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2024年7月26日 (金)

エピックレコードのコンピレーション再び

Title:EPIC 45 -The History Is Alive-

主に80年代から90年代にかけて、数多くの新進気鋭のミュージシャンたちを世に送り出し、その名前を世に知らしめたレーベル、エピックレコード。当時はエピックソニーという名前でしたが、非常に個性的なレーベルであったため、おそらくこの時代に青春を過ごした世代にとっては、一番最初に意識したのがこのエピックソニーであった、という方も少なくないのではないでしょうか。かく言う私もそうなのですが、そのエピックレコードの創設45周年を記念して、昨年、様々なイベントが行われましたが、その一環として45年のエピックレコードの代表曲を収録したオムニバスアルバムがリリースされました。

・・・と言っても、エピックレコードはいままでも度々、「周年」記念のイベントが行われており、25周年の時は大々的なライブとオムニバスアルバムのリリースが行われました。35周年はさほど規模としては大きくなかったのですが、配信限定でオムニバスアルバムがリリースされています。そして45周年は、以前、ここでも渡辺美里のライブ映像の映画館放映を紹介しましたが、そんなライブ映像の映画化と、そして本作のリリースが目玉となっています。

今回のオムニバスアルバムは1981年から89年、1989年から2005年、2005年から2022年と三世代にわけてCD3枚に収録されています。TM NETWORKの「Get Wild」や佐野元春の「サムデイ」のように、王道路線の代表曲も収録されている反面、さすがにオムニバスも3作目ということなのか、代表曲から若干外したような選曲も目立ちます。例えばBARBEE BOYSは「目を閉じておいでよ」ではなく「Blue Blue Rose」、渡辺美里は「My Revolution」ではなく「サマータイムブルース」、PUFFYも「アジアの純真」ではなく「これが私の生きる道」と、微妙に外したような選曲も目立ちます。これはこれでファン以外にとっては新たな曲を知れる機会とも言えるのでしょうが。

ただ、35周年のオムニバスの時も感じたのですが、レーベルとしての力を感じるのは圧倒的にDisc1に収録された80年代の曲たちでしょう。35周年のオムニバスの紹介の時も「当時10代、20代の若者たちが、自分たちの世代のための、自分たちのための音楽を作り出そう、そういう気概を今回のコンピの曲から感じます。」と書いたのですが、その印象は本作を聴いても変わりません。当時の時代の先端を行くような、それでいてポップでしっかりと「ヒット曲」の範囲の入るようなポップスをしっかりと作ってきており、レーベルとしても、勢いのある若手をしっかりと売り出そうという意気込みと勢いを感じさせます。この時代の曲がいまでも多くの人に支持され、このように45周年のオムニバスがリリースされるのも、そのあたりが大きな理由なのでしょう。

一方で残念ながらDisc2以降はそのような勢いはどんどんと終息していきます。いや、あえて言えばDisc2の頃までは、まだレーベルとしても勢いが残っており、80年代を彷彿とさせるような時代の先端を行くような若手も少なくありません。ただ、そういういかにもエピックらしく、かつ大ブレイクしたミュージシャンというとJUDY AND MARYが最後じゃないかな、と思います。そういえば私がはじめてジュディマリを知ったのも、90年代初頭に、CDショップ店頭で無料で配っていた、エピックソニーのミュージシャンたちを紹介したサンプラーCDだったなぁ。あえて言えばTRICERATOPSも、エピックらしいミュージシャンと言えるのですが、残念ながらそれなりにブレイクはしたのですが、他の先駆たちほどの大ブレイクには至りませんでした。

Disc3の頃のミュージシャンについては、残念ながら売れ線のJ-POPミュージシャンというイメージが強く、80年代90年代の頃のような「時代の先端を行くような」というイメージは強くありません。ただ一方で、今回紹介されたミュージシャンを聴くと、緑黄色社会や小袋成彬と言った勢いのある若手ミュージシャンは積極的に取り上げており、そういう意味での「エピック魂」はまだ残っているんだな、ということは感じました。正直、80年代のような「尖った」という印象は薄いのですが・・・。

あらためてエピックレコードの魅力を感じさせてくれたオムニバスアルバム。ただ、また25周年の時のようなエピックのミュージシャンが一堂に会するようなライブを行ってほしいなぁ。正直、80年代に活躍した若手ミュージシャンも、そろそろ還暦を迎えるような年になっており、元気にライブが出来るのも、あと10年程度ではないか?とすら思うだけに、今のうちに、という感じもあります。あと5年後、50周年の時に、どうかなぁ。

評価:★★★★★

黄金の80'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
青春の90'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
情熱の2000'sベストヒッツ35曲!~Epic35~


ほかに聴いたアルバム

Sparkle X/THE YELLOW MONKEY

前作から約5年ぶり、ちょっと久々となったTHE YELLOW MOKEYのニューアルバム。歌謡曲テイストの哀愁感あるメロディーラインにグルーヴィーなギターロックという組み合わせはいかにもイエモンらしさを感じるアルバム。良くも悪くも安心して楽しめるアルバムではあるのですが、一方で正直なところ目新しさは皆無。なんとなく、現状に停滞してしまっている作品になってしまった印象も。悪いアルバムではないのですが、再結成後のアルバムでは一番今一つだったかも。

評価:★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
Live Loud
30Years 30Hits
THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)

BAD HOP FOREVER(ALL TIME BEST)/BAD HOP

今年2月の東京ドームライブで解散したHIP HOPグループの初となるベストアルバム。基本的にトラップをベースとしたトラックに、彼らの生まれ故郷、川崎の池上町近辺の現状をそのまま描いたリリックが印象的。メランコリックなトラックや力強いラップは耳を惹きます。一方で、いまさらながらですが、彼らのリリックには女、車、ブランド品など、ともすれば「昭和な価値観」的なアイテムがよく登場します。いや、これらを「昭和の価値観」と言ってしまうのは、本当は一部で、彼ら仲間内では、このような「いかにも」なアイテムを手に入れることを憧れとすることが、まだまだ価値観として有効なのかもしれません。それはともかく、東京ドームワンマンをやり遂げたHIP HOPグループの活動を網羅的に把握できるベストアルバム。いまさらながらBAD HOPというグループを知りたい方にもうってつけのベスト盤です。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
BAD HOP ALLDAY vol.2
BAD HOP WORLD
BAD HOP HOUSE 2
BAD HOP
BAD HOP(THE FINAL Edition)

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