70年代ソウルを今に継承
Title:Ten Fold
Musician:Yaya Bey
アメリカはニューヨーク、ブルックリン出身のシンガーソングライターでマルチアーティストとしても活躍するYaya Beyの約2年ぶりとなるニューアルバム。非常に高い評価を受けた前作「Remember Your North Star」ではじめて彼女のアルバムを聴き、そのオーガニックでメロウな作風に強く惹かれたのですが、今回のアルバムもまた、ムーディーでメロウなネオ・ソウルの楽曲に強く惹かれる傑作アルバムに仕上がっていました。
まず1曲目「crying through my teeth」のスタートから、思わず心の中でガッツポーズを取るソウルリスナーも多いのではないでしょうか。いきなりグルーヴィーなドラムとベースラインに彼女のファルセットボーカルからスタート。スモーキーでメロウな出だしは、まさにネオ・ソウルらしい作風。ハイトーンボーカルで包み込むように聴かせる彼女のボーカルに、まずは強く惹かれること間違いなしでしょう。
その後も軽快なリズムでダンサナブルな「sir princess bad bitch」や、ループするトラックが狂おしいほどメロウで美しい「chasing the bus」、グルーヴィーなドラムとベースとムーディーなボーカルの絡みが美しい「me and all my niggas」、ギターの音色がメロウに彩りを添える「career day」、ファンキーなギターにも耳がいく「carl thomas sliding down the wall」など、聴きどころたっぷりのネオ・ソウルの曲が続いていきます。全体的に、ドラムやベースラインなど重低音を重視したサウンドは、比較的音数も少なくシンプルにグルーヴ感を醸し出しており、そのサウンドに下支えされた、ファルセットを入れつつもメロウで、かつ力強さも感じるYaya Beyのボーカルも実に魅力的な作品に仕上がっています。
ダニー・ハザウェイなどを引き合いに出されることの多い彼女は、基本的に70年代あたりのソウルを継承しているスタイルが耳を惹くのですが、一方ではしっかりと今時のサウンドにもアップデートされており、基本的には「east coast mami」に代表されるような重低音を強調したサウンドメイキングは今風なサウンド。「all around los angeles」のように、リズムからラテンの影響を感じさせる軽快な曲もありますし、「so fantastic」では2022年に亡くなったラッパー、Grand Daddy I.U.も参加(なんと彼女の父親らしいです!)し、HIP HOPの要素も強い作品となっています。
このように適度に今風のサウンドにアップデートし、様々な曲調を取り入れつつも、ソウルミュージックをしっかりと継承し、そのボーカルを聴かせるという、ある意味、非常に理想的とも言える傑作アルバム。優しさと力強さを同居させる彼女のボーカルも実に魅力的で、ソウルミュージックが好きなら、是非とも聴いてほしいアルバムだと思います。今年を代表する傑作アルバムの1枚と言ってもいいかもしれません。そのグルーヴィーでメロウな楽曲に強く惹かれる作品でした。
評価:★★★★★
Yaya Bey 過去の作品
Remember Your North Star
ほかに聴いたアルバム
Almighty So 2/Chief Keef
シカゴ・ドリルの代表的なラッパー、Chief Keefのニューアルバム。UKガラージや、ハウス系ミュージックにHIP HOPの要素を取り入れたグライムのサウンドを取り入れつつ、不穏な雰囲気で聴かせるトラックが特徴的だそうで、実際、全編、リズミカルなビートに不穏な雰囲気のサウンドやラップがのるスタイル。ダークな雰囲気が耳に残る1枚でした。
評価:★★★★
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