スキマスイッチのポップミュージシャンとしての実力を改めて認識
Title:SUKIMASWITCH 20th Anniversary Tribute Album「みんなのスキマスイッチ」
2023年にデビュー20周年を迎えたスキマスイッチ。昨年には20周年記念のベスト盤をリリースしましたが、その20周年イヤーの最後に、初となるトリビュートアルバムがリリースされました。彼女自身、スキマスイッチからの影響を公言しているUruや、Aimerといった若手のミュージシャンから、いきものがかり、HYといったベテラン、さらには徳永英明のような大御所(?)まで、主にポップ系のミュージシャンを中心に様々なミュージシャンが参加。まさにタイトル通り、みんなに愛される「みんなのスキマスイッチ」を体現化するかのような構成となっています。
その中で、まずは耳を惹くのがアルバムの冒頭を飾るUruの「奏」。この曲を選曲した段階で勝ちは決まっているようなものなのですが、ちょっとかすれた感のあるボーカルが切なさを醸し出しており、曲との相性もバッチリ。もともとカバーには定評のある彼女ですが、聴きごたえのあるカバーに仕上がっています。
続くHY「ふれて未来を」も良カバー。沖縄民謡風のリズムを取り入れたカバーで、完全に彼らのフィールドに引き寄せています。SHISHAMOの「全力少年」も完全にSHISHAMOらしいギターロックの作品にまとめており、サビに向かって盛り上がる曲調がギターロックのアレンジともマッチしています。
ピアノとホーンセッションを入れて陽気にまとめているsumikaの「ガラナ」も完全に彼らの色に染め上げたカバーに。こういうアレンジが「ガラナ」に似合うというのもちょっと意外な感もあります。予想外の出来だったのが星街すいせいの「ゴールデンタイムラバー」で、VTuberによるカバー。正直、全く期待していなかったのですが、ちょっとドスを利かせたような力強いボーカルが、曲にマッチしている良カバーに仕上がっています。そして最後のtonun「デザイナーズマンション」も今風のメロウなシティポップ風のカバー。心地よいちょっとムーディーな雰囲気でアルバムは幕を下ろします。
今回のトリビュートアルバムであらためて感じたのは、スキマスイッチというミュージシャンは非常に優れたポップミュージシャンなんだな、という事実でした。楽曲はいい意味で非常に王道なポップソング。そのため、どんなタイプのミュージシャンでも卒なくカバーがこなすことができますし、メロディーラインの強度が非常に強いがために、どのようなタイプの楽曲にも染まりやすい感じがします。
そのため、基本的にどの楽曲についても、それぞれのミュージシャンの色が出ていてよく出来たカバーに仕上がっていたように思います。ネガティブな言い方をしてしまうと「卒がない」という印象を受けるのですが、卒なくカバーできてしまうあたりはやはりスキマスイッチの楽曲がよく出来たポップスである所以でしょう。個人的には参加しているミュージシャンたちは予想できてしまうポップフィールドのミュージシャンたちばかりだったので、もうちょっと意外なミュージシャンが参加していたり、ポップスがゆえにカバーの出来も予想できてしまうため、もっと楽曲をガラッと解体してしまうような奇抜なカバーを期待したいところだったのですが、その点はちょっと残念。ただ、そこらへんはあくまでも私の願望なので、それを差し引いても、スキマスイッチのファンも、参加ミュージシャンのファンも文句なしに楽しめるトリビュートアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
ARCHAIC SMILE/中田裕二
中田裕二約1年ぶりのニューアルバム。タイトルの「ARCHAIC SMILE」とは、もともと古代ギリシアのアルカイク美術の彫像に見られる表情で、日本の仏像でもよく見られる、慈悲深い優しいほほえみを指します。基本的にはいままでの彼の作品と同様、歌謡曲にも通じるような哀愁感たっぷりのメロディーラインで優しく歌い上げるスタイル。まさに「ARCHAIC SMILE」というタイトルにもピッタリくるような優しさを感じさせるアルバムになっていました。
評価:★★★★
中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary
DOUBLE STANDARD
PORTAS
TWILIGHT WANDERERS -BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -
LITTLE CHANGES
MOONAGE
((ika))/Tempalay
フジロック出演などでも話題となった、最近人気上昇中のスリーピースロックバンド。シティポップ風のメランコリックなメロディーラインに、サイケな要素も詰め込んだサウンドをのせるスタイルがユニーク。ゴスペルやらギターロックやら歌謡曲やらHIP HOPやら、果てはソーラン節まで、様々な音楽性を詰め込んだ作風が非常にユニークに感じる一方、全体的にはちょっと詰め込みすぎといった印象も同時に受けてしまいます。注目の実力派バンドであることは間違いないとは思うのですが。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2024年」カテゴリの記事
- 「アニソン」の歴史も感じる、充実の12枚組ボックスセット(2024.12.29)
- 沖縄独自の結婚式文化を楽しめるコンピレーション(2024.12.28)
- 「ライブアルバム」というよりは・・・(2024.12.23)
- ロック志向、ルーツ志向の強い35年目のアルバム(2024.12.20)
- オリジナルとは全く異なる魅力を感じる傑作(2024.12.17)
コメント