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2024年7月 9日 (火)

世界的に「バズった」SSWのデビュー作

Title:凡才
Musician:imase

デビューアルバムである本作がHot Albumsでいきなり2位にランクイン。一気にブレイクを果たした男性シンガーソングライター。ただ、もちろん本作でいきなり出てきたシンガーではなく、もともと2022年にリリースされた「NIGHT DANCER」がTikTokを中心に話題となりヒットを記録。特に日本以上に海外で話題となり、韓国では最高位14位という日本以上のヒットを記録(日本では最高位38位)。むしろ東アジアや東南アジア方面で高い評判を得て話題となりました。

特に韓国ではK-POPのアイドルが、「NIGHT DANCER」を使用した「踊ってみた」動画が話題となり、ヒットの要因となったようです。それだけに、いかにも今時のTikTokで流行りそうなシンガーソングライター、といったイメージで構えて聴いてみたのですが・・・これが思ったよりもよく出来たポップスアルバムに仕上がっていたから驚きです。

この話題となった「NIGHT DANCER」もタイトル通り、リズミカルなダンスチューンなのですが、リズミカルなエレクトロビートをバックにメランコリックに聴かせる曲調は、ちょっと気だるさもあり、シティポップ風にまとめあげているダンスチューン。それに続く「Nagisa」は、今度は同じダンスチューンながらもホーンセッションやストリングスも入れた爽やかで鮮やかな曲調が特徴的な明るく楽しいポップチューン。かと思えば「でもね、たまには」ではファルセットボーカルにラップも入ったHIP HOP風のポップス。

他にも「ヒロイン」はちょっとジャズ風なサウンドにバンドサウンドを取り入れたポップスに仕上げていますし、「Shine Out」は完全にエレクトロ風なダンスチューン。最後を締めくくるデビューシングル「Have a nice day」はファルセットも入った爽やかでメランコリックなピアノポップ風にまとめています。

かなりバリエーションの富んだ曲調で、ほどよくソウル風、ジャズ風、ロック風な要素を取り入れて、全体的にはシティポップ風に聴かせる曲調が特徴的。あえて言えば、藤井風をもうちょっとポップにした感じといったところでしょうか。意外とバラエティー富んだ作風を楽しめる素直なポップスになっており、変に売りや今時を狙ったようなあざとさもありませんし、最近、よくありがちなとにかくマイナーコードのメランコリックな曲調を聴かせるようなメロディーラインもありません。

さらに驚きなのが彼、もともと2021年に「音楽経験0の素人がオリジナル曲を作ってみた」という動画投稿からその活動をスタートさせたようで、音楽活動を開始してから、まだわずか3年という経験しかないそうです。ただ、才能があれば、音楽経験が全くなくても、いきなり「名曲」を作れてしまうところが、大衆音楽のおもしろいところであり、怖いところであったりもします。音楽経験がほとんどない素人が、わずか3年でこれだけの曲を作れてしまうあたりが、かなりセンスの良さを感じました。

ただ一方で、やはり経験不足がマイナスに感じる部分もあり、それがさきほどから彼の音楽に対して「~~風」という表現をあえて使っている点。やはり聴いていて、あくまでも様々な音楽的な要素は「~~風」のような、風味を感じるだけであって、深い音楽的な素養という点では底の浅さは正直感じてしまいます。ここらへんは、良く出来たアルバムとはいえ彼のアキレス腱でもあり、このアルバムを傑作として大絶賛するにはちょっと躊躇してしまう、大きな要素だったりします。

もっとも、この「音楽的素養」なんてものは、いくらでも後付けで身に着けられるもの。まだ、デビューから3年という経験しかない彼ですが、今後、経験を積むことによって、どんどん音楽性は深化していく可能性も感じます。そういう意味では、まだまだ未熟さも感じるものの、末恐ろしい感じもするミュージシャン。音楽的なセンスは間違いなくあるだけに、これからのさらなる成長を期待したい、そう強く感じられるアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

アンジェラ・アキ sings「この世界の片隅に」/アンジェラ・アキ

2006年にリリースされたデビューアルバム「Home」が大ヒットを記録し、一躍人気ミュージシャンとなったシンガーソングライターのアンジェラ・アキ。紅白に6年連続出演するなど人気を博したものの、2014年にアメリカの音楽大学へ留学するために活動を休止しました。ただ、それから10年、久々の活動を再開。約12年ぶりとなるオリジナルアルバムが本作。ミュージカル「この世界の片隅に」に提供した曲を自ら歌ったアルバムとなります。

基本的にピアノの弾き語りでしんみりと聴かせるスタイル。太鼓を取り入れた曲があったり、ミュージカル俳優の海宝直人が参加した曲があったりと、ミュージカルでの使用を感じさせる曲もあったものの、ゆっくり力強いボーカルで歌い上げるスタイルは、かつてのアンジェラ・アキそのまま。いい意味で変わっていない彼女の姿を感じます。音楽大学の経験は、このアルバムを聴く限りだとあまり反映されていないのですが、ミュージカルへの楽曲提供など、今後は幅を広げて精力的に活動してくれそう。今後の彼女の活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

アンジェラ・アキ 過去の作品
ANSWER
LIFE
WHITE
SONGBOOK
BLUE
TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI

DON'T THINK,POP!!/及川光博

俳優としても精力的に活動を続けつつも、本業ミュージシャンとしてコンスタントにライブ活動と新作リリースを続けるミッチー。2年ぶりとなる新作は、よくモチーフとして取り上げられるブルース・リーの名セリフを元としたタイトルですが、タイトル通り、ミッチーらしいポップな曲が並ぶ作品。ただ、冒頭のタイトルチューン「DON'T THINK,POP!!」はGファンクを取り入れたようなかなりカッコいいファンクチューンになっており、続く「Amazing Love」も同じくファンキーにカッコよく聴かせてくれます。後半は、ちょっと平凡なJ-POP路線になってしまって尻つぼみ的な感じも否めませんが、全体的にはタイトル通り、考えるよりもポップなメロを楽しませてくれる楽曲に仕上がっています。久しぶりにライブにも行きたいなぁ。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE
BEAT&ROSES
BE MY ONE
XXV
気まぐれサーカス

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