしました。

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2024年8月 9日 (金)

小山田問題の全てがわかる!

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介。ただ、「音楽」というよりも社会問題に対するドキュメントの体が強いのですが。

「小山田圭吾 炎上の『嘘』 東京五輪騒動の知られざる真相 」。ノンフィクション作家、中原一歩による作品。当サイトに来てくださっている音楽リスナーなら当然承知のことと思いますが、2021年の東京オリンピック・パラリンピック開会式の音楽担当として公表されたCorneliusこと小山田圭吾をめぐる一連の騒動を追ったノンフィクション作品。彼が過去におこなった「いじめ」に対する発言に端を発した炎上騒動と、その結果、彼の音楽活動が継続不可能となるほどのダメージを追うことになりますが、それが本当に妥当であったのか、あらためて検証した1冊となります。

この小山田圭吾をめぐる炎上騒動については、以前、当サイトでは別のノンフィクション作品を紹介しています。こちらは批評家の片岡大右が記した「小山田圭吾の『いじめ』はいかにしてつくられたのか 現代の災い『インフォデミック』を考える」という1冊。こちらは過去に発表された雑誌やWebの記事を紐解き、丹念に小山田圭吾の「いじめ」をめぐる発言の正確性と、そのような騒動に至った背景をあぶりだしている1冊となっています。その結果、彼が「いじめ」と言われる行動を行った事実は見受けられず、むしろ問題はロッキンオン・ジャパン誌(以下「ROJ」の人格プロデュースが大きな問題である、という結論に至っていました。

本書に関しても、基本的な方向性はほとんど変わりありません。彼が小中学生で行った悪ふざけのような行動はあったものの、「いじめ」と認定されるほどの悪質なものではなく、彼の発言が「ROJ」の巧みな印象操作に使われてしまったものである、という点は、片岡の著書の結論とほどんど変わりありません。ただ、基本的に既発表のメディア等から事実を導き出した片岡の著書に対して、本書では、この騒動に関する関係者に対してインタビューを試み、小山田圭吾やマネージャーへの取材や、さらには和光学園時代の同級生にも取材を実施。今回の騒動に関しての「事実関係」についてしっかり裏付けがとられています。その点、非常に読み応えがあり、まさに今回の騒動の「全て」がわかるような力作となっていました。

本書を読んで、まず強く感じたのは、この騒動を通じて、既存メディアの問題が非常に大きく浮かび上がってきた、という点が印象的でした。まずは今回の騒動、ちょっと調査を行えば、彼が雑誌で述べたような「いじめ」行為を行っていなかったことが直ぐにわかるかと思います。しかし、ゴシップメディアはもちろん、この騒動を最初に取り上げた一般紙である毎日新聞をはじめ、大手メディアに至るまで、この騒動の裏付けをほとんど行っていませんでした。私の記憶だと、女性週刊誌1誌だけ、関係者の取材記事を載せていて、そのような「いじめ」は認められなかった旨を記載していたかと思いますが、他は正誤が明らかでない雑誌記事の発言や、ともすれば雑誌記事を切り貼りしたウェブサイトをそのまま鵜呑みにして小山田圭吾を糾弾していました。ともすれば彼の音楽家人生を脅かされないほどの炎上騒動に対して、事実の裏付けも行わず、炎上する世論を煽り立てるかのようなやり方は、メディアとしての矜持に疑問を抱かざるを得ません。

さらに本書で大きな問題としているのが、片岡の著書でも大きな問題と感じた「ROJ」の姿勢でした。今回、取材において、小山田サイトが「ROJ」に直接、炎上騒動に関しての記事の訂正を依頼しています。しかし、「ROJ」の山崎編集長は、自らの誤りであるにかかわらず、この訂正を拒否しています。また、この事実に関して、中原の取材も拒否しており、同じ「いじめ」記事を取り上げたQuick Japanの村上清が、長文のコメントで、記事に関しての意図や自らの誤りに関してコメントしていたのに対してあまりに正反対の対応は、ただただひたすらカッコ悪いの一言に尽きます。「ROJ」は以前から、自らをロックジャーナリストぶりながらも、音楽をめぐる社会問題から逃げ回っている印象を強く持っていましたが、本書では、そんな「ROJ」のみっともなさ、カッコ悪さを強く糾弾しています。本書の最後で、「ROJ」山崎編集長に対する小山田圭吾の疑問がインタビューの中で語られていますが、この一言はおそらく中原にとって、ぜひとも引き出したかった一言ではなかったか、と強く感じました。

もちろん小山田サイトに非がなかったかというと、そういう訳ではありません。「ROJ」のインタビューについても、編集者側とのある種のなれあい的な関係が、安直な発言に至ってしまった点は、「ROJ」側の悪意的な切り取りがあったことを差し引いても、小山田圭吾に非があったのは否めません。また、オリンピック以前にも彼の「いじめ」発言に関しては何度か炎上しているのですが、その際、小山田サイドが無視した理由も今回語られています。ここらへん、マネージャーとしては今となっては当時の決断を悔やんでも悔やみくれない旨を語っていますが、この点のメディアリテラシーや危機管理体制の意識の低さについても、小山田サイドの非は少なくなかったと思われます。

ただ、彼が行ったという小中学生時代の「悪ふざけ」については、確かに小山田圭吾にも非はあるかと思いますが、少なくとも「いじめ」として30年以上経た今、糾弾すべき事実とは思いません。私自身、ここで記された程度の「悪ふざけ」を受けた記憶はありますが、なんだかんだいっても「悪ふざけ」を行った相手とも、その後も腐れ縁的な友人関係が続きましたし、また私自身、このような「悪ふざけ」を小中学生時代に全く行ったことがないか、と言われると、胸を張って潔白といえる自信はありません。この「悪ふざけ」について非難している方については、逆に胸に手を当てて自分が潔白と言えるのか、かなり疑問に感じざるを得ません。

唯一残念だったのが、小山田圭吾の「悪ふざけ」の「被害者」とされる人物へのインタビューが行えなかったこと。彼らがその当時、そして今、小山田圭吾に対してどのような感情を抱いているかわかれば、より事件が多面的に見れたと思うのですが・・・その点は非常に残念です。

そんな残念な点はあったのですが、そこを差し引いても今回の表題の通り、「小山田問題の全てがわかる!」と言える、事実関係を丁寧に追い、今回の問題に関して様々な視点から事実は何かを追った力作。片山の著書に関しては「小山田問題にモヤモヤするファンに」と書いたのですが、本書は小山田問題を知っている全音楽ファンに読んでほしい1冊だと思います。特に、今回の騒動に関して、小山田圭吾の生い立ちから記されており、その中にはフリッパーズの解散にまつわる話や、小山田圭吾と小沢健二の関係性についての記載もあり、この点、音楽ファンにとっても読みごたえのある取材内容となっていました。これこそがまさに「取材」だと感じさせる、まさにジャーナリストとしての矜持を感じさせる1冊。かなり強くお勧めしたいノンフィクション作品です。

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2024年8月 8日 (木)

1位は誰?と思いきや・・・

今週のHot Albums

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今週はいきなりあまりなじみのないグループの作品が1位獲得しました。

1位初登場はSUPER EIGHT「SUPER EIGHT」。誰?新しいK-POPのグループ?と思ったんですが、関ジャニ∞の名前で活動していたアイドルグループの改名後の名前だそうです。CD販売数1位、ダウンロード数4位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上18万3千枚で1位初登場。前作「8BEAT」の初動26万1千枚(1位)からダウンしています。

2位にはOfficial髭男dism「Rejoice」が、CDリリース分を加算した影響で先週の8位からランクアップし、ベスト3入り。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上9万5千枚で2位初登場。前作「Editorial」の初動10万8千枚(1位)からダウン。ただ、人気面で前作はかなり勢いのあった時期ですから、減少幅を考えると、健闘した結果といった感も。ちゃんとミュージシャンにファンがついてきているといった感じでしょうか。

3位初登場はゆず「図鑑」。CD販売数4位、ダウンロード数2位。約2年1か月ぶりのニューアルバム。オリコンでは初動売上3万枚で3位初登場。前作「SEES」(4位)から初動売上枚数は横バイでした。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位には日本の女性アイドルグループExWHYZ「Sweet & Sour」が初登場。5位初登場はロックバンド、My Hair Is Bad「ghosts」がランクイン。6位は韓国の男性アイドルグループNCT127「WALK」がベスト10初登場。7位にはSUPER JUNIOR DONGHAE & EUNHYUK「YOU&ME」がランクイン。韓国の男性アイドルグループSUPER JUNIORのドンヘとウニョクによるユニットのミニアルバム。そして10位に「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム オリジナルサウンドトラック」が初登場でランクインしています。

そのほか、ベスト10返り咲きとしては女性アイドルグループSTU48「懐かしい明日」が20位圏外からランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekersは、韓国の女性アイドルグループKISS OF LIFE「Sticky」が獲得。昨年、ミニアルバム「KISS OF LIFE」でデビューした4人組グループ。今後、日本でも知名度が高まってくるのでしょうか。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

TikTok Weekly1位は先週に引き続きKOMOREBI「Giri Giri」が獲得。これで通算7週目の1位獲得となりました。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2024年8月 7日 (水)

今週は元ジャニーズ系が1位

今週のHot100

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今週は元ジャニーズ系のアイドルグループが1位獲得です。

今週1位はSnow Man「BREAK OUT」が獲得。CD販売数及びラジオオンエア数1位、動画再生回数3位。映画「赤羽骨子のボディガード」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上106万7千枚で1位初登場。前作「LOVE TRIGGER」の初動119万3千枚(1位)からダウンしています。

2位はMrs.GREEN APPLE「ライラック」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は7週連続の1位、動画再生回数も3位から1位にアップしており、初の1位獲得となっています。これで16週連続のベスト10ヒット&通算10週目のベスト3ヒットに。また今週「青と夏」も先週からワンランクダウンながらも8位にランクイン。こちらも通算10週目のベスト10ヒットに。ほかに11位に「ケセラセラ」、13位に「コロンブス」がランクインしていますが、先週までベスト20入りしていた「アポロドロス」は残念ながら今週はベスト20から陥落しています。

3位初登場は女性声優のアイドルグループ=LOVE「絶対アイドル辞めないで」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上20万6千枚で2位初登場。前作「呪って呪って」の初動17万9千枚(2位)からはアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲のみ。LDH系の男性アイドルグループLIL LEAGUE from EXILE TRIBE 「Youth Spark」がランクイン。CD販売数3位、ラジオオンエア数7位。オリコンでは初動売上4万5千枚で3位初登場。前作「Higher」の初動5万4千枚(4位)からダウンしています。

一方、ロングヒット曲ですが、まずCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。今週は3位からワンランクダウンの4位。ストリーミング数、カラオケ歌唱回数は2位をキープしていますが、動画再生回数は2位から4位にダウンしています。これで29週連続のベスト10ヒットに。

Omoinotake「幾億光年」は先週と変わらず6位をキープ。ストリーミング数は今週で12週連続の3位。これで25週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums&各種チャート!

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2024年8月 6日 (火)

バラエティー富んだ明るいポップアルバム

Title:SLITS
Musician:YUKI

約1年4か月ぶりとなるYUKIのニューアルバム。前作「パレードが続くなら」は、ソロデビュー20周年を迎えた彼女が、20周年イヤーの最後にリリースしたオリジナルアルバムでした。そこから約1年4か月。ソロの区切りの年を超えた彼女の新たにスタートする第1歩となる本作ですが、今回もそんな新たな一歩にふさわしい、彼女らしいバラエティーの富んだ明るいポップの並ぶアルバムに仕上がっていました。

まずアルバムは、明るいエレクトロポップ「Now Here」「雨宿り」からスタート。トラックメイカーのU-Key zoneによるエレクトロポップで、その明るい雰囲気は、アルバムの冒頭を飾る楽曲としてピッタリでしょう。さらに同じくトラックメイカーの前田佑によるスペーシーなエレクトロチューン「流星slits」と続き、アルバムの序盤は明るい雰囲気のエレクトロナンバーが耳に残ります。

そこから続く「Hello,it's me」はCMソングともなった明るく爽やかなポップチューン。ホーンセッションも入り、微妙にファンキーなリズムも加わっているのも耳を惹きます。軽快で明るいナンバーは実にYUKIらしさを感じます。かと思えば「ユニヴァース」はピアノも入った伸びやかに歌い上げるメロディアスなミディアムチューンですし、「追いかけたいの」は疾走感あるギターロックのナンバーと、まさに1曲毎に異なるタイプの楽曲が次々と展開していく構成となっています。

このバラエティー富んだ展開は最後まで続きます。後半の「One,One,One」は音数を絞った今風のエレクトロポップチューンを聴かせてくれたかと思えば、続く「友達」では一転、アコギでしんみり聴かせるフォーキーなナンバー、「パ・ラ・サイト」はヘヴィーなギターリフからスタートするオルタナ系のギターロックナンバーと、最後の最後までバリエーションに富んだ楽曲が続きます。

そして最後の「風になれ」はホーンセッションやピアノも入った賑やかで明るい祝祭色のある楽曲で締めくくり。最初のエレクトロチューンとはまた異なった形で明るさを感じさせる楽曲でアルバムは締めくくられます。

バラエティー豊かで全体的に明るいポップチューンが並ぶアルバムになっており、良くも悪くもつかみどころのない展開も含めてYUKIらしさを感じさせるアルバムになっていました。ただ、やはり楽しいポップチューンの連続で素直にワクワクできる作品だったと思います。ソロデビューから20年超。女性に対して失礼ながら50代を超えた彼女ですが、明るいポップチューンにはベテランらしからぬ若さを感じさせる一方、ベテランらしい安定感もしっかりと感じされる作品でした。

評価:★★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
YUKI RENTAL SELECTION
すてきな15才
forme
echo(Chara+YUKI)
Terminal
YUKI 20th Anniversary The Singles Collection 2002-2022「Tears of JOY」
YUKI 20th Anniversary Coupling + Remix Collection 2002-2022「Ode to JOY」
パレードが続くなら

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2024年8月 5日 (月)

「愛」にあふれた作詞家

Title:山上路夫 ソングブック-翼をください-

1960年以降、数多くの楽曲の作詞を手掛け、数多くのヒット曲を世に送り出した作詞家、山上路夫。作詞家生活60周年を迎えて、彼の代表曲を収録した集大成となる5枚組となるアルバムがリリースされました。彼の代表的なヒット曲も数多く収録されているほか、知られざるレアソングも収録されています。代表曲ではおなじみなのは何といってもサブタイトルにもなっている赤い鳥の歌う「翼をください」でしょうか。他にも「夜明けのスキャット」「瀬戸の花嫁」「学生街の喫茶店」「ガンダーラ」など、日本歌謡曲のスタンダードナンバーとも言えるような曲もズラリと並んでいます。ちょっと意外なところでは、ご存じテレビ「水戸黄門」の主題歌「あゝ人生に涙あり」も彼の作曲。地上波のテレビ番組が終わってしまって久しいのですが、おそらく30代以上の世代にとっては、この曲と学校の合唱曲としてもおなじみの「翼をください」が最もなじみのある曲ではないでしょうか。

山上路夫の楽曲の特徴として、Wikipediaの紹介では「山上の作風はヒューマニズムに満ちているものが多い。」と一言だけ紹介されています。ただ実際、彼の代表曲を聴いてみると、非常に情熱的な「愛」にあふれた曲が目立つように思います。それこそ彼の最初のヒット曲となった「世界は二人のために」など、かなり情熱的な「愛」の歌ですし、他にも「禁じられた恋」とか「許されない愛」とか、特に初期の作品については、かなり熱い「愛」を歌ったような曲が目立つように感じました。

さて、そんな山上路夫の集大成とも言えるこの作品ですが、今回、是非とも紹介したい1曲があります。これがDisc3に収録されている西村晃(こちらも私くらいの世代には黄門様で有名ですね)の「人間バンザイ!」という曲です。この曲、山上路夫のWikipediaにも紹介されておらず、知る人ぞ知る的・・・どころか、ほとんど誰にも知られていないような曲なのですが、これが聴いてみてぶっ飛びました。まず1番の歌詞なのですが

「自民の先生がするときにゃ 無理やり通そとなさいます はぁなさいます」
(「人生バンザイ!」より 作詞 山上路夫)

と、はっきり言ってしまって完全に性行為について歌った春歌なのですが、上記の通り、実在の政党名がそのまま出てくる点がかなりの衝撃。自民党の名前が出てきているだけに、政府を皮肉るような反権力的な曲かと思いきや、この後、社会党、公明党、民社党、共産党と右から左まで同時の国政政党の名前がそのまま出てきて、かなり強烈な皮肉を浴びせかけています(まあ、政治風刺という意味では列記とした「反権力」的な曲なのですが)。これだけ強烈でありながらも、ネット上で調べてもほとんど出てきませんし、YouTubeでもほとんど曲はアップされていません。まさにほとんど誰にも知られていない珍曲。当時も「放送禁止」になってしまったようですが、今、発表したら、右から左から抗議が相次いで、あっという間に販売中止に追い込まれそうな・・・。昔の方が余裕があったんだろうなぁ、とは感じてしまいます・・・。

ただ、かなり強烈な珍歌で、これが今、ネットを含めてほとんど誰も取り上げていないことに、逆に驚いてしまうほど。この曲が収録されているだけでも、このオムニバスアルバムに価値があるようにすら感じてしまいます。この曲を聴くため、だけにでも本作をチェックしてみて損はないかと思います。

今回、この1曲を紹介したいがために、あえて大きくこのアルバムを取り上げました。歌詞で紹介したのは自民党バージョンのみでしたが、それ以降の歌詞もかなり強烈なので一度、チェックしてみてほしいです。右も左も変に突っ走ってしまっている感のある現在こそ、政治をユーモラスに皮肉るような歌、出てきてほしい感じがするんですけどね。

評価:★★★★

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2024年8月 4日 (日)

挑戦的な試みも感じさせる日本ロックの嚆矢的バンドのベスト盤

Title:モップス ゴールデン☆ベスト
Musician:モップス

複数のレコード会社が、廉価版ベストアルバムとしてリリースしている「ゴールデン☆ベスト」シリーズ。何気に様々なミュージシャンの「入門盤」として聴くには、代表曲がほどよくまとまっていて最適なシリーズだったりするのですが、今回はモップスのゴールデン☆ベストがリリースされたので聴いてみました。モップスは60年代後半から70年代にかけて活躍したグループ。グループサウンズのブームに乗って出てきたバンドで、グループサウンズの一組として紹介されることも多いのですが、本格的な洋楽ロック志向のバンドで、日本のサイケデリックロックの先駆けとしても評価の高いバンド。いままで、単発的に楽曲を聴いていたことはあるのですが、今回、ゴールデンベストという形ではじめて彼らの楽曲をまとめて聴いてみました。

アルバムは、彼らの代表曲が発売順に並べられている構成。まず何より序盤、非常に力強い本格的なハードロック志向の作品に強く耳を惹かれます。「ジェニ・ジェニ70」などは、まあにシャウトも加わって、非常に力強いバンドサウンドのガレージロック風のナンバー。「朝日のあたる家」はご存じアニマルズのカバーで知られるアメリカのフォークソングなのですが、こちらも彼ら流の切ないかすれ声のシャウトが印象的なハードロック風のカバーに仕上げています。

さらに彼らの曲で大きな特徴的なのが、洋楽ロックの影響をストレートに受けていながら、その中に日本的な要素を多分に織り込んでいる点でしょう。例えば前述の「朝日のあたる家」は途中、尺八の音を入れてきていますし、「御意見無用」は、こちらもヘヴィーなブルースロックなのですが、途中で「ええじゃないか」の合いの手とリズムを入れてきたりもしています。さらに「なむまいだあ(河内音頭)」もタイトル通り、河内音頭をハードロック風にアレンジしたもの。この手の日本の民謡と西洋音楽との融合というのは、ともすれば戦前から行われてきた試みで、その試み自体は決して珍しいものではないのですが、彼らの場合は民謡に本格的なロックを取り入れることによって、単なる「ロック風の歌謡曲」に留まらない、「日本のロックンロール」を生み出そうとしている点が強く印象に残る内容となっています。

日本風といってユニークなのが「月光仮面」で、こちら、1950年代に一世を風靡したテレビ番組「月光仮面」の主題歌をブルースロック風にカバーした曲。とはいえ、正統派のカバーというよりも、途中、スーパーマンのネタと入れてくるなど、コミカルなカバーになっています。また「森の石松」も浪曲でおなじみだった素材をロック風にカバーした曲。こちらもかなりコミカルな楽曲。「石松三十石船道中」からのパロディーなのですが、浪曲がすっかり流行らなくなってしまった今では、おそらく聴いてもネタ元がさっぱりわからないのではないでしょうか。逆に言えば、モップスが活躍していた頃は、モップスを聴くような若い世代でも浪曲ネタが難なく理解できるほど、世間的には広く流布されていた、ということなのでしょう。ちょっとモップスの感想とは関係なのですが、どんな流行しているものだろうと、時代が変わればすっかり世間から忘れ去られてしまう・・・という無情さも感じてしまいます。

モップスの話に戻すと・・・中盤「たどりついたらいつも雨ふり」は彼らにとって最大のヒットとなったナンバー。作詞作曲は吉田拓郎が手掛けており、メロディーラインはフォークソングっぽいのですが、力強いガレージ風のバンドサウンドがしっかり鳴っている骨太のロックナンバーになっています。ただ、残念ながらこの曲のヒットで、同じような路線を求められたのでしょうか、それ以降の彼らの楽曲はフォーク寄りにシフト。これはこれでメロディアスで爽やかな曲調は心地よいのですが、ロックバンドとして見ると、いささか物足りなさを感じてしまいます。

最後の方はちょっとロックバンドとして失速してしまった感は否めないのですが、アルバム全体を通じて、日本のロックバンドの嚆矢的なバンドとして、今聴いてもカッコよさを感じさせるアルバムになっていました。日本的なサウンドとの融合を目指す挑戦心や、ノベルティーソング的なコミカルさも含めて、実に魅力的なバンドだったということを今なお感じさせてくれます。そんな彼らの代表曲がほとよく収録されたアルバムになっており、入門盤といて文句なしにお勧めできる作品です。

評価:★★★★★

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2024年8月 3日 (土)

2024年上半期 邦楽ベスト5

昨日に続き、本日は邦楽のベスト5です。

5位 ラヴの元型/AJICO

聴いた当時の感想は、こちら

あのUAとベンジーが組んだということで大きな話題となったバンドAJICOが、なんと2021年に突然の復活。EP「接続」リリース後、さらに約2年10ヶ月の月日を経てリリースされた6曲入りのEPなのですが、これがめちゃくちゃカッコいい!ベンジーの書くメロディーがUAのボーカルにピッタリと合って、彼女の独特の色気も加わり、さらにそんな彼女を支えるベースのTOKIE、ドラムスの椎野恭一と一流揃いのメンバーとの息もピッタリ。しびれるほどカッコいい傑作です。

4位 らんど/ZAZEN BOYS

聴いた当時の感想は、こちら

ライブ活動は継続的に行われていたのでちょっと意外にも感じるのですが、実に11年ぶりとなるZAZEN BOYSの新作。今回もサウンドも言葉も必要最低限に削った緊迫感ある楽曲が並びます。基本的に前作から作風的には大きな変化はない、これぞ向井秀徳節といった感じなのですが、新ベーシストのMIYAが加わったことによって、以前よりベースがファンキーになったようにも感じます。今回も文句なしの傑作アルバムでした。

3位 ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン/マハラージャン

聴いた当時の感想は、こちら

相変わらず奇抜なタイトルとジャケット写真も特徴的なマハラージャンの新作。今回もユーモアセンスたっぷりながらも、ロックやファンク、ディスコチューン、エレクトロの要素などを取り入れた音楽性に、メロディーや歌詞含めて、これでもかといったインパクトあふれる作風の楽曲が魅力的。楽曲の良さと、ほどよく入っているユーモアのバランスもちょうど良く、そろそろブレイクしてもよいとは思うのですが・・・。

2位 呪文/折坂悠太

アルバムレビューではまだ取り上げていないので、ここが先の紹介となってしまうのですが、アルバムをリリースする毎に傑作をリリースし続ける彼ですが、今回のニューアルバムも文句なしの傑作に仕上がっていました。今回は、以前の作品に比べて、暖かい歌モノが目立った作品。ただ、シンプルでフォーキーな作品が目立つ中で、サウンド面でもしっかりと挑戦的な部分も垣間見れ、彼のミュージシャンの実力をしっかりと発揮した1枚となっていました。

1位 Slash-&-Burn/Daoko

聴いた当時の感想は、こちら

上半期1位は、Daokoのニューアルバム!自主レーベル移籍後初となるアルバムなのですが、メジャーを離れたことによって自由度が増したのか、音楽的にもバラエティー富んだ作品が多く、実験的な作風も目立ちます。歌詞でも内省的な歌詞に聴いていてドキッとする部分もあり、Daokoの本音が垣間見れる部分も。彼女のキュートな歌声もマッチしており、様々な面でDaokoというミュージシャンの本領が発揮された傑作アルバムです。

ほかのベスト盤候補は・・・

Contact/角銅真実
時をかけるメロディー/小山田壮平
wood mood/藤原さくら
POPCORN/THE BOWDIES
POP DELIVERY/水曜日のカンパネラ
放生会/椎名林檎
ディスコの卵/ゲスの極み乙女

傑作は少なくはなかったのですが、全体的には不作気味かなぁ。特に、洋楽同様、頭ひとつ出たような傑作はなかったのは残念ですし、折坂悠太もZAZEN BOYSも傑作であることは間違いないのですが、正直、前作を超えたか、と言われると若干微妙な感もあります。さて、あらためて上位5作を並べると

1位 Slash-&-Burn/Daoko
2位 呪文/折坂悠太
3位 ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン/マハラージャン
4位 らんど/ZAZEN BOYS
5位 ラヴの元型/AJICO

下期はさらなる傑作が登場することを期待しましょう!

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 年間1  
上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 年間1  上半期
2023年 年間1  上半期

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2024年8月 2日 (金)

2024年上半期 洋楽ベスト5

今年も、既に7か月が経過しました。上半期の私的アルバムベスト5、まずは洋楽編です。

5位 Liam Gallagher & John Squire/Liam Gallagher & John Squire

聴いた当時の感想は、こちら

ご存じ元oasisのカリスマ的ボーカリスト、リアム・ギャラガーが、同じくカリスマ的な人気を誇り、oasisのルーツの1つでもあるバンド、ザ・ストーン・ローゼズのジョン・スクワイアと組んでリリースしたアルバム。まさに夢のタッグとも言える組み合わせ。基本的にジョン・スクワイアの書いた楽曲をリアムが歌うスタイルなのですが、やはりローゼズに影響を受けているからでしょうか、リアムのボーカルもピッタリマッチ。正直、そのままoasis+The Stone Rosesといった感じの曲調は「ベタ」という印象を受け、それ故に評価はあまり高くないようですが、個人的にはかなり壺にはまった作品でした。

4位 What Now/Brittany Howard

聴いた当時の感想は、こちら

現在、活動休止中のバンド、Alabama Shakesのボーカリストによるソロ2枚目のアルバム。バンドとしても毎回、高い評価を誇る傑作をリリースし続け、ソロとしても前作「Jaime」も高い評価を得た傑作をリリースした彼女。ジャズ寄りで、あえてAlabama Shakesと差をつけてきた前作に比べ、本作はソウルにロックを融合させたAlabama Shakesの路線をそのまま引き継ぐような作品になっていましたが、それだけに力強く表現力豊富な彼女のボーカルを存分に生かした傑作になっていました。

3位 Cowboy Carter/Beyonce

Cowboycarter

聴いた当時の感想は、こちら

いかにもアメリカなジャケット写真も目をひくBeyonceの新作は、彼女があえてカントリー音楽に向き合ったという作品。とかく保守白人層の音楽とみなされるカントリーに、彼女があえて挑んだ作品で、彼女自身はこのアルバムを「カントリー」ではなくあくまでも「Beyonceのアルバム」と語っています。分断が目立つアメリカにおいて、あえてその分断を乗り越えようとする力強い主張を感じさせるアルバム。もちろん、楽曲自体のクオリティーも言うまでもありません。間違いなく2024年を代表する作品と言える内容でした。

2位 BLEACHERS/Bleachers

聴いた当時の感想は、こちら

現在は売れっ子プロデューサーとして活躍しているジャック・アントロノフによるソロプロジェクト。もともとは、かつて注目を集めたロックバンドfun.のメンバーだったそうで、今回、Bleachersとしての作品ははじめて聴いたのですが、fun.はリアルタイムで聴いたことがあり、ポップでインパクトのあるメロを書くバンドだったということを覚えています。そんな彼のソロとしての新作は、まさにそのfun.の時代を彷彿とさせるかのような、陽気でポップなメロディーに加えて、fun.時代にはちょっと一本調子に感じられた音楽性がグッと進化し、バラエティー富んだ作風が大きな魅力となった傑作アルバムに進化。傑作のポップアルバムに仕上がっていました。

1位 Hovvdy/Hovvdy

聴いた当時の感想は、こちら

アメリカのシンガーソングライターデゥオによるアルバム。胸にキュッと響いてくるような美しいメロディーラインは魅力のデゥオなのですが、2人ともソングライターであるが故の、微妙な音楽性の違いがまたアルバムに幅を持たせて大きな魅力となっています。特に楽曲によっては、TEENAGE FANCLUBっぽさを感じさせる部分もあり、個人的にはかなり壺にはまりまくった1枚。エレクトロを取り入れたサウンドはシューゲイザーからの影響も感じられ、とにかくメロディーとサウンドの美しさに惹かれまくった傑作でした。

そんな訳で上半期ベスト5を並べると

1位 Hovvdy/Hovvdy
2位 BLEACHERS/Bleachers
3位 Cowboy Carter/Beyonce
4位 What Now/Brittany Howard
5位 Liam Gallagher & John Squire/Liam Gallagher & John Squire

ほかのベスト5候補は

Wall Of Eyes/The Smile
SAVIORS/GREEN DAY
TANGK/IDLES
I Got Heaven/Mannequin Pussy
The Collective/Kim Gordon
Bright Future/Adrianne Lenker
ONLY GOD WAS ABOVE US/Vampire Weekend
Funeral for Justice/Mdou Moctar
BRAT/Charli xcx
Night Reign/Arooj Aftab
A Drema Is All We Know/The Lemon Twigs

上半期はかなり傑作のリリースが多かったと思います。特にベスト5に入れなかったものの、Mannequin Pussy、Kim Gordon、Charli xcx、Arooj Aftabは、通常の年ならば余裕でベスト5に入れていたほどの傑作だったと思います。ただ一方では、頭ひとつとびぬけたような傑作はなかったような気が。そういう意味では、1位を選ぶのみ逆の意味でちょっと難しくなってしまった感もありました。下期もさらなる傑作の誕生を期待したいところです!

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 年間 上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 年間1  上半期
2021年 年間1  上半期
2022年 年間1  上半期
2023年 年間1  上半期

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2024年8月 1日 (木)

今週もアイドルグループが並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もチャート上位にはアイドルグループが並びました。

そんな中、1位を獲得したのは女性アイドルグループNiziU「RISE UP」。新曲2曲+その曲のインスト版2曲という、ミニアルバム扱いですが、事実上のシングル。CD販売数1位、ダウンロード数2位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上19万6千枚で1位初登場。直近作は昨年リリースしたアルバム「COCONUT」で同作の初動14万1千枚(1位)からアップしています。

2位はTHE JET BOY BANGERZ「What Time Is It?」がランクイン。LDH系の男性アイドルグループ。こちらも3曲入りと、事実上のシングルであるミニアルバム。CD販売数2位。オリコンでは初動売上5万2千枚で3位初登場。同じくミニアルバムの前作「PHOTOGENIC」の初動4万9千枚(1位)からアップ。

3位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEENのベストアルバム「17 IS RIGHT HERE」が10週ぶりにベスト10返り咲き。なぜここに来てベスト10に返り咲いたかは、不思議ですが、東京で開催されている「SEVENTEEN Cafe」というイベントや、それに伴う通販でのグッズ販売の影響ではないかと思われます。

続いて4位以下ですが、4位にはロックバンドUNISON SQUARE GARDEN「SUB MACHINE, BEST MACHINE」が初登場。結成20周年を記念したベストアルバム。7位初登場はMAD TRIGGER CREW「.MAD TRIGGER CREW」。声優によるラッププロジェクト、「ヒプシスノマイク」に登場する架空のHIP HOPグループによる3曲+ドラマ1トラックのミニアルバム。8位にはOfficial髭男dism「Rejoice」がランクイン。7月31日リリース予定のアルバムが、先行配信分でベスト10入りしています。


今週のHeatseekers Songs

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=heat_seekers

今週のHeatseekersは、先週、TikTok Weeklyを獲得した鹿乃子のこ (CV.潘めぐみ) & 虎視虎子 (CV.藤田 咲) & 虎視餡子 (CV.田辺留依) & 馬車芽めめ (CV.和泉風花)「シカ色デイズ」が1位を獲得。中毒性の高い曲だけに、その人気が広まっているようです。


今週のTikTok Weekly

https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=tiktok

逆にTikTok Weeklyでは「シカ色デイズ」は2位にダウンし、1位はKOMOREBI「Giri Giri」が3週ぶりに1位返り咲きを果たしています。通算6週目の1位獲得となりました。

今週もニコニコVOCALOID SONGSはニコニコ動画休止の影響で今週もチャートは発表されていません。ただ、8月5日にサービス再開をアナウンスされており、再来週あたりには再開となるのでしょうか。

今週のHot Albums&各種チャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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