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2024年7月21日 (日)

自主レーベル第1弾は彼女の実力を遺憾なく発揮した充実作

Title:Slash-&-Burn
Musician:Daoko

永井聖一たちとのバンド活動、QUBITとしての新作リリースはあったものの、個人名義のニューアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。彼女はもともと中学3年生の時にニコニコ動画へのラップ動画の投稿で話題となり高校生でのインディーデビューが大きな話題となりました。その後、「打ち上げ花火」や「ステップアップLOVE」のヒットもあり、紅白への出演も果たしました。ただ、ヒットした曲はいずれも他のミュージシャンとのコラボ作。Daoko単独名義ではコラボ作ほどのヒットはリリースできず。現在は個人事務所「てふてふ」を設立し、本作は自主レーベル第1弾のアルバムとなるそうです。

デビュー時には大きな注目を集めたものの、現在は人気という側面では伸び悩んでいる感もある彼女。しかし、そんな中リリースされた新作は、むしろアルバムの出来栄えとしては最高傑作。彼女の音楽的な才能を遺憾なく発揮した作品に仕上がっています。まず軽快でリズミカルなエレクトロチューン「天使がいたよ」から、続いての「FTS」の展開が耳を惹きます。「FTS」はダウナーでドリーミーなサウンドが印象に残るナンバー。小袋成彬が編曲を手掛けるこの曲は、エレクトロサウンドにリズミカルなビートが加わるサウンド的には挑戦的な楽曲となっています。

その後もダークな雰囲気のナンバーがあるかと思えば、ポップでメロディアスな歌モノが展開されたりと、彼女の音楽性の広さを感じさせます。例えばミディアムファンクチューンの「BLUE GLOW」は、その後もちょっと怪しげなゴシック調の「GAMEOVER」へと展開したかと思えば、中盤の「捨てちゃってね」は暖かさと切なさを感じさせるフォーキーな歌モノに。さらに後半の「NovemberWeddingDay」はメロウでダンサナブルなポップと、様々な作風の曲を聴かせてくれます。

サウンド面でもユニークで挑戦的な楽曲が多く、ボカロPの羽生まゐごが編曲を手掛ける「好×2+嘘×2」はコミカルでトライバルなサウンドがインパクトの強い楽曲となっていますし、GuruConnect編曲の「ONNA」でも、ダウナーなサウンドに細かく刻むビートが印象的な作品。様々なメンバーをゲストに招いた本作は、非常に挑戦的なサウンドメイキングも特徴となっています。

さらに、Daoko本人の描く歌詞にも注目したいところ。内省的な歌詞の多い本作は、ところどころにドキッと来るようなフレーズが飛び出してきます。例えば

「ヒットソングも書けないけれど
勿体ないが仕方ない
やりたい放題やらせてよ ねえ」
(「SLUMP」より 作詞 Daoko)

と歌う「SLUMP」は、彼女の正直な感情を吐露しているようでドキっとします。ネットスラング的な単語もちりばめつつ、素直な感情を綴ったような楽曲が多いのも印象的な作品となっていました。

そしてなんといっても魅力的なのがDaokoのボーカル。ハイトーンで、ちょっとチャイルディッシュな雰囲気のあるキュートなボーカルが魅力的。楽曲にもピッタリとマッチしており、バラエティー富んだ今回の作品に統一感を持たせる大きな要素となっていました。

あらゆる面でDaokoの魅力を遺憾なく発揮した傑作アルバム。今年のベスト盤候補の1枚とも言える充実作に仕上がっていました。コラボ作しかヒットしなかった彼女ですが、これだけの作品を作れるのですから、Daoko単独名義でももっともっとヒットを飛ばしてもいいと思うんですけどね。あらためて彼女の実力を実感できた作品でした。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO
THANK YOU BLUE
私的旅行
anima


ほかに聴いたアルバム

Slightly Better Than No Lie-Sense/No Lie-Sense

ご存じムーンライダーズの鈴木慶一と、劇作家としても活躍しているケラリーノ・サンドロヴィッチことKERAが結成したユニットによるベストアルバム。アバンギャルドな音をコミカルに聴かせる独特の世界観が非常にユニーク。はまる人にははまりそうですが、個人的には、ちょっとゴチャゴチャしたサウンドと、コミカルなサウンドがいまひとつ壺にはまらず。凝ったアルバムであることはわかるのですが、あまり好みではなかったかも。

評価:★★★★

No Lie-Sense 過去の作品
駄々録~Dadalogue

Lost In Love/MIYAVI

最近では(正直、微妙な評価となっている)YOSHIKI率いるTHE LAST ROCKSTARSの一員としても活躍しているギタリストMIYAVIの約3年ぶりとなるニューアルバム。最近はエレクトロ主体の作品が続いており、正直、ちょっと物足りなさを感じていたのですが、今回は久々にゴリゴリのギターサウンドを押し出した作品に。エレクトロの要素は強く、その点では最近の作品の流れは継いでいるものの、全体的にギターを取り入れてダイナミックな作風に回帰した彼らしい作品になっています。メランコリックなメロディーラインはいかにも今風で、ちょっと流行に乗ろうとする姿が露骨な感じもしたのですが、全体的に久々にMIYAVIを聴いたという満足感を覚えるアルバムでした。

評価:★★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"
SAMURAI SESSION vol.2
SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -
NO SLEEP TILL TOKYO
Holy Nights
Imaginary

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